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目が覚めて真っ先に襲ってきたのはズキズキとした頭の痛み。
それから、吐き気。
これは間違いなく二日酔いの症状。
そう考えて、思い出す。
思い至る。
これ、またやってしまったやつでは。
さあ、と血の気が引くと同時に慌てて起き上がろうと、した、けれど。
その違和感に気付いて、その場にへたり込む。
物凄く、下半身が濡れている感じがあるのだ。
なんで、と考えたところで、見ていた夢の内容が脳裏を過る。
現実の私が、零に抱かれる夢。
「~~~~~~ッッ!」
衝動のまま叫んでしまわないように、顔を両手で覆う。
ところどころ抜け落ちているものの、凄くリアルな夢。
まだ身体に感覚が残ってるみたいというか、発散しきれない熱が、燻っているよう、な。
本当に、セックスをしていたかのような、感覚。
あんな、されたことのないことをされる夢、なんて、どうして。
それに。
よりにもよって、他人の部屋にいる時にそんな夢を見るなんて……っ!
声とか、出てないよね?大丈夫だよね?
昨日は瀬能さんも相当酔ってたみたいだし、多分大丈夫だよね、きっと、恐らく、多分。
…………どうしたって顔を合わせなきゃならないのに、こんな、状態で?
「ど、どうしよぅ……っ」
すぐにでも全部洗い流してしまいたいけど無理、だし。
現状、どうしようもない。
…………最終的に、汗の匂いだけでも誤魔化せれば、と制汗スプレーを使ってから、そろりと動き出す。
ひとまずトイレを借りたい。けど……瀬能さん、起きてるかな?
時刻は10時ちょっと前くらい。微妙なところだろうか。
前回のように鍵を開けて部屋を出て、物音を立てないように廊下を歩く。
生活音の類は一切聞こえてこない。
やっぱり、まだ寝ているような気がする。
申し訳ないけどまずはトイレを借りよう……。
………………なんとなく後ろめたい思いを感じつつトイレを出、リビングに向かう。
部屋に戻るべきかなとも思ったけど、一応様子だけ見てみようかな、と。
もしかしたらリビングで寝落ちしている可能性もあるんじゃないかと思い至って。
「…………あ」
リビングに入ると、ソファに横に倒れるような状態で眠っている瀬能さんの姿があった。
テーブルの上は中途半端に片付けられていて、照明は付けっぱなし。恐らく片付けの最中に力尽きた感じなのだろう。
瀬能さんも酔ってたのに、酔い潰れた私の世話と片付けを押し付けちゃったってことかー……。
………………。
色々申し訳なく思うところはあるけれど。
ひとまず起こした方が、いいよね?
「あの、瀬能さん?」
近付いて、声を掛けてみる。
でも起きる様子はない。
肩を揺するとか、するべき?でも勝手に触るのは……もう少し、待ってみるかな?
とりあえずその場にしゃがみ、待ってみる。
静かに寝息を立てていて、起きる気配は今のところない。
………………やっぱり格好いいよなぁ。瀬能さん。
私みたいな一般人じゃ、普通なら絶対に関わらないような人。
どうしてこの人は、私に構うんだろう。私も……メッセージを返すのを止めてしまえばそれで途切れるだろうに。
この関係が煩わしいなら、そんなの簡単なのに。
返せるものは何もないと分かっているんだから、これ以上積み重なる前に終わらせるべきで――――、
「………………ん? …………っ!」
「あ」
目覚めて目が合ったと思ったら、物凄い勢いで距離を取られた。
完全にソファの後ろに隠れてしまっている。
後ろにきゅうりを置かれた猫みたいな反応してるなぁ……。
「……………………い、ま、何時ですか」
「10時過ぎくらい……ですね」
暫くの沈黙の後、聞かれたから答えたけれど、その後反応がない。
無防備に寝ているところを見られていたわけだし気まずいだろうか。
