お子さ魔王は引き籠れない!

まんどう

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ようやく本筋に戻りました

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「はぁ……酷い目に遭うたもんじゃ。えらく無駄な寄り道になったもんじゃのぉ……」

「本当です! 私なんて危うく気を失いかけましたもん!」

 お子さ魔王につられてプンスコ怒るネピであるが……

「元はといえばお主のやんちゃが原因で引き起こされた事態ですけどねー!? 儂なんて! ただの巻き添え! 分かっとるの!?」

「あ、あはは……」

 元々討伐依頼が出されるような目立った行動を取っていたのはネピであり、その結果それなりに腕の立つ冒険者チームが派遣され、更には対ドラゴン用戦闘術の初手にて気絶させられたのもネピである。お子さ魔王の方も、久しぶりにネピにのびのび空を飛ばせてやろうとの思いやりが原因で、まさかこんな目に遭わされるとは思いもよらなかったわけである。

「ったく……。いくらお主でも、気を失ってあの高さから落ちておればただで済まんかったじゃろが」

「そこはもう! お館様を信頼しておりましたから!」

「考えを放棄するんじゃないわ! このたわけ!」

「ひぅ……」

 お館様がいれば大丈夫、なんて思考停止は許さんとがなるお子さ魔王。自分が居なくなったらどうするつもりなのかとの親心なのでしょう。……まぁ居候と言うよりは、もう完全に貴方んちの家族のつもりですけどね、そのドラゴン

「しかしこれで良う分かったじゃろ。人間は弱い。しかし侮っていい相手でもないということを」

「そうですね……。っていうか、何だったんですか? 私を気絶させたあの魔法。……魔法?」

「大型魔物専用のブレインシェイカーってところじゃろうな」

「なんか物騒な響きですね!?」

『脳みそ揺らし』なんて物騒な名前であるが、実際には揺らす・血流を不規則にする等の物理現象だけでなく、幻覚や幻聴、目隠しや目眩まし等を波状に畳み掛けて脳を酔わせる魔法である。……名前通り効果も物騒なのであった。

「まぁ、使う対象が決められておる魔法協会謹製の貸出用魔術じゃからな。その効果は身を持って知ったじゃろう。じゃが、お主が完全に気を失わなかったことから察するに、そもそも若年のドラゴンであることを念頭に置いた代物だったんじゃろうな。それか儂がおったことで多少レジストされたやもしれぬがのぉ」

「おお! 流石はお館様です!」

「……褒めても何もでんわい」

「事実ですから!」

 褒められても……などと言いながらも持ち上げられまくると、すぐに機嫌の治るお子さ魔王なのであった。

「ん、にゅふっ、んっんっんー。して、ネピよ。後、如何程掛かりそうかの?」

「里はもうそろそろですよ! あの大きな岩棚が見えますか? あの一部は幻影結界になっておりまして、あの里のドラゴンなら難なく通れます!」

「そーかそーか……ん? その理屈じゃと、儂、結界を通れなくないかの?」

 ドラゴンなら・・との言葉にひっかかるお子さ魔王。しかし聞いた相手はネピである。

「問題ありません!」

「いやお主、何を根拠にそれを問題とは思わんのよ?」

「お館様は超絶お強いので問題ないかと!」

「ん、むふっ……んまぁ! そうじゃがの!」

「はいっ!」

 またしても持ち上げられまくって、些細なことだよね! とばかりに問題を棚上げしてしまうお子さ魔王。その様子にネピは心底嬉しそうに同意してみせる。

「んーふふふ♪ ……ま、すぐ行ってもええんじゃが、回り道もしたことじゃし少々日も暮れてきておるでの。一旦どこぞの町にでも立ち寄って、休息など取ってからにしよう」

「それもそうですね! お腹も空きましたし!」

「そうじゃの。美味いもんでもあればええがのぉ」


 ………
 ……
 …


「……何とも、寂れた町じゃのぉ」

「ですねえ」

 二人の立ち寄った町は人気のあまりない、活気に乏しい町であった。町の大きさはそれなりにある割に、人の数が足りていない、そんな印象を受ける。かつては賑わいに溢れた町だったのかも知れないが……。

