魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~

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第一章 再び始まった戦争

第二話 かつての敵は味方?

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 あちこちから黒煙が上がっている帝国軍有するイルキア基地、その上空では二体の人型兵器が戦っていた。

「なんだ、この機体!」

 帝国軍の新型機ブラギを奪取したアドハムは目の前にいる式典用の機体を相手に苦戦をしていた。ハンガー周辺で式典に向けた警備をしていた帝国の現行主力機クロノスを数機を撃破した。そして今目の前で戦っている式典装備のノーヘッドと呼ばれる機体、かつて帝国と戦争をしていた連邦軍の一世代前の機体数十機を一瞬で撃破した。それほどの性能差があった。
 にも関わらず目の前のノーヘッドには押されているこの状況は彼にとって信じられないものだった。

「なぜこいつはこの動きについてこれる!」

 一世代前のノーヘッドとこの新型であるブラギは性能にかなりの差がある。その差は軽自動車とスーパーカーほどである。機動力では数倍の差があり、ノーヘッドがスラスターを全て全開にしてようやくブラギに追いつける。しかしそんなことをすれば戦闘に支障が出るくらいにバランスを崩してしまう。
 そんな状態の機体を敵のパイロットは操っていた。

「この!」

 早くこの敵を倒さなければ自分の目標である帝国や連邦の要人を殺せなくなってしまう。そのためには目の前の機体を無視して進めばよいのだが、それが出来なかった。

「この任務を失敗するわけには!」

 いくら冷静さが大事とはいえ、家族の生活がかかっていると十六歳の彼にはそこまで感情をコントロールすることは出来なかった。このとき、機体性能の差があまりにも大きいためにノーヘッドでは致命打を与えることが出来ないため無視して全力で進めれば進めたはずだった。
 しかし何回かそれを阻止されたことからアドハムは目の前の機体を対処しなければ行けないと思いこんでいた。

『アドハム。こっちの方は終わったけど援護いる?』

 そのときコックピットに声が届く。

「あぁ。頼む。」

 小隊の中では自分が一番優秀だと思っていた彼にとっては誰かの助けを受けるというのは屈辱的なものだった。しかし、そんなプライドに捕らわれていた結果が今の助けに来る状況だということは分かっていた。

『了解。』

 その言葉と同時に彼の同期であるバハー・ナンスムールがアドハムの方に向かう。それによって早くここを突破しなければとアドハムの心は焦っていた。



「合流されるか……、不味いな……。」

 連邦軍のノーヘッドのパイロット、アルベルト・シュタイナーは目の前にいる一機のキャスターを単独で抑えていたが、他の二機の新型も集まりつつある状況は明らかに彼にとって不利であった。

『シュタイナー准尉。今貴官の近くに奪取された帝国の新型機を確認することはできるか?』

 輸送機のパイロットからの声が響く。その声がひっ迫したものであるから、レーダではなにか不味いことが起こっているのだろうかと考える。

「今そのうちの一機と戦闘状態に入っていますよ!」

 アルベルトは額に冷や汗を浮かべながら怒鳴るように答える。

「第一どうして帝国軍の新型機が奪われてるんですか!」

 彼の声音は怒りではなく焦りから来ているものであったが、鬼気迫るものであった。その瞬間機体の装甲に傷がつく。

「帝国軍、ましてやイルキア基地なんて昔の新型機奪取でより警戒が強くなっているはずなのに!」

 なぜここまで無防備なのだと怒りをぶつける。

『そんな詮索は後だ。それよりその機体撃破できそうか?』
「いやいやいや、流石にそれは無理です。」

 今この場所で抑えることですら奇跡だというのにこれ以上を求めるなと嫌味を込める。

「一つ前の、しかもキャスターが恐竜的進化をする前の世代の機体、さらに武器が無い機体で勝てると思います? 新型の、しかもフラッグシップ機に。」

 普段真面目で従順な彼は珍しく上官の言葉を否定する。いや、否定する以外出来ることがないのだ。

『それでもやってもらわなければならない!』
「武器が無い状態でどうやって!」

 戦闘もしたことがないやつが偉そうに言うなとアルベルトは暗に言う。恐らく撃破に関しては連邦としての変な意地が張っているのだと彼は考える。普通に考えてこの状況ならばアークウィン家の部隊が動いていないはずはないのだ。そして恐らく援軍の打診は来ているのだが、自分の部隊で危機を救ったという実績が欲しいためにこんなバカなことを言っているのだろうと思う。

