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6歳の俺
孤児 6歳 3
さて、ちゃくちゃくと俺はストーカーと仲を深めるはめになった。不可抗力だ。お節介二人に挟まれて俺はなくなく世話をするしかなかった。
そのお陰ともいえるのか、ルチアーノは進んで同年代の子に話しかけるようにもなった。ならその子に読み聞かせをしてもらえばいいというのにその仲良くなった子から絵本を借りてはそれを俺のもとに持ってきて読み聞かせをねだられるので俺は断れずに読んであげている。下手くそっと評される俺の読み聞かせに群がる子供はいないので必然的にルチアーノと俺は二人きりである。ルチアーノも俺みたいな下手くそな読み聞かせよりもうまい人の方がいいんじゃないかと思うときが多々あるが、本人きっての希望なので俺が拒否できるわけがない。
そんな日々が続き、とうとうフェルトさんがやって来る日を迎えた。30日ごとにやって来る彼の来日だ。今日も俺の前には女の子たちが並んで俺にヘアアレンジを頼みに来る。俺はリクエストに答えつつ素早く髪を整えて最後の一人も終わった。
昼食を食べて、そわそわと女子たちはフェルトさんを待つ。はじめて会うフェルトさんにルチアーノも絵本を持ちながらパタパタと足を動かしている。言わずともマイクの機嫌は悪い。俺は部屋から本を持ってくるため一旦部屋に向かう。戻ってきた頃には広間にフェルトさんがいて、身なりの整った茶髪の男の子がいた。あれがフェルトさんの弟さんかあと思いながら観察していると、ルチアーノが俺に気づいた。
あの子猫の話の絵本だ。キラキラと瞳を輝かせてその絵本を俺に見せてくる。
「アズール読んで!!」
「ちょっとまって、本選んでからね」
「うん!!」
俺はフェルトさんとその弟に群がっている子達を避けつつ持ってきた本を探る。歴史書を返して本を探す。相変わらず子供向けの本ばかりではあるが魔法書中級が入っていたのでそれを手に取り貸し出しカードに記入。それからルチアーノに絵本を読んであげようと顔をあげる。すると、フェルトさんの弟さんと目があった。その瞬間ぐらっと視界が回った。
『本日より殿下の身の回りのお世話をしていただきます。ーーーーーです。よろしくお願いします』
『あ、ああ、うんよろしく……』
うわまじかー、俺にもお世話係りがつくなんて聞いてねぇよ~。
そう、俺はそのときに思い、後にこいつも何度目かの転生のときに俺を監禁していた。今までなぜ忘れていたのだろう。たぶん、こっちのストーカーの方が初めてで衝撃だったから。後は何度も転生を繰り返していることにより記憶が劣化していっているのだろう自覚のないまま。
え、待って。なんか嫌な予感する。ストーカーとこの子以外にもいた気がするんだけど、思い出せない!!俺の記憶ポンコツかよ!!
そして今思えば、奴も記憶を保持していた。今はどうなのだろうか、いやでもばっちり俺と目があったが何もアクションがないあたり、むしろ初めて会う感じの様子であったのでもしかするとこいつも記憶ぶっとんでるのかもしれない。ら、らっきー!!
てか、輪廻転生の研究を興味がなくなったからといい加減に終わらせたツケが今回ってきた。も、もしや無差別に俺の関係者は何度も転生しているのではないかと考えるとゾッとする。早急に俺は旅に出た方がいいようだ。もうここからいなくなりたい勢い……。
「アズール……?」
「あ!?え、な、なに、ルチアーノ?」
ルチアーノに呼ばれて我に返り彼を見る。ルチアーノはしばらくじっと俺を見た後にちらっと彼を見た。それからむっと口を尖らせぐいぐい俺の腕を引っ張り広間から離れようとする。
「あっちで本読んで」
「ちょっと、そんな引っ張らなくても……」
「はい、皆さん。今日はフェルト君が紙芝居を読んでくれるそうですよ。聞きたい方はこちらに集まってくださいね」
「げっ!」
「わー!院長先生だー!!」
「テレシアさん、こんにちは」
俺は思わずそう呟いた。そこにはにこにこと菩薩のような笑顔を見せつつ、子供を並ばせている院長の姿が。フェルトさんが彼に挨拶をして紙芝居の準備に取りかかる。俺は本を抱えてそろっと気づかれないようにその場を離れようとするが、金色の瞳がこちらを捉えた。ひくっと俺が頬をひきつらせているとその形のいいピンク色の唇が動く。
「アズール。今日はきちんと朝御飯を食べましたか?」
「も、もちろんで……」
「アズール、今日トマトを僕にくれました!!」
「……そうですか、よかったですねルチアーノ」
「はい!」
ルチアーノがにこにことそう答えた。院長はいつも笑顔で優しいので人気者だ。院長がいるだけで子供が彼に群がる。しかし、俺は彼を苦手としている。彼は魔力探知に優れていて俺が魔法を使うとペナルティとして院長室の掃除をさせられる。ついでといわんばかりに資料作成の手伝いなどをやらされるので勘弁してほしい。俺の自由時間が減るのが一番嫌なのだ。
「アズール、好き嫌いはだめですよ?」
「ルチアーノがトマト好きなのであげただけです」
「そうですか、では明日はルチアーノの為にトマト尽くしの朝食にしましょうかね」
「ごめんなさい!!」
トマト尽くしはいやだ!!
