乙女ゲー転生、私が主役!? ……いやそれ、何かの間違いです!

まんどう

文字の大きさ
107 / 150

ハイネリアの神髄

しおりを挟む
 注)ノーコン無し回


 ぞぶっ! どじゅっ! ぶちぶちっっ!

「おごぇっ!? ぶぎゅうっ! ぎっひぃぃいああんっ♪ 激しいぃん!」

 サブリナは、刺され、貫かれ、引き千切られながらも、次の瞬間にはケロリとして立ち向かってくる。

「おのれ面妖なっっ! 何故その傷で死なぬ! 倒れぬ! 血が出ぬっっ! ……ぬおっ!?」

 ハイネリアはサブリナから注意をもう一人の相手、アーチボルドへと強制的に切り替えさせられる。

「だからぁ、俺を無視すんなって!」

「ええい鬱陶しい! お主の力量は期待した遥か下! それがしを倒すには足らぬ!」

 ガンッ! ガァンッ! ザインッ!

「はっ! そりゃあ悪かったな! でもてめえ、さっきより動きってか装備の切れが悪くなってんぞ!?」

「ぐぬぅっ!?」

 アーチボルドの言う様にハイネリアの構える大ランスは、当初と比べかなり回転が悪くなっていた。

「だから好機ってな……!?」

 そう言って突っ込もうとするアーチボルドの前に、サブリナが身を滑り込ませて行く手を遮る。普通なら文句の一つでも口にする所だろうが、アーチボルドはサブリナの表情を見るや、素直にハイネリアから距離を取った。

「……ただのゲテモノかと思いきや中々に侮れぬ御仁よなぁ、お主」

「あらあん? 褒めてくれるならぁん☆ 熱っついヴェ~ゼの一つでもくれてもぉ♪ 良いのよぉん?」

「それは全力で遠慮させて頂こう」

「んもぅっ! つれないわねぇん☆ ……んでもぉ、なんとなぁく貴方の事分かって来ちゃったわん♪」

「奇遇でござるな。それがしもお主の体の秘密分かってきたところでござる」

「んまぁっ! お互いの体の秘密を分かり合うだなんて……す・て・きぃいんっ!」

「………………ウボェ」

「ウボェはこっちの台詞だおっさん。会話だけ聞いてると、そういう嗜好のカップルの会話にしか聞こえんのをどうしてくれる?」

「やだぁんっ! カップルだなんて……ポッ☆」

「やめて頂けぬか!? いちいち念を押さずともそう思って気分を害したところでござったよ!? まったく……。ところで、お主等はそれがしの特性を聞いてござるのであろう? 一騎打ち、であるか」

「ああ、そうだな」

「それは特性であって特技ではござらん」

「それも分かる。戦ってみた感じあんたの特技は雷って所か。あの異常な速度での移動も、体を雷に変えてるとかそんなのか?」

「ふむ、それは少々違うでござるな」

 ザシュゥッ!

「うっぐ!?」

 アーチボルドが気付くと、ハイネリアがサブリナに弾き飛ばされるシーンだったのだが、何故か自分がランスによる傷を受けているという、理解しがたい状況だった。

「な、何を……」

「ふぅ……やはりサブリナ殿には効かぬのか」

「そぉねぇん。雷による一時的な意識の剥奪、なんて怖い真似よくするわねぇん……」

「 !? 」

 電撃による意識の剥奪、それが瞬間移動の正体であった。例えば地を蹴って目にも留まらぬ高速で移動する、となれば空気抵抗が強く風も巻き起こるため、相手に気付かれないうちに背後を取る等と言う事はまず無理である。相手の意識を意図的に散逸させ、自分への認識を甘くする等の方法を取らない限りは『物理的』に不可能だろう。

「なるほど、やはり理解してござったか。そしてそれが効かぬ貴殿の体質、いや体はゴムか何かで御座るな? そうであればあの妙な感触も、体から血が出ない理由もわかろうというもの」

「さぁどうかしらねぇん?」

「それがしは故あって全力が使えない事が多くてな。故にそれに至る段階を開放はしたものの出し渋っておったが、そうも言っておれぬ。……お主等はここで仕留めさせて頂く」

「あらぁん? 出来るかしらぁん?」

「ふむ、答えては下さらぬか」

「ふぅ……よし、行けるぜ」

「む? 時間稼ぎもしてござったか。食えぬ御仁よな」

「いやぁん☆ むしろ、食・べ・てぇん?」

「………………アーチボルド殿、先程素直に飛び込んできておれば良かったと後悔することになるであろう」

「はぁはぁ☆ 放置プ・レ・イ♪」

「………………自信たっぷりだが負ける気はねえよ」

「一瞬でござる」

 そう言うとハイネリアは全身から魔力を迸らせ、ランスを頭上に掲げる。するとにわかに辺りが暗くなり、空で雷鳴が響き渡り始めた。

「………………おいおい? もしかして天候操作ができんのか?」

「そんな大仰な物ではござらんよ。ただし、雷だけは本物でござるがな」

 バッシャアアアアアンッッ!

