9 / 10
9話、後悔しても、もう遅い
しおりを挟む
代理当主ハシムが捕縛されて数日後、行方不明だったアンカーサイン家当主ユスティヌスが発見された。
ブライド・マートルだ。
あのシンボルツリー、ブライド・マートルが、ユスティヌスを匿っていたのだ。
その真実は、青い鳥がブライド・マートルを癒しきった時に判明した。
癒しの力で以前のような美しく立派な木の姿を取り戻したブライド・マートルは、優しい光をほんのりと放って、さやさやと枝葉を揺らした。すると、根っこ付近からふんわり、ころりと、当主ユスティヌスが現れたのだ。
「……旦那様ぁっ!」
ユスティヌスは意識がなかったが、愛妻イヴェールが泣きながら懸命に呼びかけると目を覚ました。
「弟に呼ばれたんだ。来てみたら、黒いイバラが襲ってきて……私は、眠っていたのか? その後の記憶がないぞ……」
「わ、わたくしは、旦那様にもうお会いできないかと……っ」
「イヴェール、心配をかけてしまったのだね。すまない……」
ぼんやりと記憶を追いかけて語るユスティヌスは、妻イヴェールに慈しむようなキスをしてから、感謝の眼差しでブライド・マートルを見た。
「この木が守ってくれたんだ。信じられないことだけど」
「旦那様、この木は妖精が癒してくれたのですわ。そして、その妖精は魔女が……ああ、何から説明したらいいの」
妻イヴェールは夫がいなくなってからの出来事を、ゆっくり一つずつ話した。
* * *
処刑の日、兄ユスティヌスが無事な姿を見せると、ハシムは顔色を青くしたり赤くしたりして悔しがった。
「くそう! くそう! せめて道連れにできていれば溜飲が下がるものを!」
もはや兄への憎悪を隠そうとしないハシムに、ユスティヌスは悲しげに告げた。
「ハシム。お前の苦しみに気付いてやれなくて、すまなかった」
兄の優しい眼差しに見つめられて、ハシムは苦し気に喘いだ。
「や、やめろ。同情するな! そんな目で見るな!」
「お前が贈ってくれた木が、兄さんを守ってくれたんだ」
「なっ……、お、オレの贈った木が!」
ブライド・マートルが守ったのだと教えると、ハシムは口をあんぐりと開けた。
「兄さん、たまにお前に嫌われてるのかなって思う時があったんだ。でも、仲の良い兄弟みたいに過ごした時間もあったよね」
兄ユスティヌスは、弟と視線を合わせるようにして静かに語った。
「兄さんも聖人君子ではないから、弟が優秀で劣等感を抱いたり危機感を感じることもあった。でも、お前は味方だと信じていた。あの木を贈ってもらった時にも、思ったものだ。ハシムは頼れる存在だ、頼もしい弟だ、と」
「に……兄さん」
兄の言葉に、ハシムは動揺を見せた。
その瞬間、間違いなく弟の胸には兄への情が思い出された。
不満を覚える前、物心ついたばかりのハシムに絵本を読んでくれた兄。とことこと後ろをついて歩くと、「おいで」と手を繋いでくれて、笑ってくれた兄。
イヴェールが好ましい、仲良くなりたいと照れながら相談してきた兄ににやにやして、酒を飲みながら互いのグラスの縁をコツンとさせて、乾杯して。
憎い。嫌いだ。
そう思う一方で、自分の中には、間違いなく――
『素晴らしい木を贈ってくれてありがとう、ハシム。この木は我が家の家宝にしよう。これを贈った兄想いの弟がいたのだと、代々語り継がせようではないか』
――愛しいと思うあたたかな瞬間は、あったのだ。
兄の唇が動く。声は発することなく唇が発音の形を見せる――「お別れだ」と。
「あ……、あ……――っ」
自覚して後悔しても、もう遅い。
ハシムはその日、処刑されたのだった。
* * *
後日、事件の真相が世間に発表されて、アンカーサイン侯爵家は王室直々の命令によりパーティを主催することになった。
手続きを済ませているものの挙式ができていなかったイオネスとローズメイの結婚お披露目。そして、当主ユスティヌスの健在を示し、無事を祝う目的だ。そこには、スカーロッド伯爵家の者も招かれている。
優雅なワルツが奏でられるのを聞きながら、ローズメイは花のようなドレスの裾を揺らして招待客に笑顔をみせた。エスコートしてくれるのは当然、夫であるイオネスだ。
「ごらん、みんなが君の美しさに目を奪われているよ。あの公子なんて嫉妬を隠そうともしない」
