魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~

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第0章 始まりの戦い

第二十七話

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「巡航速度程度なら追いつけるか。」

 クロノスのメインスラスターを全開にして戦域を移動しようとするアインのラファエルとヴィエントのミカエルをアルバートは追いかける。しかし、二機は急に動きを止めると反転してアルバートのクロノスへの攻撃を再開させた。

「このタイミング……。嵌められたか。」

 先ほどと違い周囲には 障害物が無い場所だった。

「だが、敵の動きにも目は慣れたか。」

 敵である二機から繰り出される攻撃を躱しながらアルバートはその距離をどんどんと詰める。
 メインスラスターを常に全開にしながら移動するアルバートの機体は、かつて彼が幼年学校時代に好き好んで使っていたやり方だった。



 二機はクロノスへ攻撃を集中させていく。

「これでどうだ!」

 ガブリエルの背後のレーザー砲が光る。

「ここで、やられて、たまるか!」

 だがクロノスはレーザー砲を機体を捻りながらギリギリでかわしきる。
 それを見計らったかのようにミカエルが追撃しようとするが、フェイントを入れながら、それを回避した。

「まだ、撃墜できないか……!」

 アインの顔に少し焦りが浮かぶ。ガブリエルの消耗が思ったより激しく、早目に決めないと機体の性能が落ちてしまうことを危惧した結果であった。

『あまり焦らないで。大丈夫だから、ゆっくりやりましょう。』

 それをヴィエントが優しい声で宥める。

「了解です!」

 だがその瞬間にもゼウスとウラノスが息を合わせてライフルを撃ち込もうとする。
 ガブリエルはそれを回避しながらも反撃する。



「今だな。」

 アルバートはアインの乗るラファエルの限界が近いことを察する。
 二機がクロノスを接近させないように針のようなレーザーが飛んでくる。
 アルバートはそれをギリギリでかわし、更に接近する。
 それに合わせてアインの乗るラファエルは高出力のエネルギーサーベルを引き抜く。その膨大な出力はサーベルの刀身によく表れていた。アルバートはそれを分かっていながらもなお、プラズマサーベルで剣を交えようとする。

 そして二機が衝突する。クロノスのはそのラファエルの持つエネルギーサーベルによってプラズマを消し飛ばされ、致命傷を与えることは出来なかった。一方でラファエルもまたその斬撃をクロノスに躱されていた。

「これか!」

 そしてクロノスはラファエルがもう一本搭載していた右腰部のエネルギーサーベルを引き抜く。

「やっぱり、昔奪取された機体の改造機だから、帝国の規格が使えるか。」

 クロノスの全長と同程度あるエネルギーサーベルでラファエルと剣を交える。
 ラファエルは胴体中央にある、高速ではあるが射程が短いエネルギー砲を撃つ。
 これで決まったとアインは思った。
 しかし放たれたレーザーがクロノスを突き刺す瞬間は無かった。



「消えた!?」

 アインは驚く。

『上!』

 ヴィエントがそう言うがそのときには既にアルバートのクロノスはエネルギーサーベルを抜きラファエルに突き刺そうとしていた。
 アインにはその瞬間時間がとてもゆっくりに、しかし反応できなかった。

『アイン!』

 だがそう声が聞こえると同時にエネルギーサーベルを遮るものがあった。

「バラノフ少佐!」

 アインはそう叫ぶ。
 その動きはアルバートにとっても予想外のものだった。
 ヴィエントの乗るミカエルはクロノスに対して同じようにサーベルを突き刺す。
 それを回避するかのようにクロノスは体を翻すが回避しきれず左肘から下を切断されてしまう。一方でクロノスのサーベルは確実にミカエルのコクピット近辺を貫いた。
 クロノスは一度だけミカエルから距離を取るとアインのラファエルに向き合う。しかしすぐにアズリトが乗るガブリエルからの援護射撃が来るため、二機から距離を取った。

「少佐!」

 アインはラファエルをミカエルのすぐそばに止める。同時にヴィエントを助け出そうと彼女の機体に触ろうとした時だった。

『ここまで、みたいね……。』

 だがヴィエントから返ってきた言葉はそれの否定だった。

「少佐!」

 返事があったことに若干安堵しながらもこちらが安堵していてはだめだとアインはすぐにヴィエントを安心させようとする。

「少佐! 今助けますから!」

 だがヴィエントにはもう自分が長くないことは分かっていた。

『もう……無理よ……。』
「ですが!」

 アインはそんなことは無いという。あの時自分は助かったのだからということをそれは含んでいた。しかし、アインの時と違いコクピット下部が破壊されていたのだった。

 戦線から離れたラファエルのコクピットからアインは出てミカエルのコクピットハッチを開くと絶句してしまう。

「だから無理だと言ったじゃ無い……。」
「なんで、自分なんかを……。」

 それには後悔が含まれていた。ヴィエントが自分を助けなければヴィエントは死ななかったのにと思う。いや、それ以前に成果を焦らなければこんなことにはならなかったのだ。

「それ、は。前に、助けて、もらったから……。」
「だとしても、死んでしまったら……。」
「アイン……、私は、あなたのことが、……あなたは生き残りなさい。こんな戦争にいつまでも付き合っている必要はない。」

 ヴィエントは自分がアインの鎖になってはいけないと考えた。
 最後の力を振り絞りコックピットに入ってきたアインを手で押し出す。
 同時に機体をガブリエルから離す。

「少佐!」

 アインがそう叫んで手を伸ばした時だった。

 ミカエルは大きな火球となった。



「ミカエル、反応ロスト!」
「馬鹿な!」

 エフゲニーはそれを聞いて驚く。いくらなんでもあの戦力を投入してヴィエントを失うというのは考えられないことだった。

「ラファエルは!?」
「健在です!」
「繋げ!」

 その言葉にオペレータは慌ててアインに回線をつなぐ。

「中尉、どうなっている。ヴィエントは!?」

 エフゲニーはなんとか感情を殺してアインに尋ねる。アインと結婚するとヴィエントから数日前に聞いていたためアインに対してできるだけ高圧的な態度をとらないように注意する。

『少佐は戦死しました……!』

 アインは泣きたいのを押し殺してそう答える。

「そうか。」

 だがエフゲニーはそこでアインを責めようという気にはならなかった。

「なんとしてもヴィエントを殺したやつを殺せ! ヴィエントのためにも!」

 せめて仇は討たねばならないとそう告げる。

『はい!』

 その言葉はアインにとって重くのしかかる言葉になった。
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