ブンブン首を降って嫌がるが彼はなにも言わずににこにこと笑顔のままだ。ひどい、明日はトマト尽くしではないと思うが絶対トマトが入ってる。うぐぐっと呻き声をあげつつため息をつく。
するとルチアーノがちょいちょいっと腕を引っ張った。そちらを見るとじいっと俺を見つめている。
「アズールは紙芝居見る?」
「いや、俺は部屋で本読むけど」
ぎゅっと眉間にシワを寄せてちらっと弟さんを見る。俺もつられてそちらを見るが、彼はすぐに紙芝居の方に興味がいき視線を向ける。それからぎゅっと俺の腕をつかんで俺を見上げた。
「……?行ってきていいよ……?」
「……うー」
ええ、なに。俺がどうしたの?俺も一緒に紙芝居見てほしいってこと?
ちらっと俺は借りた本と紙芝居を交互に見てふうっとため息をつく。俺が諦めて紙芝居を見るしかないようだ。
「ほら、ルチアーノは小さいから前に座らせてもらいなよ。俺も気になるし」
「うんっ!」
俺が紙芝居を見るためにそちらに向かうと、ルチアーノの場所を前列に座っていたちびっこたちが空けてそこにルチアーノが座る。その際俺の方をちらっと見ていたが俺は前を向けっと顎を動かして促した。
俺はというと、あまり興味もないので後ろの方でたっている。いつでも抜け出せるように。俺とルチアーノが紙芝居を聞く体勢にはいるとフェルトさんが紙芝居を始めた。不思議な本を見つけた主人公が様々な場所でいろんな出会いをしていくという話だ。よくある設定だな。
ふわあっとあくびをして、皆が紙芝居に注意が向いている間にそろっと離れて部屋に向かう。院長がちらっと俺に視線を寄越したがそのまま紙芝居に向いたので大丈夫だろう。静まり返っている廊下を歩いていると背後から気配を感じその瞬間「あの」っと背後から声をかけられた。
俺はふうっと息を吐いてくるっと振り返る。するとそこにはフェルトさんの弟がいる。俺の頬がひきつる。確かにこいつ場所的に端の方で抜けられるとは思うけど、なんで俺のところに来た。
き、記憶ないよね……?ないんだよね……?
「……なに」
「あ、いえ、俺はアルトです。よろしくお願いします」
「そう。俺はアズール」
そう言って部屋に戻ろうとすると、「あ!あの、その本!」っとアルトが声をあげた。俺はえ?っと声をあげながらこれ?っと本を見せた。
別にお貴族様にとってこの本はなにも珍しいものではないだろうに。なんでだ?
「読みたいの?」
「あ、い、いえ!貴方も魔法が使えるんですか?」
「まあ、多少は……というか、敬語要らないよ。同い年ぐらいでしょ」
「え、あ、えーっと……う、うん」
「で?俺に何の用?」
俺が直球にそう聞くと、アルトははっとしてにっこりと笑顔を作った。
「よければ、わた……俺の魔法少し見ない?」
「まじか!いいの!?」
思わずテンション上がってそう声をあげたが、はっと我に返る。この前水やりに魔法使ったのが院長にばれてにっこにこの笑顔で院長室の掃除をさせられた。だから、子供同士で魔法を使うのはよくない気がする。気がするが、ばれなきゃいいのでは?っと悪魔の囁きが。
「あっちの方でやろ」
「うん、わかった」
俺はアルトをつれて森に近い方に案内した。広間から一番離れた庭だ。魔力探知に引っ掛かってもすぐに逃げられるし、いいわけを考える時間はとれる。それに魔力探知の範囲はそんなに広くないだろう。さすが俺!