「皆様が見惚れているのはイオネス様ではないかと思うのですが……あ、グランツ。お姉様もいる……」
「俺も久しぶりに人前に出たからね。ところで彼はグランツというんだ? ローズメイさんとどんな関係? 親しい? ……教えてよ」
耳元に唇が近づけられる。内緒話をするような小さな声は柔らかくて甘やかな響き。なのに、「絶対にこたえてね」というような逆らいにくい圧もある。
「従兄弟で、幼馴染です」
「危険じゃないか」
「きけ、ん? あ、いえ。口は悪かったりしますが、悪い人ではありません」
「悪い人だと思ってほしくないんだね?」
イオネスはその回答にますます危機感を抱いた様子で、首を振る。
動きに合わせてさらさらと流れる茶髪は、照明を浴びて黄金めいた艶をみせていて、美しい。
健康を取り戻した彼は、お姫様というより立派な貴公子、という印象が強くなっている。
洗練されたラインで仕立てられたトラウザーやクリスタルやダイヤモンドといったピュアな輝きを放つ宝石が、スタイルの良さや清潔感のある凛とした魅力を引き立たせている。
一挙一動に気品があって、優雅だ。
目を惹き付けられるが、会話中に返事をするのを忘れて見惚れてしまうのもどうなのか――視線を逸らすと。
「ローズメイさん。俺が彼を悪く言ったから、機嫌を損ねてしまったの?」
「えっ、いえ。そんなことはありません」
イオネスは拗ねたように言葉を続けた。
「君の夫は俺だと主張したいんだけど、だめかな」
「あ、あの。彼と話したいわけではありません。彼ではなくて隣にいる姉に挨拶をしたいと思っていましたし」
「そうかそうか。よしいこう」
ブライド・マートルだ。
あのシンボルツリー、ブライド・マートルが、ユスティヌスを匿っていたのだ。
その真実は、青い鳥がブライド・マートルを癒しきった時に判明した。
癒しの力で以前のような美しく立派な木の姿を取り戻したブライド・マートルは、優しい光をほんのりと放って、さやさやと枝葉を揺らした。すると、根っこ付近からふんわり、ころりと、当主ユスティヌスが現れたのだ。
「……旦那様ぁっ!」
ユスティヌスは意識がなかったが、愛妻イヴェールが泣きながら懸命に呼びかけると目を覚ました。
「弟に呼ばれたんだ。来てみたら、黒いイバラが襲ってきて……私は、眠っていたのか? その後の記憶がないぞ……」
「わ、わたくしは、旦那様にもうお会いできないかと……っ」
「イヴェール、心配をかけてしまったのだね。すまない……」
ぼんやりと記憶を追いかけて語るユスティヌスは、妻イヴェールに慈しむようなキスをしてから、感謝の眼差しでブライド・マートルを見た。
「この木が守ってくれたんだ。信じられないことだけど」
「旦那様、この木は妖精が癒してくれたのですわ。そして、その妖精は魔女が……ああ、何から説明したらいいの」
妻イヴェールは夫がいなくなってからの出来事を、ゆっくり一つずつ話した。
* * *
処刑の日、兄ユスティヌスが無事な姿を見せると、ハシムは顔色を青くしたり赤くしたりして悔しがった。
「くそう! くそう! せめて道連れにできていれば溜飲が下がるものを!」
もはや兄への憎悪を隠そうとしないハシムに、ユスティヌスは悲しげに告げた。
「ハシム。お前の苦しみに気付いてやれなくて、すまなかった」
兄の優しい眼差しに見つめられて、ハシムは苦し気に喘いだ。
「や、やめろ。同情するな! そんな目で見るな!」
「お前が贈ってくれた木が、兄さんを守ってくれたんだ」
「なっ……、お、オレの贈った木が!」
ブライド・マートルが守ったのだと教えると、ハシムは口をあんぐりと開けた。
「兄さん、たまにお前に嫌われてるのかなって思う時があったんだ。でも、仲の良い兄弟みたいに過ごした時間もあったよね」
兄ユスティヌスは、弟と視線を合わせるようにして静かに語った。
「兄さんも聖人君子ではないから、弟が優秀で劣等感を抱いたり危機感を感じることもあった。でも、お前は味方だと信じていた。あの木を贈ってもらった時にも、思ったものだ。ハシムは頼れる存在だ、頼もしい弟だ、と」
「に……兄さん」
兄の言葉に、ハシムは動揺を見せた。
その瞬間、間違いなく弟の胸には兄への情が思い出された。
不満を覚える前、物心ついたばかりのハシムに絵本を読んでくれた兄。とことこと後ろをついて歩くと、「おいで」と手を繋いでくれて、笑ってくれた兄。
イヴェールが好ましい、仲良くなりたいと照れながら相談してきた兄ににやにやして、酒を飲みながら互いのグラスの縁をコツンとさせて、乾杯して。
憎い。嫌いだ。
そう思う一方で、自分の中には、間違いなく――
『素晴らしい木を贈ってくれてありがとう、ハシム。この木は我が家の家宝にしよう。これを贈った兄想いの弟がいたのだと、代々語り継がせようではないか』
――愛しいと思うあたたかな瞬間は、あったのだ。
兄の唇が動く。声は発することなく唇が発音の形を見せる――「お別れだ」と。
「あ……、あ……――っ」
自覚して後悔しても、もう遅い。
ハシムはその日、処刑されたのだった。
* * *
後日、事件の真相が世間に発表されて、アンカーサイン侯爵家は王室直々の命令によりパーティを主催することになった。
手続きを済ませているものの挙式ができていなかったイオネスとローズメイの結婚お披露目。そして、当主ユスティヌスの健在を示し、無事を祝う目的だ。そこには、スカーロッド伯爵家の者も招かれている。
優雅なワルツが奏でられるのを聞きながら、ローズメイは花のようなドレスの裾を揺らして招待客に笑顔をみせた。エスコートしてくれるのは当然、夫であるイオネスだ。
「ごらん、みんなが君の美しさに目を奪われているよ。あの公子なんて嫉妬を隠そうともしない」
「皆様が見惚れているのはイオネス様ではないかと思うのですが……あ、グランツ。お姉様もいる……」
「俺も久しぶりに人前に出たからね。ところで彼はグランツというんだ? ローズメイさんとどんな関係? 親しい? ……教えてよ」
耳元に唇が近づけられる。内緒話をするような小さな声は柔らかくて甘やかな響き。なのに、「絶対にこたえてね」というような逆らいにくい圧もある。
「従兄弟で、幼馴染です」
「危険じゃないか」
「きけ、ん? あ、いえ。口は悪かったりしますが、悪い人ではありません」
「悪い人だと思ってほしくないんだね?」
イオネスはその回答にますます危機感を抱いた様子で、首を振る。
動きに合わせてさらさらと流れる茶髪は、照明を浴びて黄金めいた艶をみせていて、美しい。
健康を取り戻した彼は、お姫様というより立派な貴公子、という印象が強くなっている。
洗練されたラインで仕立てられたトラウザーやクリスタルやダイヤモンドといったピュアな輝きを放つ宝石が、スタイルの良さや清潔感のある凛とした魅力を引き立たせている。
一挙一動に気品があって、優雅だ。
目を惹き付けられるが、会話中に返事をするのを忘れて見惚れてしまうのもどうなのか――視線を逸らすと。
「ローズメイさん。俺が彼を悪く言ったから、機嫌を損ねてしまったの?」
「えっ、いえ。そんなことはありません」
イオネスは拗ねたように言葉を続けた。
「君の夫は俺だと主張したいんだけど、だめかな」
「あ、あの。彼と話したいわけではありません。彼ではなくて隣にいる姉に挨拶をしたいと思っていましたし」
「そうかそうか。よしいこう」
15
あなたにおすすめの小説
夫が大変和やかに俺の事嫌い?と聞いてきた件について〜成金一族の娘が公爵家に嫁いで愛される話
はくまいキャベツ
恋愛
父親の事業が成功し、一気に貴族の仲間入りとなったローズマリー。
父親は地位を更に確固たるものにするため、長女のローズマリーを歴史ある貴族と政略結婚させようとしていた。
成金一族と揶揄されながらも社交界に出向き、公爵家の次男、マイケルと出会ったが、本物の貴族の血というものを見せつけられ、ローズマリーは怯んでしまう。
しかも相手も値踏みする様な目で見てきて苦手意識を持ったが、ローズマリーの思いも虚しくその家に嫁ぐ事となった。
それでも妻としての役目は果たそうと無難な日々を過ごしていたある日、「君、もしかして俺の事嫌い?」と、まるで食べ物の好き嫌いを聞く様に夫に尋ねられた。
(……なぜ、分かったの)
格差婚に悩む、素直になれない妻と、何を考えているのか掴みにくい不思議な夫が育む恋愛ストーリー。
【完結済】政略結婚予定の婚約者同士である私たちの間に、愛なんてあるはずがありません!……よね?
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
「どうせ互いに望まぬ政略結婚だ。結婚までは好きな男のことを自由に想い続けていればいい」「……あらそう。分かったわ」婚約が決まって以来初めて会った王立学園の入学式の日、私グレース・エイヴリー侯爵令嬢の婚約者となったレイモンド・ベイツ公爵令息は軽く笑ってあっさりとそう言った。仲良くやっていきたい気持ちはあったけど、なぜだか私は昔からレイモンドには嫌われていた。
そっちがそのつもりならまぁ仕方ない、と割り切る私。だけど学園生活を過ごすうちに少しずつ二人の関係が変わりはじめ……
※※ファンタジーなご都合主義の世界観でお送りする学園もののお話です。史実に照らし合わせたりすると「??」となりますので、どうぞ広い心でお読みくださいませ。
※※大したざまぁはない予定です。気持ちがすれ違ってしまっている二人のラブストーリーです。
※この作品は小説家になろうにも投稿しています。
【完結】殿下は私を溺愛してくれますが、あなたの“真実の愛”の相手は私ではありません
Rohdea
恋愛
──私は“彼女”の身代わり。
彼が今も愛しているのは亡くなった元婚約者の王女様だけだから──……
公爵令嬢のユディットは、王太子バーナードの婚約者。
しかし、それは殿下の婚約者だった隣国の王女が亡くなってしまい、
国内の令嬢の中から一番身分が高い……それだけの理由で新たに選ばれただけ。
バーナード殿下はユディットの事をいつも優しく、大切にしてくれる。
だけど、その度にユディットの心は苦しくなっていく。
こんな自分が彼の婚約者でいていいのか。
自分のような理由で互いの気持ちを無視して決められた婚約者は、
バーナードが再び心惹かれる“真実の愛”の相手を見つける邪魔になっているだけなのでは?
そんな心揺れる日々の中、
二人の前に、亡くなった王女とそっくりの女性が現れる。
実は、王女は襲撃の日、こっそり逃がされていて実は生きている……
なんて噂もあって────
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
冷徹公爵閣下は、書庫の片隅で私に求婚なさった ~理由不明の政略結婚のはずが、なぜか溺愛されています~
白桃
恋愛
「お前を私の妻にする」――王宮書庫で働く地味な子爵令嬢エレノアは、ある日突然、<氷龍公爵>と恐れられる冷徹なヴァレリウス公爵から理由も告げられず求婚された。政略結婚だと割り切り、孤独と不安を抱えて嫁いだ先は、まるで氷の城のような公爵邸。しかし、彼女が唯一安らぎを見出したのは、埃まみれの広大な書庫だった。ひたすら書物と向き合う彼女の姿が、感情がないはずの公爵の心を少しずつ溶かし始め…?
全7話です。
婚約者が他の令嬢に微笑む時、私は惚れ薬を使った
葵 すみれ
恋愛
ポリーヌはある日、婚約者が見知らぬ令嬢と二人きりでいるところを見てしまう。
しかも、彼は見たことがないような微笑みを令嬢に向けていた。
いつも自分には冷たい彼の柔らかい態度に、ポリーヌは愕然とする。
そして、親が決めた婚約ではあったが、いつの間にか彼に恋心を抱いていたことに気づく。
落ち込むポリーヌに、妹がこれを使えと惚れ薬を渡してきた。
迷ったあげく、婚約者に惚れ薬を使うと、彼の態度は一転して溺愛してくるように。
偽りの愛とは知りながらも、ポリーヌは幸福に酔う。
しかし幸せの狭間で、惚れ薬で彼の心を縛っているのだと罪悪感を抱くポリーヌ。
悩んだ末に、惚れ薬の効果を打ち消す薬をもらうことを決意するが……。
※小説家になろうにも掲載しています
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
勘違い令嬢の離縁大作戦!~旦那様、愛する人(♂)とどうかお幸せに~
藤 ゆみ子
恋愛
グラーツ公爵家に嫁いたティアは、夫のシオンとは白い結婚を貫いてきた。
それは、シオンには幼馴染で騎士団長であるクラウドという愛する人がいるから。
二人の尊い関係を眺めることが生きがいになっていたティアは、この結婚生活に満足していた。
けれど、シオンの父が亡くなり、公爵家を継いだことをきっかけに離縁することを決意する。
親に決められた好きでもない相手ではなく、愛する人と一緒になったほうがいいと。
だが、それはティアの大きな勘違いだった。
シオンは、ティアを溺愛していた。
溺愛するあまり、手を出すこともできず、距離があった。
そしてシオンもまた、勘違いをしていた。
ティアは、自分ではなくクラウドが好きなのだと。
絶対に振り向かせると決意しながらも、好きになってもらうまでは手を出さないと決めている。
紳士的に振舞おうとするあまり、ティアの勘違いを助長させていた。
そして、ティアの離縁大作戦によって、二人の関係は少しずつ変化していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる