7 / 59
第二章:未知との遭遇
7:世界は輝いている
しおりを挟む
「わたしがですか!? そんな身のほど知らずな!」
「身の程って、私はとてもお似合いだと思うわよ? それに次郎君もあやめちゃんのこと、すごくお気に入りだと思うし」
「は?」
「だってーー」
「ストップ、瞳子さん! 俺のいないところで勝手に話を進めるのやめてくれる?」
「じ、次郎君!? 」
素っ頓狂な声がでた。いったいいつからそこにいたのでしょうか。
一気に顔に熱がこもった。恥ずかしい、恥ずかしすぎる。
「瞳子さんって、ほんっとに油断も隙も無いよね」
「あら? それは心外ね」
「もうっ!」と悪態をつきながら、次郎君がわたしを見た。
「あやめ」
「は、はい! あの、勝手にそっくりさんの夢など見てしまい、本当に申し訳ありません」
ぐわぁ、穴があったら入りたい。消えたい。
「それはむしろありがたい事だけど。――今日で教授の助手も終わるから、言いたいことを言わせてもらうね」
「はい」
何か粗相をやらかいているのかもしれない。全力で謝罪の姿勢を整える。
「これからもあやめと一緒に過ごしたい。だから、俺と付き合ってください」
「ーーえ?」
聞き間違いだろうか。それとも、これも夢かな。わたしはまだ眠っていて、夢を見ているのかもしれない。
「あやめ、聞こえてる?」
「え?」
「俺の彼女になってください」
「え?」
夢だ、これは全て夢だ。わたしが次郎君に告白されるなんて、ありえない。
「あらま、さっそく臆面もなく口説いちゃうのね」
「瞳子さんのせいだろ!?」
「そういう直球なところ一郎とおんなじね。まぁ一郎の場合は心がこもっていないけど、次郎君のことは応援しているわよ」
「知ってるよ、もう!ーーって、ちょっと、あやめ!? 顔が爆発しそうだけど?」
もしかすると、わたしが爆発して夢から覚めるパターンかもしれない。
「あやめちゃん、可愛い。茹蛸みたいになっちゃって」
夢じゃないのかな。目覚めることもなく、目の前で続く二人の会話。次郎君と瞳子さんがわたしに注目している。あ、もしかしてドッキリかな。思わず辺りを見回してカメラを探す。
「あやめ、ドッキリじゃないから! カメラとかないから」
次郎君の顔も少し赤い。
「もしかして現実逃避してる? 俺は真面目に告白しているんだけど」
「……次郎君が、わたしに」
「そう!」
「わたしに!?」
咄嗟にがばりとその場で頭を下げた。
「お返事が遅れて申し訳ありません! 不束者ですが、どうかよろしくお願いします!」
夢じゃないなら、呆けている場合ではない。わたしのような者が次郎君に告白されて、返答を保留にするなんてありえない。お待たせするなんてありえない。
「あ、良かった」
ほっとした次郎君の声。わたしはおそるおそる顔をあげた。初めて見る、はにかんだ顔。少し照れ臭そうに髪をかきあげる次郎君に魂がもっていかれる。
ああ、かっこいい。こんな幸運なことがあっていいのだろうか。
「次郎君もお昼ご飯にする?」
瞳子さんが次郎君に尋ねながら、わたしに片目をつぶってみせる。良かったわねの意思表示。
「うん。ほっとしたら、すごくお腹空いた」
幸せを噛み締める私の向かいに次郎君が座る。はじめは戸惑いしかなかった時任教授の助手生活だったけど、いまは一緒にご飯を食べることも馴染んでしまった。
そして最終日。次郎君がわたしの彼氏だなんて。ああ、夢みたい。世界は輝いている。
わたしはすっかり冷めてしまったお味噌汁をすすった。
「身の程って、私はとてもお似合いだと思うわよ? それに次郎君もあやめちゃんのこと、すごくお気に入りだと思うし」
「は?」
「だってーー」
「ストップ、瞳子さん! 俺のいないところで勝手に話を進めるのやめてくれる?」
「じ、次郎君!? 」
素っ頓狂な声がでた。いったいいつからそこにいたのでしょうか。
一気に顔に熱がこもった。恥ずかしい、恥ずかしすぎる。