俺が低い煉瓦の塀に腰かけるとアルトが少し離れてそこに座った。まあ、さっき知り合ったばかりなので妥当な距離だろう。そんな彼に俺は質問をする。
「ねえ、なにが得意なの?」
「俺は氷系が得意かな」
「ほー!」
俺と近い年なのに応用まで発展した魔法ができるなんてさすが英才教育されている貴族様だ。氷だと、水と炎の複合だ。氷の主な要素である水と、炎の温度調節の技術の二つを使ったものだろう。見たい見たいっとねだると手のひらに先程の紙芝居の主人公を象った氷の人形ができる。俺はおおっと感嘆を漏らした。このような芸術的なものは緻密な作業であるのでかなり魔法を習得していることが分かる。
「さわっていい?」
「うん、いいよ」
そろっとそれに触るとひやりとして、硬度もある。ふむふむ、すごいな。
「アズールは?何の魔法が得意なの?」
「え、えーっと……」
特にこれと言って得意なことがない。あえて言うなら召喚系ではあるが、それは魔法という括りではなく召喚術というジャンルに入るので何の魔法が得意かと聞かれて正しい返答ではない。ここは炎辺りにしておこう。
「炎系かな」
「へー!ちょっと見せて!」
「え、あ、ごめん、院長から使うなって言われてて」
「……テレシアさんから……?」
「うん」
そう言うと不思議そうな顔をしたアルトが首をかしげたがこくんとうなずいた。それなら仕方ないねっと言葉と共に。大人びてるな。いい方の貴族だ。育て方がいいのだろう。まあ、フェルトさんの肩書きが貸本屋だからばれないように装える常識はないとダメか。
それから、アルトに色々と魔法を見せてもらった。彼は繊細な魔法が得意のようで収縮したりホーミングしたりすることができたりするようだ。彼の年にしてはかなりの使い手だ。天才と言っても過言じゃない。しかし、そんな彼は自分の力を自慢するわけでもなくこう言った。
「アズールってすごいね。俺の見せた魔法の仕組みとか分かるんだ。なんか俺感覚でやってるからとても勉強になるよ。テレシアさんは結構そういうの教えてくれてたんだけど今の人は俺のことすごいって誉めるだけでつまんなくて……」
すごい。俺だったら図に乗ると思う。こんな風に相手を尊重できるのも人間性が高い証だ。
ただ、先程の彼の発言に確認店がひとつ。
「院長に魔法教えてもらってたの?」
「あ……」
俺がそう聞き返すとあからさまに彼はしまったという顔をしてにへらと笑い、人差し指を口に持っていく。
「俺が言ったって言わないでね」
「言わないよ。言う必要もないし。俺も勉強になった、ありがとう」
「う、うん!こちらこそ!!」
ブンブンと首を降って彼はそういった。俺はその勢いにお、おうっと声を漏らす。
こちらとしては、知られざる院長の過去が少しわかったので感謝しかない。この情報をうまく使って院長を困らせてやろう。くっくっくっ。
その日を夢見つつ、周りの様子を確かめる。まだ誰も遊んでいる声がしないので紙芝居を見ているようだ。まだまだ魔法を見せてもらいたいが彼の魔力がどれ程あるのか計りかねるのでここまでにする。仕方ない、ここで魔力欠乏を起こされても困るしね。
「俺の部屋来て休みなよ。結構魔力使わせちゃったし」
「え!い、いいの?」
「うん、こっち」
俺が立ち上がるとアルトも一緒に立ち上がる。そのまま中に入るために肩を並べて歩いていると森から一斉に鳥が羽ばたいた音がした。俺とアルトはそちらの方に視線を向ける。すると、何かがこっちに来ているのを視認した。アルトもそれに気づいたようでさっと顔色を変えて俺の腕を引っ張る。
「アズール、早く中にっ!!」
「え?」
なにをそこまで怯えているのかわからずに俺は首をかしげる。なにも脅威になるようなものはない。ないが、アルトが尋常じゃないくらい震えているので彼の言葉にしたがって出てきた扉を目指す。大した距離じゃないのですぐに扉を開けて、先にアルトを入れた。俺も続いて入ろうとした瞬間べちゃっと音がして目の前のアルトが口を抑えてぺたんとその場に座り込んだ。
そんな恐ろしいものでもあるのかと俺は振り返りおうっと声を漏らす。何かに阻まれているのか円弧状に黒い液体が空中に浮いている。しかもその裏側にたくさんの赤い目玉がギョロギョロと動いていて気持ち悪い。なんだあれ。
「ィィイイィィィレェエテェェエエェェェ」
そう耳障りな声を発するそれに俺は首を振った。
「いや、人型になって出直してきて。そんな気持ち悪い姿じゃみんな怯えるでしょ」
「ゥウウウゥウウゥゥ……」
「唸ってもダメ。君下位の悪魔といえどそれぐらいできるよね?てか、誰に喚ばれたわけ?召喚者のところに戻りな、しっしっ」
手で追い払う仕草をするとずるるるっと地面の方にその悪魔が滑り落ち、地面の上で収縮する。
「ヨバレテ、キタ。ケド、チガウッテ、カエルマエニトジラレタ」
「なんだそれ。そんな変な奴に引っかかってんじゃないよ君も」
「ウウ……オソト、ミタクテ」
「成程ねー。満足した?」
俺がそう聞くとギョロギョロと目玉をせわしなく動かしてブルブル震える。
「オソト、コワイ……」
「そうだね。もう少し力をつけてから召喚には応じた方がいいよ。開門ほらお帰り」
「 オオ、チイサナ召喚士、アリガトウ」
その後の近くに召喚の儀で最重要なゲートを開いた。そのこはそのまま横に動き触手のようなものを最後に伸ばしてゲートの中からそれを振って消えた。俺はふうっと息を吐いてそれを閉じる。
先程鳥が飛んだのは悪魔が来たからでこの奥にきちんと制約を読んでいない者が何かを喚ぼうとしていることが分かった。これは少し注意した方がいいか?変なの来てここに被害がくると困る。
となると、院長の足止めが必要か。
「アルト。頼み事があ……」
「アズール?ここで何をしていたんですか?」
「まじか……」
気配もなく、突然院長が背後に現れた。俺は絶望に浸る。何してるのか、ではなく何をしていたのかと聞くあたり俺が何かをしたのが分かっているようだ。エスパーか。
「アルト君。大丈夫ですか?」
「は、はい!」
「偉いです。悪魔の気配を感じて中に入ったんですね。アズールとは大違い」
そう院長は言っていたので俺はぼそっと反論の言葉を口にする。
「……別に院長が結界張ってるし大丈夫だったでしょ……」
「アズール、貴方は事態を軽視する傾向があります。結界があるから大丈夫ではなく、破られる可能性を考え近くの大人に助けを求めなさい。たとえ貴方にどれ程の知識や技術やセンスがあろうとも貴方はあまり経験がない。その事を十分に理解しなさい」
「……はーい」
まぁ、確かに研究と監禁生活で前世があるといえど経験はほぼ無いに等しい。だが、別に軽視しているのではなく今の実力で問題なく対処できそうだからそう見えるだけだ。
しかし、これ以上食い下がっても意味が無いので大人しく返事をする。
「で、その悪魔はどこに?」
「帰したよ」
「帰した!何の目的で来たかとか聞かなかったんですか?」
「外を見たくて召喚に応じたみたいだけど、召喚者に違うって言われてぽっぽられたみたい」
「ほー?なめられたもんですね」
「……?」
変わった言い方をするので彼の様子を伺うため院長を見上げると、一瞬瞳が赤く光った気がした。え、と声を漏らしぎゅっと目を瞑って開くと金色の瞳に戻っている。俺の気のせいかな……?
