63 / 77
第十三章:平屋の小芥子(こけし)
63:小芥子(こけし)
しおりを挟む
土間へ入り、板の間へ上がるために履き物を脱いでいると、葛葉はふと炊事場の片隅にある小芥子に気づいた。ちょうど板の間を見るように置かれており、細く描かれた目と視線があう。
なぜ炊事場にあるのかと思ったが、台の奥に立っていて作業の邪魔にはならない配置だった。おそらく和歌が飾ったのだろう。珍しいと感じたが不審には思うほどでもない。
すぐに奥の座敷へと意識を向けて、葛葉は板張りの廊下へあがる。以前と同じように縁側をたどるように進み、居間へ入った。囲炉裏を見ると心が緩む。
葛葉は祖母と暮らした小さな家にあった囲炉裏を思い出した。火災の記憶を恐れて、祖母と囲んだ囲炉裏の火さえ、目隠しされたように意識の底に沈められていた。
けれど、今は思い出せる。祖母と囲炉裏を囲んで過ごした日々。他愛ないけれど平穏だった。
囲炉裏の火はいつも穏やかで温かった。
葛葉は改めて過去に向き合って、自身が変わりつつあることを自覚する。
囲炉裏から目をあげると、和歌の笑みがあった。
「どうぞ、奥へ。すぐにお茶を淹れます。さっそくお土産をいただきましょうね」
「ありがとうございます」
彼女は奥の客間へ可畏と葛葉を促すと、風呂敷をかかえて炊事場の方へ姿を消した。
可畏と客間へ入ると、葛葉の気を引くものが視界の端をよぎった。
(ん?)
客間から見える中庭。水盤へ流れ込む水の流れを再確認して、葛葉はこの家屋が中庭を囲むように作られていたことを思い出した。濡れ縁から中庭を挟んで向こう側にも部屋がある。以前は障子で遮られていたが、今は開放されて室内が見えた。
斜めに傾いた夕刻の赤い日差しが、中庭に影と光の境界を描いている。平屋の家屋にも、くっきりとした影との境界が生まれていたが、まだ夕闇は訪れていない。
(また小芥子?)
夕焼けのような赤みを帯びた光景の中で、一目散に葛葉の視界がとらえたのは、違い棚に飾られた小さな小芥子だった。床の間に生けられた花や掛け軸よりも、なぜか葛葉は圧倒的な存在感を覚えた。
(さっき小芥子を見たばかりだから、気がついたのかな)
中庭を挟んで見える室内は遠く、小さな小芥子が目立って見えるわけでもない。炊事場にあったものと同じ形だろうかと目を凝らしていると、細く描かれた小芥子の目とふっと視線が重なった。ぞくりと背筋が寒くなる。
「葛葉?」
「ぎゃ!」
可畏の呼びかけに過剰に反応して、葛葉はその場で飛び上がってしまう。
「どうしたんだ?」
「も、申し訳ありません。すこし驚いただけです」
不思議そうに可畏も中庭の向こう側にある部屋へ目を向けた。
「何か変わったものでも見えたのか?」
「いえ、変わったものというか。向こう側の部屋にある違い棚の上に、小芥子を見つけたので……」
「小芥子?」
「はい。さっき炊事場にもあったので、同じ形のものかと思って」
可畏が向こう側の部屋を眺めたまま目をすがめた。
「違い棚には何もないようだが?」
「え? そんなはずは……」
葛葉もふたたび中庭ごしに見える部屋の違い棚に目を向ける。小芥子の場所を示そうとしたが、見当たらない。
「あれ?」
中庭へ続く濡れ縁まで出て目を凝らしていると、背後で可畏の声がした。
「中庭の木の梢がそう見えたんじゃないか?」
「いえ、そんなことは」
強い印象をもって視界に飛び込んできたのだ。見間違えたとは思えないが、違い棚には何も置かれていなかった。
「でも、なくなっています」
あったはずの小芥子がなくなる。葛葉がひやりとした戦慄を感じていると、可畏がさらに恐ろしいことを告げた。
「それに、炊事場に小芥子などあったか?」
「――わたしは、見ましたが……」
葛葉はにわかに小芥子があったと自信をもって言えなくなる。自分よりも周りの変化に気づき、何事もよく見ている可畏が、あの小芥子に気づかないことなどあるだろうか。