「うおわっ!?」「いやぁんっ!?」

 ハイネリア目掛けて巨大な雷が落ちる! アーチボルドはもとより、流石のサブリナも思わず顔を背けて目をすがめる。

「お待たせもうしたな。これより全力を超えて、お二人を排除いたす」

 パリッ……

「ぶるうぅあああぁあああっ!?」

「……ハッ!? サブリナぁ!?」

「この期に及んでまだアーチボルド殿をお守り致すか。天晴なり」

 アーチボルドが意識を飛ばされた次の瞬間認識できたのは、穴どころか胴の側面を半分を失い吹っ飛んでいく、サブリナの姿だった。

「な、何が……?」

 チュイィィィィィン……

 アーチボルドがハイネリアを見やると、彼の掲げるランスが鈍く光っているのが見えた。いや、今まで以上に高速回転するランスが輝いて見える様になっていただけであった。

「次でお主も終わりでござる」

 パリッ……ギャリィィィンッッ!

「何っ!?」

 声の主はハイネリア、吹っ飛んで行くはアーチボルド。ハイネリアは意識を飛ばしたはずのアーチボルドが反応した事に驚いたのだった。

「がっはぁ! ……っぶねえ」

「お主……どうして」

「さぁな? 例え自分の状況を理解してても、手の内を明かせると思うか?」

「……っ!」

 パリッ……ギリギリギリギリッギャンッ!

「っ! またか!」

「どうわぁああぁぁっ!」

 余りの勢いで二度三度地を跳ねながらも、何とか体勢を立て直して着地するアーチボルド。

「二度も受けたならもうそれは偶然では無いな。お主がどのようなからくりでそれがしのランスを受けておるかは知らぬ。が、何も意識を飛ばすのがそれがしの神髄ではござらん」

「へぇ……? じゃあ小細工なしに本当に瞬間移動でもできるのか?」

 ドォンッ!

「ぬおっ!?」

 ガッギィィインッッ!

「うおわあぁぁあああ!?」

 先程の比ではなく、何度地を跳ねたか数えるのも嫌になった頃、木に体を受け止められる形でようやく静止するアーチボルド。そこにハイネリアはゆっくりと近寄っていく。

「残念ながらこれを瞬間移動と呼ぶのは、あまりにもおこがましいであろうなぁ。であるが、殆どの御仁はこれに反応できもうさん」

「……っ! ……っ!! ぐあぁはっ! げぇっほげほっ……っ! ……はぁはぁ、肺が潰れたかと思ったぜ」

「ふむ、お主も頑丈でござるなぁ。早く楽になりもうせば良かろうに」

「あー……生憎死んだら泣く奴が居るからな。死ねねえんだよ」

「……(ギリッ)」

「あ? 何だよ? 相手がいる奴が憎いとかそういう手合いじゃないだろ? あんた」

「違うなぁ。守るべき者が、己が死ねば泣く者が居る人間が戦場に立つべきではないと思ってるだけでござるよ」

「……経験論か?」

「一般論……だっ!」

 ドォンッ!!

「はぁうぼぉおぅぅっっ!?」

「んなっ!? お主!?」

 ハイネリアの直進上に現れたのは、半身を失ったはずのサブリナであった。そのままサブリナは体を膨れ上がらせ、文字通り全身でハイネリアを包み込む。

「うばばばばっ……いっじょに逝ぎまじょぉ?」

「はなっ、離さんか!?」

 飛び出した勢いを少々落したものの、未だ殺人的な速度でアーチボルドのもとへと突き進み、

「悪ぃなサブリナ。助かる」

「あべりあざばによろじぐねぇんっ」

「ぬおおおおおお!?」

 ドゴギャンッ!!

 かなり異質な音を響かせながら、アーチボルドの剣がサブリナとハイネリアを諸共に貫くのだった。

「がぶっ……じ、あ、ばっ、ぜぇ……ん」

「ごがっ、がががっ、ギギギギッ」

 次の瞬間カッ! と目を見開いたサブリナがアーチボルドを蹴り飛ばす! そして

 バリバリバリバリバリバリバリッッ!!

「さ、さぶ……」

 巨大な雷の柱が天を衝く光景を最後に、アーチボルドは意識を手放したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...