「とりあえず、二人とも中に入ってください」
「おわ!?雑に持ち上げないでよ!!」
「あ、は、はいテレシアさん!」
扉を開けて入りやすいようにしたところから院長が中に入っていく。俺を小脇に抱えて。ブスッとした顔をしていると隣に来たアルトがフフっと笑顔を漏らす。なに笑ってんだ君は。不満げにジロッと見つめるとそんな俺に気づいてあっと声を漏らす。
「いや、さっき悪魔に物怖じせずに話しかけてたでしょ?俺より年下なのにすごく頼もしかったけど今は年下の男の子に見えてつい……他意はないよ?」
「あっそう」
こいつ俺より年上だったんかい。思わず情報が手に入った。そのまま院長に抱えられながら広間にいくとまだ紙芝居は終っていないようだった。フェルトさんが部屋に入ってきた院長となにかアイコンタクトをとっていたので彼も先程の気配を感じていたのだろう。
「アズール!」
「え……」
ルチアーノが立ち上がってこちらに駆け寄ってきた。まだ紙芝居の途中で突然立ち上がって俺の名前を呼んだルチアーノは他の子の注目を浴びていたが俺が院長の小脇に抱えられているのを見てまたアズールが問題起こしたよーみたいな雰囲気になり紙芝居の方に視線が向いた。不本意だ!
「ねえ、さっきぞわってして、ぐらってきて、でも皆紙芝居見てて、僕、僕……」
「お、落ち着いてルチアーノ」
「大丈夫ですよ、もう怖いものはいませんからね」
ぐずぐずと泣き始めたルチアーノを院長が優しく頭を撫でて慰めている。その際に俺を下ろしたので俺はふうっと息を吐き、ルチアーノを院長に任せて俺はそろそろとその場を離れる。しかし、がしっと誰かに腕を捕まれた。俺は腕をつかんでいる彼を見てニコっと笑顔を作る。
「アルト、離してくれる?」
「ごめんね、それはできないかな」
「な、なんで……?」
「聞くけど、どこ行くつもりなの?アズール」
げげ、そういえばさっき院長に魔法教わったっていってたな。これって院長と繋がりがあってもしやその繋がりで今回俺のところに連れてこられたんじゃ……。うわ、院長の手のひらで転がされてるぞ俺!今日紙芝居をフェルトさんがしたのは俺とアルトを二人きりにするためか。俺が紙芝居に興味を引かれるはずがないからすぐに部屋に向かうと踏んで、魔法に釣られてアルトと接点を持つだろうと計画をたてて。ひえ、なんてこった!!
「部屋で本読むだけだよ」
「じゃあ俺もついてっていい?」
「いや、ここで休んでた方がいいんじゃない?さっき魔法使わせちゃったし……」
「大丈夫。それに魔法の事もっと教えられるかもしれないし」
「い、いやぁ……」
し、仕方ない。ここはせめて誰が召喚術を行ったのか探るのが良さそうだ。森の方へ人影を探ろうとしてがっと頭を捕まれた。しかも若干力をかけられて痛い。
「アズール……?」
「いや、えっと、まだちゃんと発動してな……」
「偉いですよー。きちんと正直に言うことができて。成長しましたねアズール」
「あ、ちょ、え、まっ!!」
正直に話したつもりはなかったが墓穴掘った。ルチアーノはもう泣き止んでいたようで、ちらっと心配そうにこっちを見ているが助けてくれるつもりはないようだ。アルトの方を見ると彼は爽やかな笑みを浮かべて引きずられていく俺に手を降っている。
お、おまえええええっ!!!
このとき、一瞬にしてアルトの評価が物腰柔らかな優しげな少年から腹黒野郎に変わった。やはり、前世の記憶はないと言えど性格が似かよってしまうのだと俺は確信した。
ちなみに前世の彼はスパルタ腹黒世話係だった。
そのお陰ともいえるのか、ルチアーノは進んで同年代の子に話しかけるようにもなった。ならその子に読み聞かせをしてもらえばいいというのにその仲良くなった子から絵本を借りてはそれを俺のもとに持ってきて読み聞かせをねだられるので俺は断れずに読んであげている。下手くそっと評される俺の読み聞かせに群がる子供はいないので必然的にルチアーノと俺は二人きりである。ルチアーノも俺みたいな下手くそな読み聞かせよりもうまい人の方がいいんじゃないかと思うときが多々あるが、本人きっての希望なので俺が拒否できるわけがない。
そんな日々が続き、とうとうフェルトさんがやって来る日を迎えた。30日ごとにやって来る彼の来日だ。今日も俺の前には女の子たちが並んで俺にヘアアレンジを頼みに来る。俺はリクエストに答えつつ素早く髪を整えて最後の一人も終わった。
昼食を食べて、そわそわと女子たちはフェルトさんを待つ。はじめて会うフェルトさんにルチアーノも絵本を持ちながらパタパタと足を動かしている。言わずともマイクの機嫌は悪い。俺は部屋から本を持ってくるため一旦部屋に向かう。戻ってきた頃には広間にフェルトさんがいて、身なりの整った茶髪の男の子がいた。あれがフェルトさんの弟さんかあと思いながら観察していると、ルチアーノが俺に気づいた。
あの子猫の話の絵本だ。キラキラと瞳を輝かせてその絵本を俺に見せてくる。
「アズール読んで!!」
「ちょっとまって、本選んでからね」
「うん!!」
俺はフェルトさんとその弟に群がっている子達を避けつつ持ってきた本を探る。歴史書を返して本を探す。相変わらず子供向けの本ばかりではあるが魔法書中級が入っていたのでそれを手に取り貸し出しカードに記入。それからルチアーノに絵本を読んであげようと顔をあげる。すると、フェルトさんの弟さんと目があった。その瞬間ぐらっと視界が回った。
『本日より殿下の身の回りのお世話をしていただきます。ーーーーーです。よろしくお願いします』
『あ、ああ、うんよろしく……』
うわまじかー、俺にもお世話係りがつくなんて聞いてねぇよ~。
そう、俺はそのときに思い、後にこいつも何度目かの転生のときに俺を監禁していた。今までなぜ忘れていたのだろう。たぶん、こっちのストーカーの方が初めてで衝撃だったから。後は何度も転生を繰り返していることにより記憶が劣化していっているのだろう自覚のないまま。
え、待って。なんか嫌な予感する。ストーカーとこの子以外にもいた気がするんだけど、思い出せない!!俺の記憶ポンコツかよ!!
そして今思えば、奴も記憶を保持していた。今はどうなのだろうか、いやでもばっちり俺と目があったが何もアクションがないあたり、むしろ初めて会う感じの様子であったのでもしかするとこいつも記憶ぶっとんでるのかもしれない。ら、らっきー!!
てか、輪廻転生の研究を興味がなくなったからといい加減に終わらせたツケが今回ってきた。も、もしや無差別に俺の関係者は何度も転生しているのではないかと考えるとゾッとする。早急に俺は旅に出た方がいいようだ。もうここからいなくなりたい勢い……。
「アズール……?」
「あ!?え、な、なに、ルチアーノ?」
ルチアーノに呼ばれて我に返り彼を見る。ルチアーノはしばらくじっと俺を見た後にちらっと彼を見た。それからむっと口を尖らせぐいぐい俺の腕を引っ張り広間から離れようとする。
「あっちで本読んで」
「ちょっと、そんな引っ張らなくても……」
「はい、皆さん。今日はフェルト君が紙芝居を読んでくれるそうですよ。聞きたい方はこちらに集まってくださいね」
「げっ!」
「わー!院長先生だー!!」
「テレシアさん、こんにちは」
俺は思わずそう呟いた。そこにはにこにこと菩薩のような笑顔を見せつつ、子供を並ばせている院長の姿が。フェルトさんが彼に挨拶をして紙芝居の準備に取りかかる。俺は本を抱えてそろっと気づかれないようにその場を離れようとするが、金色の瞳がこちらを捉えた。ひくっと俺が頬をひきつらせているとその形のいいピンク色の唇が動く。
「アズール。今日はきちんと朝御飯を食べましたか?」
「も、もちろんで……」
「アズール、今日トマトを僕にくれました!!」
「……そうですか、よかったですねルチアーノ」
「はい!」
ルチアーノがにこにことそう答えた。院長はいつも笑顔で優しいので人気者だ。院長がいるだけで子供が彼に群がる。しかし、俺は彼を苦手としている。彼は魔力探知に優れていて俺が魔法を使うとペナルティとして院長室の掃除をさせられる。ついでといわんばかりに資料作成の手伝いなどをやらされるので勘弁してほしい。俺の自由時間が減るのが一番嫌なのだ。
「アズール、好き嫌いはだめですよ?」
「ルチアーノがトマト好きなのであげただけです」
「そうですか、では明日はルチアーノの為にトマト尽くしの朝食にしましょうかね」
「ごめんなさい!!」
トマト尽くしはいやだ!!
ブンブン首を降って嫌がるが彼はなにも言わずににこにこと笑顔のままだ。ひどい、明日はトマト尽くしではないと思うが絶対トマトが入ってる。うぐぐっと呻き声をあげつつため息をつく。
するとルチアーノがちょいちょいっと腕を引っ張った。そちらを見るとじいっと俺を見つめている。
「アズールは紙芝居見る?」
「いや、俺は部屋で本読むけど」
ぎゅっと眉間にシワを寄せてちらっと弟さんを見る。俺もつられてそちらを見るが、彼はすぐに紙芝居の方に興味がいき視線を向ける。それからぎゅっと俺の腕をつかんで俺を見上げた。
「……?行ってきていいよ……?」
「……うー」
ええ、なに。俺がどうしたの?俺も一緒に紙芝居見てほしいってこと?
ちらっと俺は借りた本と紙芝居を交互に見てふうっとため息をつく。俺が諦めて紙芝居を見るしかないようだ。
「ほら、ルチアーノは小さいから前に座らせてもらいなよ。俺も気になるし」
「うんっ!」
俺が紙芝居を見るためにそちらに向かうと、ルチアーノの場所を前列に座っていたちびっこたちが空けてそこにルチアーノが座る。その際俺の方をちらっと見ていたが俺は前を向けっと顎を動かして促した。
俺はというと、あまり興味もないので後ろの方でたっている。いつでも抜け出せるように。俺とルチアーノが紙芝居を聞く体勢にはいるとフェルトさんが紙芝居を始めた。不思議な本を見つけた主人公が様々な場所でいろんな出会いをしていくという話だ。よくある設定だな。
ふわあっとあくびをして、皆が紙芝居に注意が向いている間にそろっと離れて部屋に向かう。院長がちらっと俺に視線を寄越したがそのまま紙芝居に向いたので大丈夫だろう。静まり返っている廊下を歩いていると背後から気配を感じその瞬間「あの」っと背後から声をかけられた。
俺はふうっと息を吐いてくるっと振り返る。するとそこにはフェルトさんの弟がいる。俺の頬がひきつる。確かにこいつ場所的に端の方で抜けられるとは思うけど、なんで俺のところに来た。
き、記憶ないよね……?ないんだよね……?
「……なに」
「あ、いえ、俺はアルトです。よろしくお願いします」
「そう。俺はアズール」
そう言って部屋に戻ろうとすると、「あ!あの、その本!」っとアルトが声をあげた。俺はえ?っと声をあげながらこれ?っと本を見せた。
別にお貴族様にとってこの本はなにも珍しいものではないだろうに。なんでだ?
「読みたいの?」
「あ、い、いえ!貴方も魔法が使えるんですか?」
「まあ、多少は……というか、敬語要らないよ。同い年ぐらいでしょ」
「え、あ、えーっと……う、うん」
「で?俺に何の用?」
俺が直球にそう聞くと、アルトははっとしてにっこりと笑顔を作った。
「よければ、わた……俺の魔法少し見ない?」
「まじか!いいの!?」
思わずテンション上がってそう声をあげたが、はっと我に返る。この前水やりに魔法使ったのが院長にばれてにっこにこの笑顔で院長室の掃除をさせられた。だから、子供同士で魔法を使うのはよくない気がする。気がするが、ばれなきゃいいのでは?っと悪魔の囁きが。
「あっちの方でやろ」
「うん、わかった」
俺はアルトをつれて森に近い方に案内した。広間から一番離れた庭だ。魔力探知に引っ掛かってもすぐに逃げられるし、いいわけを考える時間はとれる。それに魔力探知の範囲はそんなに広くないだろう。さすが俺!
