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第二章・慈悲の聖女クレディア・シーウェル
聖女のありふれたさいご
しおりを挟む教団本部の大聖堂を出た。
来た時と同様に裏門を通ると警備兵がこそこそと話しかけてくる。
「クレディア様にお会いしたんだろ? どんな感じだった? 遠くからしか見たことないけど綺麗な人だよなぁ」
うっとりしている警備兵に目が平らになっていく。
あなたの憧れの慈悲の聖女は結構えげつないですよと教えてやりたい。
でも無視だ。教えたら教えたで面倒くさいことになりそうだから。
無視して裏門を出ると、まっすぐ学生寮に向かう。
今日は王都に帰還したばかりなのに学園に報告書を提出し、次は大聖堂に呼び出されていた。ゆっくりする間もなかったのだ。
そろそろ寮に帰ってゆっくり休みたい。
しかし学生寮の前には見覚えのある少女。一緒の任務についていた聖女候補生ナタリーだ。
ナタリーは私を見つけると駆け寄ってくる。
「おかえりなさい、無事に帰ってきてくれて良かったです。ケガしてたから心配してたの。大丈夫?」
「放っとけば治るから」
そう答えて通り過ぎようとしたけれど、ナタリーが慌てて呼び止めてくる。
「待って! ロロットさんに聞いてほしいことがあって!」
「えー……」
いやだ。早く帰って休みたい。
でもナタリーは思いがけないほど真剣な顔をしていてなんだか断りづらい雰囲気だ。
「…………分かった。それじゃあ、寮のカフェに付き合って。そこで聞くから」
ため息まじりに返事をすると、ナタリーは「ありがとう!」とほっと安堵の顔になる。
ナタリーには見えていないギルタレスが「かふぇ? なんだそれ」と聞いてくるが、そっちは無視した。
聖女養成学園は全寮制だ。
広大な敷地の学生寮には生徒たちの居住空間の他に、図書館や談話室、カフェや日用品を取り扱った雑貨屋なども併設されている。
特にカフェは敷地内に幾つも点在し、そこで提供される料理やスイーツは一流料理人が手掛ける品ばかりだ。
聖女養成学園は厳しい戒律があるが、潤沢な資金源なので規模や設備は基本的に豪華なのである。
「いいの? 無理に誘ったんだし、ここの食事代だすよ?」
「自分の分は自分で出したいの」
そう答えた私の目の前には細いグラスに繊細な飾り付けをされたフルーツパフェ。
ナタリーが申し訳なさそうにテーブルのパフェを見るけど、私は構わずにスプーンでフルーツを掬ってひと口食べた。
今、カフェのテラス席に私とナタリーはいた。
私が注文したのは期間限定のフルーツパフェ。使用されているフルーツは厳選されたものばかりで、他のメニューに比べるとゼロの数が一つだけ多い品だ。
この品を注文する学生は裕福な実家から仕送りがあるか、私のように聖女助手の任務で稼いでいるか、そのどちらかだろう。
欲しいものを欲しい時に自分のお金で買う。これはお金があるから叶う自由。
フルーツパフェが特別に好きなわけじゃない。でも気まぐれに興味を引いて、食べてみたいかも……と思ったから即買う。奢られるよりも、自分の物を自分で買うことに快感がある。
「それで、聞いてほしいことってなに? 食べたら早く部屋に戻りたいんだけど」
「ご、ごめんっ!」
ナタリーが焦りだす。
すでにパフェを食べ始めている。このままのペースで食べていれば食後のコーヒーも含めて二十分かな。店内には会話を楽しむ聖女候補生たちがいるけど私はここで長話をするつもりはない。
ナタリーは真剣な顔になると、改めて口を開いた。
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