「……ま、一応ギルドに顔を出しておくかの。情報も何ぞあるやも知れぬ」

「では私はここらは何が名物かを聞いて回るぎゅえっ!?」

「お主のような世間知らずの単独行動を許すわけ無かろうが?」

「えぇぇ……」

 お子さ魔王からの全否定に、ネピ絶句。

「ええからついてこい。大体、飯食うにも金が要るんじゃぞ? どうせお主、金など持っとりゃせんだろうが」

「はっ!? ……そうですね!? そういえば、外じゃお金が要るんでした!」

「……お、おぬし」
(こ奴を野放しにせなんだ儂を褒めてやりたい! 偉いぞ! 儂!)

 まさか金のことを失念するような世間知らずおバカだとまで思ってなかったが、認識を一つ改める。そしてネピによって大恥かく未来を、未然に防いだ自分を自分で褒めるお子さ魔王なのであった。


 ………
 ……
 …


「おー……ここも寂れておるのぉ」

「そうなんですねー」

 寂れていた町同様に、冒険者ギルドの方も寂れていた。ネピはというと、冒険者ギルドが普段ならどういう場所であるかなどは知らないため、適当に相槌を打つ。そんなよそ者丸出しな二人に声を掛ける冒険者がいた。

「何だいおちびちゃん。ここは君のような子がくる……? おっと、失礼した。見た目と違い実力者だったようだ」

「ほぉ? 余り垂れ流してはおらぬつもりじゃったが……感じ取れるとはお主もそこそこ強いようじゃの」

「そう言ってもらえて光栄だ。俺はバニス。バトルランク6の冒険者だ」

 声を掛けてきた男は中々の実力者らしく、お子さ魔王の見た目に騙されず、その実力に勘付いたらしい。男は名をバニス、バトルランク6の冒険者だという。

「ほぉ! 6とは凄いの。儂はバトルランク7のザンクエニアと申す」

「7……道理で絶対敵わないと感じたわけだ。会えて光栄だ、ザンクエニア殿」

 握手するでもなく目を交わし合うだけの二人であったが、そこには互いへの確かな尊敬の念のようなものが感じ取れた。この互いを尊重し合う冒険者の遣り取りに、うずうずしっぱなしだったものがいる。ネピである。この二人の遣り取りに割って入るのは明らかに無粋であろう。しかしならがそこはネピ。堪らず自己紹介をっ……

「わたしはっ……!」

「これはただの連れじゃ。ネピという」

「!? えぇぇ……」

 お子さ魔王にカットされるのであった。

「お主、冒険者でもなければ大して紹介すべきこともなかろうが?」

「……! そうですね!?」

 そうだったー! とばかりに大仰に驚くネピ。お子さ魔王がカットしていなければ、きっと添える言葉に窮して正体を暴露していたに違いない。ドラゴンです! とばかりに。

「ず、随分と個性的なお連れさんだな」

「そうなんじゃ……苦労しておるよ。そもそもこ奴の関係で遠出する羽目になっておっての」

 溜め息と共にしみじみ語るお子さ魔王に、バニスは苦笑を返す。

「……時に何でここはこんなに寂れておるんじゃ? 余りに活気が無さ過ぎやせんか?」

「あー……そうだな。ここは元々そんなに賑わってる所じゃないんだ」

「そうなのか? その割に規模そのものは大きいのは何故なのかの?」

「んー……あんたなら大丈夫かな?(実はな、この近くにある切り立った山には、昔からドラゴンが住み着いているんだ)」

「(ほぅほぅ)」

 突然耳打ちするかのようなヒソヒソ声で語りだすバニスに、お子さ魔王も顔を突き合わせる。……が、その内緒話の理由はよーく知っている内容だった。それ故少しの後ろめたさと、新しい情報を得る可能性が無さそうだとの理由から、お子さ魔王は内心で溜め息を吐くのだった。

「(ドラゴン達自身は何かをするわけではないから実害はないんだ。……が、動物も寄り付かなくてな)」

「(さもあらん)」

「……ま、害獣の類も魔獣の類さえ寄り付かない程だから安全ではある。だから町ができた当初はかなり安全な町として栄えはしたんだよ。川も近くを流れてるし、町ができる以前に作られたのか、周りには溜池も多いしな。でもそもそもの土地の方が痩せててなぁ……開墾にも向かないんだよ。それに魔獣が少ないとなると冒険者の仕事はないも同然だし、産業もないとなれば寂れるのも仕方ないだろう」

「なるほどのぉ。流行りが過ぎて、ただじわじわと滅びに向かっておる……そんな所かの」

「いっそのこと、仲良くなれたりしたら違うんだろうとは思うけどな」

「……それは難しいじゃろうなぁ」

 奴等よりよっぽど強くもなければの、とそう心の中で呟くのであった。しかしそうなってくると、死にゆく町にバトルランク6の猛者の居た理由が分からなかった。

「ところでお主程の実力者がなぜこんな所におるんじゃ?」

「そりゃあここが故郷だからだよ。今はたまたま・・・・里帰りしていたのさ」

「そうかそうか。なら捨て置けぬ・・・・・・・よな」

そういうこと・・・・・・だ」

 皆まで言わずとも、何が背景にあるのかを互いに分かり合う二人……とそして蚊帳の外の一人。その後も2~3言葉を交わして別れると、お子さ魔王、少し思案にくれるのだった。

「さて。少しばかり気が変わったのぉ。依頼を出す故、お主はここで……あいや、ついてこい」

「分かりました! ……ところで今のは何の話だったんです?」

 もうこいつを一人にしない、絶対にだ。そう言わんばかりのお子さ魔王。その決意に気付かないネピは、先程の遣り取りに興味があったらしい。

「ああ、あれか? あれはあの男が、お主の里の異変を嗅ぎ取っておることの証左よ」

「……あんな遣り取りで分かっちゃうんですか。流石はお館様です!」

 ヨイショすべき所は心得てますよ! とばかりにまたまた持ち上げるネピ。まんざらでもないお子さ魔王も、何とか威厳を保とうとするが、表情筋は頑張れていませんよ! ……なお、その様子をネピはニコニコと見つめていた。

「ん、む、んむふふ……うぇっへん。頼もう! 誰ぞおらぬか?」

「おりますですよー」

「お? おお、すまんの、ネピ。……なるほど。お互い大きくない故か、視界に映らず分からなんだわ」

「そうでありますなー。して、いかなご要件でしょうか?」

 互いの姿を認識できていないことに気付いたネピが己が主を持ち上げると、大きな椅子にちまっと座る小柄な受付嬢が見え、ようやく互いの姿を確認できた二人であった。以前訪れた大きな冒険者ギルドの受付嬢と違い、小さな受付嬢はお子さ魔王が持ち上げられているという絵面のおかしな状況に全く揺れず、己が仕事に徹していた。お子さ魔王、ここの受付嬢の評価を一段階上げる。

「一つ依頼があるんじゃが、少々込み入った話での」

「はいはい。では魔力紋の測定を……はい確認したでありますよ。おお、冒険者のランクも依頼者のもお高いでありますねぇ! で、どういうご依頼でありますか?」

 ここでも全く態度の変わらない受付嬢の様子に、更に評価を一段階上げるお子さ魔王。この調子なら多少面倒臭い依頼でも受けてくれるはずだと、少し胸をなでおろすのであった。

「うむ。少々込み入った依頼となるので、よく聞いてほしいのじゃが……」
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