二の舞なんてごめんですわ!

一色ほのか

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第1章 幼少期(7歳)

73 危機は回避できたけど

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 暗い。
 まだお昼の時間で空には太陽があるのに、何故か周囲が暗く感じる。
 これはきっと、国王陛下の魔力の影響。
 やっぱりこの方は、聖属性じゃないんだわ。
 
 この現象を、私は知っている。

 ……気がする。

 どこでだっただろう。
 確かにどこかで、私はこれと同じ現象を経験したことがある。

 …………気がする。
 
 なんだろう。
 私は、何かを忘れているの?
 思い当たる部分があり過ぎるわ……。
 


「ええと……、お兄様が、おられたのですね」
 
 恐る恐る、話し掛けてみる。
 ラックに言われたから、だけど……刺激しないように話題を探すのは大変だわ。どれが地雷かも分からない。
 正直、今まで零れ落ちた単語全てが地雷である可能性は高いと思う。
 精霊、双子、兄。
 どれを取っても特殊か秘匿された話じゃないかしら。

 …………誰かさんの話と符合する点はどのタイミングで問い詰めたらいいのかしらね。

 人間だった、王族、弟、死んだ場所はここ。そして精霊。
 これって、どう考えても……よね?
 
「そう……、そうだ。私には、兄が居た……だが、もう居ない……あの人は存在ごとなかったことにされてしまった。本当は私がそうだったのに……」

 え?
 
「王になるのはあの人で、私はその影。……あの人を支えて生きていくんだと……思って、いたんだ」
 
 ちょ、待って、待ってこれは、え?

 つまり国王陛下は元々双子で、その存在は秘匿されていて、亡くなられた方が兄で本来王になるべき方で、聖属性で、つまり現在国王陛下となられているこの方は聖属性を持たない本来なら王の資格を持たない方ということよね!?

 ああ、ああどうして気付かなかったの?答えはとっくに開示されていたのに!

 聖属性は、一人だけ。
 現在存在する聖属性は、ロバート殿下!

 イース様はさらっとお話になられたけれど、この情報はそもそも秘匿されていて恐らく王族とそれに近しい者しか知らなかったんだわ!
 イース様本当に私を逃がす気がなかったのね!?
 
「何故……何故、私が残った?本来残るべきはあの人で、私は身代わりになるべきで、私は、私は……ッ私が死ぬべきだった!私ではなくあの人が生きるべきだったのに!!」
 
 次々に明かされる事実をなんとか飲み込もうと考えている間に、国王陛下がとんでもないことを言い出した。
 本当に待って、これ、私がどうにかできることじゃないわよ!
 だけど……、いえ、事実を知っていた人間は確実にいたはずよ。そうじゃなければこの方が国王として即位などできなかったはず。
 なら、どうして国王陛下がこんなにも思い詰める前に誰か支えてあげなかったの!?
 その役目は私ではない。少なくとも、12年前にはもう。
 なら、担うべきは側近の方々や……王妃殿下ではないの?
 彼らは、彼女は今まで一体何をしていたの!?
 
 くっ、文句を言ったところで彼らには到底届かないし今この場には居ない。
 私が、なんとかしなくては。
 そうしなければ多分というか確実に私、ここで死ぬわ。
 この方には、それができるもの。
 
 そう決めたのはいいものの、どう説得するべきか。
 ラックは一切反応が無いし、つまり話題には出さない方がいいのよね?
 となると……もう、地雷だろうと踏み抜いていく覚悟をするしかない。
 
「それは恐らく、無理です」
「……なんだと?」
「以前、ここで国王陛下とお会いしましたよね。あの時、精霊が教えてくれました。この場で亡くなった方がいると。それは、精霊と関わりのある不幸な事件だったと」
「………………………………は?」
 
 ここに来てようやく、何に反応をしたのか国王陛下が顔を上げた。
 なんて酷い顔。窶れて、隈も酷い。あの時とは全く違う。
 こんな状態、誰も苦言を言わなかったの?指摘しなかったの?こんなにも酷く弱っているのに!
 
「精霊が起こす事象は、只人では抗えません。何故、どういった形で国王陛下のお兄様と精霊が関わり、死に至ってしまったかは分かりませんが……国王陛下は精霊を視認できず、会話もできないのならば、恐らく身代わりにはなれません」
 
 ただの事実だ。
 精霊のことと二人の違いを、ラックに教えてもらった話を多少加えて話しただけ。
 それでも何が琴線に触れたのか、国王陛下の反応が少し変わった。
 魔力の放出が、分かりやすく減少したのだ。
 
「その、人は。精霊は、なんと」
「申し訳ありません。私も、そこまで詳しくは。精霊は気まぐれで、きっと全てを話してくれたわけではないのです」
「そう……、そうか、精霊が……それならば……っ」

 まるで何か希望を見出したかのように、けれど譫言のように国王陛下が零す。
 少し、怖いわ……。
 だけど声のトーンも大分変わった。正気に聞こえる。
 なんとかできた、と考えていいのかしら?
 
「あの、大丈夫、ですか?」
「ああ。お前のお陰でほんの少しだけ希望を持てた」
 
 窶れた顔で、仄かに微笑む国王陛下。
 正直に言うと目が少し遠くを見ているような、私を見ているわけではないみたいで全く安心できない。離し方も取り繕えていないままだもの。
 だけどこれ以上話をして、致命的な地雷を踏むことは避けたいわ。
 
「お前はもう部屋に戻るといい。騒ぎになる前に」
「…………はい。御前、失礼いたします」
 
 不安ではあるけれど、このまま離脱させてもらいましょう。
 
 …………ラックを問いただした方がいいわよね?
 

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