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「それではね、フローラ嬢」
「有難うございました、グレイス様」
「お手数おかけしましたですわ」
別れの言葉を口にするグレイスと、軽く目礼してくれたサイモンへと挨拶を返す。またしても海ならぬ人が割れていくシーンを眺めることなった。
「奇跡ですわ……」
「そうですね。無事に生きて帰れました」
「違っ、そうじゃなく……! いえ、言葉正しくその通りですわね。私が浅慮で迂闊なのを痛感致しましたわ。
フローラ様、改めて謝罪とお礼を。貴女をやっかみ、突っかかっていったこと、申し訳ありませんでした。そして貴重な経験に援護、有難う御座いました」
「私の立場を理解して頂き有難う御座いました。あの場で解散となってましたら、他の上位貴族様方とも色々接点が持てたかも知れませんが、今日の所はこれで……」
「いえ……もう私、身の丈に合わぬ振る舞いはすまい、そう心に堅く誓いました。この御恩はいずれ何かしらの形にてお返し致したく思います。……今日の所は失礼致しますわね」
ミランダ嬢は、ちょっとばかりフラフラしながら会場を後にしたのだった。気疲れに因るもの、そしてある意味舞い上がってると言うのもあるだろう。それ位、彼の別格貴族達より賜ったカードの力は大きい。
「ふろーらー、だいじょーぶー?」
「全く心配してなかったとりあえず言っとこうな言葉ありがとう。何もなかったわ」
「ベティってば(クスクス)。本当はずっと心配してたのよ?」
「それも知ってる。多分私が普通に帰ってきたから、気にすることもないんだろうと思ったんだろうってね」
「……(プイッ)」
「「(クスクス)」」
仲良いねぇ。
(もちの論よ)
「他の二人は?」
「マリオ様は引っ張りだこかな。下手なことでは怒らないことが知れたから、今は大人気。バミー……バモン君も家格はともかく、お姉様方が上位貴族の方々に嫁がれているので、関係で……。今も子爵家の方に誘われて、席を外してるの」
「うちらははずれくじー」
「(ぶふっ!) 間違ってないけど何よそれー」
「あははっ、もうベティなんだからぁ」
「歓談中失礼するよ」
キャッキャウフフな時間を堪能していたら、不意にかけられた言葉で強制停止させられる。
「僕はエインドル子爵家次男、パーカーという。宜しくね」
「フローレンシア・クロードです」
「エリザベス・パルクロワです」
「メイリア・シュトーレン、です……」
丁寧な挨拶に3人娘は綺麗なカーテシーを返す。不安げな表情をしているのは一人だけだが……。
(勿論メイリアね。ベティと私は興味ないし)
子爵家の坊っちゃんの視線もメイリアを捉えてる事を考えれば、不安にもなろうよ?
「メイリア嬢、良ければ僕と踊ってくれないかな?」
「……!」
メイリアの視線がフローラ達と子爵家の坊っちゃんとの間を揺れ動く。明らかに行きたくなさそうだが、理由が見当たらない、そんな感じだ。そもそも、これは夜会であるため、ダンスに誘われ受けて踊る、といった行為は極自然なものである。……苦手ではない限り。
「よこから失礼致します、パーカー様。メイリアは少しばかり人見知りがはげ……」
「僕はメイリア嬢と話しているんだが?」
「……しい。……失礼致しました」
(よし、お前を蹴るチャンスがあれば全力だ。良いな? 全力だ)
何故か急に身震いしたパーカー君だったが、子孫の危機とは思うまい。南無。
「あ、あの、わ、私……その」
「ああ、ここに居たのかメイリア」
突然の第三者の登場に皆の目がそちらに注がれる。
「バ……モン君!」
バミーって言おうとした。
(したね)
「失礼、パーカー様。彼女とは先約がありまして」
「本当に……失礼な奴だな君は」
一瞬険悪な雰囲気になりそうだったものの、
「バミー、おっそいよ。メイリアずっとまってたのよー」
「バミーはやめろ。子供じゃないんだから。そうは言ってもシャムリア侯爵家令嬢に捕まっていたんだ。約束があったとはいえ、途中で切り上げるわけには行かないだろう」
「シャムリア家……」
「ううっそ! お姉様近くにいらっしゃったの!?」
「だからといってそれと家格が上の僕をないがし……」
「ちょっとバミー! お姉様はどこ!? 色々お話きかせて頂きたいのに! あんた一人良い思いしてるんじゃないわよ!」
「……ろに、って……僕の話を遮るんじゃない! 不敬だぞ!」
「そんなに大きな声を出さずとも、ベティには会いに来るつもりだったさ」
「……! また新手の登場か……! いい加減男爵家風情が子爵家の人間をあなど……!?」
「お姉様ぁん♪」
(きゃー! グレイス様格好良いー! 抱いてー!)
