転生したら貧乏男爵家でした。

花屋の息子

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15冒険者の事情

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「あの。皆さんは農作業の手伝いなどには行かれていますか?」
「??なんだよ藪から棒に」
「いえ見たところレベルはそれなりかと思うのですが手数押しな倒し方だなと思いまして。これなんかがそうなんですけど、手数で押すと皮がお金になら無くて肉も買取から外れてしまうので、魔石と討伐褒賞金だけの収入になってしまいます。最も野犬の肉は食べられないんですけど。」
「そりゃそうだろ?どいつも魔石と討伐金以外を金にしてるヤツなんかいないぜ?」
「イヤ、こいつの言う通りだ。6級のおっちゃんが肉屋の依頼でネズミ狩に行くって言ってるのを聞いた事がある」
「うそでしょ!?6級って私たちなんかよりよっぽど、よっぽど強いのよ。そんな人がネズミなんて」

 上級者や効率厨たちは、さっくと上に行って稼ぐから下の面倒を見よう何って事にはならないんだろうな。低級でウロウロしている人間は冒険者に向いていないって見捨てるような風潮にも思えるし、わざわざ低級を育てても自分にはメリットが無いって事でもあるんだろう。
 害獣だって手におえなくなれば高い金を貰って出張れるのだから、低級に稼がせるよりも放置し続けた方が上級者にはメリットになるのだから余計に育てない意識の温床にもなるのだろう。
 冒険者にとっては農民が農作物を食い荒らされようが税収が低下しようが関係ないからな。

「嘘ではありませんよ。まぁ喜んで行く依頼でもないので、その方も飲み代のツケを払うためか、武具の修理でいつもの依頼を受けられなかったんだと思いますけど6~7級用の依頼に肉の確保と言うものがあるんですよ」
「でもそれってうちらは関係なくないか?6~7級用の依頼なんだろ?」
「そんな事はありませんよ。10級でも狩れる魔獣を何故上の人たちが狩るのか。それがさっきの答えなんですが、総じて9級10級の冒険者が倒した魔獣は傷が多くて肉が傷みやすい。でも街には肉を売りたい人食べたい人がいる。なのでお金が無い中~上級冒険者が肉を取ってくる。と言う事になるんですが、これは肉屋さんが僕たちが狩った魔獣を買わない事にはならないんです」
「でも傷が付いていれば買わないって・・」
「はい」
「ならどうすれば良いって言うのさ?」
「傷を付けないで刈れば良いんです」
「それが出来れば苦労はしないだろ!」
「それで最初の話です。畑仕事を手伝ったりしていると力が上がるんですよ。そうすれば魔獣を痛めつける事無く狩れるようになって収入もかなり安定するようになります。ついでに農家さんと仲良くなると朝のように野菜を貰えたりネズミの被害が出た場所を教えて貰えたりするので、当ても無く探し回ったり稼ぎが無い何って日は無くなりますよ」
「「「「????」」」」
「ちなみに僕は銀板一枚以下の日はありませんし」
「「「「!!!!!」」」」

 そういう反応になるよね~。もしかしてだけど、もしかしてだけど、ギルドは俺に教官させたかったんじゃないの?そう言う事だろ!!

「カーシスはソロだろ!」
「はい。でもネズミ一匹の値段は皆さんの10倍くらいになりますから、それだけでも収入差はとんでもなく大きくなります」
「・・・10ばい・・・」
「そう聞くと畑仕事っておいしく感じませんか?僕は宿に野菜やら肉やら持って帰ると宿代を下げてもらえたり食事の内容が良くなるので、実際は10倍以上の見返りがあってかなり美味しいと思ってます」

 冒険者の出自もあってか農作業を嫌がるからな。なる前までは農民なので効率厨な生活をおくっているのに、なった瞬間からステータスをドブに捨てる勿体無い生活になるのだから、何ともやるせない気持ちになる。

「やはり組合長(ジジイ)が言っていた様になったな」
「何か知っているのですか?」
「いや知っているというよりかは聞かされたんだよ。お前さんは人嫌いな訳ではなさそうなのにソロでやってるし、人当たりが悪いどころかかなり好かれるようだから、こういうタイミングを与えれば良い教官になるんじゃないかってな」
「上手く使われましたかね?」
「俺も酒場のツケに肉取りを受けようと思っていたら、常設依頼がほとんど無くなっていたから驚いたんだが、まさかお前さん行き着くとは思っていなかったよ」
「カーシスが何かしたんすか?」
「さっきの話ですよ。僕が魔獣を肉屋に届けているので、今まで高級冒険者が渋々受けていた肉屋からの依頼がほとんど止まっているんですよ」
「高級は言いすぎだ。俺らは中級にも至っていねぇからな。それで新人の現実を見せてやれば、お前の事だからお節介を焼いてくれるんじゃねぇかって組合は思いついた訳よ」
「それに思いっきり引っかかった訳です」
「そう言うな。それでこいつらは助かるんだし冒険者の質も上がる。良い事ずくめじゃねぇか」
「悪いとは言っていませんよ。それに僕はいつも魔法頼りで剣は初心者ですからね。たまたまの話であれば別ですが、組合がらみとなれば不味いのではありませんか?」
「あぁ?お前が何もしなかった場合の事か?別にそれならそれで構わん。ってこったろう?それに10や9、8の一部辺りもそうだが、魔獣狩りで稼がせた方が良いヤツラに、年下のお前を講師になんぞすれば反発が起きるから、こう言う方法でお節介やいてくれるのが一番ってこったろうな。それも俺が朝の件を報告すれば、否が応でもお前の講座が開かれるんだろうがな」

 勘弁してよ。誰が年下の講座なんか受けたがるのさ。
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