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書斎の机でエミリアの日記のページを読んでいると、雨に降られてずぶ濡れのマタルが帰ってきた。
「ご苦労だった、マタル」
「ああ……」
彼は心ここにあらずという雰囲気で、放っておけば、この部屋にある本や書類を残らず水浸しにしてしまいそうに見えた。
「大丈夫か?」
「ああ……大丈夫だ」
「ここに入る前に着替えようとは思わなかったのか?」
「え?」マタルはぼんやりと自分の身体を見下ろし、「うわ、しまった」と言って部屋を出て行った。
廊下でマーサに出くわしたらしい。彼女の「まあ、なんて格好!」という悲鳴が聞こえてきた。
それからしばらくの間、ホラスは日記を読むことに集中した。
やがて部屋の戸を軋ませて入ってきたマタルは、先ほどより気分が持ち直したように見えた。ホラスはほっとした。
「俺から話す? それともあなたから?」マタルは言い、ホラスの机の上に尻を載せた。
「ということは、収穫があったんだな」
「まあね」マタルは言った。
「俺から話そう」ホラスは、マタルに向けて日記を開いた。「エミリアの日記だ。解雇された侍女──ジョーンが彼女から預かっていたらしい」
マタルは日記を持ち上げ、琥珀色の目をせわしなく動かしながらページをめくっていった。
日記の冒頭は、いたって普通の少女の日記だった。好奇心旺盛な良家の子女らしい聡明さが文章の端々から感じられる。
だが、母親の死を境に様子が変わってくる。何不自由ない暮らしを送る少女の心に、激しい感情の嵐が沸き起こる。そして、いままで享受してきた生活と、自分自身との間に隔たりが生まれはじめた。
夜に眠れなくなり、窓の外で息づく夜の獣たちに心惹かれるようになる。星がいままでとは違った風に輝きはじめ、それはあたかも何かを伝えようとしているように感じる。足下のなんでもない草の中に息づく力や、風に言葉があることに気づく。
「混乱してるな」マタルは言った。「ただの人間が、いきなり月に呼ばれたら、こうなるんだろうな」
マギーもそうだった。だが、そうした変化をホラスに語って聞かせるマギーの横顔は穏やかだった。おそらく彼女は、その時すでに混乱を乗り越え、覚悟をしていたのだろう。家を出て、どこかの〈集会〉に加わることを決めていたに違いない。だが幼いホラスは、彼女が手の届かないところに行こうとしていることを恐れた。
そのことを思い出す度に蘇る重い罪悪感を、ため息で胸の内に押し戻す。
「エミリアは心を決めていたようだ」ホラスは言った。「日記の最後に、『明日、彼女のところへ行く』と書かれていた」
「ああ。でも、なんで侍女が持ってたんだ?」マタルが言った。
「そいつは一度盗まれていたそうだ。なんとか取り返したが、それ以来、日記はジョーンが持ち運ぶことになっていたらしい。信頼されていたんだろう。失踪する日には、処分するよう頼まれたと言っていた」
日記には、盗まれた件については書かれていなかった。おそらく、また誰かに読まれることを警戒したのだろう。
あるいは──誰かを庇っている?
「なるほどな」マタルが言った。「エミリアは、アドゥオールのとこに行くつもりだったんだ」
ホラスは背筋を伸ばした。「〈真夜中の集会〉に? 本当か」
「ああ。あとで全部話すよ」マタルは言った。「で、その召使いからは話を聞けたのか?」
ホラスはため息をついて、首を横に振った。
「死んでいた。殺されたんだ」目を見開いたマタルの表情に向かって頷く。「我々を尾けていた、例の男にやられたらしい」
マタルが小声で悪態をついた。
「彼女はエミリアの失踪について、知り合いに尋ねて回っていた。殺されたのは口封じのためか、あるいは……」
「この日記が目当てか」マタルが日記を閉じ、机に置いた。「魔女だって証拠としては、充分すぎるくらいだ」
「それで、アドゥオールは?」
「ああ」マタルは頭の後ろを掻いた。言いにくいことを言う前に、彼がよくやる癖だ。「話す前に、珈琲でも飲みたいな」
結局、マタルから聞かされた話は、珈琲を味わう余裕を失わせるものだった。
「矯正院で、そんなことが……」
「わからないのは、一体この地上のどんな物質が、そんな風に魔女を──」マタルが手振りで『燃やす』という言葉を示す。
「貴金という金属は魔力を打ち消すし、銀はナドカの肌を焼く。だが、液体?」ホラスは首を振った。「わたしには思い当たらない。アシュモールにそういうものはあるのか?」
「いいや。そんなものの存在は聞いたことない」
「矯正院で何らかの実験が行われているらしいとは聞いていた。あそこには教王から認可を受けた研究機関が入っているんだ。フェリジアやヴァスタリアでも、競うように行われている──ナドカを治すための研究が」ホラスはため息をついた。「人間やナドカを使った実験をしているというのはたちのわるい噂だと思っていたが……信じるほかないようだな」
