執着から始まる

一色ほのか

文字の大きさ
20 / 40

20 〇

しおりを挟む
 目が覚めて真っ先に襲ってきたのはズキズキとした頭の痛み。
 それから、吐き気。
 これは間違いなく二日酔いの症状。
 そう考えて、思い出す。
 思い至る。

 これ、また・・やってしまったやつでは。
 
 さあ、と血の気が引くと同時に慌てて起き上がろうと、した、けれど。
 その違和感・・・に気付いて、その場にへたり込む。
 物凄く、下半身が濡れている感じがあるのだ。
 なんで、と考えたところで、見ていた夢・・・・・の内容が脳裏を過る。

 現実の私が、零に抱かれる夢・・・・・・・・・・・・・

「~~~~~~ッッ!」
 
 衝動のまま叫んでしまわないように、顔を両手で覆う。
 ところどころ抜け落ちているものの、凄くリアルな夢。
 まだ身体に感覚が残ってるみたいというか、発散しきれない熱が、燻っているよう、な。
 本当に、セックスをしていたかのような、感覚。

 あんな、されたことのないことをされる夢、なんて、どうして。
 それに。
 よりにもよって、他人瀬能さんの部屋にいる時にそんな夢を見るなんて……っ!

 声とか、出てないよね?大丈夫だよね?
 昨日は瀬能さんも相当酔ってたみたいだし、多分大丈夫だよね、きっと、恐らく、多分。

 …………どうしたって顔を合わせなきゃならないのに、こんな、状態で?

「ど、どうしよぅ……っ」

 すぐにでも全部洗い流してしまいたいけど無理、だし。
 現状、どうしようもない。

 …………最終的に、汗の匂いだけでも誤魔化せれば、と制汗スプレーを使ってから、そろりと動き出す。
 ひとまずトイレを借りたい。けど……瀬能さん、起きてるかな?
 時刻は10時ちょっと前くらい。微妙なところだろうか。
 
 前回のように鍵を開けて部屋を出て、物音を立てないように廊下を歩く。
 生活音の類は一切聞こえてこない。
 やっぱり、まだ寝ているような気がする。
 申し訳ないけどまずはトイレを借りよう……。
 


 ………………なんとなく後ろめたい思いを感じつつトイレを出、リビングに向かう。
 部屋に戻るべきかなとも思ったけど、一応様子だけ見てみようかな、と。
 もしかしたらリビングで寝落ちしている可能性もあるんじゃないかと思い至って。
 
「…………あ」
 
 リビングに入ると、ソファに横に倒れるような状態で眠っている瀬能さんの姿があった。
 テーブルの上は中途半端に片付けられていて、照明は付けっぱなし。恐らく片付けの最中に力尽きた感じなのだろう。
 瀬能さんも酔ってたのに、酔い潰れた私の世話と片付けを押し付けちゃったってことかー……。
 
 ………………。
 
 色々申し訳なく思うところはあるけれど。
 ひとまず起こした方が、いいよね?
 
「あの、瀬能さん?」
 
 近付いて、声を掛けてみる。
 でも起きる様子はない。
 肩を揺するとか、するべき?でも勝手に触るのは……もう少し、待ってみるかな?

 とりあえずその場にしゃがみ、待ってみる。
 静かに寝息を立てていて、起きる気配は今のところない。
 
 ………………やっぱり格好いいよなぁ。瀬能さん。
 私みたいな一般人じゃ、普通なら絶対に関わらないような人。
 どうしてこの人は、私に構うんだろう。私も……メッセージを返すのを止めてしまえばそれで途切れるだろうに。
 この関係が煩わしいなら、そんなの簡単なのに。
 返せるものは何もないと分かっているんだから、これ以上積み重なる前に終わらせるべきで――――、
 
「………………ん? …………っ!」
「あ」
 
 目覚めて目が合ったと思ったら、物凄い勢いで距離を取られた。
 完全にソファの後ろに隠れてしまっている。

 後ろにきゅうりを置かれた猫みたいな反応してるなぁ……。
 
「……………………い、ま、何時ですか」
「10時過ぎくらい……ですね」
 
 暫くの沈黙の後、聞かれたから答えたけれど、その後反応がない。
 無防備に寝ているところを見られていたわけだし気まずいだろうか。
 っていうか、よくよく考えれば、大分失礼だよね……。
 
「ええと、あの、」
「あー……、いや、こんなところで寝落ちた方が悪いので」
 
 謝ろうとしたところ、やんわりと止められてしまった。
 何を言おうとしたのか分かったらしい。
 
「少し休んだら片付けをして休むつもりだったんですけど。昨日は少し飲み過ぎてましたね……」
「あ、はは……。私こそまた迷惑を」
「いえ、用意した酒に問題があったようなので。人任せは駄目でした」
「あ、あー……」
 
 日本酒系、混じってたんだ。
 最後らへんの記憶がないのはその所為だったのね。
 そりゃこう・・なってるんだからつまりそういうことだよねぇ。
 
「有栖川さん、すぐに出られそうですか?」
 
 不意に立ち上がった瀬能さんが聞いてくる。
 
「え?あ、はい。大丈夫ですが」
「僕も出るので少し待っててください。最寄り駅まで送ります」
「え」
「今回も僕のうっかりみたいなものですし……すぐ着替えるのでここで待っててくださいね」
「あのっ、………………えぇ……」
 
 そう言うだけ言ってそそくさと出て行ってしまった。
 言葉を返す間もなかった。
 ちらっと見えた横顔は少し気まずげだったけれど……、…………私と同じような理由かな?寝起きだもんね。だとしたら失礼なのはやっぱり私の方だよね……。
 だからと言って声も掛けずに出ていくことはできないし。戸締りもできないし。
 
 こういう状況を作らないためには2人で飲まない、というか瀬能さんの部屋で飲まない、というのが一番だけど。
 そもそも駄目だよね、この状況。
 よくよく考えなくても、恋人関係でもない男女が密室で2人きりとか、おかしいもの。

 今回は押し切られてしまったけれど、ちゃんと断らないと。
 流されやすいって、零からも言われてたんだから。


 
 
 ――――――――着替えて戻ってきた瀬能さんに促され、瀬能さんの部屋を後にする。

 よくよく聞いていると、シャワールームが不調らしい。だから外に出るしかないということのようで。
 ただそれが本当かどうかは、正直なところ半々な気がする。
 聞くのは流石に野暮だから、聞かないけれど……。
 
 なんとなく気まずい空気の中、最寄り駅に到着し。

「ええと……ありがとうございました」
「いえ。こちらこそ色々と付き合わせてしまってすみません。ゆっくり休んでくださいね」
「はい。では」
「では、また」

 ドアが閉じ、発進していくタクシー。

 ………………ナチュラルに『また』って言ってた……。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...