え? 風呂オラさん、それ、本気?
(……ごめんなさい、ただの勢いです。どっちの経験もないのでご勘弁を……って何言わすんじゃボケー!)
おぉぅ……別に聞きたくもないことぶっちゃけやがったぜこんの絶喪女さんは……。
(絶!? って何!?)
「もう、まったくベティは甘えん坊だなぁ。……で? 子爵家がなんだって?」
「ああ……い、え……」
「ふぅ~~。なぁ君」
「はいっっ!」
「この場は夜会だから誘うな、とは言わない。だが相手の様子を見て慮ることも大事だ。何より家格を盾に好き勝手して良いなら誰も皇子殿下には逆らえないだろう? 幸い、この国の皇族はとても人徳に優れておられるため、そのような無体はなさらない。であるならば、臣である我らは皇族方を手本とし、己が自制心を養うべきではないのかね?」
「お……仰る……通りです。……ええ、本当に。 (ガバッ!) メイリア嬢。迷惑をかけた」
「はぃっ!? い、いいえ。私が……人が、苦手な、だけです、ので。 (スゥハァ) お顔を上げて下さい。そして……私が、人に、慣れたら……またお誘い、下さい」
メイリアの言葉にはその場に居る誰もが目を瞠る。
「……ああ、そうさせて頂こう。謝罪を受け入れて頂き感謝する。グレイス様にも感謝を」
「ふふ、良いさ。皆が君みたいに素直であれば良いのだけどね。
それと君達もいつものメンバーで仲良くするのも良いが、学院の夜会はこれから社交界へ出ていく必要のある我らのための予行演習の場。積極的に交流することを推奨する。いずれ平民の部に通う者達を交えた夜会も開かれるのだし、流れなんかも見知っておいたほうが良いだろう?
何、ここでの失敗なら笑って済まされる。逆にここでの失敗を根に持つものは笑い話の種だからね」
悪戯っぽい笑みを浮かべてウィンクするグレイス嬢はなんともまぁ絵になることか。
「んじゃ、バミー、メイリア、行ってこい」
「え?」「へ?」
「ダ・ン・ス」
「あ、ああ、そうだったな」「は、はひっ」
二人はぎこちなく手を繋ぐと、フラフラとダンスホールへと歩みだした。
「んじゃ、ふろーら、いってくる」
ビシッ! っと敬礼して、ベティはグレイスと腕を組む。
「はいはい。グレイス様、ベティをお願いします」
「心得た。では二人共、失礼するよ」
鼻歌が聞こえそうな……いや、鼻歌歌ってんなあれは。
(そうね。てか、サイモン様はどうされたのかしらねぇ……。所で、)
「パーカー様?」
「何だねフローレンシア嬢」
「私のことはフローラとお呼び下さい。で、ですね。ここからは無礼講でよろしいでしょうか?」
「……はぁ、君は物怖じしないんだね。どうぞ、無礼講で良いよ」
「譲って良かったんです? あれ。家格を盾にしてまでダンスを強要しといて」
「君は容赦ないなぁ!? 無礼講を許可した途端にこれか。……仕方ない。彼女の目は彼しか見てないからね」
(おお、甘酸っぱいの来たー!?)
あーあ、フローラさんに見つかったなぁこれ。
(どゆ意味!?)
「まぁ、まるで見込み無し、でも無いんじゃないですか?」
「!? ど、どういう意味かな?? 詳しく!」
「うわぁ、凄い食いつきですね……。メイリアって相手の感情を見ることが出来るんですよ。色として」
「ふむ……?」
「だからバモン君の居ない間に彼女を物にしたい! ってギラギラした下心が嫌な色に見えたんじゃないかなぁ? と思いまして」
「ギラギラ……下心……嫌な色」
あーあ、トドメ刺してやんの。
(あ゛っ……)
「すみません、率直過ぎました」
「詰まりは本音……と」
「……取り繕っても仕方ありませんので。ただ、あのメイリアが、次は、だなんて口にしたのは、恐らくパーカー様の心根に悪い色を感じなかったからだと思います。もし本気で彼女を陥としたいなら、常に誠実に本音であれ、と進言致します」
「……仮にバモン君と取り合いになった場合、君はどちらの応援をしてくれるんだい?」
「そりゃあバモン君ですよ? 浅い仲じゃないですし」
「はは、それは残念だ。じゃあ僕はそろそろ失礼するよ」
そう言ったパーカーはちっとも残念そうじゃない顔を見せつつ、この場を後にした。
(何だ。本当は爽やか少年だったのね。全力は止めとこう)
何割で?
