育成ゲームで悪党を育てた爸爸は、最初から詰んでいる。~大きくなった我が子が、俺を監禁するため探しているらしい……~

紫鶴

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3 蛇を象ったお湯

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「あーぶー!!」

「暴れなさんな雪瓔!! お風呂入るだけ!! お前は猫かなんかかな!?」





 どうにかこうにか先ほどの騒動をなだめた俺。今、雪瓔の沐浴をしようとして拒否られている……。



 どうした本当に。そんなに嫌なのかお風呂。さっきの阿鼻叫喚よりましだけど……。



 先ほどの騒動を思い出し、俺は苦笑する。



 一斉に泣き出した赤ん坊達に俺はひとまず一気に三人片付けられないので腕に抱いている雪瓔から手をつけた。この子はちょっと驚いただけのようで少し抱っこして揺すったら冷静になったのかすんっと泣き止んだ。凄く理解のある赤ん坊様で助かる。



 次に優蘭だ。何故彼がベッドから出て行こうとしたのかその理由が恐らく机にあると踏んだ俺は、そこにある書物を一度引き寄せてみた。すると、優蘭はピタリと泣き止み、じいっと食い入るように本を見つめている事に気がついたのだ。



 成る程、これが欲しかったのね?



 そっと彼の近くに本を置くとたーっと本に駆け寄り興味津々。「あ!」とめくれといわんばかりに声を出しながらぺしぺし叩くので道術で催促される度にページをめくってあげた。



 これで二人は大人しくなった。



 その流れで最後にギャン泣きしている繻楽を抱き上げる。抱っこしても抵抗はしないがぐずってしまって眠いのに起こされて不機嫌です!!という感情が読み取れる。



 ゆらゆら揺れて彼の眠気を誘うと、しばらーくして泣き声が小さくなった。その頃合いでそっとベッドに戻すともぞもぞと自分の寝やすい体勢になって寝息を立てる。良い子ちゃんで良かったです。現実だと数時間泣き止まないなんてざらにあるだろうから。



 それから優蘭の方をみると突っ伏して寝ていた。危ねえ危ねえ。本読んで眠くなったんだな。赤ちゃんだからまだ難しいもんな。絵も無いし。



 優蘭もベッドに戻したあと、一息ついた。





「あー、やべ。服と、雪瓔の顔洗わないと……」





 次いでに初めての沐浴でも体験させて貰おうと意気込む。



 雪瓔はうまく俺の服にだけ吐いたようで絨毯に汚れはない。俺は脱いだ服を抱えて、洗濯板が掛かっている桶を見つけた。その中にぽいっと放り込んだあと、浴室を探す。





「流石にこんなでかい家なんだからあるよな?」





 どう考えてもこの時代の庶民の家ではない。富豪の屋敷だろうと予想できるので恐らく風呂があるはずだ。





「あ、あったあった! ここ、か……」





 一つ一つ部屋を確認していたら予想以上に広い浴場を見つけた。小さい温泉みたいだ。しかも、誰かがすでに湯を張っており、すぐに入れるみたいだ。俺じゃ無くて雪瓔なんだけど。



 流石に雪瓔を大きな風呂場に入れるわけにはいかない。キョロキョロと周りを見ると、雪瓔がちょうど良く入りそうな桶を見つけた。これが赤ちゃん用のお風呂場になりそうだ。





「よし、あとは雪瓔を連れてくるか」





 そう意気込んで俺は雪瓔を風呂場まで連れてきたのは良いのだが……。





「あー! ああああああああっ!!」

「すんごい嫌がる……。風呂は気持ちいいよ? 少しだけ触ってみない?」

「! ぎぃやああああ!!」

「う……っ!」





 まだ服すら脱がせていないのに嫌がって俺を蹴ってきた。顎にヒットしてうめき声を上げる。こんなに嫌がるとは思わなかったな。いったん濡れ布巾で口元だけ拭う、か……?



 不意に、影が差した。



 俺たち以外に誰かいるとすればNPCだが、何かない限り現れないと思っていたので何だろうとそっと顔を上げる。しかし、そこには全く予想していない事態が起こっていた。





「え。な、にぃ……!?」





 なんと浴槽のお湯が集まってまるで蛇のような形になっていた。そしてそのお湯の蛇はそのまま俺たちに向かってくる。





「!? 危ない!!」

「あぶっ!!」





 ばしゃーんっと頭から俺たちにお湯がかかった。そのまま蛇は跡形も無くただのお湯に変わっているが、俺と雪瓔もろともずぶ濡れだ。これじゃあ雪瓔がますます風呂を嫌がるじゃ無いかとこの謎の現象に怒りを覚える。やはり雪瓔は「ふあああああああ!!」と先ほどの比じゃ無いほど泣き出して暴れ回った。



 急にお湯被ったんだもんな。驚くのも無理はない。





「ごめんな雪瓔。俺がしっかり見てれば良かったのに。よしよし、好きなだけ泣くんだ。怖かっただろう」





 腕の中でふえふえ泣いている雪瓔をなだめていたが、ん?と俺は彼の変化に気付いて首を傾げた。



 なんと雪瓔の柔肌が鱗のようなもので覆われ始めたのだ。水を被るとこうなっちゃうのか?変わってるな。



 だから中華ファンタジー設定にしたのかと納得していると、雪瓔が小さい手を動かしてその鱗を剥がすかのように激しくかきむしり始めた。





「ううううううううっ!!」

「え!? かゆいの!? だめだめ血が出ちゃうでしょ!! 落ち着いて!!」





 雪瓔が体をかきむしらないようにぎゅうっとぴったりくっついて抱きしめる。すでに腕から血が出ていた。そんなにかゆいのか!!





「な、なんだ、どうすればいい!? 薬、薬!! 誰か薬出して!!」

「失礼致します」

「うわあ!! あ、ありがとう!!」





 助かるけどやっぱりその登場の仕方はどうにかして欲しい!!



 俺は浴室から出たあと、雪瓔の体を優しく拭う。それから傷口に薬を塗った。





「あとどこがかゆい? 体全体に塗れば良いか……?」

「……ぅ」

「ん? 大人しくなったな、かゆくなくなったのか? それなら良かった。驚いただろう。早くベッドで寝ような」





 いつの間にかある服を着せてトントン背中を叩きながら雪瓔を寝かせる。暫くもぞもぞと動いていた雪瓔だったが、きゅっと俺の服を掴むとすーすー寝息を立て始めた。



 そうして三人揃ってベッドに寝かせると天使のようだ。



 今までの苦労が報われる……。





「ああ、可愛い。どうしてこんなに可愛いのに誰もやらなくなったんだ……?」





 世界設定云々抜きにしてもこの赤ん坊を育てられれば多少のことは目をつぶっても十分楽しめる。



 ふふっと俺は笑みを浮かべて見守りながら、絶対にこの子達を大きくなるまで育てようと心に誓うのである。
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