二の舞なんてごめんですわ!

一色ほのか

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第1章 幼少期(7歳)

74 見えざる存在

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 部屋に居なかったこと、国王陛下と会っていたことは、本当に誰にも気付かれていなかった。
 正直に言って、スージーが部屋にやってきて『本日はこのまま部屋でお過ごしください』、と、『第一王子殿下は急用ができたため明日改めて連絡されるそうです』、と何も気づいていない様子でいつも通りに言ってくる姿を見るまで本当に生きた心地がしなかったわ。

 …………国王陛下が口止めしているだけかもしれないけれど。
 それについては知る由もないのだし、もう考えるのは止めましょう。

 ラックに話を聞かなくては。
 
 
 
「ラック。今、大丈夫かしら」

『 …………ああ。もちろん 』

「なら、今日のことを説明してちょうだい。全てとは言わないわ」

『 いいのかい?全てじゃなくて 』

「私、自分の首を絞める趣味はないの」
 
 王族の機密情報なんて極力知りたくないわ。
 多分、命がいくつあっても足りないわよ。
 国王陛下が国王になられた理由とか。本来の属性とか。
 今日知ったことだって口を閉ざし墓の下まで持っていかなければ本当に不味い情報でしょう。
 これ以上なんて抱えたくないわ。
 …………イース様のことなら、話は別だけれど。
 
『 そう……。まずは、ごめん。怖かっただろう? 』

「ええ、まあ……。あれは一体?」

『    の属性を帯びた魔力だ。普通なら対峙しただけで折れてしまう。負の力……闇の属性だ 』

 私知りたくないって言ったわよね。

 いえ、予想は付いていたけれど。
 知りたくないって言ったわよね自分の首を絞める情報。
 話の内容的に知っている必要があったということ?
 ……そしてまた名前が聞こえなかったわ。
 どうしてかしら。私はもう知っているのに・・・・・・・・・・・

『 私と   は双子の兄弟だ。私が兄、   が弟。けれど、僕達の運命は生まれ落ちた時点で決まっていた。僕が聖、   が闇の属性を持っていたから 』

「…………やっぱり。だけど貴方」

『 無属性だ、って?あの夜言っただろう?僕は聖属性の力を使い果たした。時間を戻すなんて奇跡、そうでもないとね。まあ、そもそも聖属性の力は一度使うと消えてしまうんだけどね 』

「え?でも予言は」

『 アレは力を使っているわけじゃない。ただ聞こえた言葉を伝えているだけ。今までの王もそうだ 』
 
 聞こえた言葉?
 伝えているだけ?
 王が与えているのではなく、王が何者かから受け取った予言を伝えていただけなの?
 誰から?
 
 いいえ、そんなの。そんなことができる存在なんて。
 
『 気付いたかい。そう、僕や歴代の聖属性達は、よく言えば神の代弁者。無機質に言えば、神が地上を覗き見るための道具でしかないんだ。故に王位に縛り付けられる 』
 
 固い声で、ラックは言う。
 
 この国は――――、でも。
 あの伝記は。資料は?教えられてきた歴史は。
 建国王様。聖女であったというその王妃。
 その、血筋。必ず生まれる聖属性と言う存在。
 色濃くその存在を主張する神。
 
 この国は、一体、何なの?
 
『 だからこそ――――僕達はたった一度の力を。奇跡を許されている 』

「っ、…………、奇跡?」

『 そう、奇跡。神に叶えられるものならば、どんな願いもたった一つだけ叶えることができる 』
 
 それは――――それって、つまり。
 そういうこと、なの?
 
『 本来奇跡は自分のためにしか使えない。だけどあの時、僕はそれを使う資格を失っていた。死んでいたからね。しかも精霊の成り損ないだったし。だから僕は君の魂に同化して、君を聖属性と誤認させようとした。本当にできるかは賭けだったけれど、結果はこの通り。もしかしたら、予言を歪められた神も怒っていたのかもしれないね 』

「…………ねえラック、貴方本当に、私の中から出られるの?」
 
 色々、言いたいことは、あるわ。
 あるんだけど、今気になるのはこれよ。
 属性を誤認させるレベルの同化って、それこそ本当に一つになってしまうレベルなのではないの?
 
『 それは大丈夫。出られるかは、真っ先に調べたから。長々と居座ってしまって申し訳ないけれどまだ待ってほしい 』

「出られるなら、いいわ。……出られた場合、私は貴方を認識できる?」

『 …………精霊を見る力はそもそも特殊も特殊だから。今できている会話も、感知すらできなくなる可能性は十分にある 』
 
 やっぱり、そうなの。
 恐らく見えなくなる可能性の方が、高いんだわ。
 幼い頃の私は見えていたようだけれど、いつからか見えなくなってしまったようだし。
 …………少なくとも、国王陛下が落ち着かれるまでは、ラックには私の中に居てもらった方がいい気がする。
 いえ、そもそも回復にどれほどかかるか分からないけれど。
 
『 前提条件と以前話せなかったことはこのあたり。次に今日の事なんだけど 』

「ええ」

『 実はしばらく前から、   の気配がおかしくて。以前庭で会った時は疲れているようだなとは思っていたけれどおかしなところはなかった。でも今は……アリィもおかしいと思っただろう? 』

「もちろんよ。正直に言うと、正気には見えなかった」
『 うん。…………僕は幼い頃の   も知っているから、あの状態がどんな状態か分かる。あれは精神的に不安定になって、闇に偏っている状態だ 』

「闇に、偏る?」

『 なんて言えばいいのかな。こう……思考がひたすらにネガティブになっている状態、かな?ああなると   一人で戻ってくるのは難しい。本来ならば傍に信頼できる人間を置いてメンタルケアをするんだけど……あれは、多分、そういう相手がいない。だからああなってる 』

「それは」

『 ううん、   の周りの人の所為とは言い切れないよ。   は人に頼りたがらないし、自分で全てを解決したがるから。それだけの能力があった 』
 
 それはそれでどうなのかしら……。
 いくら国王陛下が優秀な方とはいえ、全てを一人でできるわけがない。
 やっぱり、周囲の人間の力不足を否めないわ。
 
『 アリィが話をしてくれたおかげで、少しは持ち直してくれたようだけれど。今までの積み重ねでああなってしまったのならこのままではいけないと思っている 』

「私もよ。というかあれは持ち直したとはいえないでしょう?」

『 そう……だね。できるだけ早く、なんとかしたいけれど…… 』
 
 正直に言ってラックが姿を見せられれば一発だと思うけれど。
 国王陛下は精霊が見えないから、精霊であるラックが見えないのよね……。
 そもそもラックはどうして精霊になったのかしら?元は人間なのに。
 以前聞こうとは思ったけれど、すっかり忘れていたのよね。聞いてみようかしら。

『 そろそろ、時間切れみたいだ。僕は休むよ、他は、ま、た、今度……、 』

「あっ、」

 呼び止める間もなく、ラックの反応が、完全に無くなった。
 長く話していたから、疲れてしまったのかしら?
 なんだかいつもタイミングが悪いのよね……、図ったみたいに。
 
 …………神、ね。

 救われたのは事実なのだけど……。




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