17 / 21
17 アマリエの力(別視点)
しおりを挟む
[ ――――――用があるのはワタシかしら ]
アマリエがバスルームに入った後。
目的である彼女に声を掛けようとそちらに顔を向けると、俺が話したいことがあると気付いていたようで、声を掛けるより早く彼女――ルージュが飛び上がってきた。
赤い髪で水色の眼をしたフェアリー・プリンセス。
元はフェアリーだったというが、いつからアマリエと居るんだろう。
「俺は、バル、ファルドだ。改めて、話を聞きた、い」
[ ええ、そうだろうと思ったわ。私はルージュ。名付けはアマリエよ ]
ふん、と偉そうに胸を張るルージュ。
名前を付けたのはアマリエなのか。
多分、この赤い髪からとったんだろうな。
[ 先に言っておくけど、私とアマリエが会ったのは学園に入る前よ。知らされていないのはワタシがあの子が唯一個人的にテイムしている切り札だから。おかしな嫉妬はしないでちょうだい ]
「…………。分かった」
バレていたか。
さすがはプリンセス種ってことかな?
でも仕方ないじゃないか。雌とはいえ知らないモンスターがずっと傍に居ただなんて、不快に決まっている。
まあ、気付かなかった自分の落ち度か。
[ 聞きたいことはコレと、進化のことね? ]
「ああ」
先にアマリエの下で進化しているんだから、詳しく聞くのは当たり前だ。
大切な記憶が失われてしまう前に一秒でも早く進化して、アンデッドの状態から抜け出さないといけない。
外聞も悪過ぎるし。騒ぐ連中が確実に居るし。
[ 正直に言って、進化は感覚でやっていくしかないわ。なんていうか、コレはここまでで大丈夫、コレはまだ、コレはもっとやった方がいい。そんな感じに、なんとなく分かるの。オマエもそうでしょう?どのスキルを育てればいいのか分かるはずよ ]
「……そうだ、な。分かる」
どのスキルを鍛えれば、望む進化ができるのか。
自分の鑑定結果も相俟って、はっきりと分かる。
モンスターとはみんなこうなんだろうか?
まあ何に進化するか、までは分からないんだけどな。
[ このことは、秘密よ。これは恐らくアマリエの力だから ]
「何?」
[ 私はフェアリーだったと言ったでしょう。生まれも純粋なモンスターよ。その頃はこんなこと分からなかったわ。アマリエにテイムされてから分かったのよ。きっと、テイマーのマスターランクは所有するモンスターの進化を明確に促すことができるんだわ ]
「…………大問題じゃ、ないか」
[ そうよ。だからオマエは速やかに進化しなさい。今はまだワタシ達がこの街に居るという情報は出回っていない。ワタシの幻術もあるからしばらくは誤魔化せるけれど、時が経つと危険だわ ]
真剣な顔で言うルージュ。
俺も、重々しく頷く。
この能力がバレたら、本当に不味い。確実に国に囲われる。
そんなこと、許せるわけがない。アマリエは俺の物だ。
ルージュの言う通り、アマリエを守るためにもすぐに動かなければ。
アンデッドは弱点が大き過ぎるし、弱過ぎる。
[ ああそれと。オマエはあの学園長と呼ばれている人間に感謝するべきね ]
「感謝して、いるが……何故?」
[ 再会した時点で自我が消えかけてたでしょ。もっと時間が経っていたらアマリエを分からなかった可能性が高い。すぐさまアマリエを逃がしてくれたからこそ合流できたのよ。魔道具のこともあるし ]
「…………。そう、だな」
言われていることは、納得できる。感謝すべきなのも、分かっている。
だけどあの人が何を考えているかさっぱり分からないから、素直には頷けないんだよね。
アマリエにとっては恩人だろうけど、狙いが分からない以上警戒しない訳には、いかない。
アマリエがバスルームに入った後。
目的である彼女に声を掛けようとそちらに顔を向けると、俺が話したいことがあると気付いていたようで、声を掛けるより早く彼女――ルージュが飛び上がってきた。
赤い髪で水色の眼をしたフェアリー・プリンセス。
元はフェアリーだったというが、いつからアマリエと居るんだろう。
「俺は、バル、ファルドだ。改めて、話を聞きた、い」
[ ええ、そうだろうと思ったわ。私はルージュ。名付けはアマリエよ ]
ふん、と偉そうに胸を張るルージュ。
名前を付けたのはアマリエなのか。
多分、この赤い髪からとったんだろうな。
[ 先に言っておくけど、私とアマリエが会ったのは学園に入る前よ。知らされていないのはワタシがあの子が唯一個人的にテイムしている切り札だから。おかしな嫉妬はしないでちょうだい ]
「…………。分かった」
バレていたか。
さすがはプリンセス種ってことかな?