「エリザベスは、仲間がそいつらに攫われたって思ってる。エミリアもそうなんじゃないか?」
ホラスは腕を組んで低く唸った。「それは考えづらい」
「なんでだよ」
「矯正院は、ブライア卿の管轄だからだ」
マタルは反感を思い切り顔に出した。「あのじじいの管轄? でも、だからって──」
疑念を呈するマタルを制して、ホラスは言った。
「魔女は外見だけではわからないから、確固たる情報がない限り、矯正院側から動いて連行することは出来ない。となれば、事前に身元を調べてから接触するだろう。もし彼らが、卿の許可なく魔女を攫っているのだとしたら、の話だが」ホラスは、冷め切った珈琲のカップの縁を指でなぞった。「しかし、ホーウッドは矯正院に多大な寄付をしている」
「なるほど、だからか」マタルが言った。「あのじじいが、ただの貴族の頼み事を聞いてやるなんておかしいと思ってたんだ」
「じじいはよせと言ってるだろう」ホラスはため息をついた。
「年々理解できなくなってく気がするよ」マタルは言った。「なんであなたが、そうまでしてあのじじいを庇うのか」
「じじいはよせ。卿も、矯正院の現状をよく思っているわけじゃない」言い訳じみた口調になっていることに気づいても、どうにもできない。「ナドカになった自分の子供と向き合えないものたちのためにも、あの場所は必要なんだそうだ」
プロフィテイア聖堂で見たものを深く追求できなかったのも、それが理由だった。飼い主の手を噛む犬になる危険は犯せない。
「うーん」マタルは片足を引き寄せて抱え、曲げた膝の上に顎を乗せた。「それなら、矯正院がエミリアを攫ったわけじゃなさそうだな。ニコラスが連中の金づるなら、娘を攫うような真似はしないだろうし」
「ああ」
「でももし、ニコラスがそれを望んでたんだとしたら? 魔女になった娘を始末するのは外聞が悪い。でも消えたことにすれば……」
「依頼してきたのはニコラスだぞ」
「娘が消えたのに何も手を打たなかったら、かえって怪しまれるだろ」
「そもそも、審問庁に助けを求めた時点で怪しまれる。単に娘が消えたということにしたければ、警吏を使うだろう」
「それは……」マタルは勢いを失った。「それもそうか」
雨音だけが、薄暗い部屋を包む沈黙を満たした。夕刻から降り始めた雨は間断なく降り続き、硝子窓の向こう側の世界を溺れさせようとしていた。
「もしかして、俺たち行き詰まってる?」
ホラスはため息をついた。「まだだ。だが、限りなくその状況に近い」
「うーん」マタルは唸って、頭の後ろをガリガリと掻いた。
「眼帯の男だ」ホラスが言った「この男が、我々の行く先にことごとく姿を見せている。奴を追えば、元凶にたどり着けるはずだ」
「でも、どうやって探す? 囮にでもなるしかない」
「奴は、この日記を欲しがっている」ホラスは日記の上に手を置いた。「エミリアが魔女であったという証拠があると、都合が悪い人間がいるからだ」
「都合が悪くない人間を数えた方が早いな」マタルは言った。「ビアトリスと王子が無事に結婚すれば、王宮にはたんまり持参金が入るんだろう。我らがハロルド陛下の金庫には鼠が住んでるってもっぱらの噂だ」
「ああ、その通りだ」
ホラスは眉間を揉んだ。国庫の枯渇については、ブライアから何度も話を聞かされている。
「ビアトリスを蹴落として王妃になりたいと思っている娘たちと、その家族もだ。妹のことが明るみに出れば、ビアトリスは結婚相手から外されて、別の娘が候補に挙がる」
マタルは頭を抱えた。「この日記がとんでもない兵器に思えてきた」
「このまま俺たちが持っていれば、遅かれ早かれ、向こうから接触してくるだろう」
それをただ待つというのはいい気分ではなかったが、他に方法はなさそうだった。
「なあ」マタルが、おずおずと言った。「まだ……生きてると思うか? エミリアはさ」
ホラスはため息をついた。そして言った。
「いいや」
再び降りた沈黙は、さっきのものよりも更に冷たく、重々しかった。
「あの母親のことが、頭から離れない」ホラスが口を開いた。
「母親?」
「メリッサだ。侍女の──ジョーンの母親の」
ああ、とマタルは呟き、珈琲を飲んだ。
「子供を失った親を見るのは……堪える」
マギーを亡くしたあと、叔父はみるみるうちに憔悴し、二年のうちに処刑用の剣を持つことも出来ないほど酒に溺れた。ホラスの父もまた、息子が家を捨ててからは処刑の仕事を減らした。自分が罪人の首を切れば、聖堂にいる息子の立場が悪くなると考えたのだろう。結局、それが原因で生活は苦しくなり、生きがいを失った父は、萎れるように死んだ。
「ああ。保身ばかりのニコラス・ホーウッドにも見習わせたいな」マタルが言った。
