乙女ゲー転生、私が主役!? ……いやそれ、何かの間違いです!

まんどう

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戦況を覆し得るもの

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 ――ディレクサイド

「ザナキア様! 話が違う! 貴方の話ではシェライラに命の危険は無いと!」

「死ななかったであろう?」

「なっ……!?」

「死に瀕したなら、過剰充填の魔力が流れ込まなくなる故、お前も気付けただろう。気付かせなかったのはその女の頑張り故よな。つまりは……お前が女を顧みず、要塞化を湯水のように使ったからそうなった、が正しい」

「そんな……」

 この遣り取りにディレク達は口を挟みたくも、相手が何であるのかを本能的に悟っていたがために動けずにいた。その気配に直接触れたことのないエリエアルでさえ、自身の持つ光魔法が強く警告を発していた。『あれは魔族である』……と。

「どうして……」

「うん?」

「どうして魔族がここに居る?」

「えっ……魔族!?」

 ディレクは他より先に硬直から解けると、魔族が今この場に居る理由を問う。そして上司が魔族だった事に衝撃を受けるアルモ。

「ふふっ、流石は光魔法を閉じ込めた土地の人間だな、私の気配を正しく捉えるとは。如何にも私は魔族であるが……さて、どうして? であったか。それは黒繭に小さな綻びを作っておいたから、だな。つまり何時でも抜け出ることができた訳だ」

「なん……」

「普通ならあの偽物の魔王に気付かれていたであろうが、俺達は自分自身で綻びの代わりを演じていたからな。気付かれもしなかったぞ。あの勇者、500年も過ぎた頃には、黒繭の有効性を信じて疑わなくもなっておったなぁ」

「そんな……長い間?」

「ああ、誤解の無いように言っておくが、私は魔王を騙る勇者に付き従っていた魔族達では無い。死して取り込まれた怨念……そして代々受け継がれてきた魔王の中の一部である。そうだな……魔王の欠片と言った所か? 故に数千年は軽く生きているだろう。その中で500年は大した時間ではないであろう? む? それとも自由になってからの500年、何をしていたかの話か?」

「………………」

「ふっ、全てを語って聞かせてやる義理はないな。……いずれ分かる。もうすぐ、な」

 勿体ぶっている魔族ではあったが、ディレクは幾つもの考えを同時進行させていた。

(奴の目的は? 考えられる一番最悪なパターンは? 彼我の戦力差は? 勝てるのか? 勝てないとして逃げれるのか? 逃げるとしてどう逃げる? 守るべきは誰か? アルモ達はどうする? 考えろ、考えろ……)

「ん? おお、そう言えば忘れていたな」

 突然思い出したと言わんばかりのオーバーアクションをみせた魔族に、動けないシェライラを除いた全ての人間が反応する。その反応を愉快と言わんばかりに満足気に見回すと、ザナキアは言い放った。

「裏切り者の処刑を」


 ………
 ……
 …


 ――フローレンシアサイド


 オレオレ、俺です。急にバトンタッチされた気がしました。

(行けっ! そこだっ! ああ、惜しいっ!)

「やっ! はっ!」

 そして置いてけぼりの俺でした。

「ちぃっ! あのジジイ共ともちぃっと違うなぁ!?」

「お母様の動きのコピーです!」

「っほお! テメエの母親か! ……さぞかし良い女だろうなぁ!」

「あげません。お母様はお父様のものです」

(誰がやるかボケェ!)

「はっ! 手に入れちまえば一緒よぉ! 俺様色に塗り替えちまえば良いだけだろうが!」

「………………」

(ぎゃあこの色ボケ変態カスリオ! ふざけん……ってあれ? フローレンシア? 言い返さないの?)

「変態さん、貴方」

「変態じゃねえっつってんだろうが!?」

「メアラ先生を御せますの?」

「っ!? ……何故そこであのバケモン女が出てくるんだ、あぁ!?」

「今、メアラ先生を抑えているのは、私のお母様ですよ?」

「ぬあっ!? ……マジか?」

 ぶふっ、ちょ、喪女さん、カスリオさんの今の顔見ました?

(……ぷふっ、やーめーろーよー。流れで流そうとしたのによぉ)

「(えふっ、ううん)大真面目な話です」

 フローレンシアの噴きそうな気配には気付かず、考えこんでたヴェサリオだったが、

「………………ちっ、無理だな。一応聞いておくが、俺様のグレイスの封印を開放をする気は無いか?」

「ありません」

「だろうな」

(てめえのじゃ無えっつってんだろうが!)

 うーん、喪女さんの言葉が聞こえてないと、面白い展開になってくれそうにない。

(面白い、必要は、無いのよ?)

 鬼メアラ、寄せてみても、喪女は喪女。

(誰が川柳で返せっつったこらぁ!?)

 ゲラゲラ。

「(ぷっ……えふん。お二人共?)」

(すみませんでした)しーません。

「(もう……)」

 とりあえずバトンを渡せと誰かが囁く!

(誰がよ?)

 知らん!


 ………
 ……
 …


 ――ジュリエッタサイド


 はいは~い、バトン渡されちゃった気がする、ナビちゃんでぇっす! 今現在、本気を出す発言をしたルミナンの猛攻をあっさり凌いで涼しい顔の乙女様と一緒にいまっす!

「ナビは元気ねぇ。……で? まだやるのかしら?」

「どういう事なの……」

(<どういう事はこっちのセリフだぁ! てめえ! あのバケモンと同じレベルに強いんだろうが! なんでこの女1人位、捻れ無えんだ!?>)

「黙ってなさい!」

「あらあら、みっともないわねぇ?」

 わねぇー。

「くっ……鬱陶しい……」

 ちなみにルミナンの本気は、滅多矢鱈に大量の魔法を繰り出して、かつ、先程とは違う身体強化を上乗せした肉体による、波状攻撃であったのだったー。

「まぁ、あの程度の波状攻撃、クライン兄様にお相手してもらってるから慣れてるしね」

「なっ!? あの程度……? クラインといえばイグニータの血か!」

「身体強化の上書きに関しては、別の人間に強化させたサブに何処までついていけるか実験したから、想像を越えたシロモノではなかったわ」

 あの時はきつかった。ぶげろっちょ。

「……本当にあの子の事、ノーコンちゃんと言い貴女といい、嫌いよねぇ」

 見た目は大事だと思うのです。

「……まぁ嫌悪感を演出してるって言ってたから仕方無いんだけど」

 え? それ初耳……。

「ごちゃごちゃと……うるさい奴等だわね……」

「大体ルミナさん? 貴女が私に勝てないのは仕方ないと思うのよ」

「あ? 優位だからと上から目線か!? ヒューエルの娘風情が!」

「ジュリエッタを貶めないで頂戴? ……でないと」

「でないとなんぐぼっ……(クルン)」

(<うぶえぇ……>)

「ごはっ……!? あの野郎! 痛みを押し付けやがった……っ!!」

「普通に気を失ったんじゃない? にしても痛みに弱いわねぇ。今まで自分より弱いのしか相手にしてこなかったからかしら?」

「くっそがっ……」

「ルミナさんは気を失っちゃったけど、あの娘が弱いのは仕方ないわ」

「あのばばぁが弱ぇってのは同意できねえが、どういう意味だよ……」

「だって……得意なはずの光魔法を使えないんだもの」

「(ひゅっ……)ああ、確かにな。それは……思う」

「あら? 何故貴女が分かるの?」

「あいつの……昔の夢を見る。昔のあいつはもっと、こう、とんでもなかった」

「……そうね。あの頃のルミナさんなら、1人で帝国軍にすら抗し切れたかもね」

「はっ……そりゃ言い過ぎだ。人間は疲れるからな」

「だからこそ、ルミナさんは効率の良い魔法の使い方を極めた……はずだった」

「できねえからってんで大分無理したらしいからな。……まぁそんなの知ったこっちゃねえが」

 そんなのかんけーねー?

「ネタかしら? ちょっと真面目な話だからそれは禁止」

 えー?

「っがあぁっ!!」

「あら? 戻って来たのね」

(<唐突に押しやるんじゃ無え!>)

「うるさい! ぶっ殺す! ヒューエル! お前はぶっ殺す!!」

「あらあら……。あら?」

 あら? どうしたの?

「なんだか揺れてない?」

「おい! ヒューエル! こっちを向……何? ……まさか?」

(<………………おいおいおい! アルモの奴やられたのか!?>)

「そんな訳無いわ。あの子の力は、気を失った位で消えたりしないもの。それにあの甘ちゃん共なら命は取らないでしょうし……とすると」

(<……ザナキア>)

「ザナキア……それが貴女の与する魔族の名前なの? ルミナ」

「……っ!? 魔族の事まで知ってるとはね。でもまぁ、その通りよ。あいつがアルモを殺すとは思わなかったけど」

(<クソがっ! どいつもこいつも……っ!>)

「……いずれここも崩落するわね。生きてればまたあいましょう。でもどうか潰れてちょうだいね」

「………………」

 捨て台詞を吐いて姿を消したルミナンだった……ってぇ、それどこじゃないわ! おおぅおぅ、乙女ちゃん! 潰れ、つぶつぶ……ジュース! じゃなかった! 潰されるってぇ!?

「ネタぶち込む位に余裕なんだったら演技は要らないでしょ」

 えっへっへー?

「……私達も避難しましょうか」
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