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15、秘密のEND
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「僕の聖女様。僕のお姫さま……」
ジャスティン様が私の指に指輪を通してくれる。
きらきら輝く、特別な指輪を。
「初めてお会いしたときから、愛らしい貴方に僕のことを好きになってほしいって思っていました」
甘やかな言葉に耳たぶまで赤くなりながら、私は初対面の日を思い出した。
「あの日、わたくしは前世を思い出したのですわ」
「あの時だったのですか」
――『推し』と『恋』の違いはなんだろう。
私は確か、そんなことを想ったのだ。
前世を思い出す直前の私は、将来の旦那様になるという男の子にとてもときめいていた。
惹かれていて、夢中で見惚れて――あれは、初恋のきざしを感じていたのではないだろうか。
……だから、『推し』と『恋』の違いなんて考えたんじゃないだろうか。
「わたくし、あの時からジャスティン様が大好きでしたのよ」
ジャスティン様は、私にとって特別だ。
前世では架空の存在で、物語の中の人物で、現実にはいない、アイドルとも少し違う――介入できず、言動や運命を見守るだけの存在だった。
応援していたけれど、当て馬キャラだから最終的に報われないとわかっていて、それがまた応援したくなる理由でもあった。
「わたくし、ジャスティン様が生きているだけで尊いって思ってましたの。幸せになってほしいって思っていましたの。悲しんでほしくないって思って……わたくしが相手じゃなくても、ジャスティン様が幸せならいいって思ってたんです」
良い子の顔で言ってから、ううん、違うなって思って私は首を振った。
ちょっぴり情けない感じの顔で。罪を告白するみたいに。
「……ううん。今のは、ちょっと格好つけてしまいましたわ。ほんとは、他の相手と幸せになるって考えたとき、わたくしいつも『イヤかもしれない』って気持ちが胸の片隅にありましたわ。わたくしが相手だったらいいって、ずっと思っていましたわ……」
そうだ。
恋愛って、そんな感じだ。
相手の事が好きで、自分を好きになってほしい。
他の誰かと幸せになるんじゃなくて、自分を選んでほしいんだ。
「わたくし――自分の『好き』を誤魔化して、気付かないフリしてましたわ。ジャスティン様をただ純粋に応援する、きれいな理想の自分でいようとしていましたの……」
指輪の表面が、ジャスティン様の人差し指でするりと撫でられる。
指輪の表面には私の神経は通っていないはずなのに、撫でられるとなぜかそのあたりがポカポカして、幸せな感じがした。
「コーデリア、『好き』って色々ある感情ですね」
ジャスティン様のモスグリーンの瞳がまっすぐに私を見つめていて、そこに自分が映っている。
そこに映っているのが他の誰でもなく自分だという現実が、こんなに嬉しい。
「僕も、コーデリアに幸せになってほしい……僕が幸せにしたい」
語る声が、甘い。
糖分過多で、情緒がどうにかなってしまいそう。
「幼い頃からずっと、コーデリアと一緒に過ごす時間が宝物のようで、たくさん一緒にいたいって思っていました。コーデリアが笑うと世界が明るさを増すようで、もっと笑ってほしいなと思っていました。いつもコーデリアは僕をたくさん幸せにしてくれたんです」
幼少期の彼と、現在の彼とが重なるようなはにかみが甘酸っぱい。
「僕、これからもっと頑張りますから」
背伸びするように微笑むジャスティン様が頬に優しく手を添わせて、すでに火照っていた顔がますます熱くなる。
「わたくしも、頑張りますわ」
お互いの唇が悪戯を交わすように動いて、無音でおなじ言葉をつむぐ。
――『あなたが幸せでいられますように』。
睫毛を伏せて、子猫どうしが挨拶するみたいに体温を寄せて鼻が触れると、くすぐったい想いが胸に湧く。
吐息が奪われたのはほんの一瞬で、触れ合った感触は秒にも満たない短い時間の奇跡みたいな感触だった。
小鳥がついばむような、可愛らしくて爽やかで、甘いキス。
……これが私たちの秘密のファーストキスの、思い出です。
――HappyEnd♡
ジャスティン様が私の指に指輪を通してくれる。
きらきら輝く、特別な指輪を。
「初めてお会いしたときから、愛らしい貴方に僕のことを好きになってほしいって思っていました」
甘やかな言葉に耳たぶまで赤くなりながら、私は初対面の日を思い出した。
「あの日、わたくしは前世を思い出したのですわ」
「あの時だったのですか」
――『推し』と『恋』の違いはなんだろう。
私は確か、そんなことを想ったのだ。
前世を思い出す直前の私は、将来の旦那様になるという男の子にとてもときめいていた。
惹かれていて、夢中で見惚れて――あれは、初恋のきざしを感じていたのではないだろうか。
……だから、『推し』と『恋』の違いなんて考えたんじゃないだろうか。
「わたくし、あの時からジャスティン様が大好きでしたのよ」
ジャスティン様は、私にとって特別だ。
前世では架空の存在で、物語の中の人物で、現実にはいない、アイドルとも少し違う――介入できず、言動や運命を見守るだけの存在だった。
応援していたけれど、当て馬キャラだから最終的に報われないとわかっていて、それがまた応援したくなる理由でもあった。
「わたくし、ジャスティン様が生きているだけで尊いって思ってましたの。幸せになってほしいって思っていましたの。悲しんでほしくないって思って……わたくしが相手じゃなくても、ジャスティン様が幸せならいいって思ってたんです」
良い子の顔で言ってから、ううん、違うなって思って私は首を振った。
ちょっぴり情けない感じの顔で。罪を告白するみたいに。
「……ううん。今のは、ちょっと格好つけてしまいましたわ。ほんとは、他の相手と幸せになるって考えたとき、わたくしいつも『イヤかもしれない』って気持ちが胸の片隅にありましたわ。わたくしが相手だったらいいって、ずっと思っていましたわ……」
そうだ。
恋愛って、そんな感じだ。
相手の事が好きで、自分を好きになってほしい。
他の誰かと幸せになるんじゃなくて、自分を選んでほしいんだ。
「わたくし――自分の『好き』を誤魔化して、気付かないフリしてましたわ。ジャスティン様をただ純粋に応援する、きれいな理想の自分でいようとしていましたの……」
指輪の表面が、ジャスティン様の人差し指でするりと撫でられる。
指輪の表面には私の神経は通っていないはずなのに、撫でられるとなぜかそのあたりがポカポカして、幸せな感じがした。
「コーデリア、『好き』って色々ある感情ですね」
ジャスティン様のモスグリーンの瞳がまっすぐに私を見つめていて、そこに自分が映っている。
そこに映っているのが他の誰でもなく自分だという現実が、こんなに嬉しい。
「僕も、コーデリアに幸せになってほしい……僕が幸せにしたい」
語る声が、甘い。
糖分過多で、情緒がどうにかなってしまいそう。
「幼い頃からずっと、コーデリアと一緒に過ごす時間が宝物のようで、たくさん一緒にいたいって思っていました。コーデリアが笑うと世界が明るさを増すようで、もっと笑ってほしいなと思っていました。いつもコーデリアは僕をたくさん幸せにしてくれたんです」
幼少期の彼と、現在の彼とが重なるようなはにかみが甘酸っぱい。
「僕、これからもっと頑張りますから」
背伸びするように微笑むジャスティン様が頬に優しく手を添わせて、すでに火照っていた顔がますます熱くなる。
「わたくしも、頑張りますわ」
お互いの唇が悪戯を交わすように動いて、無音でおなじ言葉をつむぐ。
――『あなたが幸せでいられますように』。
睫毛を伏せて、子猫どうしが挨拶するみたいに体温を寄せて鼻が触れると、くすぐったい想いが胸に湧く。
吐息が奪われたのはほんの一瞬で、触れ合った感触は秒にも満たない短い時間の奇跡みたいな感触だった。
小鳥がついばむような、可愛らしくて爽やかで、甘いキス。
……これが私たちの秘密のファーストキスの、思い出です。
――HappyEnd♡
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