20 / 34
居候は忘れた頃にやってくる
しおりを挟む
季節は秋。雲ひとつない秋晴れの空……を眺めるのもそこそこに、朝の空気を胸いっぱいに吸い込んで、部屋に引き篭もったお子さ魔王は実験に勤しんでいた。あのマイコニド娘のリフィを迎えてより、実に半年が過ぎた頃である。元々は、戦闘力のなさそうな世間知らずのマイコニドを匿ってやるつもりで招いたのだが、お子さ魔王が用意した空間が余りにも住み良かったからか、引きこもり魔王も真っ青なレベルで引きこもったしまった。そんなものだから、お子さ魔王の方もそんな居候がいたことなど忘れかけてきた頃で……
「魔王様ぁ!」
「にゅおわぁっ!? ……っとっとっとっとおおおっ!? っぎゃー!? って、叫んどる場合ではないわ! ほいっ! ほいっ! ……よしっ! って、うぎゃんっ!!」
日課である実験の最中、何故かメイド服姿のリフィがお子さ魔王に突撃してきたのである。具体的には、お高い素材を慎重に慎重にピンセットで摘まんで、そろーりつまんで移動させて、そおっとそおっと……そんな最中に大声で呼びかけてきた挙げ句、後ろから抱きついてきたのである。お子さ魔王は転げそうになる所を何とか堪えるも、お高い素材は宙に舞う。それに気付いたお子さ魔王、悲鳴を上げるも我に返り、魔法でシャーレを浮かせて素材をキャッチ、無事に着地させることに成功する。……までは良かったが、ホッとしたのかリフィの(キノコゆえの)さほど重くない体重を支えきれず、顔面から床に着地したのであった。
「大丈夫ですかぁ? 魔王様ぁ」
「ぶはぁっ! 大丈夫? じゃないわい! 誰じゃ!? ……ぬ? お? おー、お主……確かキノコ娘の……れふぃ!」
「惜しいですぅ。私の名前はぁ、リフィ、ですよぉ」
存在を忘れかけてはいたものの、何とか思い出し……切れなかったお子さ魔王。残念っ! 一方、特に残念そうな素振りは見せないリフィは改めて覚えてもらうべく、自らの名を名乗るのであった。
「お? おお、おお、そうじゃった、そうじゃった。っちゅうか、あんまりにも見かけぬ故、うちに居ることすらすっかり忘れておったわ。……というか、実験中に大きな声で呼ぶんじゃないわい! ましてや抱きつくなんぞもっての外じゃぞ!? 儂の大事な素材ちゃんが失われたらどうするんじゃ!」
「えへへぇ?」
ゆるりとお子さ魔王から体を離したリフィは、割と大きな胸をきゅっと強調するポーズで小首を傾げる。しかし、魔王には通じなかった!
「儂相手に媚びても何も出んわい。そんな物は町中のモテなさそうな男相手にやるんじゃの」
「そうなんですねぇ」
だいたいそれ菌糸の固まりじゃろ、とお子さ魔王はフンと鼻白む。
「で、どうしたんじゃ。確かお主、眷属というか菌床を育てておったんじゃろうが?」
「はい! お陰様で! キノコの楽園が出来上がりました!」
お子さ魔王はリフィが見せた素振りの有効的な使い場所を教えると、近況報告を促す。すると、魔王の山小屋地下で、キノコパラダイスが誕生したと、テンションアゲアゲのリフィに告げらる。お子さ魔王としては、自由に使って良いとはいったが、え? 何? 占拠する気なの? と、少々困惑する事態なのであった。
「ら、楽園じゃと? おおう、そりゃまた何と言うか……見るのが少しばかり怖い響きじゃな」
「もー断然、パラダイスなのですぅ」
「……もしかせずとも、見に来いと言うとるのか?」
「(はっし)」
リフィのキラキラした瞳が、ぜひ見に来いと言わんばかりなので思わず聞いてしまったお子さ魔王。案の定というか答えは決まりきっており、リフィも逃してなるものかと魔王の腕を掴んで離さないのだった。
「……分かった分かった。じゃが、これより先は儂の実験の邪魔などせぬようにな。場合によっては儂、泣くからの? 分かったな? 邪魔は駄目じゃぞ?」
「わかりましたぁ」
別に見たくないわけではないし、そもそも自分の家の地下のことである。確認しないわけにもいかないだろう。それに、すこーしばかり興味だってある。いや、少しどころかかなりある。お子さ魔王は気持ちを切り替えると、それでも今度から実験の邪魔だけはしてくれるなと、釘を刺すことは忘れないのである。そこは忘れてはいけないことなのである。大事なことだから二回言った! ……そして二人は連れ立って、地下にあるというキノコパラダイスへと下りていくのであった。
………
……
…
「ふぉおおおぉぉお……よもや、これほど、とは……」
「えへへ~」
リフィに案内されて入った大きめの部屋でお子さ魔王の目に飛び込んできたのは、色とりどりのキノコに覆われた正にキノコの楽園であった。採光の役割を持った魔道具によって照らされたそこには、巨大なキノコが生えてるのは勿論、小さなキノコも規則正しく生えていて、よくある放置された洞窟のような不衛生な感じは微塵もしない。更にキノコの生えてない場所も、どうやってか綺麗に色付いており、まるでペンキでも塗ったかのようなカラフルな見た目になっていた。
「いや、びっくりじゃの。どうやって作ったか、まるで見当も付かぬわ。この色は、そういう発色が見られる種類の菌を集めて作っておるのかのぉ?」
「そうなりますねぇ」
「ふむふむ、ほぉほぉ……これは面白いのぉ。して、この部屋以外の場所も似たようなものなのかの?」
「いえ~、それぞれに特色付けた作りになっていますよぉ? 例えばこちらなんでどうですぅ?」
元々は自身に危険が迫った時の長期間避難できる所として作られた地下洞窟であるため、ここには結構な広さと部屋の数があるのだ。最初の部屋はその一つに案内されていたのだが、どうやら別の部屋はそれぞれ特色があるらしく、リフィは2つ隣の部屋を案内した。
「どれどれ……ぬっお!? ……これは知らずに見てしまうと、ある意味びっくりする光景じゃのぉ。しかし、こんな骨、どこにあったかの?」
するとそこには大きな獣の骨の標本のようなものが横たわっており、そこにまんべんなくキノコが繁殖している、すこしばかりオドロオドロしいオブジェになっていた。正にキノコに侵食されている、の図である。
「これはですねぇ、保管庫の方に解体されずに保存されてた獣のものですねぇ。なので、こちらで適切に処理させて頂きましたぁ」
「どう、とは聞くまいよ」
恐らく食べない部分をリフィやその眷属の栄養としているのだろう事は、容易に察せられた。が、お子さ魔王は突っ込まない! 余り気持ちの良い話ではないだろうからである!