っていうか、よくよく考えれば、大分失礼だよね……。
「ええと、あの、」
「あー……、いや、こんなところで寝落ちた方が悪いので」
謝ろうとしたところ、やんわりと止められてしまった。
何を言おうとしたのか分かったらしい。
「少し休んだら片付けをして休むつもりだったんですけど。昨日は少し飲み過ぎてましたね……」
「あ、はは……。私こそまた迷惑を」
「いえ、用意した酒に問題があったようなので。人任せは駄目でした」
「あ、あー……」
日本酒系、混じってたんだ。
最後らへんの記憶がないのはその所為だったのね。
そりゃこうなってるんだからつまりそういうことだよねぇ。
「有栖川さん、すぐに出られそうですか?」
不意に立ち上がった瀬能さんが聞いてくる。
「え?あ、はい。大丈夫ですが」
「僕も出るので少し待っててください。最寄り駅まで送ります」
「え」
「今回も僕のうっかりみたいなものですし……すぐ着替えるのでここで待っててくださいね」
「あのっ、………………えぇ……」
そう言うだけ言ってそそくさと出て行ってしまった。
言葉を返す間もなかった。
ちらっと見えた横顔は少し気まずげだったけれど……、…………私と同じような理由かな?寝起きだもんね。だとしたら失礼なのはやっぱり私の方だよね……。
だからと言って声も掛けずに出ていくことはできないし。戸締りもできないし。
こういう状況を作らないためには2人で飲まない、というか瀬能さんの部屋で飲まない、というのが一番だけど。
そもそも駄目だよね、この状況。
よくよく考えなくても、恋人関係でもない男女が密室で2人きりとか、おかしいもの。
今回は押し切られてしまったけれど、ちゃんと断らないと。
流されやすいって、零からも言われてたんだから。
――――――――着替えて戻ってきた瀬能さんに促され、瀬能さんの部屋を後にする。
よくよく聞いていると、シャワールームが不調らしい。だから外に出るしかないということのようで。
ただそれが本当かどうかは、正直なところ半々な気がする。
聞くのは流石に野暮だから、聞かないけれど……。
なんとなく気まずい空気の中、最寄り駅に到着し。
「ええと……ありがとうございました」
「いえ。こちらこそ色々と付き合わせてしまってすみません。ゆっくり休んでくださいね」
「はい。では」
「では、また」
ドアが閉じ、発進していくタクシー。
………………ナチュラルに『また』って言ってた……。
それから、吐き気。
これは間違いなく二日酔いの症状。
そう考えて、思い出す。
思い至る。
これ、またやってしまったやつでは。
さあ、と血の気が引くと同時に慌てて起き上がろうと、した、けれど。
その違和感に気付いて、その場にへたり込む。
物凄く、下半身が濡れている感じがあるのだ。
なんで、と考えたところで、見ていた夢の内容が脳裏を過る。
現実の私が、零に抱かれる夢。
「~~~~~~ッッ!」
衝動のまま叫んでしまわないように、顔を両手で覆う。
ところどころ抜け落ちているものの、凄くリアルな夢。
まだ身体に感覚が残ってるみたいというか、発散しきれない熱が、燻っているよう、な。
本当に、セックスをしていたかのような、感覚。
あんな、されたことのないことをされる夢、なんて、どうして。
それに。
よりにもよって、他人の部屋にいる時にそんな夢を見るなんて……っ!
声とか、出てないよね?大丈夫だよね?
昨日は瀬能さんも相当酔ってたみたいだし、多分大丈夫だよね、きっと、恐らく、多分。
…………どうしたって顔を合わせなきゃならないのに、こんな、状態で?
「ど、どうしよぅ……っ」
すぐにでも全部洗い流してしまいたいけど無理、だし。
現状、どうしようもない。
…………最終的に、汗の匂いだけでも誤魔化せれば、と制汗スプレーを使ってから、そろりと動き出す。
ひとまずトイレを借りたい。けど……瀬能さん、起きてるかな?
時刻は10時ちょっと前くらい。微妙なところだろうか。
前回のように鍵を開けて部屋を出て、物音を立てないように廊下を歩く。
生活音の類は一切聞こえてこない。
やっぱり、まだ寝ているような気がする。
申し訳ないけどまずはトイレを借りよう……。
………………なんとなく後ろめたい思いを感じつつトイレを出、リビングに向かう。
部屋に戻るべきかなとも思ったけど、一応様子だけ見てみようかな、と。
もしかしたらリビングで寝落ちしている可能性もあるんじゃないかと思い至って。
「…………あ」
リビングに入ると、ソファに横に倒れるような状態で眠っている瀬能さんの姿があった。
テーブルの上は中途半端に片付けられていて、照明は付けっぱなし。恐らく片付けの最中に力尽きた感じなのだろう。
瀬能さんも酔ってたのに、酔い潰れた私の世話と片付けを押し付けちゃったってことかー……。
………………。
色々申し訳なく思うところはあるけれど。
ひとまず起こした方が、いいよね?
「あの、瀬能さん?」
近付いて、声を掛けてみる。
でも起きる様子はない。
肩を揺するとか、するべき?でも勝手に触るのは……もう少し、待ってみるかな?
とりあえずその場にしゃがみ、待ってみる。
静かに寝息を立てていて、起きる気配は今のところない。
………………やっぱり格好いいよなぁ。瀬能さん。
私みたいな一般人じゃ、普通なら絶対に関わらないような人。
どうしてこの人は、私に構うんだろう。私も……メッセージを返すのを止めてしまえばそれで途切れるだろうに。
この関係が煩わしいなら、そんなの簡単なのに。
返せるものは何もないと分かっているんだから、これ以上積み重なる前に終わらせるべきで――――、
「………………ん? …………っ!」
「あ」
目覚めて目が合ったと思ったら、物凄い勢いで距離を取られた。
完全にソファの後ろに隠れてしまっている。
後ろにきゅうりを置かれた猫みたいな反応してるなぁ……。
「……………………い、ま、何時ですか」
「10時過ぎくらい……ですね」
暫くの沈黙の後、聞かれたから答えたけれど、その後反応がない。
無防備に寝ているところを見られていたわけだし気まずいだろうか。
っていうか、よくよく考えれば、大分失礼だよね……。
「ええと、あの、」
「あー……、いや、こんなところで寝落ちた方が悪いので」
謝ろうとしたところ、やんわりと止められてしまった。
何を言おうとしたのか分かったらしい。
「少し休んだら片付けをして休むつもりだったんですけど。昨日は少し飲み過ぎてましたね……」
「あ、はは……。私こそまた迷惑を」
「いえ、用意した酒に問題があったようなので。人任せは駄目でした」
「あ、あー……」
日本酒系、混じってたんだ。
最後らへんの記憶がないのはその所為だったのね。
そりゃこうなってるんだからつまりそういうことだよねぇ。
「有栖川さん、すぐに出られそうですか?」
不意に立ち上がった瀬能さんが聞いてくる。
「え?あ、はい。大丈夫ですが」
「僕も出るので少し待っててください。最寄り駅まで送ります」
「え」
「今回も僕のうっかりみたいなものですし……すぐ着替えるのでここで待っててくださいね」
「あのっ、………………えぇ……」
そう言うだけ言ってそそくさと出て行ってしまった。
言葉を返す間もなかった。
ちらっと見えた横顔は少し気まずげだったけれど……、…………私と同じような理由かな?寝起きだもんね。だとしたら失礼なのはやっぱり私の方だよね……。
だからと言って声も掛けずに出ていくことはできないし。戸締りもできないし。
こういう状況を作らないためには2人で飲まない、というか瀬能さんの部屋で飲まない、というのが一番だけど。
そもそも駄目だよね、この状況。
よくよく考えなくても、恋人関係でもない男女が密室で2人きりとか、おかしいもの。
今回は押し切られてしまったけれど、ちゃんと断らないと。
流されやすいって、零からも言われてたんだから。
――――――――着替えて戻ってきた瀬能さんに促され、瀬能さんの部屋を後にする。
よくよく聞いていると、シャワールームが不調らしい。だから外に出るしかないということのようで。
ただそれが本当かどうかは、正直なところ半々な気がする。
聞くのは流石に野暮だから、聞かないけれど……。
なんとなく気まずい空気の中、最寄り駅に到着し。
「ええと……ありがとうございました」
「いえ。こちらこそ色々と付き合わせてしまってすみません。ゆっくり休んでくださいね」
「はい。では」
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ドアが閉じ、発進していくタクシー。
………………ナチュラルに『また』って言ってた……。
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