乙女ゲー転生、私が主役!? ……いやそれ、何かの間違いです!

まんどう

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不本意と不意のやらかし

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 フローラが皇都にきてからはや1周間が過ぎ、その間半隠居の身となった祖父の家にも顔を出し、猫可愛がられされたり、あれでもかこれでもかと買い与えられたり。
 学校が始まるまでは短い間しかなかったものの、色々な準備をこなしていったのだった。
 それにゲームとしては14歳の1年次は主に能力上げで、時折全学年合同イベント等で絆を育んだりするが、本格的な攻略が始まるのは2年次。
 それに向けて準備は大事。主に心構えとか心構えとか心構えとか諦めとか。

(心構え多っ! 諦めをさらっと入れるな! てかまだまだ諦めてないっての!)

 人生諦めが肝要である。

(くどい!)

 いいじゃん、どうせフローラの人生だし。

(他人の人生みたいに言うな。わ・た・し・の、人生なのよ!)

 諦めの悪いこって。
 さて、同室の頼れる先輩ことプリン・ア・ラ・モードかの情報に、

(はい! ダウトーぉ! 嘘ばっかり言わないの! パルフェ・ショコラータ先輩よ!)

 ……パルフェの情報により、男爵家嫡男でも子息でもない、当代当主の入学の情報を得る。入学直前のその情報の入手は、タイミング的にも半ばフラグが立ったかのようだった。

(やーめーてー。実際そうなりそうで怖いんだから!)

 そして現在、入学の挨拶を入学生、全員で聞いてるわけなのだが……

「……ZZZzzz」

 フローラの肩を枕に豪快に寝てる男子が居たのだった。

(ちょ、これ! どうしたらいいの!?)

 照れんなよ。慣れなさ過ぎだろ。それともあれか? ラッキースケベ的な「うへへ、若いオスだわぁ」とか思ってんの? あ、もしかしてあれか? 「あらやだ、かわいいわねぇ。若いって良いわぁ」とかおばちゃん根性発揮してんのか。

(違うわぼけぇ! 照れてるわけでも、喜んでるわけでも、ましてやおばちゃん根性でもないわよ! てかあんたの中では私はどんな変態なの!? それでいておばさんなの!?
 それよりこの子、どうしたら良いのさ!? もしもこの子が件のご当主様だったら、本当に変なフラグまで立ちそうじゃない!? 気のせいかしらぁ!?)

 そうだなぁ。十中八九そうなんだろうな。みんなこちらを気にしつつも、何も言わないってか見ないふりしてるし。

(やっぱりかああああ!)

 その後、起こしてたまるものかと微動だにしなくなったフローラだったが、入学式の長ったらしいアレコレが終わる頃には、誰かからパーリントン夫人へと連絡が行ったらしく、式の終了と同時に救出に駆けつけてくれたのだった。
 フローラは死んだような目をしていたが、被った実害といえば、縮こまった状態でじっとしていたことによる左半身のコリくらいのものだった。どうやら危惧していたほどのことは起こらず、被害は最小限に留められたといえる。


 ………
 ……
 …


「ふむ。手間をかけさせてくれるなよ、イルジオラ男爵家当主マリオ殿?」

「いやぁ不甲斐ない。前日興奮して眠れませんでしてねぇ。はっはっは!」

 連れて行かれた先で、マリオはオランジェに絞られていた。

「まったく、嫁入り前の娘の肩を枕代わりにするとは……」

「いやぁ、柔らかい寝心地の良い肩でしたなぁ!」

「……これはハトラー伯爵に一報を入れておくべきか」

「待って! ごめんなさい! 半隠居の身とはいえ、あの鬼将軍に大事にしてる孫に無体を働いたとか誤解を受けたら死ねる!」

「まったく……。枕にした相手の令嬢のことをしっかり把握してるではないか。
 で? 何がしたかったのだ?」

「あーオランジェ殿、今年の入学生には色々持った奴が居るらしい、って噂に心当たりは?」

「さて? あいにくそういうことには疎くてな。特に茶会にはとんと顔を出しておらぬ故」

「引く手数多でしょうに。ヘタな貴公子より遥かに貴公子然とした女傑を招ければ、大盛況間違い無しってね。
 ……わぁあ、やめやめ、やめて。一般論、一般論だってば。俺が言いふらしてるわけじゃないんだって」

「で? ……彼女がそれなのか?」

「いくつか居る候補の一人だねぇ。他にも何人か居るもんだから、俺達みたいなのが各家格毎に配置されてる始末なんだよね。ま、俺なんかは目立ちすぎるから、本当の監視役のカモフラージュ役ってところだね」

「ふむ、そうか……面倒だけは起こしてくれるなよ?
 時にマリオ。君は当主であり、私は夫人でしか無い故立場的には君の方が上だ。さりとて、それを踏まえた上でも相手の立場を尊重するのが真の貴族というものだろう。口の利き方には、特に学院や寮においては気をつけ給え」

「そうだね。いえ、そうですね従姉妹殿」

 二人は親戚だったらしい。厄介そうにため息をつくオランジェに、マリオは肩をすくめてみせるばかりだった。


 ………
 ……
 …


 所変わって教室の中。クラスは家格に合わせた教室分けになっているので、この教室の中に格上の家の者たちは居ない。唯一別格である、当代当主であるマリオもここには居ないため、非常にのんびりした雰囲気である。

(あー、あんたしばらくの間静かだったけど何してたの?)

 黙秘である。俺にも言えることや言えないことの区別はある。

(あっ、そ)

 おおう、そっけない。ま、良いけどな。お前に重要なことだったとしてもスルーしてくれると楽でいい。

(私に有利な情報なんて流す気なんて無いでしょうに。白々しい)

 バレてたか。んで? こっちは何か進展あったか?

(あんたも十分そっけないわよ……。
 家格毎のクラス分けだからお互い気兼ねする必要も感じず、和気あいあいとしてるって所かしらね。
 ここも、教室ってよりは豪華ホテルのロビーみたいなところだしね)

 ほうほう。……じゃなんで風呂オラさんはぼっちなんですかね?

(あんた、ことある毎にその呼び方するのやめてくんない? 大まかに言って、理由は二つあんのよ。
 一つ、私が辺境の貧乏男爵家の人間だから縁を結ぶ価値が低いと思われてること。ゲームと違って、勝手に人間関係が構築されてるわけじゃないのよ。もっと言うと、学院が始まる前からロビー活動でもしとかないと顔も売れないわけ。辺境故のアクセスの悪さが露呈した感じね。そもそも今までお茶会とか誘われたのって、お仕えする辺境伯家や子爵家の方々くらいだもの。
 二つ、件の男爵家当主様と、は・か・ら・ず・も、お近づきになったと誤解されてるがためなのよ)

 へぇ……。ここはどう言った方が良いかな? 情感たっぷり皮肉たっぷり「不憫な子!」って同情した方が良いかい? それとも「なんぎだねー」って棒読みが良い?

(ぶっ飛ばわよ? ……できるもんならだけど。
 そもそもこの状況を苦々しく思ってるのは私自身なんだからほっといて。
 この環境下で声かけてきてくれる子は間違いなく勇者ね)

 ふむ、そんなものか。
 しかし誰とも縁を結ばないのもそれはそれで問題なんじゃないのか?

(そうなんだけどねー……ちょっと難しいのよ。友達を作るにしても、元からの知り合いとか、親同士が互いに頼れと示し合わせてる同士だとか、そういう子達がさっさとグループ作っちゃってるからね。まさにお茶会の効果ってやつよ。
 残ってるのは、本の虫になって誰とも視線を合わせてない子とか、小っさくなって人見知りが激しそうな子とか。男の子に至っては、見るからにガキ大将って子くらいなのよねぇ。
 例の子次第では、ガキ大将では居られない可能性のほうが高いから、皆近づきもしないのよ)

 ほほう、割とよく見てるな。人の顔色伺うのが得意なのか?

(まぁね。そうやって敵を作らず生きてきたからさ。リアルでもゲームでも……)

 処世術って奴か。それがこの世界においては、良いことなのかどうかはわからんが。
 ん? おい、フローラ。

(はぁ、どうしようかしら)

「おい、お前。聞いているのか?」

 おい、フローラってば。

(惨めでぼっちな学院生活とか……あいやストーカー共に目をつけられるよりはマシだけど)

「おい、そこのお前! いい加減こっちを向かないか!」

「だああ! 何ようっさいわね! 人が考え事してる時にうだうだと!」

 と、ふいにブチ切れたフローラは……何を思ったか立ち上がるその勢いのまま、

 ズムッ!

「ヒギュッ!?」

「……へ?」

 股間に一撃おみまいしてやったとさ。

(え? え? あれ? 話しかけてきてたのってあんたじゃなかったの!?)

 違うが? お前に声かけようとしたガキ大将君が近づいてきてるぞって警告を……いやそれよりだな。お前、俺だと思ってたからのこの蛮行なのか? 怖すぎるだろ……。

(あいや、ははっはっはー……)

 笑ってごまかすんじゃねえよ、このアマゾネスが。つか、ほっといて良いのか? 泡吹いてるぞ?

「え? ……あっ、きゃあああああああああ! ごめんなさい!?」

 暁の、鮮やかなオレンジ色の短髪を持ち、蹴られどころの悪かった泡吹いて倒れているガキ大将君を前に、我らがフローラさんはオロオロするばかりだった。
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