俺が低い煉瓦の塀に腰かけるとアルトが少し離れてそこに座った。まあ、さっき知り合ったばかりなので妥当な距離だろう。そんな彼に俺は質問をする。
「ねえ、なにが得意なの?」
「俺は氷系が得意かな」
「ほー!」
俺と近い年なのに応用まで発展した魔法ができるなんてさすが英才教育されている貴族様だ。氷だと、水と炎の複合だ。氷の主な要素である水と、炎の温度調節の技術の二つを使ったものだろう。見たい見たいっとねだると手のひらに先程の紙芝居の主人公を象った氷の人形ができる。俺はおおっと感嘆を漏らした。このような芸術的なものは緻密な作業であるのでかなり魔法を習得していることが分かる。
「さわっていい?」
「うん、いいよ」
そろっとそれに触るとひやりとして、硬度もある。ふむふむ、すごいな。
「アズールは?何の魔法が得意なの?」
「え、えーっと……」
特にこれと言って得意なことがない。あえて言うなら召喚系ではあるが、それは魔法という括りではなく召喚術というジャンルに入るので何の魔法が得意かと聞かれて正しい返答ではない。ここは炎辺りにしておこう。
「炎系かな」
「へー!ちょっと見せて!」
「え、あ、ごめん、院長から使うなって言われてて」
「……テレシアさんから……?」
「うん」
そう言うと不思議そうな顔をしたアルトが首をかしげたがこくんとうなずいた。それなら仕方ないねっと言葉と共に。大人びてるな。いい方の貴族だ。育て方がいいのだろう。まあ、フェルトさんの肩書きが貸本屋だからばれないように装える常識はないとダメか。
それから、アルトに色々と魔法を見せてもらった。彼は繊細な魔法が得意のようで収縮したりホーミングしたりすることができたりするようだ。彼の年にしてはかなりの使い手だ。天才と言っても過言じゃない。しかし、そんな彼は自分の力を自慢するわけでもなくこう言った。
「アズールってすごいね。俺の見せた魔法の仕組みとか分かるんだ。なんか俺感覚でやってるからとても勉強になるよ。テレシアさんは結構そういうの教えてくれてたんだけど今の人は俺のことすごいって誉めるだけでつまんなくて……」
すごい。俺だったら図に乗ると思う。こんな風に相手を尊重できるのも人間性が高い証だ。
ただ、先程の彼の発言に確認店がひとつ。
「院長に魔法教えてもらってたの?」
「あ……」
俺がそう聞き返すとあからさまに彼はしまったという顔をしてにへらと笑い、人差し指を口に持っていく。
「俺が言ったって言わないでね」
「言わないよ。言う必要もないし。俺も勉強になった、ありがとう」
「う、うん!こちらこそ!!」
ブンブンと首を降って彼はそういった。俺はその勢いにお、おうっと声を漏らす。
こちらとしては、知られざる院長の過去が少しわかったので感謝しかない。この情報をうまく使って院長を困らせてやろう。くっくっくっ。
その日を夢見つつ、周りの様子を確かめる。まだ誰も遊んでいる声がしないので紙芝居を見ているようだ。まだまだ魔法を見せてもらいたいが彼の魔力がどれ程あるのか計りかねるのでここまでにする。仕方ない、ここで魔力欠乏を起こされても困るしね。
「俺の部屋来て休みなよ。結構魔力使わせちゃったし」
「え!い、いいの?」
「うん、こっち」
俺が立ち上がるとアルトも一緒に立ち上がる。そのまま中に入るために肩を並べて歩いていると森から一斉に鳥が羽ばたいた音がした。俺とアルトはそちらの方に視線を向ける。すると、何かがこっちに来ているのを視認した。アルトもそれに気づいたようでさっと顔色を変えて俺の腕を引っ張る。
「アズール、早く中にっ!!」
「え?」
なにをそこまで怯えているのかわからずに俺は首をかしげる。なにも脅威になるようなものはない。ないが、アルトが尋常じゃないくらい震えているので彼の言葉にしたがって出てきた扉を目指す。大した距離じゃないのですぐに扉を開けて、先にアルトを入れた。俺も続いて入ろうとした瞬間べちゃっと音がして目の前のアルトが口を抑えてぺたんとその場に座り込んだ。
そんな恐ろしいものでもあるのかと俺は振り返りおうっと声を漏らす。何かに阻まれているのか円弧状に黒い液体が空中に浮いている。しかもその裏側にたくさんの赤い目玉がギョロギョロと動いていて気持ち悪い。なんだあれ。
「ィィイイィィィレェエテェェエエェェェ」
そう耳障りな声を発するそれに俺は首を振った。
「いや、人型になって出直してきて。そんな気持ち悪い姿じゃみんな怯えるでしょ」
「ゥウウウゥウウゥゥ……」
「唸ってもダメ。君下位の悪魔といえどそれぐらいできるよね?てか、誰に喚ばれたわけ?召喚者のところに戻りな、しっしっ」
手で追い払う仕草をするとずるるるっと地面の方にその悪魔が滑り落ち、地面の上で収縮する。
「ヨバレテ、キタ。ケド、チガウッテ、カエルマエニトジラレタ」
「なんだそれ。そんな変な奴に引っかかってんじゃないよ君も」
「ウウ……オソト、ミタクテ」
「成程ねー。満足した?」
俺がそう聞くとギョロギョロと目玉をせわしなく動かしてブルブル震える。
「オソト、コワイ……」
「そうだね。もう少し力をつけてから召喚には応じた方がいいよ。開門ほらお帰り」
「 オオ、チイサナ召喚士、アリガトウ」
その後の近くに召喚の儀で最重要なゲートを開いた。そのこはそのまま横に動き触手のようなものを最後に伸ばしてゲートの中からそれを振って消えた。俺はふうっと息を吐いてそれを閉じる。
先程鳥が飛んだのは悪魔が来たからでこの奥にきちんと制約を読んでいない者が何かを喚ぼうとしていることが分かった。これは少し注意した方がいいか?変なの来てここに被害がくると困る。
となると、院長の足止めが必要か。
「アルト。頼み事があ……」
「アズール?ここで何をしていたんですか?」
「まじか……」
気配もなく、突然院長が背後に現れた。俺は絶望に浸る。何してるのか、ではなく何をしていたのかと聞くあたり俺が何かをしたのが分かっているようだ。エスパーか。
「アルト君。大丈夫ですか?」
「は、はい!」
「偉いです。悪魔の気配を感じて中に入ったんですね。アズールとは大違い」
そう院長は言っていたので俺はぼそっと反論の言葉を口にする。
「……別に院長が結界張ってるし大丈夫だったでしょ……」
「アズール、貴方は事態を軽視する傾向があります。結界があるから大丈夫ではなく、破られる可能性を考え近くの大人に助けを求めなさい。たとえ貴方にどれ程の知識や技術やセンスがあろうとも貴方はあまり経験がない。その事を十分に理解しなさい」
「……はーい」
まぁ、確かに研究と監禁生活で前世があるといえど経験はほぼ無いに等しい。だが、別に軽視しているのではなく今の実力で問題なく対処できそうだからそう見えるだけだ。
しかし、これ以上食い下がっても意味が無いので大人しく返事をする。
「で、その悪魔はどこに?」
「帰したよ」
「帰した!何の目的で来たかとか聞かなかったんですか?」
「外を見たくて召喚に応じたみたいだけど、召喚者に違うって言われてぽっぽられたみたい」
「ほー?なめられたもんですね」
「……?」
変わった言い方をするので彼の様子を伺うため院長を見上げると、一瞬瞳が赤く光った気がした。え、と声を漏らしぎゅっと目を瞑って開くと金色の瞳に戻っている。俺の気のせいかな……?
「とりあえず、二人とも中に入ってください」
「おわ!?雑に持ち上げないでよ!!」
「あ、は、はいテレシアさん!」
扉を開けて入りやすいようにしたところから院長が中に入っていく。俺を小脇に抱えて。ブスッとした顔をしていると隣に来たアルトがフフっと笑顔を漏らす。なに笑ってんだ君は。不満げにジロッと見つめるとそんな俺に気づいてあっと声を漏らす。
「いや、さっき悪魔に物怖じせずに話しかけてたでしょ?俺より年下なのにすごく頼もしかったけど今は年下の男の子に見えてつい……他意はないよ?」
「あっそう」
こいつ俺より年上だったんかい。思わず情報が手に入った。そのまま院長に抱えられながら広間にいくとまだ紙芝居は終っていないようだった。フェルトさんが部屋に入ってきた院長となにかアイコンタクトをとっていたので彼も先程の気配を感じていたのだろう。
「アズール!」
「え……」
ルチアーノが立ち上がってこちらに駆け寄ってきた。まだ紙芝居の途中で突然立ち上がって俺の名前を呼んだルチアーノは他の子の注目を浴びていたが俺が院長の小脇に抱えられているのを見てまたアズールが問題起こしたよーみたいな雰囲気になり紙芝居の方に視線が向いた。不本意だ!
「ねえ、さっきぞわってして、ぐらってきて、でも皆紙芝居見てて、僕、僕……」
「お、落ち着いてルチアーノ」
「大丈夫ですよ、もう怖いものはいませんからね」
ぐずぐずと泣き始めたルチアーノを院長が優しく頭を撫でて慰めている。その際に俺を下ろしたので俺はふうっと息を吐き、ルチアーノを院長に任せて俺はそろそろとその場を離れる。しかし、がしっと誰かに腕を捕まれた。俺は腕をつかんでいる彼を見てニコっと笑顔を作る。
「アルト、離してくれる?」
「ごめんね、それはできないかな」
「な、なんで……?」
「聞くけど、どこ行くつもりなの?アズール」
げげ、そういえばさっき院長に魔法教わったっていってたな。これって院長と繋がりがあってもしやその繋がりで今回俺のところに連れてこられたんじゃ……。うわ、院長の手のひらで転がされてるぞ俺!今日紙芝居をフェルトさんがしたのは俺とアルトを二人きりにするためか。俺が紙芝居に興味を引かれるはずがないからすぐに部屋に向かうと踏んで、魔法に釣られてアルトと接点を持つだろうと計画をたてて。ひえ、なんてこった!!
「部屋で本読むだけだよ」
「じゃあ俺もついてっていい?」
「いや、ここで休んでた方がいいんじゃない?さっき魔法使わせちゃったし……」
「大丈夫。それに魔法の事もっと教えられるかもしれないし」
「い、いやぁ……」
し、仕方ない。ここはせめて誰が召喚術を行ったのか探るのが良さそうだ。森の方へ人影を探ろうとしてがっと頭を捕まれた。しかも若干力をかけられて痛い。
「アズール……?」
「いや、えっと、まだちゃんと発動してな……」
「偉いですよー。きちんと正直に言うことができて。成長しましたねアズール」
「あ、ちょ、え、まっ!!」
正直に話したつもりはなかったが墓穴掘った。ルチアーノはもう泣き止んでいたようで、ちらっと心配そうにこっちを見ているが助けてくれるつもりはないようだ。アルトの方を見ると彼は爽やかな笑みを浮かべて引きずられていく俺に手を降っている。
お、おまえええええっ!!!
このとき、一瞬にしてアルトの評価が物腰柔らかな優しげな少年から腹黒野郎に変わった。やはり、前世の記憶はないと言えど性格が似かよってしまうのだと俺は確信した。
ちなみに前世の彼はスパルタ腹黒世話係だった。
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