星屑の砂時計

一色ほのか

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17 説教確定らしい

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 声の主が何者かは分からない。
 言っていることが正しいのかも分からない。
 だからまず薙刀を手にしてみたけれど、やっぱり身長的に厳しい感じ。槍も同上。

 刃の付いた武器、ねぇ。
 どんだけ種類があると思ってんだ。
 ここにある過半数がそれなわけだが。
 
 仕方がないからとりあえず片っ端から手に取ってみる。
 重いのはナシ、両手よりは片手、両刃よりは片刃、真っすぐのやつよりは反りがあるやつ。
 イメージとして残ったのは刀なんだけど、この場にはない。
 日本で刃って言えば日本刀は外せない気がするけど、ないのはなんでだろう。聞かない方がいいやつ?
 あとで調べるとして、大事を取って聞かないでおこう。

 だとして、この場にある条件の合う武器は、というと。
 
「決まったのか?」
「ん~……、とりあえず長柄は身長的に厳しいのは察した。だから刃の付いた武器も手に取ってみたけどなんかピンとこなくて。強いて言えばこれって感じ」
 
 湾曲した片刃の刀身で柄部分にナックルガードが付いている、所謂サーベルってやつだ。
 長さは少し短めかな?その分軽いと思う。
 素材とか造りはさっぱり分からないけど、特徴もなくシンプル。
 柊夜のメイスも見てて思ったけど、悪く言うと、かなりちゃっちい。
 
「なんというか、壊れやすそうだな」
「俺も思った。まあ実際扱ってみないと分からないけど……うーん。なあ神門センセ、申請だけどちょっとズルしてもいい?」
「うん?ズルとはなんだ」
「申請に武器を特定しないで刀剣ってしておきたい」
「え。それが許されるなら俺もそうしたーい」
「でしたら私も刺突剣で申請したいですね」
 
 俺がずるい案を出したら、それに伊坂と佐々も乗ってきた。
 思いっきりタメ口の伊坂と違って、先生にちゃんと敬語使うんだな佐々。
 
「だってさぁ、武器っていっぱいあるんだよ?刃の付いた武器ってどんだけあると思ってんの?俺なんて属性に間違いがなくて適性はめちゃくちゃ簡単な斬撃・近接なのにCクラス落ちなんだよ?特定しないで探せるならその方がいいよ」
「伊坂に賛同するのは何ですが、この場に刺突剣はレイピアしかありませんので。今までのことも踏まえると特定してしまうと悲惨なことになりかねません」
「それはそうだろうが……」
 
 唸るように言う神門先生。
 Cクラスに落とされた内部生二人の意見はまあ、大きいだろうな。
 でも、逆に申請が通る可能性が低くなったかも。
 これでこの二人が劇的に成長した場合、学校側は間違いを認めなければならない。
 自分達がその才能を潰してきた者が一体何人いたのか。突き付けられることになるのだから。
 でもそういうのってどこかで認めて直していかないと、貴重な戦力が減るだろう?
 
「多数決を取る。武器を一種に特定するのではなく変えることを前提に曖昧にしておきたい者」
 
 その神門先生の言葉に、クラスの全員が手を上げた。
 見事に全員。
 となると、聞いた以上はそうするしかなくなったのでは。
 
「ふむ……。異例尽くしだが、いいだろう。許可する」
「へーぇ。じゃあそうさせてもらうよ」
 
 やっぱりこの人、只者じゃなかった。
 だってそうだろ?異例だって言うことを簡単に許可できる立場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なわけなんだから。
 そんなんがなんでこのクラスの担任なんてやってんだろ。
 そこらへん、瀬戸先輩にでも聞いたら分かんないかな。無理か。

「そうと決まればこれらはもう必要はないな。残っている4人は片付けるのを手伝え」
「りょーかい」
「はい」
「えー」
「分かりました」
 
 その言葉に、無茶を言ったのは分かってるから肯定の返事を返す。
 一人だけ渋ってるけど。手は動いているし放置。
 
 
 
「どうしてこう、目立つことばかりをするんだろうな、瑞月は」
 
 席に戻って武器の申請を用紙に書き込んで提出した後。
 柊夜に不機嫌なような、どこか諦めたような顔で、溜め息交じりに言われた。
 あー、うん。
 不本意もあったけど、殆ど俺が自分から目立ちに行ったようなもんだからなぁ。
 
「今だから無茶振りできるかなって。これ以上はないだろ」
「ないといいな」
「……いや、ないだろ?流石に」
「今までやっていたのは属性と武器適性の確認だろう?ちゃんとした魔力の扱い方についてはまだだから、また何かやらかしそうだと僕は思ってる」
「うっ、……否定しきれない」
 
 そういやまだ序盤も序盤になるのか、これ。
 水晶玉に魔力を流す、は最低限の基礎の更に前提みたいなものだろう。
 経過時間としては……、あー、3時間目の半ば辺りだ。
 全然時間経ってなかったわ。内容が濃すぎる。

 この後は魔力の扱い方について、だよな。
 無属性ってのがどういうものなのかによっては……うん。
 
「次、目立つような真似をしたら後で怒るからな?」
「いや俺に分が悪過ぎるんじゃ???」
「何もしなければいいだけだろ?」
 
 にっこりと笑って言う柊夜。
 これは俺が何かしでかすって分かった上で言ってるやつだ絶対。
 つまり怒られるの、確定。
 割と涼しい顔してたし今も笑ってはいるものの結構怒ってるな???


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