もし炊事場の小芥子もなくなっていたら――。
完全に怪異である。
葛葉がぞっと顔色を失っていると、それに気づいた可畏が慰めるように続けた。
「もしおまえの見た小芥子が何らかの怪異だったとしても、問題はない」
葛葉がどういう意味かと目を向けると、可畏はきっぱりと断定した。
「ここは帝の用意した住処だぞ。悪いモノが紛れ込めるわけもない」
言われてみればそうだった。帝が葛葉を守るために用意した住処なのだ。葛葉は肩に入っていた力が抜けた。けれど神出鬼没な小芥子の不気味さまでは払拭できない。
「でも、もし小芥子が怪異だとして、いったい何のために出るのでしょうか?」
「――さぁな」
可畏の返答に一呼吸の戸惑いがあったように思えて、葛葉は引っ掛かった。可畏はすぐに大丈夫だと念を押す。
「帝のことだ。おまえを守るための仕掛けだろう。何も心配はいらない」
「はい」
悪いモノでなくとも神出鬼没な小芥子は怖い。怖いが、葛葉は特務部の一員として怪異になれるべきだと思い直した。
「お茶が入りましたよ」
可畏と濡れ縁から客間へ戻ると、和歌がいそいそとした様子で再び姿を現す。手に抱える盆には、茶器と土産の銅鑼焼きがあった。
三人で座卓につくと、可畏が何気なく彼女に尋ねる。
「和歌、炊事場に小芥子を飾っているのか?」
「小芥子ですか?」
和歌は可畏の顔を見てから葛葉に視線を向ける。表情から何かを感じたのか再び可畏を見た。
「可畏様。それはどう答えるのが正解でしょうか」
どうやら葛葉の表情から小芥子に怯えていることを察したらしい。彼女は葛葉に負担のない答えを模索しているようだった。可畏は和歌の聡明さに小さく笑う。
「ここは特別な場所だ。べつに取り繕う必要はない」
「そうですか。炊事場に小芥子を飾ったことはございませんが――」
「ええ!?」
予想していても慄いてしまう。こんな怪異に怯えるのが情けないと意気込んでみても、葛葉はぞっと全身に鳥肌がたった。
「その様子では、葛葉さんは炊事場で小芥子を見たと?」
「は、はい。奥の台にありました」
和歌が可畏と顔を見合わせている。二人の間で暗黙のやりとりがあったのか、彼女は慰めるように葛葉に微笑んだ。
「大丈夫ですよ、葛葉さん。私があとで屋敷の中を見回っておきましょう」
「ありがとうございます」
不気味な小芥子の存在を恐れることもなく、和歌は柔和に笑っている。ここで葛葉の世話を担うということは、帝と可畏からの信頼が厚い女性なのだろう。怪異にも慣れている気配がした。
動じることのない和歌の笑顔に心強さを感じて、葛葉は大丈夫だと自分に言い聞かせる。
「とりあえず、銅鑼焼きをいただきましょう。とても美味しそうです」
「はい」
なぜ炊事場にあるのかと思ったが、台の奥に立っていて作業の邪魔にはならない配置だった。おそらく和歌が飾ったのだろう。珍しいと感じたが不審には思うほどでもない。
すぐに奥の座敷へと意識を向けて、葛葉は板張りの廊下へあがる。以前と同じように縁側をたどるように進み、居間へ入った。囲炉裏を見ると心が緩む。
葛葉は祖母と暮らした小さな家にあった囲炉裏を思い出した。火災の記憶を恐れて、祖母と囲んだ囲炉裏の火さえ、目隠しされたように意識の底に沈められていた。
けれど、今は思い出せる。祖母と囲炉裏を囲んで過ごした日々。他愛ないけれど平穏だった。
囲炉裏の火はいつも穏やかで温かった。
葛葉は改めて過去に向き合って、自身が変わりつつあることを自覚する。
囲炉裏から目をあげると、和歌の笑みがあった。
「どうぞ、奥へ。すぐにお茶を淹れます。さっそくお土産をいただきましょうね」
「ありがとうございます」
彼女は奥の客間へ可畏と葛葉を促すと、風呂敷をかかえて炊事場の方へ姿を消した。
可畏と客間へ入ると、葛葉の気を引くものが視界の端をよぎった。
(ん?)
客間から見える中庭。水盤へ流れ込む水の流れを再確認して、葛葉はこの家屋が中庭を囲むように作られていたことを思い出した。濡れ縁から中庭を挟んで向こう側にも部屋がある。以前は障子で遮られていたが、今は開放されて室内が見えた。
斜めに傾いた夕刻の赤い日差しが、中庭に影と光の境界を描いている。平屋の家屋にも、くっきりとした影との境界が生まれていたが、まだ夕闇は訪れていない。
(また小芥子?)
夕焼けのような赤みを帯びた光景の中で、一目散に葛葉の視界がとらえたのは、違い棚に飾られた小さな小芥子だった。床の間に生けられた花や掛け軸よりも、なぜか葛葉は圧倒的な存在感を覚えた。
(さっき小芥子を見たばかりだから、気がついたのかな)
中庭を挟んで見える室内は遠く、小さな小芥子が目立って見えるわけでもない。炊事場にあったものと同じ形だろうかと目を凝らしていると、細く描かれた小芥子の目とふっと視線が重なった。ぞくりと背筋が寒くなる。
「葛葉?」
「ぎゃ!」
可畏の呼びかけに過剰に反応して、葛葉はその場で飛び上がってしまう。
「どうしたんだ?」
「も、申し訳ありません。すこし驚いただけです」
不思議そうに可畏も中庭の向こう側にある部屋へ目を向けた。
「何か変わったものでも見えたのか?」
「いえ、変わったものというか。向こう側の部屋にある違い棚の上に、小芥子を見つけたので……」
「小芥子?」
「はい。さっき炊事場にもあったので、同じ形のものかと思って」
可畏が向こう側の部屋を眺めたまま目をすがめた。
「違い棚には何もないようだが?」
「え? そんなはずは……」
葛葉もふたたび中庭ごしに見える部屋の違い棚に目を向ける。小芥子の場所を示そうとしたが、見当たらない。
「あれ?」
中庭へ続く濡れ縁まで出て目を凝らしていると、背後で可畏の声がした。
「中庭の木の梢がそう見えたんじゃないか?」
「いえ、そんなことは」
強い印象をもって視界に飛び込んできたのだ。見間違えたとは思えないが、違い棚には何も置かれていなかった。
「でも、なくなっています」
あったはずの小芥子がなくなる。葛葉がひやりとした戦慄を感じていると、可畏がさらに恐ろしいことを告げた。
「それに、炊事場に小芥子などあったか?」
「――わたしは、見ましたが……」
葛葉はにわかに小芥子があったと自信をもって言えなくなる。自分よりも周りの変化に気づき、何事もよく見ている可畏が、あの小芥子に気づかないことなどあるだろうか。
もし炊事場の小芥子もなくなっていたら――。
完全に怪異である。
葛葉がぞっと顔色を失っていると、それに気づいた可畏が慰めるように続けた。
「もしおまえの見た小芥子が何らかの怪異だったとしても、問題はない」
葛葉がどういう意味かと目を向けると、可畏はきっぱりと断定した。
「ここは帝の用意した住処だぞ。悪いモノが紛れ込めるわけもない」
言われてみればそうだった。帝が葛葉を守るために用意した住処なのだ。葛葉は肩に入っていた力が抜けた。けれど神出鬼没な小芥子の不気味さまでは払拭できない。
「でも、もし小芥子が怪異だとして、いったい何のために出るのでしょうか?」
「――さぁな」
可畏の返答に一呼吸の戸惑いがあったように思えて、葛葉は引っ掛かった。可畏はすぐに大丈夫だと念を押す。
「帝のことだ。おまえを守るための仕掛けだろう。何も心配はいらない」
「はい」
悪いモノでなくとも神出鬼没な小芥子は怖い。怖いが、葛葉は特務部の一員として怪異になれるべきだと思い直した。
「お茶が入りましたよ」
可畏と濡れ縁から客間へ戻ると、和歌がいそいそとした様子で再び姿を現す。手に抱える盆には、茶器と土産の銅鑼焼きがあった。
三人で座卓につくと、可畏が何気なく彼女に尋ねる。
「和歌、炊事場に小芥子を飾っているのか?」
「小芥子ですか?」
和歌は可畏の顔を見てから葛葉に視線を向ける。表情から何かを感じたのか再び可畏を見た。
「可畏様。それはどう答えるのが正解でしょうか」
どうやら葛葉の表情から小芥子に怯えていることを察したらしい。彼女は葛葉に負担のない答えを模索しているようだった。可畏は和歌の聡明さに小さく笑う。
「ここは特別な場所だ。べつに取り繕う必要はない」
「そうですか。炊事場に小芥子を飾ったことはございませんが――」
「ええ!?」
予想していても慄いてしまう。こんな怪異に怯えるのが情けないと意気込んでみても、葛葉はぞっと全身に鳥肌がたった。
「その様子では、葛葉さんは炊事場で小芥子を見たと?」
「は、はい。奥の台にありました」
和歌が可畏と顔を見合わせている。二人の間で暗黙のやりとりがあったのか、彼女は慰めるように葛葉に微笑んだ。
「大丈夫ですよ、葛葉さん。私があとで屋敷の中を見回っておきましょう」
「ありがとうございます」
不気味な小芥子の存在を恐れることもなく、和歌は柔和に笑っている。ここで葛葉の世話を担うということは、帝と可畏からの信頼が厚い女性なのだろう。怪異にも慣れている気配がした。
動じることのない和歌の笑顔に心強さを感じて、葛葉は大丈夫だと自分に言い聞かせる。
「とりあえず、銅鑼焼きをいただきましょう。とても美味しそうです」
「はい」
13
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜
菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。
まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。
なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに!
この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
後宮の偽花妃 国を追われた巫女見習いは宦官になる
gari@七柚カリン
キャラ文芸
旧題:国を追われた巫女見習いは、隣国の後宮で二重に花開く
☆4月上旬に書籍発売です。たくさんの応援をありがとうございました!☆ 植物を慈しむ巫女見習いの凛月には、二つの秘密がある。それは、『植物の心がわかること』『見目が変化すること』。
そんな凛月は、次期巫女を侮辱した罪を着せられ国外追放されてしまう。
心機一転、紹介状を手に向かったのは隣国の都。そこで偶然知り合ったのは、高官の峰風だった。
峰風の取次ぎで紹介先の人物との対面を果たすが、提案されたのは後宮内での二つの仕事。ある時は引きこもり後宮妃(欣怡)として巫女の務めを果たし、またある時は、少年宦官(子墨)として庭園管理の仕事をする、忙しくも楽しい二重生活が始まった。
仕事中に秘密の能力を活かし活躍したことで、子墨は女嫌いの峰風の助手に抜擢される。女であること・巫女であることを隠しつつ助手の仕事に邁進するが、これがきっかけとなり、宮廷内の様々な騒動に巻き込まれていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
呪われた少女の秘された寵愛婚―盈月―
くろのあずさ
キャラ文芸
異常存在(マレビト)と呼ばれる人にあらざる者たちが境界が曖昧な世界。甚大な被害を被る人々の平和と安寧を守るため、軍は組織されたのだと噂されていた。
「無駄とはなんだ。お前があまりにも妻としての自覚が足らないから、思い出させてやっているのだろう」
「それは……しょうがありません」
だって私は――
「どんな姿でも関係ない。私の妻はお前だけだ」
相応しくない。私は彼のそばにいるべきではないのに――。
「私も……あなた様の、旦那様のそばにいたいです」
この身で願ってもかまわないの?
呪われた少女の孤独は秘された寵愛婚の中で溶かされる
2025.12.6
盈月(えいげつ)……新月から満月に向かって次第に円くなっていく間の月
今さらやり直しは出来ません
mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。
落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。
そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる