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床に落ちたハンカチをイラリアは見つめながら
「国王陛下は、無理に私とラファエル様を引き離せば…ラファエル様は、より熱くなるばかりだと仰っておいででしたが、私はそれは、ラファエル様がお若いからだと、お若いから障害がある恋にのめり込んでおいでだと…。だから、【愛している。】と言う言葉を信じてはいけないとずっと思っておりました。」
そう言って、ハンカチから視線を外すと、イラリアは薄っすらと笑みを浮かべたが、すぐに目を伏せ唇を噛むと
「ラファエル様の口から、【愛している。】と言う言葉を頂けなくなった頃、会うのは人目を忍ぶ宿ばかりになり、その宿の中でも交わす言葉は…とても愛されているとは思えない言葉に、私はやっぱり…そうだったと思っておりました。だから、あなたがいろんな女性と一夜を過ごすことにも、胸の痛みはもうありませんでした。でも昨日、ラファエル様があの女性を見る視線に…もう、なんにも感じることはないと思っていたのに胸が痛くて…私は愚かな事を…。」
と言って、それ以上は彼女は口を閉ざした。
床に落ちたイラリアのハンカチを拾い、俺はイラリアの手に握らせ、俯いたまま身動きもしない彼女を見た。
12年前と変わらず、美しい女。
俺はこの女を愛した。すべてを捨ててしまってもと思うほど…
だがその思いは届かず、いつしか恋焦がれた思いは風化してゆき、残ったものは、肉欲だけを満たすものへと変わっていった。快楽を共にする事だけを許された関係に、未来はないとは、わかっていたが、あまりにも長すぎた関係は、どこでピリオドを打っていいのかわからなくなり、ズルズルとここまで来てしまった。それを…愚かにもあなたも同じ考えだと思っていた。
俺に謝る必要はない。謝るべきなのは、俺のほうだ。
しっかりとハンカチを握る赤いマニキュアの指先を見つめ
「12年前、国を混乱に陥らせても、あなたと一緒にいたかった。」
イラリアは、顔をあげると、唇を震わせていた。
「その考えは子供だったかもしれない。でもそれだけ純粋にあなたを思っていた。悪いのは俺だ。父上に責められるべきは、あなたではない、俺だった。俺が、もっと早くあなたを解放してあげれば良かったんだ。いや、どうにもならない恋心だと気づいた時点で…あなたをあきらめればよかったのに…あなたの心を手に入れることが出来ないなら…と今度は体で縛ってしまった。
そんな俺の愛しているという言葉を、あなたが疑い、そして疲れ果てたのも当たり前の事だ。
でも始まりは純粋にあなたが好きだったんだ。ただ側にいたいと思っていただけなんだ。あなたを体で縛り、苦しめるつもりはなかった。本当に、ただそばに居たかったんだ。
これがあなたとの最後なら…この恋が、純粋だったと、あなたの心に刻んでいて欲しいから、言わせてくれ。
12年前、王宮でひとめ見たときから、あなたが好きでした。バルディーニ伯爵夫人だと紹介されて、手の届かない人だと知っても……あなたが好きでした。」
イラリアは、顔を歪めると、唇を噛めながら
「私も…私も初めてお会いした時から、ラファエル様が好きでした。」と言って、ハンカチを握り締めた。
12年の間、何度も体を繋げた人だったのに、この人の苦悩を、そして思いを俺は何にも知らなかった。好きな人の心の内を知らずに、愚かにも知っていたのは、この人の体の温もりと、柔らかい肌だけだったとは…
「すまなかった。」
俺の言葉に涙を零しながら、イラリアは何度も頭を横に振り、顔を両手で覆うと、声を殺して泣いていた。そんな彼女の足元に、カーテンの隙間から、まだ夜が明けたばかりで、柔らかく温もりを持った太陽の光が差し込み、そして外からは、物売りの威勢の良い声が聞こえ始めていた。
いつもように、町は新しい一日を迎えようとしていた。
*****
公園のベンチに座った私の足元に、まとわり付く子猫は、ア・ラ・カンパーニュの苺のタルトが入った袋に、何度も手を伸ばそうとしていた。
「この苺タルトは…あげられないの。王子様が並んで買って来てくれたから。ごめんね。あっ…そうだ。待ってて…。」
私は手に持った小さなバックから、今朝アドニスさんから貰った菓子パンを出し、左手でちぎると子猫にやり、右手で苺のタルトを口にした。
「年頃の娘が、行列ができるあのア・ラ・カンパーニュの苺のタルトをひとりで、それも手づかみで食べながら、もう片方に手で、子猫にパンをやる姿って…結構シュールかも。」
などと言って、ちぎったパンを、足元に寄ってきた子猫にやっていたが、子猫の爪が荒れた指先にあたり血が滲み、思わず声が出た。
「18歳に少女とは思えない、労働者の手だわ。これは…はぁ~」
花屋の仕事と、居酒屋の皿洗いで荒れた指先。
ささくれの指先はあの女性との違いを、はっきりと私に見させて、なんだか涙まで出そうになり、慌てて目元を拭うと、また、ささくれの指先を目にしてしまった。
「もういいよ。わかっているから…もう…」
と、自分の心とささくれた指先に言いながら、避けるように手を下げると、下げたその手に、パンを欲しがるように子猫が舐め、なんだかすごく悲しくて、惨めで涙が…零れていった。
違い過ぎる。私はあの本のような世界には異質な存在だ。
だから…
「私の手は、こちらのほうがお似合いみたい。」
そう言ってパンの半分を自分の口に入れ、苺タルトを子猫にやった。
ラファエル王子とイラリア様の間は、今日の出来事で変わるかもしれない。ラファエル王子は、イラリア様の御心に気がついたはずだ、その思いを受け止められ、すべてをイラリア様のためにお捨てになられるかもしれない。
すべてを捨てる…。 そんな恋にあこがれていた。
そんな恋を、新聞の社交欄で、そして…本で、繰り広げられる恋の駆け引きを私は楽しみ…夢を見ていたはずなのに…ラファエル王子とイラリア様の恋をどうして、恋愛本を見るように見れないのだろう。
どうして…
【恋の奴隷】のフィリップも、【愛しているから壊したい】のクラークも…そして愛の名言を教えてくれるロビン様の本も…今は、思い出したくはなくて、イチゴのタルトが入っていたア・ラ・カンパーニュの袋を、くしゃくしゃと丸めた。
「国王陛下は、無理に私とラファエル様を引き離せば…ラファエル様は、より熱くなるばかりだと仰っておいででしたが、私はそれは、ラファエル様がお若いからだと、お若いから障害がある恋にのめり込んでおいでだと…。だから、【愛している。】と言う言葉を信じてはいけないとずっと思っておりました。」
そう言って、ハンカチから視線を外すと、イラリアは薄っすらと笑みを浮かべたが、すぐに目を伏せ唇を噛むと
「ラファエル様の口から、【愛している。】と言う言葉を頂けなくなった頃、会うのは人目を忍ぶ宿ばかりになり、その宿の中でも交わす言葉は…とても愛されているとは思えない言葉に、私はやっぱり…そうだったと思っておりました。だから、あなたがいろんな女性と一夜を過ごすことにも、胸の痛みはもうありませんでした。でも昨日、ラファエル様があの女性を見る視線に…もう、なんにも感じることはないと思っていたのに胸が痛くて…私は愚かな事を…。」
と言って、それ以上は彼女は口を閉ざした。
床に落ちたイラリアのハンカチを拾い、俺はイラリアの手に握らせ、俯いたまま身動きもしない彼女を見た。
12年前と変わらず、美しい女。
俺はこの女を愛した。すべてを捨ててしまってもと思うほど…
だがその思いは届かず、いつしか恋焦がれた思いは風化してゆき、残ったものは、肉欲だけを満たすものへと変わっていった。快楽を共にする事だけを許された関係に、未来はないとは、わかっていたが、あまりにも長すぎた関係は、どこでピリオドを打っていいのかわからなくなり、ズルズルとここまで来てしまった。それを…愚かにもあなたも同じ考えだと思っていた。
俺に謝る必要はない。謝るべきなのは、俺のほうだ。
しっかりとハンカチを握る赤いマニキュアの指先を見つめ
「12年前、国を混乱に陥らせても、あなたと一緒にいたかった。」
イラリアは、顔をあげると、唇を震わせていた。
