紫の瞳の王女と緑の瞳の男爵令嬢

秋野 林檎 

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突風に思わず目を瞑った私は、顔にかかる赤い髪を払いながら、ふとその先に目をやり声を無くした。

ーまさかここで会うとは…。


明日の晩餐会には、顔を合わせる対策はできていたが、なかなか覚悟ができなかった私は、気持ちが落ち着ける場所を探して、アークのお母さまの庭に来ていたが、まさかそこに彼女がいるとは…。

どうする…。

いや、今更逃げることなどできるはずはない。決めていたじゃない。それは13年前から。

私は《王華》を少し解放する為にペンダントを握った。

《王華》が…王家の血が共鳴できるように。



賽は投げられた…落ち着け。


「お久しぶりです、パメラ叔母様」


庭にたたずみ、たばこを吸っていたパメラだったが、その手からたばこを落としたことさえ気が付かないかのようだった。茫然と見つめ一言「…エリザベス?…」と消えるような声に、ミーナは淑女の礼を取ると、「今はコンウォール男爵の娘、ミーナと名乗っています。」と言った。



パメラは震える唇を指で押さえると、「なぜ…?」とかすれた声で言った。


ー髪が銀色に、瞳が赤になっているとは聞いてはいたけれど…。


「なぜ…生きているの?」


―その身に宿すことが僅かだったから、そんな色を纏ったと思っていたけど…そうじゃない。《王華》が馴染んでいないんだ。だから魔法で姿を変えることができなかったんだ。


「私は生まれながら《王華》を持つ者です、そう簡単には殺されはしません。」


小鼻に皺を寄せ、パメラは睨みつけたが、次の瞬間、エリザベスを指差し笑った。


「待ってよ、その言い方って、まるで幼いころの不安定な力が安定したと言ってるみたいじゃない?あぁそんなウソは通用しないわ。」

「叔母様?」

「幼いころのおまえの魔法は不安定で、欲しいと思ったら、魔法が勝手にその欲望を叶えていたじゃない…。いい例が4歳のおまえが10歳だったアークフリードに魅了魔法をかけたことよ。

他国から《王華》を持って生まれた王女だと知られれば、攫われる危険もある。だからそんなおまえを守るために、兄さまはおまえの紫の髪と瞳をブロンドの髪と青い瞳に魔法で変えたのに…アークフリードに初めて会った瞬間、兄さまの魔法を解呪して、アークフリードに魅了魔法をかけたじゃない。驚いたわ。まぁ…兄さまがおまえがアークフリードにかけた魅了魔法を解呪したけど…。」

その事を思い出したのか、緑の瞳が翳るのを見たパメラは

「…ふふふ。ねぇ、《王華》を持って生まれたおまえも、結局《王華》を安定させるためには、やはりマールバラ王一族が代々譲り受けてきた《王華》が必要なんでしょう?兄さまがリリスそうに言っているのを聞いたわ。」


ーマールバラ国内では、《王華》を持って生まれた事は知られている。だからお父様は私の《王華》は不安定だと言って、国内の貴族たちにも私が利用されないように守ってくださっていた。

でも本当は…。

《王華》を自由にこの体から取り外しできるくらい安定している。
だから、13年の間、叔母様は私を見つける事が出来なかった…だがその事に叔母様は気づいていない。



「…でもまだアークフリードとは寝ていない。」

「えっ?!」

私を見てニンマリ笑うと

「アークフリードの中にまだ《王華》があるのを感じるもの。だからまだ寝ていないんでしょう?…で、抱かれるの?それともアークフリードの血を飲むの?あら、まさか知らないの?戴冠の儀では血を飲んで、《王華》と王の座を譲るとなっているけど、別に血を飲まなくても、性交でも…交じり合えば《王華》は移るって事を。さすがに親子だからそんなことをやった者はいないけど…。だから13年、大人になるまで待っていたんでしょう?よかったわね、魅了魔法をかけしまうくらい好きだったアークフリードに抱かれ、そして魔法を安定させる。そんな方法があるなんておまえはついているわね。私とは違って…。」

そう言った私を見る赤い目は憎しみが浮かんでいた。
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