(9割)
……まだ子孫の危機は回避できてないな。パーカー少年が少し身震いするのを見て俺は同情してしまうよ。
「有難うございました、グレイス様」
「お手数おかけしましたですわ」
別れの言葉を口にするグレイスと、軽く目礼してくれたサイモンへと挨拶を返す。またしても海ならぬ人が割れていくシーンを眺めることなった。
「奇跡ですわ……」
「そうですね。無事に生きて帰れました」
「違っ、そうじゃなく……! いえ、言葉正しくその通りですわね。私が浅慮で迂闊なのを痛感致しましたわ。
フローラ様、改めて謝罪とお礼を。貴女をやっかみ、突っかかっていったこと、申し訳ありませんでした。そして貴重な経験に援護、有難う御座いました」
「私の立場を理解して頂き有難う御座いました。あの場で解散となってましたら、他の上位貴族様方とも色々接点が持てたかも知れませんが、今日の所はこれで……」
「いえ……もう私、身の丈に合わぬ振る舞いはすまい、そう心に堅く誓いました。この御恩はいずれ何かしらの形にてお返し致したく思います。……今日の所は失礼致しますわね」
ミランダ嬢は、ちょっとばかりフラフラしながら会場を後にしたのだった。気疲れに因るもの、そしてある意味舞い上がってると言うのもあるだろう。それ位、彼の別格貴族達より賜ったカードの力は大きい。
「ふろーらー、だいじょーぶー?」
「全く心配してなかったとりあえず言っとこうな言葉ありがとう。何もなかったわ」
「ベティってば(クスクス)。本当はずっと心配してたのよ?」
「それも知ってる。多分私が普通に帰ってきたから、気にすることもないんだろうと思ったんだろうってね」
「……(プイッ)」
「「(クスクス)」」
仲良いねぇ。
(もちの論よ)
「他の二人は?」
「マリオ様は引っ張りだこかな。下手なことでは怒らないことが知れたから、今は大人気。バミー……バモン君も家格はともかく、お姉様方が上位貴族の方々に嫁がれているので、関係で……。今も子爵家の方に誘われて、席を外してるの」
「うちらははずれくじー」
「(ぶふっ!) 間違ってないけど何よそれー」
「あははっ、もうベティなんだからぁ」
「歓談中失礼するよ」
キャッキャウフフな時間を堪能していたら、不意にかけられた言葉で強制停止させられる。
「僕はエインドル子爵家次男、パーカーという。宜しくね」
「フローレンシア・クロードです」
「エリザベス・パルクロワです」
「メイリア・シュトーレン、です……」
丁寧な挨拶に3人娘は綺麗なカーテシーを返す。不安げな表情をしているのは一人だけだが……。
(勿論メイリアね。ベティと私は興味ないし)
子爵家の坊っちゃんの視線もメイリアを捉えてる事を考えれば、不安にもなろうよ?
「メイリア嬢、良ければ僕と踊ってくれないかな?」
「……!」
メイリアの視線がフローラ達と子爵家の坊っちゃんとの間を揺れ動く。明らかに行きたくなさそうだが、理由が見当たらない、そんな感じだ。そもそも、これは夜会であるため、ダンスに誘われ受けて踊る、といった行為は極自然なものである。……苦手ではない限り。
「よこから失礼致します、パーカー様。メイリアは少しばかり人見知りがはげ……」
「僕はメイリア嬢と話しているんだが?」
「……しい。……失礼致しました」
(よし、お前を蹴るチャンスがあれば全力だ。良いな? 全力だ)
何故か急に身震いしたパーカー君だったが、子孫の危機とは思うまい。南無。
「あ、あの、わ、私……その」
「ああ、ここに居たのかメイリア」
突然の第三者の登場に皆の目がそちらに注がれる。
「バ……モン君!」
バミーって言おうとした。
(したね)
「失礼、パーカー様。彼女とは先約がありまして」
「本当に……失礼な奴だな君は」
一瞬険悪な雰囲気になりそうだったものの、
「バミー、おっそいよ。メイリアずっとまってたのよー」
「バミーはやめろ。子供じゃないんだから。そうは言ってもシャムリア侯爵家令嬢に捕まっていたんだ。約束があったとはいえ、途中で切り上げるわけには行かないだろう」
「シャムリア家……」
「ううっそ! お姉様近くにいらっしゃったの!?」
「だからといってそれと家格が上の僕をないがし……」
「ちょっとバミー! お姉様はどこ!? 色々お話きかせて頂きたいのに! あんた一人良い思いしてるんじゃないわよ!」
「……ろに、って……僕の話を遮るんじゃない! 不敬だぞ!」
「そんなに大きな声を出さずとも、ベティには会いに来るつもりだったさ」
「……! また新手の登場か……! いい加減男爵家風情が子爵家の人間をあなど……!?」
「お姉様ぁん♪」
(きゃー! グレイス様格好良いー! 抱いてー!)
え? 風呂オラさん、それ、本気?
(……ごめんなさい、ただの勢いです。どっちの経験もないのでご勘弁を……って何言わすんじゃボケー!)
おぉぅ……別に聞きたくもないことぶっちゃけやがったぜこんの絶喪女さんは……。
(絶!? って何!?)
「もう、まったくベティは甘えん坊だなぁ。……で? 子爵家がなんだって?」
「ああ……い、え……」
「ふぅ~~。なぁ君」
「はいっっ!」
「この場は夜会だから誘うな、とは言わない。だが相手の様子を見て慮ることも大事だ。何より家格を盾に好き勝手して良いなら誰も皇子殿下には逆らえないだろう? 幸い、この国の皇族はとても人徳に優れておられるため、そのような無体はなさらない。であるならば、臣である我らは皇族方を手本とし、己が自制心を養うべきではないのかね?」
「お……仰る……通りです。……ええ、本当に。 (ガバッ!) メイリア嬢。迷惑をかけた」
「はぃっ!? い、いいえ。私が……人が、苦手な、だけです、ので。 (スゥハァ) お顔を上げて下さい。そして……私が、人に、慣れたら……またお誘い、下さい」
メイリアの言葉にはその場に居る誰もが目を瞠る。
「……ああ、そうさせて頂こう。謝罪を受け入れて頂き感謝する。グレイス様にも感謝を」
「ふふ、良いさ。皆が君みたいに素直であれば良いのだけどね。
それと君達もいつものメンバーで仲良くするのも良いが、学院の夜会はこれから社交界へ出ていく必要のある我らのための予行演習の場。積極的に交流することを推奨する。いずれ平民の部に通う者達を交えた夜会も開かれるのだし、流れなんかも見知っておいたほうが良いだろう?
何、ここでの失敗なら笑って済まされる。逆にここでの失敗を根に持つものは笑い話の種だからね」
悪戯っぽい笑みを浮かべてウィンクするグレイス嬢はなんともまぁ絵になることか。
「んじゃ、バミー、メイリア、行ってこい」
「え?」「へ?」
「ダ・ン・ス」
「あ、ああ、そうだったな」「は、はひっ」
二人はぎこちなく手を繋ぐと、フラフラとダンスホールへと歩みだした。
「んじゃ、ふろーら、いってくる」
ビシッ! っと敬礼して、ベティはグレイスと腕を組む。
「はいはい。グレイス様、ベティをお願いします」
「心得た。では二人共、失礼するよ」
鼻歌が聞こえそうな……いや、鼻歌歌ってんなあれは。
(そうね。てか、サイモン様はどうされたのかしらねぇ……。所で、)
「パーカー様?」
「何だねフローレンシア嬢」
「私のことはフローラとお呼び下さい。で、ですね。ここからは無礼講でよろしいでしょうか?」
「……はぁ、君は物怖じしないんだね。どうぞ、無礼講で良いよ」
「譲って良かったんです? あれ。家格を盾にしてまでダンスを強要しといて」
「君は容赦ないなぁ!? 無礼講を許可した途端にこれか。……仕方ない。彼女の目は彼しか見てないからね」
(おお、甘酸っぱいの来たー!?)
あーあ、フローラさんに見つかったなぁこれ。
(どゆ意味!?)
「まぁ、まるで見込み無し、でも無いんじゃないですか?」
「!? ど、どういう意味かな?? 詳しく!」
「うわぁ、凄い食いつきですね……。メイリアって相手の感情を見ることが出来るんですよ。色として」
「ふむ……?」
「だからバモン君の居ない間に彼女を物にしたい! ってギラギラした下心が嫌な色に見えたんじゃないかなぁ? と思いまして」
「ギラギラ……下心……嫌な色」
あーあ、トドメ刺してやんの。
(あ゛っ……)
「すみません、率直過ぎました」
「詰まりは本音……と」
「……取り繕っても仕方ありませんので。ただ、あのメイリアが、次は、だなんて口にしたのは、恐らくパーカー様の心根に悪い色を感じなかったからだと思います。もし本気で彼女を陥としたいなら、常に誠実に本音であれ、と進言致します」
「……仮にバモン君と取り合いになった場合、君はどちらの応援をしてくれるんだい?」
「そりゃあバモン君ですよ? 浅い仲じゃないですし」
「はは、それは残念だ。じゃあ僕はそろそろ失礼するよ」
そう言ったパーカーはちっとも残念そうじゃない顔を見せつつ、この場を後にした。
(何だ。本当は爽やか少年だったのね。全力は止めとこう)
何割で?
(9割)
……まだ子孫の危機は回避できてないな。パーカー少年が少し身震いするのを見て俺は同情してしまうよ。
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