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6歳の俺
孤児 6歳 2
突然のフェルトさんが来て一週間がたった。
毎日毎日掃除をして洗濯をして余った時間を読書で過ごしつつ時々マイクやイリーナに外に連れ出されてちびっこに負かされたり、上の子に笑われたりされながらひぃひぃかけっこに付き合う。そんな日常を過ごしていた。
しかし、その日常が突如としてぶっ壊れた。
「今日から新しいお友だちが入るわ。皆仲良くしてね」
「はーい!」
「はい、お名前言えるよね?」
朝御飯の時、突然危機は訪れる。
孤児院で働くアンジェリカさんが、小さく縮こまった色素の薄いクリーム色の紙の男の子を紹介した。彼はアンジェリカさんにそう促されつつも口を一文字に結んだままぎゅうっと服の裾を握りしめていた。アンジェリカさんはそんな様子の彼に変わって「ルチアーノ君でーす!皆よろしくねー」っと明るくそう言った。そんなアンジェリカさんに対しうんともすんとも言わずルチアーノ君は俯いている。
うん、まあ、なんていうかね、この子。
俺のストーカーだわ。
うわ、っと声を漏らしそうになりごくんと朝御飯の固いパンを飲み込んだ。歳は俺より二つ下の4歳らしい。4歳ゾーンの皆のところに彼は座ったが、一言もしゃべらず俯いているので暫くして誰も話さなくなった。
と、いうか、彼をガッツリ見ていたのに彼は俺のことに気づかなかった。つまり、彼は俺のことがわかっていない。前世の記憶がないということだ。
俺の時代が来た。これは、監禁回避いけるぞ!!!
「ふ、ふふ、ふふふふふっ」
「え、なにアズールいきなり声あげて」
「気持ち悪いぞアズール」
「少し黙ってて二人とも余韻に浸らせて」
俺がそう言うと二人は顔を見合わせて首をかしげた。二人にはわからないと思うが俺にとっては死活問題なんだ。ここで監禁されてベッドの上から動けなくなる生活を俺は送りたくない!セックスしすぎだっての!監禁してもいいけど俺に自由時間くれ!頼むから!!
スープをすすり、俺は晴れやかな気持ちでその日を終わることができた。
しかし、ストーカーもといルチアーノはなにもしゃべらずに黙々と作業をこなし飯を食うという人形のような様からかなり気味悪がられていた。しかも彼は何故か外に遊びにいかない。掃除をしたあと日が差さない部屋でぼんやりとしているので吸血鬼っと影でささやかれていた。俺もはじめてその場面に遭遇したとき普通に叫んだ。そのあと俺の悲鳴を聞き付けたマイクとイリーナがやって来たが、ルチアーノに対して叫んだと知るや否や思いっきり俺の頭を叩いて謝らせられた。いや、あんなところにいるのが悪くなーい?
とはいえ、世話焼き二人にかかればルチアーノの事情はすぐに分かるわけで、彼は陽に当たるだけですぐ肌が赤くなり痛みを伴うそうだ。確かに髪の色素も薄いしアルビノに近いのかも。そんな事情があれば仕方ない。その情報は孤児院内で瞬く間に広がり、彼に対して腫れ物扱い的な雰囲気が漂った。イリーナやマイクは良かれと思ってやっていることではあるがこれが本人にとってプラスになったかはわからない。だって結局彼は誰とも遊べていないのだから。
今日も彼は薄暗い部屋でぼんやりと座っていた。俺はその様子を見てため息をつく。手にはイリーナから託された絵本があり、またため息が漏れる。先程、部屋でのんびり歴史書を読んでいたらイリーナ率いる女子軍団が絵本を押し付けてきたのだ。いわく、同じ引きこもり同士仲良くしろっと。俺はすぐにわかった。こいつら、ルチアーノの顔に惚れて話したいが勇気がなく、とりあえず話しかけやすい俺に取り持ってもらおうという魂胆が!
イリーナは頼まれて一緒に来たというだけだと思うが他の子は美人なルチアーノと仲良くはしたいみたいだ。話しかける勇気はないようだが。ここで俺が断れればよかったが女の子の軍団の圧力に俺が勝てるはずもなく静かにうなずいてしまったのが最後、フェルトさんから借りたというお気に入りの絵本を託されて俺は今ここにいる。
やれやれっと肩をすくめて俺はルチアーノに近づき声をかける。
「ルチアーノ」
「……」
彼はゆっくりと虚ろな青色の瞳を俺に向けた。俺ははあっとため息をつきつつ絵本を差し出す。
「ほら、暇潰し道具」
「……」
なにも言わなかったが彼は一応それを受け取って開いていた。俺はこの薄暗い部屋で読書をするのは目に悪いので魔法で光源を作り明るくする。突然明るくなってびくっと体を震わせてルチアーノがこちらを見ていたが俺がきにせず本を開いて読んでいるのを見て手元の絵本に視線を移した。
しばらく、俺は歴史書を読んでいたが、ルチアーノの手が止まっていることに気づいた。なにか他にやることでも見つけたのかとそちらを見ると絵本の上に妖精が座っていた。手のひらサイズで頭のかたちが赤いチューリップになっていた。そこでこの孤児院に花壇があったことに気づく。最近になって院長が教育の一貫として作ったのだ。それによって誕生したのだろう。
妖精……一般的に言うならば良き隣人といわれる彼らは一生懸命ルチアーノに話しかけるが、彼は嫌そうに顔を背けている。見えていないのかとはじめは思ったが的確に顔を背けているので見えてはいるのだろう。
嫌がっているルチアーノを放置するわけにもいかず、俺が彼女に声をかけた。
「やあ、隣人さん。彼になにか頼みたいことでもあるの?」
「……え」
そう言うとルチアーノは驚きの表情でそう呟いた。すると、彼女はその絵本からこちらに飛んでくる。
「あのねあのね、おみずがほしいの」
「まじか……」
俺は本を閉じて、部屋を出た。水やり係りというものがあるのだが今日は忘れてしまったのだろうか。こんな天気のいい日に外に出るなんて最悪だ……俺はそう思いながら誰にも見つからないように花壇に向かう。特にルチアーノを頼まれた女子軍団に見つかったら面倒になるのは目に見えているので慎重に行動する。
「ねえねえ、みずくれるやつもってこなくていいの?」
「大丈夫」
彼女と一緒に花壇までやって来た俺は魔法で水を作り出し雨のように降らす。すると彼女は大喜びで水を浴びる。満足したようで何よりだよ、っと思っているとチューリップの影からたくさんの妖精が出てきてうわっと思わず声をあげてしまった。彼らは「ありがとう」っとお礼をいってくるくると俺の周りを回る。
「もう戻っていい?」
「うん、ありがとう、りんじんさん」
「はいはい。ああ、そういえばさっきの子は日差しに弱いからあんまり日の当たるところにつれてかないでね」
「わかったー」
そうして彼らと別れた俺は先程の場所に戻る。その部屋の扉を開けて中にはいるとルチアーノが俺のことを凝視していた。俺はおうっと思わず呟いて及び腰になる。
まさか、さっきので気に入られたか?いや、でも、俺の他にもこれから隣人が見える人なんて腐るほど出てくるし……。ここはこっちからは何もアクションを起こさないスタンスで……。
「あの……さっきの……」
「……あー、君は陽の光に弱いって言っといたから大丈夫だと思うよ」
「……りんじんさんっていうの……あ、ですか……?」
「一般的には彼らのような妖精をそう言う人が多いね。あと、敬語じゃなくていいよ」
本を開いてこれ以上話しかけるなっという雰囲気を作る。そのまま静かにページをめくっているとようやくルチアーノが絵本を開いた。そしてそのまま数十分時間が過ぎるが、俺のページをめくる音だけが響いてルチアーノがいっこうにページをめくっていないようだった。
そこで、ここの孤児たちはフェルトさんから文字を教わって読めるようになった子ばかりであったことを思い出す。
「ルチアーノ」
「……っ!」
「君、文字読めないの?」
「あ……えと……」
俺がそう聞くとルチアーノはあわあわとしてその後小さく頷いた。
いや、どう考えてもその可能性を考えなかった俺や女子たちが悪い。そもそもこの孤児院の識字率事態が珍しいのだ。俺は前世の記憶もあるので、本さえあればこの時代の文字なんて読めるが他の子はそう言うわけにはいかない。貸本屋としてくるフェルトさんが丁寧に他の子にも文字を教えているからこそ絵本を読める子供がいるのだ。
絵本とはいえ、文字も読めないとつまらないだろう。
俺ははあっとため息をついた。するとルチアーノがびくっと体を震わせてますますうつむきがちになる。うぐぐ、記憶ないストーカーってこんななのか。ちょっとやりづらい。
俺はびくびくしているルチアーノの隣に腰かけた。ひゅっとルチアーノの喉がなったが気にせずに絵本を覗きこむ。
「文字、教えてあげるから」
「……え……?」
「とりあえず、俺が読み聞かせしてあげる」
子猫が町に出ていろんな出会いをする話だ。俺がゆっくりと文字を指で追いながら読み聞かせをするといつのまにか食い入るようにルチアーノが絵本を見ていた。物語は好きなようだ。それは上々。本が嫌いだったら暇潰し道具がほぼなくなっちゃうからね。
「ーーーーおしまい」
ぱちぱちっとルチアーノが手を叩いた。いや、感動してないで文字を覚えてくれる?
そう思ったが、絵本が面白いものだと認識してくれればいいや。
「これ、続きある……?」
「え?ああ、確か6巻くらいまであったと思うよ。今度フェルトさんが来たときに言ってみたら?」
「フェルトさん?」
「時々来る貸本屋さんこの絵本もその人から借りたものだよ」
「そう……なんだ……」
そう言ってぎゅっとその絵本をルチアーノは胸に抱いた。気に入ったようだ。さすが女の子はセンスがある。
「少しは文字覚えた?」
「う、うん……」
「まあ、ゆっくり覚えればいいよ。俺だけじゃなくても読める子はたくさんいるからその子達にも話しかけて仲良くなるといいよ」
「……また、読んでくれないの……?」
「え、いや、俺がいいなら声かけてくれればいつでも……」
思わずそう返すとぱあっと花咲くような笑顔をルチアーノは見せた。
うぐっと俺は変な声をあげて悶える。可愛いんだよ。わかる?可愛いんだよ、もう!
「あの……名前……」
「ああ、俺はアズール。君より2つ年上」
「うん、僕ルチアーノ……」
うん、まあ今回は仕方ないってことで。やばそうになったら逃げればいいし。まだまだこの子は4歳だからこれから出会いがあるだろうから大丈夫だ、たぶん!!
毎日毎日掃除をして洗濯をして余った時間を読書で過ごしつつ時々マイクやイリーナに外に連れ出されてちびっこに負かされたり、上の子に笑われたりされながらひぃひぃかけっこに付き合う。そんな日常を過ごしていた。
しかし、その日常が突如としてぶっ壊れた。
「今日から新しいお友だちが入るわ。皆仲良くしてね」
「はーい!」
「はい、お名前言えるよね?」
朝御飯の時、突然危機は訪れる。
孤児院で働くアンジェリカさんが、小さく縮こまった色素の薄いクリーム色の紙の男の子を紹介した。彼はアンジェリカさんにそう促されつつも口を一文字に結んだままぎゅうっと服の裾を握りしめていた。アンジェリカさんはそんな様子の彼に変わって「ルチアーノ君でーす!皆よろしくねー」っと明るくそう言った。そんなアンジェリカさんに対しうんともすんとも言わずルチアーノ君は俯いている。
うん、まあ、なんていうかね、この子。
俺のストーカーだわ。
うわ、っと声を漏らしそうになりごくんと朝御飯の固いパンを飲み込んだ。歳は俺より二つ下の4歳らしい。4歳ゾーンの皆のところに彼は座ったが、一言もしゃべらず俯いているので暫くして誰も話さなくなった。
と、いうか、彼をガッツリ見ていたのに彼は俺のことに気づかなかった。つまり、彼は俺のことがわかっていない。前世の記憶がないということだ。
俺の時代が来た。これは、監禁回避いけるぞ!!!
「ふ、ふふ、ふふふふふっ」
「え、なにアズールいきなり声あげて」
「気持ち悪いぞアズール」
「少し黙ってて二人とも余韻に浸らせて」
俺がそう言うと二人は顔を見合わせて首をかしげた。二人にはわからないと思うが俺にとっては死活問題なんだ。ここで監禁されてベッドの上から動けなくなる生活を俺は送りたくない!セックスしすぎだっての!監禁してもいいけど俺に自由時間くれ!頼むから!!
スープをすすり、俺は晴れやかな気持ちでその日を終わることができた。
しかし、ストーカーもといルチアーノはなにもしゃべらずに黙々と作業をこなし飯を食うという人形のような様からかなり気味悪がられていた。しかも彼は何故か外に遊びにいかない。掃除をしたあと日が差さない部屋でぼんやりとしているので吸血鬼っと影でささやかれていた。俺もはじめてその場面に遭遇したとき普通に叫んだ。そのあと俺の悲鳴を聞き付けたマイクとイリーナがやって来たが、ルチアーノに対して叫んだと知るや否や思いっきり俺の頭を叩いて謝らせられた。いや、あんなところにいるのが悪くなーい?
とはいえ、世話焼き二人にかかればルチアーノの事情はすぐに分かるわけで、彼は陽に当たるだけですぐ肌が赤くなり痛みを伴うそうだ。確かに髪の色素も薄いしアルビノに近いのかも。そんな事情があれば仕方ない。その情報は孤児院内で瞬く間に広がり、彼に対して腫れ物扱い的な雰囲気が漂った。イリーナやマイクは良かれと思ってやっていることではあるがこれが本人にとってプラスになったかはわからない。だって結局彼は誰とも遊べていないのだから。
今日も彼は薄暗い部屋でぼんやりと座っていた。俺はその様子を見てため息をつく。手にはイリーナから託された絵本があり、またため息が漏れる。先程、部屋でのんびり歴史書を読んでいたらイリーナ率いる女子軍団が絵本を押し付けてきたのだ。いわく、同じ引きこもり同士仲良くしろっと。俺はすぐにわかった。こいつら、ルチアーノの顔に惚れて話したいが勇気がなく、とりあえず話しかけやすい俺に取り持ってもらおうという魂胆が!
イリーナは頼まれて一緒に来たというだけだと思うが他の子は美人なルチアーノと仲良くはしたいみたいだ。話しかける勇気はないようだが。ここで俺が断れればよかったが女の子の軍団の圧力に俺が勝てるはずもなく静かにうなずいてしまったのが最後、フェルトさんから借りたというお気に入りの絵本を託されて俺は今ここにいる。
やれやれっと肩をすくめて俺はルチアーノに近づき声をかける。
「ルチアーノ」
「……」
彼はゆっくりと虚ろな青色の瞳を俺に向けた。俺ははあっとため息をつきつつ絵本を差し出す。
「ほら、暇潰し道具」
「……」
なにも言わなかったが彼は一応それを受け取って開いていた。俺はこの薄暗い部屋で読書をするのは目に悪いので魔法で光源を作り明るくする。突然明るくなってびくっと体を震わせてルチアーノがこちらを見ていたが俺がきにせず本を開いて読んでいるのを見て手元の絵本に視線を移した。
しばらく、俺は歴史書を読んでいたが、ルチアーノの手が止まっていることに気づいた。なにか他にやることでも見つけたのかとそちらを見ると絵本の上に妖精が座っていた。手のひらサイズで頭のかたちが赤いチューリップになっていた。そこでこの孤児院に花壇があったことに気づく。最近になって院長が教育の一貫として作ったのだ。それによって誕生したのだろう。
妖精……一般的に言うならば良き隣人といわれる彼らは一生懸命ルチアーノに話しかけるが、彼は嫌そうに顔を背けている。見えていないのかとはじめは思ったが的確に顔を背けているので見えてはいるのだろう。
嫌がっているルチアーノを放置するわけにもいかず、俺が彼女に声をかけた。
「やあ、隣人さん。彼になにか頼みたいことでもあるの?」
「……え」
そう言うとルチアーノは驚きの表情でそう呟いた。すると、彼女はその絵本からこちらに飛んでくる。
「あのねあのね、おみずがほしいの」
「まじか……」
俺は本を閉じて、部屋を出た。水やり係りというものがあるのだが今日は忘れてしまったのだろうか。こんな天気のいい日に外に出るなんて最悪だ……俺はそう思いながら誰にも見つからないように花壇に向かう。特にルチアーノを頼まれた女子軍団に見つかったら面倒になるのは目に見えているので慎重に行動する。
「ねえねえ、みずくれるやつもってこなくていいの?」
「大丈夫」
彼女と一緒に花壇までやって来た俺は魔法で水を作り出し雨のように降らす。すると彼女は大喜びで水を浴びる。満足したようで何よりだよ、っと思っているとチューリップの影からたくさんの妖精が出てきてうわっと思わず声をあげてしまった。彼らは「ありがとう」っとお礼をいってくるくると俺の周りを回る。
「もう戻っていい?」
「うん、ありがとう、りんじんさん」
「はいはい。ああ、そういえばさっきの子は日差しに弱いからあんまり日の当たるところにつれてかないでね」
「わかったー」
そうして彼らと別れた俺は先程の場所に戻る。その部屋の扉を開けて中にはいるとルチアーノが俺のことを凝視していた。俺はおうっと思わず呟いて及び腰になる。
まさか、さっきので気に入られたか?いや、でも、俺の他にもこれから隣人が見える人なんて腐るほど出てくるし……。ここはこっちからは何もアクションを起こさないスタンスで……。
「あの……さっきの……」
「……あー、君は陽の光に弱いって言っといたから大丈夫だと思うよ」
「……りんじんさんっていうの……あ、ですか……?」
「一般的には彼らのような妖精をそう言う人が多いね。あと、敬語じゃなくていいよ」
本を開いてこれ以上話しかけるなっという雰囲気を作る。そのまま静かにページをめくっているとようやくルチアーノが絵本を開いた。そしてそのまま数十分時間が過ぎるが、俺のページをめくる音だけが響いてルチアーノがいっこうにページをめくっていないようだった。
そこで、ここの孤児たちはフェルトさんから文字を教わって読めるようになった子ばかりであったことを思い出す。
「ルチアーノ」
「……っ!」
「君、文字読めないの?」
「あ……えと……」
俺がそう聞くとルチアーノはあわあわとしてその後小さく頷いた。
いや、どう考えてもその可能性を考えなかった俺や女子たちが悪い。そもそもこの孤児院の識字率事態が珍しいのだ。俺は前世の記憶もあるので、本さえあればこの時代の文字なんて読めるが他の子はそう言うわけにはいかない。貸本屋としてくるフェルトさんが丁寧に他の子にも文字を教えているからこそ絵本を読める子供がいるのだ。
絵本とはいえ、文字も読めないとつまらないだろう。
俺ははあっとため息をついた。するとルチアーノがびくっと体を震わせてますますうつむきがちになる。うぐぐ、記憶ないストーカーってこんななのか。ちょっとやりづらい。
俺はびくびくしているルチアーノの隣に腰かけた。ひゅっとルチアーノの喉がなったが気にせずに絵本を覗きこむ。
「文字、教えてあげるから」
「……え……?」
「とりあえず、俺が読み聞かせしてあげる」
子猫が町に出ていろんな出会いをする話だ。俺がゆっくりと文字を指で追いながら読み聞かせをするといつのまにか食い入るようにルチアーノが絵本を見ていた。物語は好きなようだ。それは上々。本が嫌いだったら暇潰し道具がほぼなくなっちゃうからね。
「ーーーーおしまい」
ぱちぱちっとルチアーノが手を叩いた。いや、感動してないで文字を覚えてくれる?
そう思ったが、絵本が面白いものだと認識してくれればいいや。
「これ、続きある……?」
「え?ああ、確か6巻くらいまであったと思うよ。今度フェルトさんが来たときに言ってみたら?」
「フェルトさん?」
「時々来る貸本屋さんこの絵本もその人から借りたものだよ」
「そう……なんだ……」
そう言ってぎゅっとその絵本をルチアーノは胸に抱いた。気に入ったようだ。さすが女の子はセンスがある。
「少しは文字覚えた?」
「う、うん……」
「まあ、ゆっくり覚えればいいよ。俺だけじゃなくても読める子はたくさんいるからその子達にも話しかけて仲良くなるといいよ」
「……また、読んでくれないの……?」
「え、いや、俺がいいなら声かけてくれればいつでも……」
思わずそう返すとぱあっと花咲くような笑顔をルチアーノは見せた。
うぐっと俺は変な声をあげて悶える。可愛いんだよ。わかる?可愛いんだよ、もう!
「あの……名前……」
「ああ、俺はアズール。君より2つ年上」
「うん、僕ルチアーノ……」
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