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1章 葉月と樹
葉月・・・悩む。
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・ 朝勤(5時~9時)
・ 昼勤(9時~17時)
・ 夕勤(17~22時)
・ 夜勤(22時~5時)
コンビニのバイトを始めるときだった。
理香さんとジョセフィーヌさんは、シフト表を見て…理香さんはひとこと…言った。
「夜勤はダメだからなぁ…。」
「…はい。」
確かに…私自身も、夜勤はちょっと…できないなぁと思っていた。
それは、花見中央駅西口にあるコンビニだったから。
西口は歓楽街、夜勤となれば酔ったお客さんも、他の店舗より多いだろうし、ただでもビビリの私が酔ったお客さんに、対応できるスキルなどあるはずもない。
だけど…2年も勤めると、なんだかできるような気がしていた。
そう言ったら、きっと『錯覚だ。』と、理香さんは鼻で笑うと思うけど…
そんな妙な自信を持ち始めていたことを、店長は気づいたのだろうか。
「葉月ちゃん!頼む。来週の金曜日の28日、遠山君と吉田さんの三人で夜勤してくれないか?」
と言われたのは…「あがります。」と言った直後だった。
ゴクンと唾を飲み込んだ。
夜勤は…時給1013円だ…やりたい。
でも…酔ったお客さんも…恐いけど…、なにより理香さんが恐い。…無理だ。
「す、すみ…「あっ!!返事はまだいいから、お願い。」」
ひとり残されたスタッフルームで…私は頭を抱えた。
*****
「えっ?!旅行?!」
「あぁ…マジうざったいんだけど…うちの母親が死ぬ前に、熱海に連れて行けって言って、ここ数日…毎晩電話をかけてくるんだ。だいたい…去年もいや一昨年も、この時期になると、死ぬ前に…と言っては、あたしに、たかって来るから、そろそろ来る頃だと思って、母親の電話を無視していたら…来やがったんだよ。職場に!」
「理香ちゃんのママは、昔からパワフルだったものね。」
「そうなんですか…えっ?ジョセフィーヌさん、理香さんのお母さんを知っているんですか?」
「えぇ…理香ちゃんと私は、小学校から大学まで一緒、同級生だもん。」
本人は気づいていないから…言わないけど…やっぱり24歳じゃないんだ。
理香さんと同じなら…34歳。う~ん、忘れよう。この話は忘れる。
「何、百面相してんだよ。葉月」
「えっ…いえ、職場にお母さんが来られたと聞いて、びっくりしてたんです。」
「だろ!うちの母親、変わってんだよ。」
「確かにちょっぴりね。じゃぁ…弁護士事務所で、例の如く叫んでたの?」
「あぁ…『うちの娘は…人様を助ける仕事なのに…実の母親には冷たくて…』あの台詞、今年も言った。」
「うふふふ…」
「大吾…今年はお前も笑っていられないぞ。」
「えっ?」
「お前の母親も…一緒に旅行に行くから、お前も来いって言っていたぞ。」
「い、いやよ。」
理香さんは弁護士だ。よく…ヤのつく方のお知り合いだとか…飲み屋のお姉さんだとか…思われるけど…弁護士さんだ。いや…そういう私も、同じアパートに住みながら、その事実を知るまでは、2ヶ月ほどかかった。だけど、二人が同級生という事実はしらなかった。
そう言えば、ジョセフィーヌさん…アパートのオーナーは、この土地の維持管理のためと言っていたなぁ。2年前、家賃の話になった時、この一等地での家賃とは思えない値段を提示されて、思わず聞いたんだよね。そうしたら…
「本業は別なの。」と言われたんだけど…
でも、この2年働きに出てるのは見たことないんだよなぁ…
「葉月!」
「葉月ちゃん?」
「あっ…はい?」
「おまえ聞いていなかったみたいだなぁ。」
「理香ちゃん、声恐いよ。」
「はいはい」
「もう…理香ちゃんは…。私だって行きたくないんだから、でもだからと言って葉月ちゃんにあたらない。」
「了解。」
「葉月ちゃん、私たち二人…来週の金曜日から一泊二日で旅行に行ってくるけど…大丈夫?」
「来週の金曜日…28日…」
私は大きく頷いた。
その時私の頭の中では、福沢 諭吉先生が微笑んでいた。
理香さん、ジョセフィーヌさん…ごめんなさい!!
・ 昼勤(9時~17時)
・ 夕勤(17~22時)
・ 夜勤(22時~5時)
コンビニのバイトを始めるときだった。
理香さんとジョセフィーヌさんは、シフト表を見て…理香さんはひとこと…言った。
「夜勤はダメだからなぁ…。」
「…はい。」
確かに…私自身も、夜勤はちょっと…できないなぁと思っていた。
それは、花見中央駅西口にあるコンビニだったから。
西口は歓楽街、夜勤となれば酔ったお客さんも、他の店舗より多いだろうし、ただでもビビリの私が酔ったお客さんに、対応できるスキルなどあるはずもない。
だけど…2年も勤めると、なんだかできるような気がしていた。
そう言ったら、きっと『錯覚だ。』と、理香さんは鼻で笑うと思うけど…
そんな妙な自信を持ち始めていたことを、店長は気づいたのだろうか。
「葉月ちゃん!頼む。来週の金曜日の28日、遠山君と吉田さんの三人で夜勤してくれないか?」
と言われたのは…「あがります。」と言った直後だった。
ゴクンと唾を飲み込んだ。
夜勤は…時給1013円だ…やりたい。
でも…酔ったお客さんも…恐いけど…、なにより理香さんが恐い。…無理だ。
「す、すみ…「あっ!!返事はまだいいから、お願い。」」
ひとり残されたスタッフルームで…私は頭を抱えた。
*****
「えっ?!旅行?!」
「あぁ…マジうざったいんだけど…うちの母親が死ぬ前に、熱海に連れて行けって言って、ここ数日…毎晩電話をかけてくるんだ。だいたい…去年もいや一昨年も、この時期になると、死ぬ前に…と言っては、あたしに、たかって来るから、そろそろ来る頃だと思って、母親の電話を無視していたら…来やがったんだよ。職場に!」
「理香ちゃんのママは、昔からパワフルだったものね。」
「そうなんですか…えっ?ジョセフィーヌさん、理香さんのお母さんを知っているんですか?」
「えぇ…理香ちゃんと私は、小学校から大学まで一緒、同級生だもん。」
本人は気づいていないから…言わないけど…やっぱり24歳じゃないんだ。
理香さんと同じなら…34歳。う~ん、忘れよう。この話は忘れる。
「何、百面相してんだよ。葉月」
「えっ…いえ、職場にお母さんが来られたと聞いて、びっくりしてたんです。」
「だろ!うちの母親、変わってんだよ。」
「確かにちょっぴりね。じゃぁ…弁護士事務所で、例の如く叫んでたの?」
「あぁ…『うちの娘は…人様を助ける仕事なのに…実の母親には冷たくて…』あの台詞、今年も言った。」
「うふふふ…」
「大吾…今年はお前も笑っていられないぞ。」
「えっ?」
「お前の母親も…一緒に旅行に行くから、お前も来いって言っていたぞ。」
「い、いやよ。」
理香さんは弁護士だ。よく…ヤのつく方のお知り合いだとか…飲み屋のお姉さんだとか…思われるけど…弁護士さんだ。いや…そういう私も、同じアパートに住みながら、その事実を知るまでは、2ヶ月ほどかかった。だけど、二人が同級生という事実はしらなかった。
そう言えば、ジョセフィーヌさん…アパートのオーナーは、この土地の維持管理のためと言っていたなぁ。2年前、家賃の話になった時、この一等地での家賃とは思えない値段を提示されて、思わず聞いたんだよね。そうしたら…
「本業は別なの。」と言われたんだけど…
でも、この2年働きに出てるのは見たことないんだよなぁ…
「葉月!」
「葉月ちゃん?」
「あっ…はい?」
「おまえ聞いていなかったみたいだなぁ。」
「理香ちゃん、声恐いよ。」
「はいはい」
「もう…理香ちゃんは…。私だって行きたくないんだから、でもだからと言って葉月ちゃんにあたらない。」
「了解。」
「葉月ちゃん、私たち二人…来週の金曜日から一泊二日で旅行に行ってくるけど…大丈夫?」
「来週の金曜日…28日…」
私は大きく頷いた。
その時私の頭の中では、福沢 諭吉先生が微笑んでいた。
理香さん、ジョセフィーヌさん…ごめんなさい!!
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