「それでも、娘を探そうとはした」ホラスは言った。
「奴が黒幕なんじゃなければな」
マタルは不満げに鼻を鳴らした。ホラスはそれを見て笑った。
「お前は最初から彼を嫌ってたな」
「当たり前だろ?」マタルは本気で眉を顰めた。
「言いたいことはわかる。だが……彼にも護るべきものはある。全てをかなぐり捨てろというのも酷な話だ」
「待ってくれ、まさかあいつをかばってるのか?」マタルが身を乗り出した。「あいつがやったことを忘れたわけじゃないだろ」
ホラスは俯いた。束の間の笑いが、顔の上で泥のように乾いて、剥がれ落ちる。
「忘れてはいない」ホラスは言った。「だが、彼に会って……魔女狩りに関わったとは信じられなくなった」
「俺の魔法を疑ってるってことか?」
ホラスは首を振った。「そうじゃない。ただ──」
マタルは不思議そうに、ホラスを見下ろしていた。
「自分が本当に正しいことをしているのか、わからなくなってきたのかもな」
「何言ってる! 正しいに決まってるだろ!」マタルはホラスの胸の内を見透かすように目を眇めた。「復讐は何も生まないなんて、使い古しの戯言はやめろよ」
ホラスは小さく肩をすくめた。「使い古されるほど昔からある言葉には、それなりの説得力があるものだ」
ハッ! とマタルは笑った。
「なら、『復讐』はそんな戯言よりも昔からあるってことだ!」マタルは手を広げた。「復讐こそ、ひとをより良くするためのものだ、ホラス。ひとが正しく生きるためには、法律なんか何の役にも立たない。間違ったことをすれば、必ず酬いを受ける。だから、まともに生きようって気になるんだよ。ひとを良くするのは法じゃない。ひとそのものだ。復讐は、ひとに与えられた正義の剣だ」
マタルは机に手をつき、ホラスに詰め寄った。
「まさか、ここまで来て怖じ気づいたなんて言わないよな?」
ホラスは首を振った。「怖じ気づいたわけじゃないさ」
「なら、なにを迷ってるんだ。あなたらしくもない」
ホラスはため息をついた。
「あの日、間違ったことをしたのは、俺だったのかもしれない」
マタルは首をかしげた。「どういうことだ?」
「俺は──」ホラスはマタルを見上げた。「夢を見るんだ」
「ああ、知ってるよ」マタルは、そっとホラスの肩に手を置いた。
「その夢の中で、俺は砂漠にいて、それで……女を殺してる」
肩に置かれた手が、ぴくりと動く。気づかないふりをして、ホラスは続けた。
「マギーの時もあるし、顔のない、不思議な女の時もある。でもとにかく……彼女を殺すんだ。夢の中で、何度も」
「それが……あなたの悪夢?」
マタルの、いつになく静かな声にハッとして、ホラスは顔を上げた。そこに哀れみがあるだろうかと思っていたが、違った。マタルの顔には、確かに何かの感情が表れていた。けれどホラスには、その想いの正体を言い当てることは出来なかった。
「あなたは、マギーを殺してないよ」
マタルの声に宿る確信に、嫉妬しそうになる。
「どうして言い切れる? 俺にはあの夜の記憶がない」ホラスは吐き捨てるように言った。「あの魔女狩りに関係した誰ひとりとして、マギーがどうやって死んだか覚えていないんだ」
マタルは首を振った。「あなたは殺さないよ。俺にはわかる」
琥珀色のまっすぐな眼差しに晒されることが、不意に耐えられなくなってホラスは目をそらした。
「俺がマギーを助けられなかったのは確かだ。助けを呼びに行くなり、その場で戦うなり、方法はいくらでもあったはずだ。でも、俺はただ連中に捕まって、彼女が死ぬのを見ていただけだ……たぶんな」ホラスは言った。
「だからって、あなたが殺したことにはならない。自分でもわかってるだろ?」
ホラスは口をつぐんだ。それから、今まで、誰にも聞かせなかったことを話し始めた。
「マギーは……自分が魔女になりつつあると理解していた。夏になる度、彼女の家に遊びに行って、俺たちはいろんな話をしたものだった。でもその夏、俺は彼女の話を聞きながら気づいた。マギーが遠くに行くつもりなんだと」
「それで?」
ホラスは俯いた。胸を切り裂くのと同じ覚悟と痛みをもって、絞り出すように言う。
「彼女を行かせないために、マギーは魔女だと叔父に話した。マギーをうまく匿えば、今まで通り生活できるはずだと考えたんだ。彼女は俺にだけ打ち明けてくれていた……それには理由があったのに」ゆっくりと首を振る。「狼狽えた叔父は聖堂に駆け込み、大がかりな祈祷が行われることになった。マギーが魔女だという噂はあっという間に広まった」
そしてそのせいで、マギーは魔女狩りの標的になったのだ。
彼女に遠くへ行って欲しくなかった。その執着が、憎しみや狂気に変わらなかったと言い切る自信が、いまのホラスにはなかった。自分のことを人間だと思っているのは人間だけだとマタルは言う。ならば、自分のことを正気だと思う根拠はどこにある?
「俺が殺したようなものだ」
温かい手が頬に触れた。その手に促されるまま顔を上げると、マタルの強い瞳が、自分を見つめていた。
「誰かを愛するのは、罪じゃない」マタルは言った。「ただ愉しむためだけにひとの人生を奪うことが罪だ。そうだろ? あなたはなにも悪くない」
胸にこみ上げる苦さを飲み下し、ただ感謝することが、ホラスには出来なかった。それもまた、目を背け続けてきた自分の弱さだ。
「お前が羨ましいよ、マタル」小さくため息をつく。「お前と同じくらい、俺も……自分のことを信じられたらいいんだが」
すると、マタルはそっと微笑んだ。
「あなたはそのままでいい」彼は言った。「あなたの分まで、俺があなたを信じるから」
マタルの顔を見る。他ならぬこの自分が、復讐という檻の中に閉じ込めてしまった男のことを。自由にしなくてはと自分に言い聞かせ続けながらも、その実、彼を手放した瞬間に全てが終わるとわかっている。手放したくない。けれどマギーは、そんな身勝手な願いのせいで死んでしまった。
俺は……あの時から、何一つ変わっていない。
「ホラス」
マタルが名前を呼ぶ。掠れたその声に、今まで耳を塞ぎ続けた熱望が籠もっているのを、確かに聞く。
今までに、何度も彼を抱いてきたはずだ。今、彼の望みを叶えることが、そんなに罪深いことだろうか?
そう思いながらも、頭の奥の方では、今から始まろうとしているのは、これまでに二人の間で起こってきたものとはまったく違うものだと、わかっていた。
まったく違う。そして、取り返しのつかない何か。
「マタル……」
欲してはいけない。それは、契約とはまた別の枷となって、彼を縛ってしまう。復讐に身をやつし、憎しみにまみれて朽ちてゆくことしか出来ない男に、与えられるものなどなにもないのだ。
マタルの琥珀色の視線が、ホラスの目と、それから唇に落ちる。
拒むべきだと思う。彼のために。自分のために。
それなのに、彼が欲しい。心の底から。
「俺は──」
その時、何かが勢いよく窓にぶつかった。
ホラスとマタルは、まるで二人の間に雷が落ちたかのように飛び上がり、ぱっと身を離した。
「何だ!?」
爆発しそうな心臓と夥しい冷や汗を無視しようとしながら、ホラスは窓を見た。強風に吹き飛ばされまいと窓枠にしがみついているのは──。
「使い鷹──!」
ホラスは慌てて窓の掛け金を外し、びしょ濡れになった鷹を部屋の中に入れた。止まり木に乗せてやると、鷹は失い掛けた威厳を取り戻そうとするかのように厳かに、筒を取り付けられた右足を差し出した。
巻紙を引き延ばし、紙面に並んだ小さな字を追う。さっきまで身を焦がしそうなほど熱かった血が、瞬時に冷えた。
「なんなんだよ、こんな夜中に?」マタルは本気で苛ついていた。
「ギランからだ」
「じじいの秘書官?」
「ああ、そうだ」訂正する余裕もないので、しかたなく認めて話を進める。「クソ」
ホラスは、とっさに出てしまった悪態に、心の中で聖印を切った。
「言うな」マタルが慌てて耳を塞ぐ。「良くない報せなら、聞きたくない」
だが、ホラスは言った。
「すぐに出かけるぞ。魔女の死体がみつかった」
「ご苦労だった、マタル」
「ああ……」
彼は心ここにあらずという雰囲気で、放っておけば、この部屋にある本や書類を残らず水浸しにしてしまいそうに見えた。
「大丈夫か?」
「ああ……大丈夫だ」
「ここに入る前に着替えようとは思わなかったのか?」
「え?」マタルはぼんやりと自分の身体を見下ろし、「うわ、しまった」と言って部屋を出て行った。
廊下でマーサに出くわしたらしい。彼女の「まあ、なんて格好!」という悲鳴が聞こえてきた。
それからしばらくの間、ホラスは日記を読むことに集中した。
やがて部屋の戸を軋ませて入ってきたマタルは、先ほどより気分が持ち直したように見えた。ホラスはほっとした。
「俺から話す? それともあなたから?」マタルは言い、ホラスの机の上に尻を載せた。
「ということは、収穫があったんだな」
「まあね」マタルは言った。
「俺から話そう」ホラスは、マタルに向けて日記を開いた。「エミリアの日記だ。解雇された侍女──ジョーンが彼女から預かっていたらしい」
マタルは日記を持ち上げ、琥珀色の目をせわしなく動かしながらページをめくっていった。
日記の冒頭は、いたって普通の少女の日記だった。好奇心旺盛な良家の子女らしい聡明さが文章の端々から感じられる。
だが、母親の死を境に様子が変わってくる。何不自由ない暮らしを送る少女の心に、激しい感情の嵐が沸き起こる。そして、いままで享受してきた生活と、自分自身との間に隔たりが生まれはじめた。
夜に眠れなくなり、窓の外で息づく夜の獣たちに心惹かれるようになる。星がいままでとは違った風に輝きはじめ、それはあたかも何かを伝えようとしているように感じる。足下のなんでもない草の中に息づく力や、風に言葉があることに気づく。
「混乱してるな」マタルは言った。「ただの人間が、いきなり月に呼ばれたら、こうなるんだろうな」
マギーもそうだった。だが、そうした変化をホラスに語って聞かせるマギーの横顔は穏やかだった。おそらく彼女は、その時すでに混乱を乗り越え、覚悟をしていたのだろう。家を出て、どこかの〈集会〉に加わることを決めていたに違いない。だが幼いホラスは、彼女が手の届かないところに行こうとしていることを恐れた。
そのことを思い出す度に蘇る重い罪悪感を、ため息で胸の内に押し戻す。
「エミリアは心を決めていたようだ」ホラスは言った。「日記の最後に、『明日、彼女のところへ行く』と書かれていた」
「ああ。でも、なんで侍女が持ってたんだ?」マタルが言った。
「そいつは一度盗まれていたそうだ。なんとか取り返したが、それ以来、日記はジョーンが持ち運ぶことになっていたらしい。信頼されていたんだろう。失踪する日には、処分するよう頼まれたと言っていた」
日記には、盗まれた件については書かれていなかった。おそらく、また誰かに読まれることを警戒したのだろう。
あるいは──誰かを庇っている?
「なるほどな」マタルが言った。「エミリアは、アドゥオールのとこに行くつもりだったんだ」
ホラスは背筋を伸ばした。「〈真夜中の集会〉に? 本当か」
「ああ。あとで全部話すよ」マタルは言った。「で、その召使いからは話を聞けたのか?」
ホラスはため息をついて、首を横に振った。
「死んでいた。殺されたんだ」目を見開いたマタルの表情に向かって頷く。「我々を尾けていた、例の男にやられたらしい」
マタルが小声で悪態をついた。
「彼女はエミリアの失踪について、知り合いに尋ねて回っていた。殺されたのは口封じのためか、あるいは……」
「この日記が目当てか」マタルが日記を閉じ、机に置いた。「魔女だって証拠としては、充分すぎるくらいだ」
「それで、アドゥオールは?」
「ああ」マタルは頭の後ろを掻いた。言いにくいことを言う前に、彼がよくやる癖だ。「話す前に、珈琲でも飲みたいな」
結局、マタルから聞かされた話は、珈琲を味わう余裕を失わせるものだった。
「矯正院で、そんなことが……」
「わからないのは、一体この地上のどんな物質が、そんな風に魔女を──」マタルが手振りで『燃やす』という言葉を示す。
「貴金という金属は魔力を打ち消すし、銀はナドカの肌を焼く。だが、液体?」ホラスは首を振った。「わたしには思い当たらない。アシュモールにそういうものはあるのか?」
「いいや。そんなものの存在は聞いたことない」
「矯正院で何らかの実験が行われているらしいとは聞いていた。あそこには教王から認可を受けた研究機関が入っているんだ。フェリジアやヴァスタリアでも、競うように行われている──ナドカを治すための研究が」ホラスはため息をついた。「人間やナドカを使った実験をしているというのはたちのわるい噂だと思っていたが……信じるほかないようだな」
「エリザベスは、仲間がそいつらに攫われたって思ってる。エミリアもそうなんじゃないか?」
ホラスは腕を組んで低く唸った。「それは考えづらい」
「なんでだよ」
「矯正院は、ブライア卿の管轄だからだ」
マタルは反感を思い切り顔に出した。「あのじじいの管轄? でも、だからって──」
疑念を呈するマタルを制して、ホラスは言った。
「魔女は外見だけではわからないから、確固たる情報がない限り、矯正院側から動いて連行することは出来ない。となれば、事前に身元を調べてから接触するだろう。もし彼らが、卿の許可なく魔女を攫っているのだとしたら、の話だが」ホラスは、冷め切った珈琲のカップの縁を指でなぞった。「しかし、ホーウッドは矯正院に多大な寄付をしている」
「なるほど、だからか」マタルが言った。「あのじじいが、ただの貴族の頼み事を聞いてやるなんておかしいと思ってたんだ」
「じじいはよせと言ってるだろう」ホラスはため息をついた。
「年々理解できなくなってく気がするよ」マタルは言った。「なんであなたが、そうまでしてあのじじいを庇うのか」
「じじいはよせ。卿も、矯正院の現状をよく思っているわけじゃない」言い訳じみた口調になっていることに気づいても、どうにもできない。「ナドカになった自分の子供と向き合えないものたちのためにも、あの場所は必要なんだそうだ」
プロフィテイア聖堂で見たものを深く追求できなかったのも、それが理由だった。飼い主の手を噛む犬になる危険は犯せない。
「うーん」マタルは片足を引き寄せて抱え、曲げた膝の上に顎を乗せた。「それなら、矯正院がエミリアを攫ったわけじゃなさそうだな。ニコラスが連中の金づるなら、娘を攫うような真似はしないだろうし」
「ああ」
「でももし、ニコラスがそれを望んでたんだとしたら? 魔女になった娘を始末するのは外聞が悪い。でも消えたことにすれば……」
「依頼してきたのはニコラスだぞ」
「娘が消えたのに何も手を打たなかったら、かえって怪しまれるだろ」
「そもそも、審問庁に助けを求めた時点で怪しまれる。単に娘が消えたということにしたければ、警吏を使うだろう」
「それは……」マタルは勢いを失った。「それもそうか」
雨音だけが、薄暗い部屋を包む沈黙を満たした。夕刻から降り始めた雨は間断なく降り続き、硝子窓の向こう側の世界を溺れさせようとしていた。
「もしかして、俺たち行き詰まってる?」
ホラスはため息をついた。「まだだ。だが、限りなくその状況に近い」
「うーん」マタルは唸って、頭の後ろをガリガリと掻いた。
「眼帯の男だ」ホラスが言った「この男が、我々の行く先にことごとく姿を見せている。奴を追えば、元凶にたどり着けるはずだ」
「でも、どうやって探す? 囮にでもなるしかない」
「奴は、この日記を欲しがっている」ホラスは日記の上に手を置いた。「エミリアが魔女であったという証拠があると、都合が悪い人間がいるからだ」
「都合が悪くない人間を数えた方が早いな」マタルは言った。「ビアトリスと王子が無事に結婚すれば、王宮にはたんまり持参金が入るんだろう。我らがハロルド陛下の金庫には鼠が住んでるってもっぱらの噂だ」
「ああ、その通りだ」
ホラスは眉間を揉んだ。国庫の枯渇については、ブライアから何度も話を聞かされている。
「ビアトリスを蹴落として王妃になりたいと思っている娘たちと、その家族もだ。妹のことが明るみに出れば、ビアトリスは結婚相手から外されて、別の娘が候補に挙がる」
マタルは頭を抱えた。「この日記がとんでもない兵器に思えてきた」
「このまま俺たちが持っていれば、遅かれ早かれ、向こうから接触してくるだろう」
それをただ待つというのはいい気分ではなかったが、他に方法はなさそうだった。
「なあ」マタルが、おずおずと言った。「まだ……生きてると思うか? エミリアはさ」
ホラスはため息をついた。そして言った。
「いいや」
再び降りた沈黙は、さっきのものよりも更に冷たく、重々しかった。
「あの母親のことが、頭から離れない」ホラスが口を開いた。
「母親?」
「メリッサだ。侍女の──ジョーンの母親の」
ああ、とマタルは呟き、珈琲を飲んだ。
「子供を失った親を見るのは……堪える」
マギーを亡くしたあと、叔父はみるみるうちに憔悴し、二年のうちに処刑用の剣を持つことも出来ないほど酒に溺れた。ホラスの父もまた、息子が家を捨ててからは処刑の仕事を減らした。自分が罪人の首を切れば、聖堂にいる息子の立場が悪くなると考えたのだろう。結局、それが原因で生活は苦しくなり、生きがいを失った父は、萎れるように死んだ。
「ああ。保身ばかりのニコラス・ホーウッドにも見習わせたいな」マタルが言った。
「それでも、娘を探そうとはした」ホラスは言った。
「奴が黒幕なんじゃなければな」
マタルは不満げに鼻を鳴らした。ホラスはそれを見て笑った。
「お前は最初から彼を嫌ってたな」
「当たり前だろ?」マタルは本気で眉を顰めた。
「言いたいことはわかる。だが……彼にも護るべきものはある。全てをかなぐり捨てろというのも酷な話だ」
「待ってくれ、まさかあいつをかばってるのか?」マタルが身を乗り出した。「あいつがやったことを忘れたわけじゃないだろ」
ホラスは俯いた。束の間の笑いが、顔の上で泥のように乾いて、剥がれ落ちる。
「忘れてはいない」ホラスは言った。「だが、彼に会って……魔女狩りに関わったとは信じられなくなった」
「俺の魔法を疑ってるってことか?」
ホラスは首を振った。「そうじゃない。ただ──」
マタルは不思議そうに、ホラスを見下ろしていた。
「自分が本当に正しいことをしているのか、わからなくなってきたのかもな」
「何言ってる! 正しいに決まってるだろ!」マタルはホラスの胸の内を見透かすように目を眇めた。「復讐は何も生まないなんて、使い古しの戯言はやめろよ」
ホラスは小さく肩をすくめた。「使い古されるほど昔からある言葉には、それなりの説得力があるものだ」
ハッ! とマタルは笑った。
「なら、『復讐』はそんな戯言よりも昔からあるってことだ!」マタルは手を広げた。「復讐こそ、ひとをより良くするためのものだ、ホラス。ひとが正しく生きるためには、法律なんか何の役にも立たない。間違ったことをすれば、必ず酬いを受ける。だから、まともに生きようって気になるんだよ。ひとを良くするのは法じゃない。ひとそのものだ。復讐は、ひとに与えられた正義の剣だ」
マタルは机に手をつき、ホラスに詰め寄った。
「まさか、ここまで来て怖じ気づいたなんて言わないよな?」
ホラスは首を振った。「怖じ気づいたわけじゃないさ」
「なら、なにを迷ってるんだ。あなたらしくもない」
ホラスはため息をついた。
「あの日、間違ったことをしたのは、俺だったのかもしれない」
マタルは首をかしげた。「どういうことだ?」
「俺は──」ホラスはマタルを見上げた。「夢を見るんだ」
「ああ、知ってるよ」マタルは、そっとホラスの肩に手を置いた。
「その夢の中で、俺は砂漠にいて、それで……女を殺してる」
肩に置かれた手が、ぴくりと動く。気づかないふりをして、ホラスは続けた。
「マギーの時もあるし、顔のない、不思議な女の時もある。でもとにかく……彼女を殺すんだ。夢の中で、何度も」
「それが……あなたの悪夢?」
マタルの、いつになく静かな声にハッとして、ホラスは顔を上げた。そこに哀れみがあるだろうかと思っていたが、違った。マタルの顔には、確かに何かの感情が表れていた。けれどホラスには、その想いの正体を言い当てることは出来なかった。
「あなたは、マギーを殺してないよ」
マタルの声に宿る確信に、嫉妬しそうになる。
「どうして言い切れる? 俺にはあの夜の記憶がない」ホラスは吐き捨てるように言った。「あの魔女狩りに関係した誰ひとりとして、マギーがどうやって死んだか覚えていないんだ」
マタルは首を振った。「あなたは殺さないよ。俺にはわかる」
琥珀色のまっすぐな眼差しに晒されることが、不意に耐えられなくなってホラスは目をそらした。
「俺がマギーを助けられなかったのは確かだ。助けを呼びに行くなり、その場で戦うなり、方法はいくらでもあったはずだ。でも、俺はただ連中に捕まって、彼女が死ぬのを見ていただけだ……たぶんな」ホラスは言った。
「だからって、あなたが殺したことにはならない。自分でもわかってるだろ?」
ホラスは口をつぐんだ。それから、今まで、誰にも聞かせなかったことを話し始めた。
「マギーは……自分が魔女になりつつあると理解していた。夏になる度、彼女の家に遊びに行って、俺たちはいろんな話をしたものだった。でもその夏、俺は彼女の話を聞きながら気づいた。マギーが遠くに行くつもりなんだと」
「それで?」
ホラスは俯いた。胸を切り裂くのと同じ覚悟と痛みをもって、絞り出すように言う。
「彼女を行かせないために、マギーは魔女だと叔父に話した。マギーをうまく匿えば、今まで通り生活できるはずだと考えたんだ。彼女は俺にだけ打ち明けてくれていた……それには理由があったのに」ゆっくりと首を振る。「狼狽えた叔父は聖堂に駆け込み、大がかりな祈祷が行われることになった。マギーが魔女だという噂はあっという間に広まった」
そしてそのせいで、マギーは魔女狩りの標的になったのだ。
彼女に遠くへ行って欲しくなかった。その執着が、憎しみや狂気に変わらなかったと言い切る自信が、いまのホラスにはなかった。自分のことを人間だと思っているのは人間だけだとマタルは言う。ならば、自分のことを正気だと思う根拠はどこにある?