『だがその後ろにある館にはベッソノワ司令がいる。』

 彼にとってそんなことは分かっていた。だからこそ必死に足止めをしているのだ。それを偉そうに後ろから無茶な指示を出すだけなどただの無能だと思う。

「ですが、援軍が無ければどのみち押し切られます!」

 抑え込むのですらかなり厳しいと分かったのか、パイロットは直ちに増援の状況を確認していた。

『分かった。後もう少しだけその場を持たせろ。帝国軍から援軍が来る。』
「何機ですか?」

 しかしアルベルトのレーダには帝国軍の増援の部隊が全く見えなかった。

『二機だ。』
「二機だけですか?」

 その言葉にアルベルトは不満そうな声を隠さずに言う。

『安心しろ。帝国のエースパイロットのアークウィン大佐とデグレア少佐だ。』

 だがその答えを聞いて言葉に詰まる。

「分かりました。」

 だからこそアルベルトは冷静にそう答えると戦闘に集中するため通信を切る。どんどんと激しくなる敵からの攻撃を一つ一つ機体が墜落しないようにさばいていった。
 そんな慎重な機体制御を行っていたときだった。突如別の方向から青白い光の筋が走り、胴体のくびれた装甲の一部が溶かされていた。

「もう来たか!」

基地格納庫から帝国の部隊が出てこないように潰していた一機が突っ込んでくる。

「クソ!」

更なる追撃を防ぐため緊急回避をする。しかし体にかかる不快なGは覚悟していても消えることはない。加えてそんな戦い方をしていれば当然機体にも限界が来る。

「しまった!」

予想されていたより機体の痛みが激しく右足首のモータが過熱し異常を示す警告音が鳴り響く。

そんな彼のことなどお構いなしに新型二機は攻撃を激しくしていく。

「こんなところで! 死んでたまるか!」

しかし、そのときに生じた焦りでノーヘッドが姿勢をおおきく崩す。

「こ、のぉぉぉぉ!」

 手に持っていた式典用の剣を突き出す。突き刺されば装甲にかすり傷を付けることができる程度だとアルベルトも理解していた。そんな武器であっても今の彼にとっては頼りになる相棒であった。
 しかしそんな期待も空しく剣は帝国軍の新型機であったブラギの装甲に傷ひとつつけることは無かった。
 二機はそんなアルベルトを取り囲むとなぶるようにノーヘッドの右手を切り落とす。そのまま左腕を切り落し止めを刺そうとする。

 そのときコクピットのアラーム音が鳴り響く。それが背後から迫っているものだと近くするのと同時に機体を下降させる。それとほぼ同時に先ほどまでノーヘッドがあったところを一筋の光が走る。

 帝国軍の新型機、アレースから放たれたプラズマライフルの筋が背面の一部をかすったせいでノーヘッドに二基搭載されているメインスラスターのうちの一つが出力を下げていく。

「機体のバランスが!」

 そうして空間での制御を失った機体は、撃ち落とされた鳥のようにクルクルと回転し、地面に墜ちていく。

「墜落地点は!?」

 出来る限り被害が小さい場所に落下するように残ったブースターを必死に操作する。そんなことをしているうちに、地上に機体が激突した衝撃音が走る。従来の飛行機などであれば、パイロットは無事では済まない。しかし、キャスターであれば、パイロット自動保護装置が何重にも働きそのようなことは無かった。
実際中にいたアルベルトは身体自体は問題なかった。

 一方で格納庫間の通路に落下したノーヘッドは機体のフレームが大破しており、修復は不可能となっていた。幸いにも燃料は先程全部使いきったため、爆発の心配をすることはなく外に出る。
周囲からは爆発による煙の匂いが立ち込める。