「その考えは子供だったかもしれない。でもそれだけ純粋にあなたを思っていた。悪いのは俺だ。父上に責められるべきは、あなたではない、俺だった。俺が、もっと早くあなたを解放してあげれば良かったんだ。いや、どうにもならない恋心だと気づいた時点で…あなたをあきらめればよかったのに…あなたの心を手に入れることが出来ないなら…と今度は体で縛ってしまった。
そんな俺の愛しているという言葉を、あなたが疑い、そして疲れ果てたのも当たり前の事だ。
でも始まりは純粋にあなたが好きだったんだ。ただ側にいたいと思っていただけなんだ。あなたを体で縛り、苦しめるつもりはなかった。本当に、ただそばに居たかったんだ。
これがあなたとの最後なら…この恋が、純粋だったと、あなたの心に刻んでいて欲しいから、言わせてくれ。
12年前、王宮でひとめ見たときから、あなたが好きでした。バルディーニ伯爵夫人だと紹介されて、手の届かない人だと知っても……あなたが好きでした。」
イラリアは、顔を歪めると、唇を噛めながら
「私も…私も初めてお会いした時から、ラファエル様が好きでした。」と言って、ハンカチを握り締めた。
12年の間、何度も体を繋げた人だったのに、この人の苦悩を、そして思いを俺は何にも知らなかった。好きな人の心の内を知らずに、愚かにも知っていたのは、この人の体の温もりと、柔らかい肌だけだったとは…
「すまなかった。」
俺の言葉に涙を零しながら、イラリアは何度も頭を横に振り、顔を両手で覆うと、声を殺して泣いていた。そんな彼女の足元に、カーテンの隙間から、まだ夜が明けたばかりで、柔らかく温もりを持った太陽の光が差し込み、そして外からは、物売りの威勢の良い声が聞こえ始めていた。
いつもように、町は新しい一日を迎えようとしていた。
*****
公園のベンチに座った私の足元に、まとわり付く子猫は、ア・ラ・カンパーニュの苺のタルトが入った袋に、何度も手を伸ばそうとしていた。
「この苺タルトは…あげられないの。王子様が並んで買って来てくれたから。ごめんね。あっ…そうだ。待ってて…。」
私は手に持った小さなバックから、今朝アドニスさんから貰った菓子パンを出し、左手でちぎると子猫にやり、右手で苺のタルトを口にした。
「年頃の娘が、行列ができるあのア・ラ・カンパーニュの苺のタルトをひとりで、それも手づかみで食べながら、もう片方に手で、子猫にパンをやる姿って…結構シュールかも。」
などと言って、ちぎったパンを、足元に寄ってきた子猫にやっていたが、子猫の爪が荒れた指先にあたり血が滲み、思わず声が出た。
「18歳に少女とは思えない、労働者の手だわ。これは…はぁ~」
花屋の仕事と、居酒屋の皿洗いで荒れた指先。
ささくれの指先はあの女性との違いを、はっきりと私に見させて、なんだか涙まで出そうになり、慌てて目元を拭うと、また、ささくれの指先を目にしてしまった。
「もういいよ。わかっているから…もう…」
と、自分の心とささくれた指先に言いながら、避けるように手を下げると、下げたその手に、パンを欲しがるように子猫が舐め、なんだかすごく悲しくて、惨めで涙が…零れていった。
違い過ぎる。私はあの本のような世界には異質な存在だ。
だから…
「私の手は、こちらのほうがお似合いみたい。」
そう言ってパンの半分を自分の口に入れ、苺タルトを子猫にやった。
ラファエル王子とイラリア様の間は、今日の出来事で変わるかもしれない。ラファエル王子は、イラリア様の御心に気がついたはずだ、その思いを受け止められ、すべてをイラリア様のためにお捨てになられるかもしれない。
すべてを捨てる…。 そんな恋にあこがれていた。
そんな恋を、新聞の社交欄で、そして…本で、繰り広げられる恋の駆け引きを私は楽しみ…夢を見ていたはずなのに…ラファエル王子とイラリア様の恋をどうして、恋愛本を見るように見れないのだろう。
どうして…
【恋の奴隷】のフィリップも、【愛しているから壊したい】のクラークも…そして愛の名言を教えてくれるロビン様の本も…今は、思い出したくはなくて、イチゴのタルトが入っていたア・ラ・カンパーニュの袋を、くしゃくしゃと丸めた。
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