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45 粘土は見つかったけど・・・
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前世でも陶土に触れた程度の経験はあるし、これに似ていたと思うから大丈夫だろう。グニグニこねてみると良くまとまる。
周りを見渡すと平らとまではいかなくても凹凸の少ない岩があったので、さっそく菊ネリモドキと行ってみる事にした。中の空気を抜くための作業だったはずだが、その程度の記憶しか無いのが何とももどかしい部分で、普通異世界に来た主人公は、この程度の知識は知識のウチに入らないレべルの筈なのだが、そんなチート能力が俺には備わっていなかった。みんなゴメンね、出来の悪い転生者で(笑)
「それじゃ、いっちょ頑張りますか」
浅いとは言っても川底の土だった事も有って水気も丁度良い。乾き過ぎや濡れ過ぎともなれば練る事など到底出来ないからな。テレビで見る陶芸よろしく軽くまとめたら菊紋を画くようにグニグニと練る。
一つ問題なのは体格の問題であまり大きな塊に出来ない事だろうか、その辺りはあきらめるしか無いところだが、くっ付けてひとつにした時に空気が混入しない事を祈るばかりだ。
「エドちゃんはその土で良いのかい?」
話しかけてきたのはウェインのおふくろさんだった、手に持ったザルには少し荒めの土が入っている。
「うん。こねてみたんだけど、すっごくまとまるからこれが良いと思うんだ」
「そうなのね。その土はどこにあったの?」
別に隠す必要も無いので「あそこだよ」と採った場所を教えておいた。まさかの俺の前でザルをひっくり返して川に入るとは思わなかったけど、土の良し悪しなど解らなくても感じるものでもあったのかな?
本当ならこの練った粘土を月単位で寝かせたりしなきゃいけなかった気もするけど、今回はそこまで時間かける事は出来ないだろうな。
割れたりでもしない限りは悠長な話に殺気を孕んだ女性陣が乗ってくれるとは思えないし、今でも暴動と変わらない熱量で動いている訳で、この集まりに「待て」なんて言ったらどうなる事か、ブルブル恐ろしくて考えるのもありえない。俺も早く鍋が欲しいし。
どうにも子供の粘土遊びとは一線を隔す俺の手つきに、疑問が集まらない事の方が俺からしたら不思議なのだが、面倒なので突っ込まれないのはいい事だ。
一度に練っているのは湯呑み5~6個分くらいなのだが、鍋サイズにどれほどの量が要るかも良く解らないので、しっかりと量はやっておく。
ふと見渡すと、周りでは採土が大詰めのようで、これが良いんじゃないかこっちの方が良いんじゃないかと、ザルに採った土の品評会が行われていた。それ「ほとんど使えません」とも言えないし、トホホだな。
「いろいろ作ってみれば良いんじゃない?」
流石に品評会をこのまま続けさせたところで何かを得られる訳ではない。薪組や整地組みだって時間的にはそろそろカタが着く頃合だろうし、どの道乾燥無しで焼こうとしているのだから、全部失敗するのは分かっているのだ。いっぺんに正解に導いた方が楽なのだけど、そういう訳にも行かないし。
それに文明の進化は誰かが失敗原因のそれに気付いて
さらなる失敗を重ねながらたどり着く物だと思う。本来なら何十回何百回と失敗と改善を繰り返す所を、1~2回の失敗で済むようにしているのだから、それで勘弁してもらいたい。
「そうね。みなさん空き地に戻りましょ」
ぞろぞろとザルいっぱいの土くれを担いだ女性陣が戻る光景は、ここにムチでも持った人がいたならば奴隷の行軍にしか見えない。奴隷のそれと比べたら少しは上等な服を着ている訳だけど。
俺のザルは大人のそれと比べたら一回り小さいが、粘土満載のためかなりの重量がある。あれ?これって俺が一番奴隷っぽくないか?
そんな訳でミファが使っているパッシブブースト型の身体強化を掛けている。いつの間に使えるようになったんだって?ムキムキマッチョ型のに比べたらメチャメチャ簡単だったよ。
超有名RPGの攻撃力倍加魔法だと思えば良いんだもん。理論的に合っていれば魔力の消費量が格段に下がる訳だけど、理屈よりイメージが大切なのが魔法ですから。
それに攻撃力倍加魔法をイメージしているお陰で、本当に力が2倍くらいになっているし、イメージでゲームでそうだったって理由付けまで有るせいか、魔力消費も大した事が無いなんってゲームって役に立つね。
って言っても元々この世界の人が普通に使っている魔法に限る訳で、瞬間移動呪文を意識しても転移魔法が使えるようにはなっていないのが、基礎魔力の不足している痛いところなのだが。
戻ってみると、草原だったところが刈り取られて広々とした空き地に変わっていた。脇には薪も運び込まれて積まれている。
しかし不思議な事があるものだ。刈り取られる前ここに生えていたのは青々とした草だったはずだ、それが今積まれているのは、カラカラに乾いた干草と言える物だったからだ。
あれ乾燥って出来るんですか?っと思ったら、ウチの人間経由で材木の乾燥をやった時のやり方が流出したみたいだった。ホウ・レン・ソウは大事みたいな事言われ・・・まあ口止めするのも変なものだし、流出したところで別にかまわないのだけど、せめて一言欲しいかな。
まあ俺式乾燥魔法も焚き物を集めたりするには便利だから、まあ大いに勝手に使って下さいな。
周りを見渡すと平らとまではいかなくても凹凸の少ない岩があったので、さっそく菊ネリモドキと行ってみる事にした。中の空気を抜くための作業だったはずだが、その程度の記憶しか無いのが何とももどかしい部分で、普通異世界に来た主人公は、この程度の知識は知識のウチに入らないレべルの筈なのだが、そんなチート能力が俺には備わっていなかった。みんなゴメンね、出来の悪い転生者で(笑)
「それじゃ、いっちょ頑張りますか」
浅いとは言っても川底の土だった事も有って水気も丁度良い。乾き過ぎや濡れ過ぎともなれば練る事など到底出来ないからな。テレビで見る陶芸よろしく軽くまとめたら菊紋を画くようにグニグニと練る。
一つ問題なのは体格の問題であまり大きな塊に出来ない事だろうか、その辺りはあきらめるしか無いところだが、くっ付けてひとつにした時に空気が混入しない事を祈るばかりだ。
「エドちゃんはその土で良いのかい?」
話しかけてきたのはウェインのおふくろさんだった、手に持ったザルには少し荒めの土が入っている。
「うん。こねてみたんだけど、すっごくまとまるからこれが良いと思うんだ」
「そうなのね。その土はどこにあったの?」
別に隠す必要も無いので「あそこだよ」と採った場所を教えておいた。まさかの俺の前でザルをひっくり返して川に入るとは思わなかったけど、土の良し悪しなど解らなくても感じるものでもあったのかな?
本当ならこの練った粘土を月単位で寝かせたりしなきゃいけなかった気もするけど、今回はそこまで時間かける事は出来ないだろうな。
割れたりでもしない限りは悠長な話に殺気を孕んだ女性陣が乗ってくれるとは思えないし、今でも暴動と変わらない熱量で動いている訳で、この集まりに「待て」なんて言ったらどうなる事か、ブルブル恐ろしくて考えるのもありえない。俺も早く鍋が欲しいし。
どうにも子供の粘土遊びとは一線を隔す俺の手つきに、疑問が集まらない事の方が俺からしたら不思議なのだが、面倒なので突っ込まれないのはいい事だ。
一度に練っているのは湯呑み5~6個分くらいなのだが、鍋サイズにどれほどの量が要るかも良く解らないので、しっかりと量はやっておく。
ふと見渡すと、周りでは採土が大詰めのようで、これが良いんじゃないかこっちの方が良いんじゃないかと、ザルに採った土の品評会が行われていた。それ「ほとんど使えません」とも言えないし、トホホだな。
「いろいろ作ってみれば良いんじゃない?」
流石に品評会をこのまま続けさせたところで何かを得られる訳ではない。薪組や整地組みだって時間的にはそろそろカタが着く頃合だろうし、どの道乾燥無しで焼こうとしているのだから、全部失敗するのは分かっているのだ。いっぺんに正解に導いた方が楽なのだけど、そういう訳にも行かないし。
それに文明の進化は誰かが失敗原因のそれに気付いて
さらなる失敗を重ねながらたどり着く物だと思う。本来なら何十回何百回と失敗と改善を繰り返す所を、1~2回の失敗で済むようにしているのだから、それで勘弁してもらいたい。
「そうね。みなさん空き地に戻りましょ」
ぞろぞろとザルいっぱいの土くれを担いだ女性陣が戻る光景は、ここにムチでも持った人がいたならば奴隷の行軍にしか見えない。奴隷のそれと比べたら少しは上等な服を着ている訳だけど。
俺のザルは大人のそれと比べたら一回り小さいが、粘土満載のためかなりの重量がある。あれ?これって俺が一番奴隷っぽくないか?
そんな訳でミファが使っているパッシブブースト型の身体強化を掛けている。いつの間に使えるようになったんだって?ムキムキマッチョ型のに比べたらメチャメチャ簡単だったよ。
超有名RPGの攻撃力倍加魔法だと思えば良いんだもん。理論的に合っていれば魔力の消費量が格段に下がる訳だけど、理屈よりイメージが大切なのが魔法ですから。
それに攻撃力倍加魔法をイメージしているお陰で、本当に力が2倍くらいになっているし、イメージでゲームでそうだったって理由付けまで有るせいか、魔力消費も大した事が無いなんってゲームって役に立つね。
って言っても元々この世界の人が普通に使っている魔法に限る訳で、瞬間移動呪文を意識しても転移魔法が使えるようにはなっていないのが、基礎魔力の不足している痛いところなのだが。
戻ってみると、草原だったところが刈り取られて広々とした空き地に変わっていた。脇には薪も運び込まれて積まれている。
しかし不思議な事があるものだ。刈り取られる前ここに生えていたのは青々とした草だったはずだ、それが今積まれているのは、カラカラに乾いた干草と言える物だったからだ。
あれ乾燥って出来るんですか?っと思ったら、ウチの人間経由で材木の乾燥をやった時のやり方が流出したみたいだった。ホウ・レン・ソウは大事みたいな事言われ・・・まあ口止めするのも変なものだし、流出したところで別にかまわないのだけど、せめて一言欲しいかな。
まあ俺式乾燥魔法も焚き物を集めたりするには便利だから、まあ大いに勝手に使って下さいな。
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