「俺が殺したようなものだ」
温かい手が頬に触れた。その手に促されるまま顔を上げると、マタルの強い瞳が、自分を見つめていた。
「誰かを愛するのは、罪じゃない」マタルは言った。「ただ愉しむためだけにひとの人生を奪うことが罪だ。そうだろ? あなたはなにも悪くない」
胸にこみ上げる苦さを飲み下し、ただ感謝することが、ホラスには出来なかった。それもまた、目を背け続けてきた自分の弱さだ。
「お前が羨ましいよ、マタル」小さくため息をつく。「お前と同じくらい、俺も……自分のことを信じられたらいいんだが」
すると、マタルはそっと微笑んだ。
「あなたはそのままでいい」彼は言った。「あなたの分まで、俺があなたを信じるから」
マタルの顔を見る。他ならぬこの自分が、復讐という檻の中に閉じ込めてしまった男のことを。自由にしなくてはと自分に言い聞かせ続けながらも、その実、彼を手放した瞬間に全てが終わるとわかっている。手放したくない。けれどマギーは、そんな身勝手な願いのせいで死んでしまった。
俺は……あの時から、何一つ変わっていない。
「ホラス」
マタルが名前を呼ぶ。掠れたその声に、今まで耳を塞ぎ続けた熱望が籠もっているのを、確かに聞く。
今までに、何度も彼を抱いてきたはずだ。今、彼の望みを叶えることが、そんなに罪深いことだろうか?
そう思いながらも、頭の奥の方では、今から始まろうとしているのは、これまでに二人の間で起こってきたものとはまったく違うものだと、わかっていた。
まったく違う。そして、取り返しのつかない何か。
「マタル……」
欲してはいけない。それは、契約とはまた別の枷となって、彼を縛ってしまう。復讐に身をやつし、憎しみにまみれて朽ちてゆくことしか出来ない男に、与えられるものなどなにもないのだ。
マタルの琥珀色の視線が、ホラスの目と、それから唇に落ちる。
拒むべきだと思う。彼のために。自分のために。
それなのに、彼が欲しい。心の底から。
「俺は──」
その時、何かが勢いよく窓にぶつかった。
ホラスとマタルは、まるで二人の間に雷が落ちたかのように飛び上がり、ぱっと身を離した。
「何だ!?」
爆発しそうな心臓と夥しい冷や汗を無視しようとしながら、ホラスは窓を見た。強風に吹き飛ばされまいと窓枠にしがみついているのは──。
「使い鷹──!」
ホラスは慌てて窓の掛け金を外し、びしょ濡れになった鷹を部屋の中に入れた。止まり木に乗せてやると、鷹は失い掛けた威厳を取り戻そうとするかのように厳かに、筒を取り付けられた右足を差し出した。
巻紙を引き延ばし、紙面に並んだ小さな字を追う。さっきまで身を焦がしそうなほど熱かった血が、瞬時に冷えた。
「なんなんだよ、こんな夜中に?」マタルは本気で苛ついていた。
「ギランからだ」
「じじいの秘書官?」
「ああ、そうだ」訂正する余裕もないので、しかたなく認めて話を進める。「クソ」
ホラスは、とっさに出てしまった悪態に、心の中で聖印を切った。
「言うな」マタルが慌てて耳を塞ぐ。「良くない報せなら、聞きたくない」
だが、ホラスは言った。
「すぐに出かけるぞ。魔女の死体がみつかった」
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