でも仕方ないじゃないか。雌とはいえ知らないモンスターがずっと傍に居ただなんて、不快に決まっている。
まあ、気付かなかった自分の落ち度か。
[ 聞きたいことはコレと、進化のことね? ]
「ああ」
先にアマリエの下で進化しているんだから、詳しく聞くのは当たり前だ。
大切な記憶が失われてしまう前に一秒でも早く進化して、アンデッドの状態から抜け出さないといけない。
外聞も悪過ぎるし。騒ぐ連中が確実に居るし。
[ 正直に言って、進化は感覚でやっていくしかないわ。なんていうか、コレはここまでで大丈夫、コレはまだ、コレはもっとやった方がいい。そんな感じに、なんとなく分かるの。オマエもそうでしょう?どのスキルを育てればいいのか分かるはずよ ]
「……そうだ、な。分かる」
どのスキルを鍛えれば、望む進化ができるのか。
自分の鑑定結果も相俟って、はっきりと分かる。
モンスターとはみんなこうなんだろうか?
まあ何に進化するか、までは分からないんだけどな。
[ このことは、秘密よ。これは恐らくアマリエの力だから ]
「何?」
[ 私はフェアリーだったと言ったでしょう。生まれも純粋なモンスターよ。その頃はこんなこと分からなかったわ。アマリエにテイムされてから分かったのよ。きっと、テイマーのマスターランクは所有するモンスターの進化を明確に促すことができるんだわ ]
「…………大問題じゃ、ないか」
[ そうよ。だからオマエは速やかに進化しなさい。今はまだワタシ達がこの街に居るという情報は出回っていない。ワタシの幻術もあるからしばらくは誤魔化せるけれど、時が経つと危険だわ ]
真剣な顔で言うルージュ。
俺も、重々しく頷く。
この能力がバレたら、本当に不味い。確実に国に囲われる。
そんなこと、許せるわけがない。アマリエは俺の物だ。
ルージュの言う通り、アマリエを守るためにもすぐに動かなければ。
アンデッドは弱点が大き過ぎるし、弱過ぎる。
[ ああそれと。オマエはあの学園長と呼ばれている人間に感謝するべきね ]
「感謝して、いるが……何故?」
[ 再会した時点で自我が消えかけてたでしょ。もっと時間が経っていたらアマリエを分からなかった可能性が高い。すぐさまアマリエを逃がしてくれたからこそ合流できたのよ。魔道具のこともあるし ]
「…………。そう、だな」
言われていることは、納得できる。感謝すべきなのも、分かっている。
だけどあの人が何を考えているかさっぱり分からないから、素直には頷けないんだよね。
アマリエにとっては恩人だろうけど、狙いが分からない以上警戒しない訳には、いかない。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】「別れようって言っただけなのに。」そう言われましてももう遅いですよ。
まりぃべる
恋愛
「俺たちもう終わりだ。別れよう。」
そう言われたので、その通りにしたまでですが何か?
自分の言葉には、責任を持たなければいけませんわよ。
☆★
感想を下さった方ありがとうございますm(__)m
とても、嬉しいです。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました
山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。
※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。
コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。
ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。
トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。
クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。
シモン・グレンツェ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。
ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。
シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。
〈あらすじ〉
コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。
ジレジレ、すれ違いラブストーリー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる