恋人の愛は少し……いや、かなり重いです。【完結後の小話】

あげいも

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二度目のクリスマス

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 去年のクリスマスは通りがかりにケーキを買ったが、今年はわき目もふらずに人通りを急ぎ足で歩く洋佑。目的は──
「洋佑さん!」
 手を振る待ち合わせ相手──佑を見つけると、洋佑も手をあげた。殆ど走るようにして佑の傍へと。
「はぁ、走っても寒いな、今日」
 少しばかり乱れた呼吸のままで笑う。佑の指が乱れた髪を撫でつけるのにほんの少し頬が熱くなる。
「ゆっくりでよかったのに」
「予約の時間に遅れたら駄目だろ?……大丈夫、エレベーター降りるまでには落ち着くから」
 肩を並べて歩き出す。
 待ち合わせた場所はホテルの前。予約したレストランは、二人で初めてデート──当時はただ一緒に食事をしただけではあったが──した場所に当たる。今年のクリスマスは、ここで過ごそうと言ったのは洋佑だ。
 倍率の高いディナーの予約を何とか勝ちとり、今日はゆっくり過ごせる──と一ヶ月以上も前から楽しみにしていた今日。
 ここで遅刻して予約キャンセルなんて目も当てられない。
「部屋は先にチェックインしといたから」
 佑の言葉に笑顔で頷く。エレベーターを呼び、目的のレストランへと。個室や窓際などは選べるが、細かい指定は出来ない、とのことだったが、偶然にも前と同じ個室に通され、二人で顔を見合わせて笑った。
「偶然ってのはあるもんだな」
 もしかして、予約の担当者が以前の事を覚えてくれていたのだろうか──なんて他愛のない雑談。変わらない部屋と美味しい料理。
 行き届いたサービスに満足するのも以前と同じ──いや、それ以上かも知れない。
 一緒にいる相手が以前とは違う。ただの後輩から恋人──一生傍に居たいと思う人になるなんて、あの時は思っていなかった。
 指輪の感触にも漸く慣れたが、こうして一緒に過ごす時間に対して何とも言えない気持ちが沸き起こるのは、この先ずっと慣れないような気もしている。
「──このアイス、雪だるまなんだな」
「本当だ。さっきの前菜はトナカイだったよね」
 クリスマス限定ディナーということで、コースの内容は記載があっても、見た目はサイトには掲載されていなかったから、食べ進めながら二人で感想を言い合って笑う。
 やっぱり長い名前の料理は覚えられなかったけれど。食後のコーヒーまで満足と言う言葉しか出なくて、洋佑は頬を緩めたまま佑を見つめた。
「──来年も来れるといいな」
 不意の言葉に一度目を瞬かせた後、佑は静かに頷く。そのまま、少し雑談してから店を出た。
 あの時と同じ部屋も予約してある。以前とは違ってゆっくりと部屋へと向かった。
「……うわ。すご」
 扉を開いた洋佑の第一声。部屋の中はクリスマス一色にデコレーションされていたのだ。
 オプションのクリスマス仕様を選択したから、当然と言えば当然なのだが。会社でしか見ないような大きなツリーの置かれた部屋にプレゼントボックスやらなにやら。
 子供のように部屋を見て回る洋佑。一通り見終わった後、後ろから伸びてきた腕に抱き締められて動きが止まる。
「佑?」
 後ろからだから表情が見えない。ぐ、と身体を抱く腕に力が籠るのに顔をみようと傾けると同時に口づけられて眼を見開く。
「……部屋じゃなくて、僕を見て欲しい」
 拗ねた声と表情。更に腕に力が籠るのと、眉間に皺を寄せるのを見て、洋佑はごめん、と軽く笑った。一度腕を緩めてくれるように頼むと、身体の正面を佑へと向けて、改めて腕を伸ばす。
「佑しか見てないよ」
 佑の頬を両手で包んで引き寄せる。触れるだけのキスを贈った後、視線を合わせたままで笑う。
「本当に?」
 幾分機嫌がなおったのだろう。表情を緩めて洋佑の腰へと手を回す。
「本当に──愛してる」
 言い終わるか否かで再度口付けた。今度は顔を傾け、深く重ね合わせる。同時に佑の手がジャケットの下に滑り込み、シャツを引き出すようにもぞつくのに肩が跳ねる。
「んっ……まって、脱ぐ……」
 引き出したシャツの裾から直接に手を這わされて声が上擦る。軽く体を捩って逃げようとする動きを感じて、佑の腕にさらに力が籠った。
「……僕が脱がせる、から」
 直接に肌を這う手が前に。器用にシャツのボタンを外した後、ベッドへと促される。同時に舌を絡められ、洋佑の肩が跳ねるのに、佑はようやく満足そうな笑みを浮かべた。
 繰り返し口付けながらベッドの端へと倒れ込む。二人分の体重を受け止めたベッドが軋んだ。
 ベルトを外した指が中へと。腰を浮かされ、下着ごとスラックスを脱がされた後、靴と靴下も床へと放り投げられ──そのまま足を開かされる。
 ベッドに対して側面から背中をつけたため、やや不安定な姿勢に身じろぐと、佑がやんわりと笑った。
「スーツ……クリーニングに出しちゃお……服が戻ってくるまでは、ベッドから出ちゃだめだよ?」
 そんな無茶な、と反論しようとするが、口を開く前に塞がれてしまうと、自然と眼を閉じ力が抜けた。肌を這う指の動きに合わせて揺れる身体に合わせて軋むベッドの音が混ざる。
「んっ……」
 胸を弄っていた指が下へと向かう期待に腰が揺れてしまう。既に昂り、先走りを零していた性器へと指が触れると同時、大きくベッドが軋んだ。
 ぐちゅぐちゅと音を立てて扱かれると、羞恥に肌が薄く染まる。
「た、すく、も、いいから……っ」
 指先が先端の小さな穴を擽るように動くと、悲鳴じみた声があがる。ひくつく下腹の動きと、反射的に口を覆う手の動きに、佑は静かに指を離して奥へと。
「……だめだよ。まだ」
 呼吸に合わせてひくつく後孔の皺を丁寧になぞりながら、口元を覆う手を外させた。そのまま掌を重ねて握ると、漸く視線があった洋佑に嬉しそうに笑う。
「隠さないで」
 差し込まれる指に大きく体が跳ねる。反射的に唇を噛んでしまい、あ、と気づいて洋佑は眉を下げる。
「……ごめ、……はず、かしい」
 でも声が聞きたい。顔が見たい。
 言いながら更に指を奥へと埋め込まれていくのに、下腹のひくつきが激しくなる。
「あ、う……は、……や、そこ」
 反応してしまう箇所を重点的に責められて声が上擦った。開いた足の中心、揺れる性器の先から零れる先走りに白いものが混ざり始めるのに、佑は静かに指を抜いた。
 引き抜かれて行く感触に、つい引き留めようと強く締め付けてしまうのは意識外のこと。引き抜かれた指は完全に離れることなく、収縮を繰り返す窄まりへと押し当てられたまま。
 皺を丁寧になぞるような動きに洋佑はまた声を上げた。
「……あ、~~~っ、……は、……」
 佑、と名前を呼ばれて動きが止まる。上気した肌に潤んだ眼。短く上下を繰り返す胸から下へと視線を向けると、昂った性器がピクリと跳ねる。
「佑、のがほしい」
 空いている方の指が延びて、佑の頬に触れる。震える指で肌を撫でる動きに、佑は小さく息を飲んだ。一度体を離すが、すぐにまた覆いかぶさるように。
 太腿に当たる熱に、びく、と洋佑の肌が震える。改めて太腿へと手がかかると、思わず視線を向けてしまう。
「……きつかったら、言ってね?」
 目が合った佑が微笑んだ。押し当てられる熱と質量に頷き返すのが精いっぱい。ず、と音を立てて入り込んでくるものに、大きく体を仰け反らせる。
 同時に腹の上に広がる生々しい淫臭。
「ぅ、ぁ……も、……」
 声にならない声を上げながら、混乱したように頭を振る洋佑を見て、佑はその手をそっと握った。両手を重ねて握ると、洋佑の手が自分の頬を包むように導いてから指を離す。
 ぼんやりしたままの洋佑が、頬に当てた手に力を込めた。引き寄せられるままに顔を寄せ、触れては離すだけのキスを何度も落とす。
「僕だけ見てて……他の事、何も見なくていい。考えなくていい、から……」
 ぎし、とベッドが軋んだ。更に奥へと入り込んでくる熱に、頬から首へと腕を回し、しがみつく。自然と詰まる距離に、またベッドが軋む。
「……ん、ぅん……たすく、佑」
 ──もっと。
 甘えるように頬を摺り寄せながら囁かれる言葉に佑は息を飲む。絡む腕と足に誘われるように、腰を押し付ければ、ぐ、と中に入り込む感覚。
 蕩けた肉壁に包まれる快感に小さく息を吐き出した。ひくつく腹の動きも、背中に回された腕の震えも。絡んだ足が緩んではまたしがみついてくる動きも、全部。
「洋佑、さん」
 少しだけ顔を浮かせて視線を合わせる。快楽に溺れ切った洋佑の表情はどこかだらしないが、それでも佑を認識すると、笑みを浮かべてくれる。
 溜まらなくなって深く口づけると同時に、中へと熱を吐き出した。緩々と重ねた角度を変えながら続ける行為に息苦しさを感じたのか、己の背に回された腕から力が抜けるのを感じて、漸く佑は顔を上げた。
「……ごめん、ね。夢中になっちゃった……」
 息継ぎのための隙間すら惜しくて。話しながらも、どこかしらに触れると、洋佑が小さく肩を揺らす。
「ん……俺も、」
 改めて頬を包む手。重なる視線に鼓動が早くなる。
「……たすく」
 少しばかり声が高い。これは何かを企んでいる時の声だ。
「たすく、も……服、戻ってくるまで、ベッドの中……な?」
 べたりと残る交情の跡。さらに汚れを広げるように、洋佑は腰を浮かせて腹を摺り寄せる。同時に、佑の腕が洋佑の背中へと回されて更に密着すると、刺激が強すぎたのか、洋佑の動きが止まる。
「……うん。ずっと……ベッドの中がいいな」
 いい?と尋ねる声。返事の代わりに口付けを返した。
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