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いざ変態征伐へ! ……とはなりませんでした。主にネピのせいで
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「まぁドロシーの頼みとなれば仕方ないの。しかしの、ドロシー。お主は連れて行けぬ」
「まんまぁ?」
「相手が相手じゃからな。あ奴を楽しませてやる理由なんぞ塵ひとつ分もないわい」
ちびっ子好きの変態の下に、ドロシーを連れて行くことは許されなかった! 一方、ネピは何かが気になるようで、おずおずと質問するのであった。
「……えっと、あの、お館様?」
「なんじゃい」
「そのー、魔女さんはどれ位までのちびっ子好き、なんでしょう……か?」
ネピが、何か大事なことを言い忘れていたのでは? と思っていたお子さ魔王、思わずズッコケかけた。
「おまっ……。もーしかして自分も危険なんじゃないかとでも思うとるのか?」
「ぅえっ!? あ、はは、はー……」
「はぁ~~~。呆れたやつじゃのー。お主の里を魔女の手から救うんじゃろうが? ……安心せい。うちのきのこ娘達は好みであるかもしれんが、お主は微妙に外れておる」
「ほっ……。微妙ってところが引っかかりますが、安心しました」
ネピがストライクから外れるならリフィはもちろん、コピアもちょっと外れるかも知れない。が、まぁ細かいことはどうでも良いのである。きのこ娘達は連れて行かないのだから。
「リフィや」
「何でしょう~、魔王様ぁ」
「留守の間お主にここのことを任せる」
「かしこまりましたぁ」
にっこり微笑むリフィは、何も言わず後は任せろとばかりに魔王を送り出す。良くできたメイドであった。
「頼んだ。では行くとするかの。ネピ、この新しい魔道具をつけよ」
「お館様、これは?」
お子さ魔王がネピに差し出したのは、首輪……ではなくチョーカーである。少し前のネピであれば、私はペットじゃないと突っぱねたかも知れないが、今のネピは本人には非公認ながらもお子さ魔王の眷属であったため、むしろ喜んで受け取った。
「その魔道具は、お主がドラゴンの姿に戻っても首を絞めること無く大きくなるはずじゃ。耐久は低めじゃから一度試してみれば良い。お主に合わせて大きくならぬ場合はちぎれ飛ぶだけじゃからの」
「分かりました! お館様」
完全に信用しきっているネピはさっさとチョーカーを首に装着すると、先に断ってから元の姿に戻るのであった。ネピ、今回に限っては、前回の失敗を繰り返さなかったのである。
「おお! 大丈夫でした! 空は……すごい! 飛べそうです!」
「そうかそうか。であれば、お主の里まで空を飛んで案内せい」
………
……
…
「わぁー! 久しぶりの本体で空飛んでますぅー!」
お子さ魔王を背に乗せたネピは、久しぶりの開放感に浮かれに浮かれていた。
「……ネピ、気分の高揚は抑えておけよ」
「そうは仰られましてもぉ!」
「調子に乗ると、往々にして酷い目に……」
遭うんじゃ、とのお子さ魔王の言葉は続くことはなかった。何故なら、地上よりネピ目掛けて魔法らしきものが照射され、浮かれまくっていたネピはモロに直撃を喰らい……気を失った。
「なんっじゃー!?」
「(きゅ――……っ)」
「おいこらネピや! 起きんか! ああ、もう……完全に目を回しとるのぉ。っちゅーか、浮かれていたのが原因というより、経験の浅さから来る、警戒心の無さが原因じゃな。このまま落ちれば大惨事じゃの。どれ……」
お子さ魔王、落下するネピからすっと距離を取ると、ネピを魔法でふわりと地面に着地できるように調整するのだった。
………
……
…
「ふぅ、やれやれ。手間のかかる奴じゃのぉ……」
ネピの巨体を軟着陸させたお子さ魔王は、良い仕事したとばかりに大仰に汗を拭う仕草を取る。……汗なんてかいてないけどね! するとそこに、魔法を撃った者の仲間だろうか? 武装した騎士が一人、お子さ魔王の前に躍り出てきたのだった。
「止まれ! そこの者! 名を名乗れ! そしておかしな動きをするなよ!」
「……なんじゃいお主は」
「私は名を名乗れと言っている!」
お子さ魔王の質問など受け付けないとばかりに我を通す男。恐らくは目の前の人物の実力を感じ取っているのだろうが、お子さ魔王、これにはカッツィーンときた。
「一度しか言わんからよく聞けよー? 『僕は阿呆です』……が、名前じゃ」
「……は?」
お子さ魔王、思いっきりおちょくることに決めたらしい。
「儂は名を言ったぞ? ほれ、ちゃんと呼んでみぃ? 覚えておるじゃろ? まさか聞きそびれたとか、無いわな?」
「ふ、ふざけているのか!」
「なんじゃー? 人の名も覚えられんのかー? 見たまんま阿呆じゃったかー。じゃあ阿呆を相手に何を話しても無駄じゃのー」
お子さ魔王、煽る煽る。男の方も煽られ耐性が無いのか、顔の色を赤くして、怒りのボルテージが一気に高めていく。
「下郎が……私をこけにするのも大概にしろ! 私を誰だと思って……」
「阿呆じゃと思っている」
「くっ……の!」
お子さ魔王、バッサリである。お前は阿呆以外の名前を許さない、とでも言いたげである。
「そもそもお主は名乗っておらんじゃろうが。何処の某かも知らぬのに、誰もクソもないわい。今までの遣り取りの中で感じたまま、お主を阿呆じゃと認定したまでよ」
「……許さん。素っ首落としてくれる!」
「はー……。儂、阿呆は好かん」
と、お子さ魔王、指をぴちんと鳴らす。……今回は微妙に音が鳴ったよ! 良かったねぇ! するとお子さ魔王の魔法か、まるで男の体が透明になったかのように、男の装備が見る間に透け落ちていったのだ。
「誰が阿呆ぅ……? ぅぃやああああっ!?」
「あー、森の中で開放感故、脱ぎたくなる気持ちも、ちぃっとくらいは分からんではないがのー。真っ裸っちゅーのはどーかと思うんじゃー」
「な、ななななな」
「周りに知り合いはおるのかのー? 大きな音でも出せば来てくれるかのー? ほーれ」
お子さ魔王、手のひらを空に向けると、火の玉を放ち……それはある一定の高さまで上がると、
ッド――――――ンッ
「うわぁっ!? ……な、何だ今のは?」
見た目の美しさより、長く留まる光と音重視の大音量な花火なのであった。目立つ目立つ。
「おーい! ユアン! 無事かー!」
「あ、ああ! 無事だ! 先程こちらに怪しい奴が……!?」
「怪しい奴!? 分かった! すぐ行く!」
「……!? ま、待て、ルガー! 今はちょっとまずい!」
「ユアン、どうしたのー!? まさか怪我でもしたの!?」
「イリーナ!? 駄目だイリーナ! こっちに来ちゃ……あ」
「「………………」」
こうしてチームなのであろう彼等は、お子さ魔王の花火の下、一堂に会すことができたのであった。ご愁傷さまである。そしてこのお子さ魔王、流石は魔王を自称するだけあって、この程度では終わらせることを良しとしなかった。
「冒険者様っ! この変態をどうにかして下さいっ!」
きゃっるーん! とばかりに、如何にもいたいけなお子様ですよ! と演技したのである! あざとい!
「ちょぉっ!? おまっ……」
「「ユアン……」」
「ちが、違うんだ! これは、そこのガキが……っ!」
さて、これからどんな面白劇場を見せてくれるのかと、口の端をにぃっと持ち上げるお子さ魔王。しかしながら、劇場は開かれること無く強制終了させられることとなる。
「そこまでにしてくれんか、ザンクエニア殿」
「「「ざん……?」」」
「おー? ……何じゃ。儂を知っとるのがおったのか、詰まらん。お主は?」
「失礼致しました。自分はゾルトと申します。貴方のことは存じ上げておりますよ。バトルランク7の冒険者、ザンクエニア殿。その他の噂も色々と……」
「ほう、色々とか……なるほどの」
「「「バトルランク7!?」」」
ゾルトは暗に、あんたが魔王だということも知ってるよ、と仄めかしてきたため、お子さ魔王はこれじゃ遊べんなー、とばかりに心の中で舌打ちする。一方、他の冒険者達の方は、このちんちくりんがバトルランク7と聞いて驚愕の表情を浮かべる。定番ですね。
「んで、そこの露出狂は一体なんじゃい」
「この……っ! これはお前が!」
「あん?」
「おま………………は?(ぺたん)」
お子さ魔王、それまで隠してあった魔力を開放した上に、例え魔力に疎くても分かる程の威圧をユアンと呼ばれた男にかける。ユアンの感じる脅威はドラゴン並みであったため、腰を抜かしてみっともない格好でへたり込むのだった。マッパっしょ! 絵面ぁ! 考えて!? 何処かの任侠コメディじゃあるまいし! ……と、そこにゾルトが二人の間に体をねじ込んだ。
「ザンクエニア殿、その辺で」
(ほぉ、こ奴……できると思っとったが、儂の威圧をものともせんとは。同ランクか一つ下辺りかの?)
「おお、済まんな。礼儀のなっておらぬ小僧を見ると、ついプチッとやりたくなってしもうての」
「ひぃっ!?」
威圧に次いで殺気も飛ばされ、ユアンは情けない悲鳴を上げる。完全にガクブルの戦意喪失である。尚、他のメンバーはお子さ魔王の魔力が開放された時点で腰を抜かしている。……幸い、どのメンバーも粗相までには至っていない。自身の括約筋を褒めてあげて下さい。
殺気まで飛ばされたことで、余波が多少かすったゾルトにも緊張感が走っていた。彼はお子さ魔王の見立て通り、戦闘ランク7の凄腕であった。しかし同ランクながら、二人の実力は遥かな格差があり、ゾルトはそれを肌で感じ取りつつ目の前の魔王の出方を伺う。ただ、ゾルト達にとっては幸運なことにお子さ魔王の方はもう既に別のことに興味が移っており、その様子を感じ取ったゾルトは思わず安堵の小さな溜め息を吐く。
「で、お主ら何しにこんな所へ来とるんじゃ。奴等はともかく、お主は分かって近づいてきたのじゃろう?」
「……ふぅ。……あー、はい、そうですな。自分はこいつらの付き添いとしてここまでやって参りました」
お子さ魔王の方もここまでの遣り取りで、目の前の男が対自分用、つまり魔王相手の交渉役なのだと直感し……少し同情の目を向けた。
「それというのも……ええとですな……言い難いのですが……我々の用はそちらのドラゴンにあってですな」
「……あー、あれか。こ奴が方々で暴れたもんじゃから、堪らずに討伐依頼が出された、っちゅーところか」
「(びくんっ)」
(ああん?? こんのたわけがっ! 起きたなら普通に起きておけ! 後で言い訳しなきゃならん場合、面倒臭いじゃろが! そもそも討伐依頼が出ぬ方がおかしいじゃろ! 考えなしめ! ……後でまたいびらねばな)
この遣り取りに気絶しているはずのネピの体がピクリと震える。お子さ魔王、それを感じ取って内心毒吐く。激おこである。
「ええ。で、あった、のですが……もう無用のようですな?」
「うむ、そうじゃな。これはもう悪さはせん。儂が保証しよう」
「ふざけるな!」
まっぱ戦士ユアン、なんと魔王の威圧や殺気を打ち払い、毅然と立ちはだかったのだった。ガクブルしながら! ……っつか、まずは隠せよ。
「まんまぁ?」
「相手が相手じゃからな。あ奴を楽しませてやる理由なんぞ塵ひとつ分もないわい」
ちびっ子好きの変態の下に、ドロシーを連れて行くことは許されなかった! 一方、ネピは何かが気になるようで、おずおずと質問するのであった。
「……えっと、あの、お館様?」
「なんじゃい」
「そのー、魔女さんはどれ位までのちびっ子好き、なんでしょう……か?」
ネピが、何か大事なことを言い忘れていたのでは? と思っていたお子さ魔王、思わずズッコケかけた。
「おまっ……。もーしかして自分も危険なんじゃないかとでも思うとるのか?」
「ぅえっ!? あ、はは、はー……」
「はぁ~~~。呆れたやつじゃのー。お主の里を魔女の手から救うんじゃろうが? ……安心せい。うちのきのこ娘達は好みであるかもしれんが、お主は微妙に外れておる」
「ほっ……。微妙ってところが引っかかりますが、安心しました」
ネピがストライクから外れるならリフィはもちろん、コピアもちょっと外れるかも知れない。が、まぁ細かいことはどうでも良いのである。きのこ娘達は連れて行かないのだから。
「リフィや」
「何でしょう~、魔王様ぁ」
「留守の間お主にここのことを任せる」
「かしこまりましたぁ」
にっこり微笑むリフィは、何も言わず後は任せろとばかりに魔王を送り出す。良くできたメイドであった。
「頼んだ。では行くとするかの。ネピ、この新しい魔道具をつけよ」
「お館様、これは?」
お子さ魔王がネピに差し出したのは、首輪……ではなくチョーカーである。少し前のネピであれば、私はペットじゃないと突っぱねたかも知れないが、今のネピは本人には非公認ながらもお子さ魔王の眷属であったため、むしろ喜んで受け取った。
「その魔道具は、お主がドラゴンの姿に戻っても首を絞めること無く大きくなるはずじゃ。耐久は低めじゃから一度試してみれば良い。お主に合わせて大きくならぬ場合はちぎれ飛ぶだけじゃからの」
「分かりました! お館様」
完全に信用しきっているネピはさっさとチョーカーを首に装着すると、先に断ってから元の姿に戻るのであった。ネピ、今回に限っては、前回の失敗を繰り返さなかったのである。
「おお! 大丈夫でした! 空は……すごい! 飛べそうです!」
「そうかそうか。であれば、お主の里まで空を飛んで案内せい」
………
……
…
「わぁー! 久しぶりの本体で空飛んでますぅー!」
お子さ魔王を背に乗せたネピは、久しぶりの開放感に浮かれに浮かれていた。
「……ネピ、気分の高揚は抑えておけよ」
「そうは仰られましてもぉ!」
「調子に乗ると、往々にして酷い目に……」
遭うんじゃ、とのお子さ魔王の言葉は続くことはなかった。何故なら、地上よりネピ目掛けて魔法らしきものが照射され、浮かれまくっていたネピはモロに直撃を喰らい……気を失った。
「なんっじゃー!?」
「(きゅ――……っ)」
「おいこらネピや! 起きんか! ああ、もう……完全に目を回しとるのぉ。っちゅーか、浮かれていたのが原因というより、経験の浅さから来る、警戒心の無さが原因じゃな。このまま落ちれば大惨事じゃの。どれ……」
お子さ魔王、落下するネピからすっと距離を取ると、ネピを魔法でふわりと地面に着地できるように調整するのだった。
………
……
…
「ふぅ、やれやれ。手間のかかる奴じゃのぉ……」
ネピの巨体を軟着陸させたお子さ魔王は、良い仕事したとばかりに大仰に汗を拭う仕草を取る。……汗なんてかいてないけどね! するとそこに、魔法を撃った者の仲間だろうか? 武装した騎士が一人、お子さ魔王の前に躍り出てきたのだった。
「止まれ! そこの者! 名を名乗れ! そしておかしな動きをするなよ!」
「……なんじゃいお主は」
「私は名を名乗れと言っている!」
お子さ魔王の質問など受け付けないとばかりに我を通す男。恐らくは目の前の人物の実力を感じ取っているのだろうが、お子さ魔王、これにはカッツィーンときた。
「一度しか言わんからよく聞けよー? 『僕は阿呆です』……が、名前じゃ」
「……は?」
お子さ魔王、思いっきりおちょくることに決めたらしい。
「儂は名を言ったぞ? ほれ、ちゃんと呼んでみぃ? 覚えておるじゃろ? まさか聞きそびれたとか、無いわな?」
「ふ、ふざけているのか!」
「なんじゃー? 人の名も覚えられんのかー? 見たまんま阿呆じゃったかー。じゃあ阿呆を相手に何を話しても無駄じゃのー」
お子さ魔王、煽る煽る。男の方も煽られ耐性が無いのか、顔の色を赤くして、怒りのボルテージが一気に高めていく。
「下郎が……私をこけにするのも大概にしろ! 私を誰だと思って……」
「阿呆じゃと思っている」
「くっ……の!」
お子さ魔王、バッサリである。お前は阿呆以外の名前を許さない、とでも言いたげである。
「そもそもお主は名乗っておらんじゃろうが。何処の某かも知らぬのに、誰もクソもないわい。今までの遣り取りの中で感じたまま、お主を阿呆じゃと認定したまでよ」
「……許さん。素っ首落としてくれる!」
「はー……。儂、阿呆は好かん」
と、お子さ魔王、指をぴちんと鳴らす。……今回は微妙に音が鳴ったよ! 良かったねぇ! するとお子さ魔王の魔法か、まるで男の体が透明になったかのように、男の装備が見る間に透け落ちていったのだ。
「誰が阿呆ぅ……? ぅぃやああああっ!?」
「あー、森の中で開放感故、脱ぎたくなる気持ちも、ちぃっとくらいは分からんではないがのー。真っ裸っちゅーのはどーかと思うんじゃー」
「な、ななななな」
「周りに知り合いはおるのかのー? 大きな音でも出せば来てくれるかのー? ほーれ」
お子さ魔王、手のひらを空に向けると、火の玉を放ち……それはある一定の高さまで上がると、
ッド――――――ンッ
「うわぁっ!? ……な、何だ今のは?」
見た目の美しさより、長く留まる光と音重視の大音量な花火なのであった。目立つ目立つ。
「おーい! ユアン! 無事かー!」
「あ、ああ! 無事だ! 先程こちらに怪しい奴が……!?」
「怪しい奴!? 分かった! すぐ行く!」
「……!? ま、待て、ルガー! 今はちょっとまずい!」
「ユアン、どうしたのー!? まさか怪我でもしたの!?」
「イリーナ!? 駄目だイリーナ! こっちに来ちゃ……あ」
「「………………」」
こうしてチームなのであろう彼等は、お子さ魔王の花火の下、一堂に会すことができたのであった。ご愁傷さまである。そしてこのお子さ魔王、流石は魔王を自称するだけあって、この程度では終わらせることを良しとしなかった。
「冒険者様っ! この変態をどうにかして下さいっ!」
きゃっるーん! とばかりに、如何にもいたいけなお子様ですよ! と演技したのである! あざとい!
「ちょぉっ!? おまっ……」
「「ユアン……」」
「ちが、違うんだ! これは、そこのガキが……っ!」
さて、これからどんな面白劇場を見せてくれるのかと、口の端をにぃっと持ち上げるお子さ魔王。しかしながら、劇場は開かれること無く強制終了させられることとなる。
「そこまでにしてくれんか、ザンクエニア殿」
「「「ざん……?」」」
「おー? ……何じゃ。儂を知っとるのがおったのか、詰まらん。お主は?」
「失礼致しました。自分はゾルトと申します。貴方のことは存じ上げておりますよ。バトルランク7の冒険者、ザンクエニア殿。その他の噂も色々と……」
「ほう、色々とか……なるほどの」
「「「バトルランク7!?」」」
ゾルトは暗に、あんたが魔王だということも知ってるよ、と仄めかしてきたため、お子さ魔王はこれじゃ遊べんなー、とばかりに心の中で舌打ちする。一方、他の冒険者達の方は、このちんちくりんがバトルランク7と聞いて驚愕の表情を浮かべる。定番ですね。
「んで、そこの露出狂は一体なんじゃい」
「この……っ! これはお前が!」
「あん?」
「おま………………は?(ぺたん)」
お子さ魔王、それまで隠してあった魔力を開放した上に、例え魔力に疎くても分かる程の威圧をユアンと呼ばれた男にかける。ユアンの感じる脅威はドラゴン並みであったため、腰を抜かしてみっともない格好でへたり込むのだった。マッパっしょ! 絵面ぁ! 考えて!? 何処かの任侠コメディじゃあるまいし! ……と、そこにゾルトが二人の間に体をねじ込んだ。
「ザンクエニア殿、その辺で」
(ほぉ、こ奴……できると思っとったが、儂の威圧をものともせんとは。同ランクか一つ下辺りかの?)
「おお、済まんな。礼儀のなっておらぬ小僧を見ると、ついプチッとやりたくなってしもうての」
「ひぃっ!?」
威圧に次いで殺気も飛ばされ、ユアンは情けない悲鳴を上げる。完全にガクブルの戦意喪失である。尚、他のメンバーはお子さ魔王の魔力が開放された時点で腰を抜かしている。……幸い、どのメンバーも粗相までには至っていない。自身の括約筋を褒めてあげて下さい。
殺気まで飛ばされたことで、余波が多少かすったゾルトにも緊張感が走っていた。彼はお子さ魔王の見立て通り、戦闘ランク7の凄腕であった。しかし同ランクながら、二人の実力は遥かな格差があり、ゾルトはそれを肌で感じ取りつつ目の前の魔王の出方を伺う。ただ、ゾルト達にとっては幸運なことにお子さ魔王の方はもう既に別のことに興味が移っており、その様子を感じ取ったゾルトは思わず安堵の小さな溜め息を吐く。
「で、お主ら何しにこんな所へ来とるんじゃ。奴等はともかく、お主は分かって近づいてきたのじゃろう?」
「……ふぅ。……あー、はい、そうですな。自分はこいつらの付き添いとしてここまでやって参りました」
お子さ魔王の方もここまでの遣り取りで、目の前の男が対自分用、つまり魔王相手の交渉役なのだと直感し……少し同情の目を向けた。
「それというのも……ええとですな……言い難いのですが……我々の用はそちらのドラゴンにあってですな」
「……あー、あれか。こ奴が方々で暴れたもんじゃから、堪らずに討伐依頼が出された、っちゅーところか」
「(びくんっ)」
(ああん?? こんのたわけがっ! 起きたなら普通に起きておけ! 後で言い訳しなきゃならん場合、面倒臭いじゃろが! そもそも討伐依頼が出ぬ方がおかしいじゃろ! 考えなしめ! ……後でまたいびらねばな)
この遣り取りに気絶しているはずのネピの体がピクリと震える。お子さ魔王、それを感じ取って内心毒吐く。激おこである。
「ええ。で、あった、のですが……もう無用のようですな?」
「うむ、そうじゃな。これはもう悪さはせん。儂が保証しよう」
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