「助けてもらったとはいえ、最悪のタイミングだぞ。」

 空を見上げて戦っている二機のキャスターを睨む以外今の彼に出来ることは無かった。



『今、連邦軍の機体ごと新型機を破壊しようとしなかった?』
「いえ、あの角度だとあそこしか威嚇射撃ができませんでした。後程ビデオを確認していただければ分かります。」

上官である一番エミリア・アークウィンの言葉をアルバート・デグレアは心外だといった感じで否定する。

『そう。ならいいわ。今回の私達の目標はVIPの護衛とこの目の前にいる三機の新型機の足止めあるいは破壊よ。それだけはくれぐれも間違えないようにしなさい。敵は連邦軍ではなく、このテロ組織なのだから。』

 アルバートはエミリアの言葉に頷くと目の前の三機に切りかかる。
二対三と圧倒的に不利な中、二機はその連携で攻勢を崩さなかった。

「所詮はテロリスト。練度がそこまで高いという訳ではない!」

 アルバートが一機を相手にするとエミリアが即座に残りの二機が近づかないように援護射撃を行う。それをターゲットを変えて何回も行うことでテロリストの部隊は隊列を組むことが出来ず徐々に劣勢に追い込んでいく。

「増援部隊の到着まであと60、それまで逃がさないように抑え込むしが無いが……。」

 再び攻撃を加えていくが、徐々に回避が慣れてきたものとなる。

「ここまで回避されると流石にキツイものがあるな。」

 そして逃げようとする敵をふさぐようにアレースの左腕のライフルで進路を塞ぐ。

「こうなると一機を人質にとって逃がさないようにする? いや、流石にテロリスト相手にそれは効果が薄いか。」
『少佐。私も前に出ます。』
「了解しました。」

 その言葉と共にエミリアの機体が前進を始める。同時に戦況が大きく変わる。強奪された三機が先行するエミリアの機体へと、集中砲火を浴びせる。しかしエミリアはその攻撃に怯むことなくすべての攻撃を避けながら、目星をつけたブラギに斬撃を加える。
 一撃一撃は致命傷を与えることはなかったものの、エミリアの機体はそのまま前進を辞めない。その気迫は、テロリストが今まで経験したもののないもので、前の大戦を潜り抜けて来たパイロットが持つ独特のオーラだった。

 アルバートは他の二機がエミリアの邪魔をしないようにかく乱をする。先ほどまでとやっていることが異なっていたが、攻撃の息はぴったりだった。エミリアとアルバートは三機を追い詰めていた時だった。
 コックピットに大きなアラート音が鳴り響く。

「基地から?」
『デグレア少佐! すぐに下がりなさい!』

 エミリアの緊迫感のある言葉にアルバートはすぐに機体を後退させる。エミリアも同時に機体を後退させた。
 同時に遠方から巨大な物体が接近してくるのがわかる。それが艦砲射撃によるものだということに気づくのと同時にイルキア基地の自動防御システムが展開され砲弾が細かく寸断される。そしてその自動防御システムによる対空砲火はエミリア達と奪取された三機の間を引き裂いていた。
 それによってエミリアたちは一度距離を取らざるを得なかった。

 そしてその少しの間で三機は全力で撤退をした。



「ここまでか。」

 アドハムは舌打ちをすると忌々し気に二機のアレースを見た。

『これ以上やっても意味はないだろう?』
「分かっている。敵の増援部隊がこちらに来る前に撤退するしかないな。」

 年齢が変わらない二人に指示を出すだけあって冷静であった。

「もう少しだけ戦果を出したかったが……。」

 アドハムは悔しそうにそう言うと機体を反転させる。
目標は達成できなかったが、その上に奪取した新型機すら失えば自分どころか家族の立場すら危うくなる、そう判断をしたアドハムは撤退の指示を出す。

「これで及第点とするしか。」

 母艦に向かって撤退するコックピットの中でもう少し戦果を出したかったとぼやくしか無かった。
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