「こちらも彩られてはおるが、今までの部屋と比べると地味じゃの?」
「居住用の部屋ですのでぇ、落ち着いた感じにしてありますぅ」
「なるほどのぅ。にしても……どの部屋も本当に色彩豊かじゃのぉ」
案内された中には、部屋の真ん中に泉が湧き出ていて、その周りを照らすように光るキノコ達が群生しているという幻想的な部屋もあったが、それは稀なケースであり、殆どの部屋には魔道具によって光が届けられている。そして、そのどれもが綺麗に彩られているのだった。リフィの色彩センスは中々に良いようだ。少なくとも、お子さ魔王好みと言えた。
「未来永劫、ここが私達キノコだけの楽園~なんてありえませんからぁ。そもそも魔王様の所有される洞窟ですしぃ? ですので、いつでも使って頂けるようにはしてるんですぅ」
「ほぉ? ……言われてみれば、これまで案内されてきた部屋は大別して3種類あった気がするのぉ。展示用、研究用、住居用という感じかの?」
「はぁい。基本的に最も多くのスペースを頂いた研究用のブースで菌床を育てているんですぅ。展示用のブースでも自由繁殖させたりはしてますよぉ。なお~、住居スペースでは色付けこそしましたがぁ、有害なものを駆逐した後はぁ、有害な菌類が繁殖しないようにしてますからぁ、とぉっても綺麗なんですよぉ? それこそぉ、病気になれるもんならなってみやがれ~、みたいなぁ?」
「そうかそうか」
その答えに、綺麗好きのお子さ魔王は気分を良くする。綺麗に使ってもらっておるなら何よりじゃ、と。しかし味気なかった洞窟が色彩豊かになっていたことで、思わず魔王は思いついたことを口にするのだった。
「ほんに鮮やかじゃのぉ。綺麗に整えていたとはいえ、あの削っただけの洞窟がのぉ。……これはもしや、キノコから染料も作れたりするのかのー」
「あー!? できるかも! できちゃうかもですぅ! 魔王様ぁ!」
魔王の呟きを拾うと、いきなりボルテージマックスで同意を返すリフィ。しかし魔王はその反応の余りの強さに、思わず驚き飛び上がるのだった。
「うっひゃああぁ!? び、びび、びっくりするじゃろうが! いきなり大きな声を出すでないわ! ……全くもう。ちゅうかお主、たまぁに気勢が跳ね上がるのは何故なんじゃ?」
「驚かせて申し訳ありません~。ですがぁ、私達の種族ってぇ、大体受け身なんですよねぇ。胞子に乗って別の地域に行ったりもしますけどぉ、ほぼほぼ全滅ですしぃ、着生できたとしてぇ、育つのに極めて長い時間が必要になるんですよぉ。で、せっかくキノコの体を得る程育つことができてもぉ、ぱっくり食べられちゃうことも多くぅ……。なのでぇ、私のように人間サイズまで大きくなれるのは稀なんですよねぇ。私もぉ、秘境と呼ばれるような所で生まれましたからぁ。そういう意味でもぉ、余り人間になりきれてないと言うかぁ」
「……お主、普段は感情が希薄じゃもんな」
「でもぉ、せっかくここまでの大きな体を得ることのできた私はぁ、可能性を広く広く模索してるんですよぅ。多分ですがぁ、私の感情の全てはぁ、新しい発見に注ぎ込まれてるんだと思いますぅ」
「ほむ……なんというかお主は研究者肌っちゅうんかの? そこら辺は儂とよく似ておる気がするのぉ。ま、なんじゃ。つまり染料が作れるかも知れないというのも、そういう可能性の一つであるわけじゃの。で、新たな発見である染色材料という言葉に気分が高揚しきってしまったと?」
「そうなんですぅ。他の場所じゃ駄目なんですぅ~。私の元いた秘境なんてダメダメなんですぅ! 菌床の育成に最適なこの場所だからこそ! 色んな可能性に挑戦できるんですぅ!」
「お、おぅ、そうか。……良かったの」
「はい! 魔王様には心より感謝してますぅ!」
食い気味に笑顔を振りまいて詰め寄ってくるリフィに若干引き気味のお子さ魔王であったが、用意した場所を絶賛されたことに悪い気はしなかったのか、素直に祝福を返すのだった。
「ではこれより新しいことに挑戦するのじゃな。ということは、またここで新たな菌床を育てるために籠もることになりそうかの?」
「いえいえ~。それには及ばないのですよぉ」
「む? 何故じゃな?」
魔王の指摘を受けたリフィは指をチッチッチと振ると、その疑問に答えるべく奥に向かって呼びかけた。
「ご紹介しますね、魔王様ぁ。はいは~い、皆ぁ、出っておいでぇ~。この楽園を提供してくださった魔王様にご挨拶するのですよー」
「皆? とは? ……ぉ? ぉぉお? ふぉぉおお!?」
「ま、お?」「しゃま?」「あるじ?」「だぁれ?」「まんまー」
大きなキノコの傘を帽子のように頭にくっ付けた幼女達が次々と、大きなキノコたちの影からひょっこり顔を出してくるではないか! 次々と現れるキノコ幼女達に、お子さ魔王はただただ驚愕するのであった。
「魔王様ぁ!」
「にゅおわぁっ!? ……っとっとっとっとおおおっ!? っぎゃー!? って、叫んどる場合ではないわ! ほいっ! ほいっ! ……よしっ! って、うぎゃんっ!!」
日課である実験の最中、何故かメイド服姿のリフィがお子さ魔王に突撃してきたのである。具体的には、お高い素材を慎重に慎重にピンセットで摘まんで、そろーりつまんで移動させて、そおっとそおっと……そんな最中に大声で呼びかけてきた挙げ句、後ろから抱きついてきたのである。お子さ魔王は転げそうになる所を何とか堪えるも、お高い素材は宙に舞う。それに気付いたお子さ魔王、悲鳴を上げるも我に返り、魔法でシャーレを浮かせて素材をキャッチ、無事に着地させることに成功する。……までは良かったが、ホッとしたのかリフィの(キノコゆえの)さほど重くない体重を支えきれず、顔面から床に着地したのであった。
「大丈夫ですかぁ? 魔王様ぁ」
「ぶはぁっ! 大丈夫? じゃないわい! 誰じゃ!? ……ぬ? お? おー、お主……確かキノコ娘の……れふぃ!」
「惜しいですぅ。私の名前はぁ、リフィ、ですよぉ」
存在を忘れかけてはいたものの、何とか思い出し……切れなかったお子さ魔王。残念っ! 一方、特に残念そうな素振りは見せないリフィは改めて覚えてもらうべく、自らの名を名乗るのであった。
「お? おお、おお、そうじゃった、そうじゃった。っちゅうか、あんまりにも見かけぬ故、うちに居ることすらすっかり忘れておったわ。……というか、実験中に大きな声で呼ぶんじゃないわい! ましてや抱きつくなんぞもっての外じゃぞ!? 儂の大事な素材ちゃんが失われたらどうするんじゃ!」
「えへへぇ?」
ゆるりとお子さ魔王から体を離したリフィは、割と大きな胸をきゅっと強調するポーズで小首を傾げる。しかし、魔王には通じなかった!
「儂相手に媚びても何も出んわい。そんな物は町中のモテなさそうな男相手にやるんじゃの」
「そうなんですねぇ」
だいたいそれ菌糸の固まりじゃろ、とお子さ魔王はフンと鼻白む。
「で、どうしたんじゃ。確かお主、眷属というか菌床を育てておったんじゃろうが?」
「はい! お陰様で! キノコの楽園が出来上がりました!」
お子さ魔王はリフィが見せた素振りの有効的な使い場所を教えると、近況報告を促す。すると、魔王の山小屋地下で、キノコパラダイスが誕生したと、テンションアゲアゲのリフィに告げらる。お子さ魔王としては、自由に使って良いとはいったが、え? 何? 占拠する気なの? と、少々困惑する事態なのであった。
「ら、楽園じゃと? おおう、そりゃまた何と言うか……見るのが少しばかり怖い響きじゃな」
「もー断然、パラダイスなのですぅ」
「……もしかせずとも、見に来いと言うとるのか?」
「(はっし)」
リフィのキラキラした瞳が、ぜひ見に来いと言わんばかりなので思わず聞いてしまったお子さ魔王。案の定というか答えは決まりきっており、リフィも逃してなるものかと魔王の腕を掴んで離さないのだった。
「……分かった分かった。じゃが、これより先は儂の実験の邪魔などせぬようにな。場合によっては儂、泣くからの? 分かったな? 邪魔は駄目じゃぞ?」
「わかりましたぁ」
別に見たくないわけではないし、そもそも自分の家の地下のことである。確認しないわけにもいかないだろう。それに、すこーしばかり興味だってある。いや、少しどころかかなりある。お子さ魔王は気持ちを切り替えると、それでも今度から実験の邪魔だけはしてくれるなと、釘を刺すことは忘れないのである。そこは忘れてはいけないことなのである。大事なことだから二回言った! ……そして二人は連れ立って、地下にあるというキノコパラダイスへと下りていくのであった。
………
……
…
「ふぉおおおぉぉお……よもや、これほど、とは……」
「えへへ~」
リフィに案内されて入った大きめの部屋でお子さ魔王の目に飛び込んできたのは、色とりどりのキノコに覆われた正にキノコの楽園であった。採光の役割を持った魔道具によって照らされたそこには、巨大なキノコが生えてるのは勿論、小さなキノコも規則正しく生えていて、よくある放置された洞窟のような不衛生な感じは微塵もしない。更にキノコの生えてない場所も、どうやってか綺麗に色付いており、まるでペンキでも塗ったかのようなカラフルな見た目になっていた。
「いや、びっくりじゃの。どうやって作ったか、まるで見当も付かぬわ。この色は、そういう発色が見られる種類の菌を集めて作っておるのかのぉ?」
「そうなりますねぇ」
「ふむふむ、ほぉほぉ……これは面白いのぉ。して、この部屋以外の場所も似たようなものなのかの?」
「いえ~、それぞれに特色付けた作りになっていますよぉ? 例えばこちらなんでどうですぅ?」
元々は自身に危険が迫った時の長期間避難できる所として作られた地下洞窟であるため、ここには結構な広さと部屋の数があるのだ。最初の部屋はその一つに案内されていたのだが、どうやら別の部屋はそれぞれ特色があるらしく、リフィは2つ隣の部屋を案内した。
「どれどれ……ぬっお!? ……これは知らずに見てしまうと、ある意味びっくりする光景じゃのぉ。しかし、こんな骨、どこにあったかの?」
するとそこには大きな獣の骨の標本のようなものが横たわっており、そこにまんべんなくキノコが繁殖している、すこしばかりオドロオドロしいオブジェになっていた。正にキノコに侵食されている、の図である。
「これはですねぇ、保管庫の方に解体されずに保存されてた獣のものですねぇ。なので、こちらで適切に処理させて頂きましたぁ」
「どう、とは聞くまいよ」
恐らく食べない部分をリフィやその眷属の栄養としているのだろう事は、容易に察せられた。が、お子さ魔王は突っ込まない! 余り気持ちの良い話ではないだろうからである!
「こちらも彩られてはおるが、今までの部屋と比べると地味じゃの?」
「居住用の部屋ですのでぇ、落ち着いた感じにしてありますぅ」
「なるほどのぅ。にしても……どの部屋も本当に色彩豊かじゃのぉ」
案内された中には、部屋の真ん中に泉が湧き出ていて、その周りを照らすように光るキノコ達が群生しているという幻想的な部屋もあったが、それは稀なケースであり、殆どの部屋には魔道具によって光が届けられている。そして、そのどれもが綺麗に彩られているのだった。リフィの色彩センスは中々に良いようだ。少なくとも、お子さ魔王好みと言えた。
「未来永劫、ここが私達キノコだけの楽園~なんてありえませんからぁ。そもそも魔王様の所有される洞窟ですしぃ? ですので、いつでも使って頂けるようにはしてるんですぅ」
「ほぉ? ……言われてみれば、これまで案内されてきた部屋は大別して3種類あった気がするのぉ。展示用、研究用、住居用という感じかの?」
「はぁい。基本的に最も多くのスペースを頂いた研究用のブースで菌床を育てているんですぅ。展示用のブースでも自由繁殖させたりはしてますよぉ。なお~、住居スペースでは色付けこそしましたがぁ、有害なものを駆逐した後はぁ、有害な菌類が繁殖しないようにしてますからぁ、とぉっても綺麗なんですよぉ? それこそぉ、病気になれるもんならなってみやがれ~、みたいなぁ?」
「そうかそうか」
その答えに、綺麗好きのお子さ魔王は気分を良くする。綺麗に使ってもらっておるなら何よりじゃ、と。しかし味気なかった洞窟が色彩豊かになっていたことで、思わず魔王は思いついたことを口にするのだった。
「ほんに鮮やかじゃのぉ。綺麗に整えていたとはいえ、あの削っただけの洞窟がのぉ。……これはもしや、キノコから染料も作れたりするのかのー」
「あー!? できるかも! できちゃうかもですぅ! 魔王様ぁ!」
魔王の呟きを拾うと、いきなりボルテージマックスで同意を返すリフィ。しかし魔王はその反応の余りの強さに、思わず驚き飛び上がるのだった。
「うっひゃああぁ!? び、びび、びっくりするじゃろうが! いきなり大きな声を出すでないわ! ……全くもう。ちゅうかお主、たまぁに気勢が跳ね上がるのは何故なんじゃ?」
「驚かせて申し訳ありません~。ですがぁ、私達の種族ってぇ、大体受け身なんですよねぇ。胞子に乗って別の地域に行ったりもしますけどぉ、ほぼほぼ全滅ですしぃ、着生できたとしてぇ、育つのに極めて長い時間が必要になるんですよぉ。で、せっかくキノコの体を得る程育つことができてもぉ、ぱっくり食べられちゃうことも多くぅ……。なのでぇ、私のように人間サイズまで大きくなれるのは稀なんですよねぇ。私もぉ、秘境と呼ばれるような所で生まれましたからぁ。そういう意味でもぉ、余り人間になりきれてないと言うかぁ」
「……お主、普段は感情が希薄じゃもんな」
「でもぉ、せっかくここまでの大きな体を得ることのできた私はぁ、可能性を広く広く模索してるんですよぅ。多分ですがぁ、私の感情の全てはぁ、新しい発見に注ぎ込まれてるんだと思いますぅ」
「ほむ……なんというかお主は研究者肌っちゅうんかの? そこら辺は儂とよく似ておる気がするのぉ。ま、なんじゃ。つまり染料が作れるかも知れないというのも、そういう可能性の一つであるわけじゃの。で、新たな発見である染色材料という言葉に気分が高揚しきってしまったと?」
「そうなんですぅ。他の場所じゃ駄目なんですぅ~。私の元いた秘境なんてダメダメなんですぅ! 菌床の育成に最適なこの場所だからこそ! 色んな可能性に挑戦できるんですぅ!」
「お、おぅ、そうか。……良かったの」
「はい! 魔王様には心より感謝してますぅ!」
食い気味に笑顔を振りまいて詰め寄ってくるリフィに若干引き気味のお子さ魔王であったが、用意した場所を絶賛されたことに悪い気はしなかったのか、素直に祝福を返すのだった。
「ではこれより新しいことに挑戦するのじゃな。ということは、またここで新たな菌床を育てるために籠もることになりそうかの?」
「いえいえ~。それには及ばないのですよぉ」
「む? 何故じゃな?」
魔王の指摘を受けたリフィは指をチッチッチと振ると、その疑問に答えるべく奥に向かって呼びかけた。
「ご紹介しますね、魔王様ぁ。はいは~い、皆ぁ、出っておいでぇ~。この楽園を提供してくださった魔王様にご挨拶するのですよー」
「皆? とは? ……ぉ? ぉぉお? ふぉぉおお!?」
「ま、お?」「しゃま?」「あるじ?」「だぁれ?」「まんまー」
大きなキノコの傘を帽子のように頭にくっ付けた幼女達が次々と、大きなキノコたちの影からひょっこり顔を出してくるではないか! 次々と現れるキノコ幼女達に、お子さ魔王はただただ驚愕するのであった。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる