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2 ゲーム始めたての頃

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「おっと、赤ちゃんから育てるのこれ」





 浮気され続け、傷心中の俺が始めたそのゲーム。ゲームも漫画もアニメも見るような人間なので、サクサク進むかと思いきやそうでもなかった。



 ゲームを始めて早々、何の説明も無く俺の目の前には三つの赤ちゃんベッド。しかもすでに名前が決められているとな。





「えーっと、左から優蘭、繻楽、雪瓔……確か古代中国設定だったよな?」





 周りの屋敷の作りや自分の服装を見るに中華風な感じはする。調べたので恐らくそうだろう。この手のジャンルではみない世界設定だ。



 俺はそんなことを考えながらそっと赤ちゃんベッドをのぞき込む。すると、彼はじいっと俺を見つめている。この子は繻楽だ。なんだか敵意があるように見えなくもない……。気のせいだよな?だって赤ちゃんだもん。



 そう思いながら、恐る恐る触ってみようと手を伸ばす。



 しかし――。





「あ!!」

「す、すみませんでした!!」





 べしんっと小さな手で叩かれた。どうやら拒否されたようだ。俺は反射的に謝る。それからもう一度、繻楽を見つめた。繻楽は何やら興奮しているようで「うーうー!!」とバタバタ手を動かしこちらを睨みつけている。



 そっとした方が良いのかな……?



 ひとまず、ばいばいっと手を振って繻楽と別れ、隣の雪瓔を見ることにした。真っ白な髪の赤ちゃんだ。大人しく、じーっと俺を見つめている。そーっと今度は指一本だけ近づけて見る。そしてふにっと彼のほっぺに触ることに成功した。





「お、おお、繻楽と違って雪瓔は大人し……」

「あ」





 雪瓔は俺の指を噛んだ。歯がないから噛んだという表現は正しくないが、俺にはそう感じた。





「お、おあ、おあああああっ!!??」





 慌てて口から引き抜くと、ばっちいと言わんばかりに雪瓔はべえっとよだれを吐き出す。何でそんなことしたんだお前と俺は彼に言いたいが、赤ちゃんがそんな高度な質問に答えられるわけがない。ひとまず、よだれを俺の着ていた服で拭ってあげた。勿論、指は隠しておいた。



 雪瓔にもばいばいと手を振って距離をとり、最後に優蘭をのぞき込む。



 優蘭も、雪瓔と同じで大人しい……ように見える。しかし、侮ってはいけない。もしかしたら俺が指を出した瞬間噛んでくるかも……。



 そう思ってじーっと彼を観察する。目が合っていないのでどこを見ているか分からないが、多分赤ちゃんってそういうもんなんだと思う。



 そうして数分がたった。





「死んでない!?」





 暫く彼を見ていたが、全く微動だにしないので俺は慌てて彼を抱えて心臓の音を聞いた。小さな音だが微かにしている。呼吸もしているようだが、なんだか弱い気もしてきた。



 抱っこをしても反応がない。だらんと手足を投げ出して動かない。



 これは何か、重篤な病を抱えているのでは無かろうか!?





「ど、ど、どうすれば、お医者様!?」





 チュートリアルも無いまま始まったので何が何だか分からない。慌てて優蘭を抱えて外に出ようとしたが、「あぶ」と腕の中で声がした。



 はっとしてそちらを見るととっても面倒そうな表情でぺちぺちと俺の胸を叩いている優蘭がいる。良かった、手足は動くようだ。ならばよし。





「ひとまず様子見?という奴だな」





 ベッドに戻してあげるとくるっと器用に横を向いて優蘭が目を閉じた。おお、凄い。寝返りもできそうじゃ無いか。
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