隣国の王族公爵と政略結婚したのですが、子持ちとは聞いてません!?

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます

文字の大きさ
4 / 5

4、生涯、あなただけ

しおりを挟む
 文字を学んだ。
 ティータイムも共にした。

 言われた言葉がレイラの脳裏をぐるぐる巡る。

「それって、どういうこと? それって、あら? あら?」
 
 レイラが首をかしげて目を瞬かせる中、イーステンは薔薇園にある純白のガーデンチェアにレイラを座らせた。
 そして、なんとその前で膝をつくではないか。
 
「イーステン!?」 
 
 姫君に忠誠を誓う騎士のように。
 女神に許しを請う罪人のように。
 イーステンはレイラを見上げ、語り始めた。
 
 
「レイラ姫。あなたが優しくしてくださったあの子供は、この私だったのです」

「あ、あなたがあの子供だと仰るの?」

 
「そう。これは王家の秘密なので、本当は隠しておきたいことだったのですが。特に、隣国出身のあなたには秘めておこうと思っていたのですが」
 実際の人柄もあまりわかっていなくて、何かあれば隣国に情報を流されてしまう危険性があったので、慎重になっていたのだと言い訳して、イーステンは言葉を続けた。
「私は、雨が降ると子供になってしまう体質なのです。我が王家には、たまに私のような特異体質の者が生まれるのです」
 
 イーステンは申し訳なさそうにそう言い、言葉を続けた。

「けれど、子供の姿であなたと接してわかりました。あなたはとても優しくて、好ましい人物で、信じても大丈夫な方なのだと」

 イーステンの黒い瞳がじっと自分を見つめている。
 レイラはその瞳を見つめ返し、ドキドキと騒ぐ胸の鼓動を意識しながら頬に手を当てた。
 火照った頬が、熱い。

「姫。私に優しくあたたかに接してくださり、ありがとうございました。あなたを騙すような状態になってしまい、申し訳ありませんでした」
 イーステンが真剣に謝罪するので、レイラはその話が真実なのだと信じた。
  
「……それで、たびたび急用を思い出されたり、不在になられていたのですね」
 初夜に来られなかったのは、雨が降っていたからなのだ。
 レイラはあの夜の雨音を思い出し、納得した。

 
「レイラ姫。誓って申し上げましょう。私には隠し子もいなければ、愛人もおりません。私が愛するのは、生涯あなただけである、と……誓います」

 イーステンはそう言ってレイラの手を取り、許しを請うように熱く囁く。
「私たちは、お互いのことをまだあまり知りませんが、これから少しずつ共に過ごす時間を増やし、夫婦としての仲を深めていきたいと、私は考えています」

 甘やかに柔らかに、心を蕩けさせるように囁かれて、レイラは真っ赤になってコクコクと頷いたのだった。胸がいっぱいになって、声は出せなかった。
 そんなレイラを見てイーステンは嬉しそうに微笑み、至高の宝物に触れるようにレイラの指先に自分の唇を寄せた。
 
「美しく、優しきレイラ姫。あなたを我が公爵家にお迎えできて、私は光栄です。あなたを必ず幸せにいたしましょう」
 

 
 
 * * *
 
 

 ちなみに後日、ゆっくりと仲を深めた二人がついに初夜を迎えることになるのだが、熱く愛を囁いてキスをした旦那様が突然の雨のせいで子供になってしまうというハプニングがあったのだとか。


 ……なにはともあれ、めでたし、めでたし!


 ――――HAPPY END!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

短編 一人目の婚約者を姉に、二人目の婚約者を妹に取られたので、猫と余生を過ごすことに決めました

朝陽千早
恋愛
二度の婚約破棄を経験し、すべてに疲れ果てた貴族令嬢ミゼリアは、山奥の屋敷に一人籠もることを決める。唯一の話し相手は、偶然出会った傷ついた猫・シエラル。静かな日々の中で、ミゼリアの凍った心は少しずつほぐれていった。 ある日、負傷した青年・セスを屋敷に迎え入れたことから、彼女の生活は少しずつ変化していく。過去に傷ついた二人と一匹の、不器用で温かな共同生活。しかし、セスはある日、何も告げず姿を消す── 「また、大切な人に置いていかれた」 残された手紙と金貨。揺れる感情と決意の中、ミゼリアはもう一度、失ったものを取り戻すため立ち上がる。 これは、孤独と再生、そして静かな愛を描いた物語。

短編 政略結婚して十年、夫と妹に裏切られたので離縁します

朝陽千早
恋愛
政略結婚して十年。夫との愛はなく、妹の訪問が増えるたびに胸がざわついていた。ある日、夫と妹の不倫を示す手紙を見つけたセレナは、静かに離縁を決意する。すべてを手放してでも、自分の人生を取り戻すために――これは、裏切りから始まる“再生”の物語。

短編 跡継ぎを産めない原因は私だと決めつけられていましたが、子ができないのは夫の方でした

朝陽千早
恋愛
侯爵家に嫁いで三年。 子を授からないのは私のせいだと、夫や周囲から責められてきた。 だがある日、夫は使用人が子を身籠ったと告げ、「その子を跡継ぎとして育てろ」と言い出す。 ――私は静かに調べた。 夫が知らないまま目を背けてきた“事実”を、ひとつずつ確かめて。 嘘も責任も押しつけられる人生に別れを告げて、私は自分の足で、新たな道を歩き出す。

氷の貴婦人

恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。 呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。 感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。 毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?

朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」 そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち? ――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど? 地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。 けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。 はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。 ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。 「見る目がないのは君のほうだ」 「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」 格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。 そんな姿を、もう私は振り返らない。 ――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。

三度裏切られたので堪忍袋の緒が切れました

蒼黒せい
恋愛
ユーニスはブチ切れていた。外で婚外子ばかり作る夫に呆れ、怒り、もうその顔も見たくないと離縁状を突き付ける。泣いてすがる夫に三行半を付け、晴れて自由の身となったユーニスは、酒場で思いっきり羽目を外した。そこに、婚約解消をして落ちこむ紫の瞳の男が。ユーニスは、その辛気臭い男に絡み、酔っぱらい、勢いのままその男と宿で一晩を明かしてしまった。 互いにそれを無かったことにして宿を出るが、ユーニスはその見知らぬ男の子どもを宿してしまう… ※なろう・カクヨムにて同名アカウントで投稿しています

結婚5年目のお飾り妻は、空のかなたに消えることにした

三崎こはく
恋愛
ラフィーナはカールトン家のお飾り妻だ。 書類上の夫であるジャンからは大量の仕事を押しつけられ、ジャンの愛人であるリリアからは見下され、つらい毎日を送っていた。 ある日、ラフィーナは森の中で傷ついたドラゴンの子どもを拾った。 屋敷に連れ帰って介抱すると、驚いたことにドラゴンは人の言葉をしゃべった。『俺の名前はギドだ!』 ギドとの出会いにより、ラフィーナの生活は少しずつ変わっていく―― ※他サイトにも掲載 ※女性向けHOT1位感謝!7/25完結しました!

初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました

3333(トリささみ)
恋愛
「あなたのことが、あの時からずっと好きでした。よろしければわたくしと、お付き合いしていただけませんか?」 男爵令嬢だが何不自由なく平和に暮らしていたアリサの日常は、その告白により崩れ去った。 初恋の相手であるレオナルドは、彼女の告白を陰湿になじるだけでなく、通っていた貴族学園に言いふらした。 その結果、全校生徒の笑い者にされたアリサは悲嘆し、絶望の底に突き落とされた。 しかしそれからすぐ『本物のつまはじき』を知ることになる。 社会的な孤立をメインに書いているので読む人によっては抵抗があるかもしれません。 一人称視点と三人称視点が交じっていて読みにくいところがあります。

処理中です...