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3、これ、拒否権がないやつだ。
「さて、君が気になった私はドムノウ王子に近付いた。彼は単純な男なので容易に親しくなれたよ」
あれっ、なんだか微笑みが黒い感じに見える?
暗黒微笑とか呼ばれるタイプの微笑に見えますよ?
私がぽかんとしていると、ミディール王子は衝撃的なことを言った。
「腹を探った結果、あの男は女性をいたぶって楽しむ性的嗜好の持ち主だとわかった。しかも、君に惚れてるのに素直に好意を伝えられないと言うんだ。幸い、君はまだ被害に遭う前だったが、いつエスカレートするかわからない」
えっ、なんだか、怖い現実を知ってしまった。
私、好かれてたの?
「こほん。怖がらせてすまない。……なので、私は君を略奪することに決めちゃった♪」
「略奪って不穏な単語ですね⁉︎」
「彼が『次はどうやってアメリアを困らせてやろう』と言ったときに『アメリア嬢は妹と不仲なようなので、アメリア嬢との婚約を白紙にし、妹と結婚すると宣言してみては?』とそそのかしたのさ」
……語る笑顔がすっごくキラキラしてる!
楽しそう!
「潜り込ませていた間諜たちにも働いてもらって、ドムノウ王子が国王へ『婚約者の態度が悪いので懲らしめます。反省しなかったら婚約破棄したいのですがどう思いますか?』と書いた時に手紙の中身をすり替えて『父上、パーティでプディングを食べたいと思いますがいいですか?』という手紙に変えた!」
「それで『許可する』ってお返事がもらえたのですね……って、ツッコミどころ多すぎませんっ? そ、それに、犯罪ですよね! そういうの、大問題行為では⁉︎」
「やあやあ、会話が弾んできたね♪ 君とたくさんお話できて楽しいな!」
この人、喜んでる~~!
「ダメ押しで、ドムノウ王子が『婚約破棄したくない』時は合図してくれれば、私が『みなさん、今のは冗談ですよ』とネタバラシして場を収めるので、大丈夫……と約束したんだ。彼は『それじゃ、アメリアを懲らしめてやるか~!』とやる気になった」
――ああっ、なんだか聞かない方がいいお話じゃない?
あのタンバリン、合図だったんでしょう? わ、わあ~~……!
「彼は、パーティで君が思い通りにならなくて焦ってた。でも素直になれなくて、困ってたなぁ~~! 君の妹も迫ってきてさ! で、助けを求めて合図してきたのだけど――」
イタズラが大成功したので聞いて欲しい! というような目で、オチを教えられる。
「――助けるわけないよね!」
「……わ、わああああ……!」
「君は私のものだ! 彼には渡さないとも。ふふふ! 国王陛下が『ちょっと待った』と言ってきても、もう遅い! 王族の言葉に『やっぱりなし』は通用しない……させない」
わ、わああああ! 美しい笑顔が、眩い高貴なオーラが、真っ黒だーーー!
「だって、あのまま彼と結婚したら君は酷い目に遭ってしまうよ。私は暴力も振るわないし、紳士的に接すると誓うよ。許してほしい」
ミディール王子はちょっと私の顔色をうかがうように言ってから、強引な暴君みたいな調子になった。
「それに、許さないと言っても私はもう君を手放す気はないんだ。いいかな? いいよね?」
振れ幅の大きい王子である。これ、拒否権がないやつだ。
「ひゃ、ひゃい」
「ひゃい、か。可愛いな……」
ミディール王子の黒い笑顔が、ほんわかと優しく爽やかな微笑に変わる。
「可愛い君を、世界で一番幸せにしてあげる。私が言うのだから、間違いない」
私はしばし、その麗しいお顔に目を奪われた。
なにやら大変な方に嫁ぐことになったな、と思いながら。
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