「瞳子さんって、ほんっとに油断も隙も無いよね」
「あら? それは心外ね」
「もうっ!」と悪態をつきながら、次郎君がわたしを見た。
「あやめ」
「は、はい! あの、勝手にそっくりさんの夢など見てしまい、本当に申し訳ありません」
ぐわぁ、穴があったら入りたい。消えたい。
「それはむしろありがたい事だけど。――今日で教授の助手も終わるから、言いたいことを言わせてもらうね」
「はい」
何か粗相をやらかいているのかもしれない。全力で謝罪の姿勢を整える。
「これからもあやめと一緒に過ごしたい。だから、俺と付き合ってください」
「ーーえ?」
聞き間違いだろうか。それとも、これも夢かな。わたしはまだ眠っていて、夢を見ているのかもしれない。
「あやめ、聞こえてる?」
「え?」
「俺の彼女になってください」
「え?」
夢だ、これは全て夢だ。わたしが次郎君に告白されるなんて、ありえない。
「あらま、さっそく臆面もなく口説いちゃうのね」
「瞳子さんのせいだろ!?」
「そういう直球なところ一郎とおんなじね。まぁ一郎の場合は心がこもっていないけど、次郎君のことは応援しているわよ」
「知ってるよ、もう!ーーって、ちょっと、あやめ!? 顔が爆発しそうだけど?」
もしかすると、わたしが爆発して夢から覚めるパターンかもしれない。
「あやめちゃん、可愛い。茹蛸みたいになっちゃって」
夢じゃないのかな。目覚めることもなく、目の前で続く二人の会話。次郎君と瞳子さんがわたしに注目している。あ、もしかしてドッキリかな。思わず辺りを見回してカメラを探す。
「あやめ、ドッキリじゃないから! カメラとかないから」
次郎君の顔も少し赤い。
「もしかして現実逃避してる? 俺は真面目に告白しているんだけど」
「……次郎君が、わたしに」
「そう!」
「わたしに!?」
咄嗟にがばりとその場で頭を下げた。
「お返事が遅れて申し訳ありません! 不束者ですが、どうかよろしくお願いします!」
夢じゃないなら、呆けている場合ではない。わたしのような者が次郎君に告白されて、返答を保留にするなんてありえない。お待たせするなんてありえない。
「あ、良かった」
ほっとした次郎君の声。わたしはおそるおそる顔をあげた。初めて見る、はにかんだ顔。少し照れ臭そうに髪をかきあげる次郎君に魂がもっていかれる。
ああ、かっこいい。こんな幸運なことがあっていいのだろうか。
「次郎君もお昼ご飯にする?」
瞳子さんが次郎君に尋ねながら、わたしに片目をつぶってみせる。良かったわねの意思表示。
「うん。ほっとしたら、すごくお腹空いた」
幸せを噛み締める私の向かいに次郎君が座る。はじめは戸惑いしかなかった時任教授の助手生活だったけど、いまは一緒にご飯を食べることも馴染んでしまった。
そして最終日。次郎君がわたしの彼氏だなんて。ああ、夢みたい。世界は輝いている。
わたしはすっかり冷めてしまったお味噌汁をすすった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
『愛が揺れるお嬢さん妻』- かわいいひと - 〇
設楽理沙
ライト文芸
♡~好きになった人はクールビューティーなお医者様~♡
やさしくなくて、そっけなくて。なのに時々やさしくて♡
――――― まただ、胸が締め付けられるような・・
そうか、この気持ちは恋しいってことなんだ ―――――
ヤブ医者で不愛想なアイッは年下のクールビューティー。
絶対仲良くなんてなれないって思っていたのに、
遠く遠く、限りなく遠い人だったのに、
わたしにだけ意地悪で・・なのに、
気がつけば、一番近くにいたYO。
幸せあふれる瞬間・・いつもそばで感じていたい
◇ ◇ ◇ ◇
💛画像はAI生成画像 自作
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる