24 / 48
16歳の俺
第4王子16歳 2
ふわふわ、ゆらゆら。
浮いているような、流されているような、そんな感覚を覚えてゆっくりと意識が覚醒した。しかし、一向に瞼が開かない。なんだこれ。そんなことを思っていると、そっと誰かが俺の頭をなでる。
頭をなで、滑らせるように俺の髪に触れて、次の瞬間引っこ抜く勢いでそれを引っ張った。
痛い!
思わず悲鳴を上げると開かない瞼が開いた。
ぼんやりとした視界がだんだんクリアになり、天蓋を見つめる。さっきと同じ光景にあれ?っと思いながら、すっと横に視線を動かす。うねうねと動く水色の塊を見つけて、無言で右手に炎をためた。
「火球!」
ひゅっとそれはその塊に向かうがそれは器用に避けてカーペットが燃えた。俺は瞬時にそれを鎮火させて、次の火球を撃つ。あの塊、許すまじぃ!
「塊!おとなしく蒸発しろ‼」
ビュンビュン部屋内を飛び回って家具や小物をひっくり返し大惨事だがそんな事よりあれを蒸発させないと気が済まない。というか、後世の為に消えてもらった方がいいと思うんだ俺!そう、未来の為に!
「この野郎っ!俺がこの攻撃だけでおとなしく諦めると思うなよ‼地獄の業火!」
ぐるっと円を描くように黒い炎が部屋全体を囲み、燃え上がる。黒い炎が燃え移り、部屋に灰が立ち込めるが元に戻すので問題ない。壁にも床にも次々にその炎が侵食していき、塊はぴょんぴょん飛びながら炎がついていないところに陣とる。
「もうお前は終わりだ。俺の手で飴玉サイズになるがいい!」
ぶるぶる震えているそれにくっくっくっと笑いながら近寄ると、ばんっと扉が蹴破られ、外れた扉が一瞬にして炎の餌食に。驚いてそちらを見ると剣を持った男がいる。赤色の髪の。
「弟!」
「へ?」
ぶんっとその大剣を一振り。するとそこ一体の炎が消えた。いくら力を抑えたからといってそんなひと振りで消えるものではない。そもそもこれの利点はどんどん燃え移り増殖させ、灰にする。つまり消えないことが利点であって、あの、え?
戸惑いの俺をよそにその男はギラっと瞳をぎらつかせて塊にその重そうな剣を振るう。
塊はびゅんっと開けたその扉から外に出た。ああ!逃げ足の速い‼
「どこ行くんだお前!」
「いい!俺が行くからお前は避難だ!こんなにされて、大丈夫か!?」
お、え?あれ、こいつも見たことが……。
ぽかんとしているとその大剣を持った男が俺を抱き上げて廊下に出る。
間髪入れずに剣を携えた男たちが現れた。
「ルイ殿下!兵を集めてまいりました!対象はどこにっ!?」
「今逃げた!スライムのような水色の塊だが注意しろ!最上位魔法を使う魔物だ!」
「はっ!」
がちゃがちゃっと甲冑を鳴らしながら数十名の騎士たちが散開して探し出す。
それからすぐにローブを着た人たちが現れた。彼らは、俺の部屋の惨劇を見てすぐに杖を掲げ鎮火させる。
「ルイ殿下。此方は我々が調べさせていただきます」
「ああ、任せた。」
それから一人の男が膝をつきながらそうこの男に言った。それを彼はそのように返事をして俺を抱えたまま走り出す。
あ、ま、待って。色々不味い気がする。かっとなってあんな魔法使っちゃったけど、戻せるからいいやって思ってやっちゃってけどえらいことになってる!
「あ、あの、えっと……」
「舌噛むから喋るな!」
あ、はい。
すごまれて俺は口を閉じた。
言えない。俺がすべての元凶だって言えない‼
な、何かやばくなったら逃げよ。国外に。
「ユアン!」
「遅い!怪我はっ!?」
またしても彼が蹴破って扉を開けた(今回は扉が壊れていない)その部屋には一番目のお兄様と、もう一人、サイドテールに結った赤色の髪の男がいた。
一番目のお兄様は、降ろされた俺に駆けよって念入りに調べられる。
「俺は行くから、弟はおとなしくここにいるんだぞ」
「え、あ、でも……」
「い、い、か、ら!!」
そう言って二番目のお兄さまは剣をばっと走っていった。おう、おう、っと顔を青くして言葉を漏らすと、一番目のお兄さまがくいくいっと俺を引っ張り椅子に座らせる。
「お、弟はここにいて。いーい?アンリ、ちゃんと見ててね」
「了解、ユアン」
「ま、待……っ!」
一番目のお兄様もそう言ってどこかに行ってしまった。残されたのは俺と、うん、もうわかってる、三番目のお兄様だ。
俺はびくびくしながらどうしようとその場で立っていると、三番目のお兄様が椅子から立ち上がり、目の前の椅子に座る。
「どうぞ、弟。反抗期は終わった?」
「え、えーっと……?」
「……?まさかと思うけど、9年も眠ってて記憶飛んじゃった?なーんてね」
あはははっと笑う三番目のお兄様。俺はその笑顔にそっと笑いかけつつも視線は合わせられない。そうした瞬間俺の嘘がばれると思ったからだ。そのまますすっと席についてんんっと咳き込んだ。
「そんなことありませんよお兄様」
そう言った瞬間、三番目のお兄様はくいっと俺の顎を掴んでお兄様の方を向かされる。
「ねえ、弟?俺の可愛い可愛い弟?その可愛くて小さなお口でお兄ちゃんにもう一回言ってごらん?」
至近距離でにこにこ笑顔を見せられる。おうっと呟きそうになって視線を逸らすことができない。
この状況をよくわかっていない俺は正直に言う以外の選択肢しかない。だって、俺は前の記憶をさかのぼっても絶対に兄たちに嘘がばれる。うん、一度たりとも嘘をつきとおしたことがない。だから無駄な抵抗はやめる。大体、俺のこの状況を分かっているかもしれないし!
「実は、混乱していて……」
「ふむ、混乱?9年も寝てればそりゃそうか。というか、俺としては9年も寝てたのに不自由なく動けてるっていう事実が不思議なんだよねぇ。俺らがマッサージとかしたけど筋力は確実に落ちてるわけでしょ?」
「ああ、それは魔法の力で多少は……」
「成程?流石弟。それが出来るのに弟は何が分からないの?反抗期になった途端魔法全般も嫌になって喚く、我儘、怒鳴り散らすって凄かったんだけど、今の弟は4歳までの弟と同じだ。落ち着いてて、嘘が下手くそで、何よりこんなところであんな魔法をぶっ放すなんて、流石弟!って感じ」
「え、えーっと、お言葉ですが、私は貴方様と過ごしたという記憶はございません」
「……え、本当に記憶喪失なの?」
三番目のお兄様は驚きの表情をして俺の顎から手を離し、向かいの席に座る。俺は困った顔をして唸った。
「記憶喪失というか、えーっと、信じてくれますか?」
「大丈夫、お兄ちゃんは弟が嘘つけばすぐわかるよ」
「あ、はい」
俺としては俺を弟と呼んでにこにこ俺の前にいるあなたが信じられない状況なんだけど、今はとりあえず俺の先ほどの現状を話す。
この三番目のお兄様。何がすごいかって人脈が兎に角広い。他の国の伝承とか食べ物とかそれ必要なの?っと言うものまでなんでも知っていて、それらの情報を整理推理するのが得意だ。俺よりも。
彼には信じられないような話を俺はした。
俺は孤児院にいて、王家から招集されてきた途中に今お兄様二人が追っている塊に襲われて今のような状況になっていると。
うんうん、っと頷いながらお兄様は話を聞き、なるほどねーと最後にそう言った。
「確かに、アンヴァース孤児院から子供を招集した事があるよ、丁度9年前」
「え!?」
「でも、その子の名前はティファ―ニア」
「ええ!?」
誰その子ぉ!孤児院にそんな子いなかったけどっ!?え!?いたかな!?いないよね!?
「そ、その子を呼んだ理由を聞いても……?」
「ん?大したことじゃないんだけどね。あの年にしては魔術が発達しているっていうからこっちで教育を受けさせてあげようかと。その運営してる貴族からの推薦を貰ってね」
「え?それだけにわざわざ王家の紋章まで使ったんですか?」
「あー、そうか、それしたの元弟だよ」
「……ん?」
「えーっと、反抗期真っただ中の弟だね。うん」
妙な言い方であったが、詳しく話を聞くと、その時期俺、いや、俺かどうかわからないからⅩとしよう、は魔法が不調だったらしい。その前正確に4歳ごろまでは寧ろ教師が教えを乞うほどの実力者であったらしいⅩ。急の不調にかなり参って荒れていたらしく、皆一様にこれが第一反抗期!(通称嫌々期)っと悟り好きにさせて2年とちょっと、そろそろ7歳の誕生日になる前に、従者のアルトから孤児院にすごい魔法を使う子がいると無理やり聞いて招集、後、会って気を失い現在まで昏睡状態であったというのだ。
ええ、Ⅹっていわゆるあほな子なのぉ。
「魔法なんて放っておいて気が向いたときに挑戦すればきっとできるようになるのに。まじめだなぁ」
思わず声に出ていたようで、あっと口を押える。そろっとお兄様を見ると彼はぽかんとしてぶっと噴き出して笑い出した。
「ユアンの言ったとおりだ!弟ならそう思うはずだよね。うんうん。やっぱりあれは違和感と嫌悪か。当たり前か。というか、反抗期で片づけるには性格違いすぎるよー。ボケたお兄ちゃんたちでごめんね?」
「……?」
「となると、怪しいのはティファ―ニアか。フェルト君も絶賛するから期待してたけど、思いのほか大したことないからそっちで管理しろって言っちゃったよ。もぎ取れないかなぁ、あの子の人権。とはいえ、実際は弟となるとぼろ出すのを待った方がいい?うーん、ユアンと陛下に要相談!」
え、待って今物騒なこと言わなかったこの人。というか、俺がよくわかってなくて状況が進むんだけど、待って待ってお兄様!俺にも説明プリーズ!?
「おに……」
その時扉が開いた。そこには一番目のお兄様が塊を抱いていて、二番目のお兄様は大剣を鞘に納めながら入ってくる。
「ねえ、この塊すんごい大人しいんだけど何したのルイ」
「弟を傷つけようとした不届き者に鉄槌を下しただけだが?」
「今後の参考にしたいから教えて」
「成程。じゃあ後で部屋に来てくれ」
「分かった」
塊がすんごいぶるぶる震えてる。俺のあの魔法の比じゃないぞ、何やったんですかね!
じっと二人を見つめていると、目があった。
「弟。安心しろ、今後も何かあったらお兄ちゃんが守ってやるからな。手足切り落として転がしてやる」
「ふん。鼠一匹逃がさないで拷問にかけるから安心しなよ、弟。お前に何かあったらそいつに生きてることを後悔させてあげるから」
「お、あ、ありがとう、ございます……」
く、くれいじー。
頬ひきつってないですかね俺。こんなんでしたっけお兄様方。
「やあやあ、お疲れ様。話は聞いてたね?今後のことを話し合おうか」
「俺はいいけど、弟とルイは分かってないでしょ。それに、答え合わせも必要じゃないの」
三番目のお兄様がそう言うと、それに一番目のお兄様が俺の後ろと影を見ながらそう言った。首を傾げて振り向くと、目の前にクラウスの顔が現れる。
「うわあああああっ!?」
「あっはっは!最高!毎回思うけど面白い反応するよね~」
ひっくり返った。まさかこんな近くにずっといたとは知らなかった!暇なの君!?
バクバクとうるさい心臓を落ち着かせようとすると今度は影からぬっとテレシアの顔が出てきた。はわあっ!?
「ちょっと、折角帰ってきたのにまた中身がどこかに飛んだらどうするんですか」
「もう大丈夫でしょ。だって契約切れてるし?なら干渉できるし、なんならしもべ呼んでもいいよ」
「結構です。貴方は手荒ですから」
「あっそー」
テレシアはそのまま影から出てくるし、ジークも手だけだして存在をアピールしてくるし自由かお前ら!一応俺はお前たちの契約者ですからね!?
「まあ、よばれちゃったら仕方ないよね~。答え合わせしてあげるよ」
クラウスがニッと笑ってそう言った。
うんうん、よく分からないけどつまり、お前らが関わってるってことでいい?
ねえ、ぶん殴っていい?
浮いているような、流されているような、そんな感覚を覚えてゆっくりと意識が覚醒した。しかし、一向に瞼が開かない。なんだこれ。そんなことを思っていると、そっと誰かが俺の頭をなでる。
頭をなで、滑らせるように俺の髪に触れて、次の瞬間引っこ抜く勢いでそれを引っ張った。
痛い!
思わず悲鳴を上げると開かない瞼が開いた。
ぼんやりとした視界がだんだんクリアになり、天蓋を見つめる。さっきと同じ光景にあれ?っと思いながら、すっと横に視線を動かす。うねうねと動く水色の塊を見つけて、無言で右手に炎をためた。
「火球!」
ひゅっとそれはその塊に向かうがそれは器用に避けてカーペットが燃えた。俺は瞬時にそれを鎮火させて、次の火球を撃つ。あの塊、許すまじぃ!
「塊!おとなしく蒸発しろ‼」
ビュンビュン部屋内を飛び回って家具や小物をひっくり返し大惨事だがそんな事よりあれを蒸発させないと気が済まない。というか、後世の為に消えてもらった方がいいと思うんだ俺!そう、未来の為に!
「この野郎っ!俺がこの攻撃だけでおとなしく諦めると思うなよ‼地獄の業火!」
ぐるっと円を描くように黒い炎が部屋全体を囲み、燃え上がる。黒い炎が燃え移り、部屋に灰が立ち込めるが元に戻すので問題ない。壁にも床にも次々にその炎が侵食していき、塊はぴょんぴょん飛びながら炎がついていないところに陣とる。
「もうお前は終わりだ。俺の手で飴玉サイズになるがいい!」
ぶるぶる震えているそれにくっくっくっと笑いながら近寄ると、ばんっと扉が蹴破られ、外れた扉が一瞬にして炎の餌食に。驚いてそちらを見ると剣を持った男がいる。赤色の髪の。
「弟!」
「へ?」
ぶんっとその大剣を一振り。するとそこ一体の炎が消えた。いくら力を抑えたからといってそんなひと振りで消えるものではない。そもそもこれの利点はどんどん燃え移り増殖させ、灰にする。つまり消えないことが利点であって、あの、え?
戸惑いの俺をよそにその男はギラっと瞳をぎらつかせて塊にその重そうな剣を振るう。
塊はびゅんっと開けたその扉から外に出た。ああ!逃げ足の速い‼
「どこ行くんだお前!」
「いい!俺が行くからお前は避難だ!こんなにされて、大丈夫か!?」
お、え?あれ、こいつも見たことが……。
ぽかんとしているとその大剣を持った男が俺を抱き上げて廊下に出る。
間髪入れずに剣を携えた男たちが現れた。
「ルイ殿下!兵を集めてまいりました!対象はどこにっ!?」
「今逃げた!スライムのような水色の塊だが注意しろ!最上位魔法を使う魔物だ!」
「はっ!」
がちゃがちゃっと甲冑を鳴らしながら数十名の騎士たちが散開して探し出す。
それからすぐにローブを着た人たちが現れた。彼らは、俺の部屋の惨劇を見てすぐに杖を掲げ鎮火させる。
「ルイ殿下。此方は我々が調べさせていただきます」
「ああ、任せた。」
それから一人の男が膝をつきながらそうこの男に言った。それを彼はそのように返事をして俺を抱えたまま走り出す。
あ、ま、待って。色々不味い気がする。かっとなってあんな魔法使っちゃったけど、戻せるからいいやって思ってやっちゃってけどえらいことになってる!
「あ、あの、えっと……」
「舌噛むから喋るな!」
あ、はい。
すごまれて俺は口を閉じた。
言えない。俺がすべての元凶だって言えない‼
な、何かやばくなったら逃げよ。国外に。
「ユアン!」
「遅い!怪我はっ!?」
またしても彼が蹴破って扉を開けた(今回は扉が壊れていない)その部屋には一番目のお兄様と、もう一人、サイドテールに結った赤色の髪の男がいた。
一番目のお兄様は、降ろされた俺に駆けよって念入りに調べられる。
「俺は行くから、弟はおとなしくここにいるんだぞ」
「え、あ、でも……」
「い、い、か、ら!!」
そう言って二番目のお兄さまは剣をばっと走っていった。おう、おう、っと顔を青くして言葉を漏らすと、一番目のお兄さまがくいくいっと俺を引っ張り椅子に座らせる。
「お、弟はここにいて。いーい?アンリ、ちゃんと見ててね」
「了解、ユアン」
「ま、待……っ!」
一番目のお兄様もそう言ってどこかに行ってしまった。残されたのは俺と、うん、もうわかってる、三番目のお兄様だ。
俺はびくびくしながらどうしようとその場で立っていると、三番目のお兄様が椅子から立ち上がり、目の前の椅子に座る。
「どうぞ、弟。反抗期は終わった?」
「え、えーっと……?」
「……?まさかと思うけど、9年も眠ってて記憶飛んじゃった?なーんてね」
あはははっと笑う三番目のお兄様。俺はその笑顔にそっと笑いかけつつも視線は合わせられない。そうした瞬間俺の嘘がばれると思ったからだ。そのまますすっと席についてんんっと咳き込んだ。
「そんなことありませんよお兄様」
そう言った瞬間、三番目のお兄様はくいっと俺の顎を掴んでお兄様の方を向かされる。
「ねえ、弟?俺の可愛い可愛い弟?その可愛くて小さなお口でお兄ちゃんにもう一回言ってごらん?」
至近距離でにこにこ笑顔を見せられる。おうっと呟きそうになって視線を逸らすことができない。
この状況をよくわかっていない俺は正直に言う以外の選択肢しかない。だって、俺は前の記憶をさかのぼっても絶対に兄たちに嘘がばれる。うん、一度たりとも嘘をつきとおしたことがない。だから無駄な抵抗はやめる。大体、俺のこの状況を分かっているかもしれないし!
「実は、混乱していて……」
「ふむ、混乱?9年も寝てればそりゃそうか。というか、俺としては9年も寝てたのに不自由なく動けてるっていう事実が不思議なんだよねぇ。俺らがマッサージとかしたけど筋力は確実に落ちてるわけでしょ?」
「ああ、それは魔法の力で多少は……」
「成程?流石弟。それが出来るのに弟は何が分からないの?反抗期になった途端魔法全般も嫌になって喚く、我儘、怒鳴り散らすって凄かったんだけど、今の弟は4歳までの弟と同じだ。落ち着いてて、嘘が下手くそで、何よりこんなところであんな魔法をぶっ放すなんて、流石弟!って感じ」
「え、えーっと、お言葉ですが、私は貴方様と過ごしたという記憶はございません」
「……え、本当に記憶喪失なの?」
三番目のお兄様は驚きの表情をして俺の顎から手を離し、向かいの席に座る。俺は困った顔をして唸った。
「記憶喪失というか、えーっと、信じてくれますか?」
「大丈夫、お兄ちゃんは弟が嘘つけばすぐわかるよ」
「あ、はい」
俺としては俺を弟と呼んでにこにこ俺の前にいるあなたが信じられない状況なんだけど、今はとりあえず俺の先ほどの現状を話す。
この三番目のお兄様。何がすごいかって人脈が兎に角広い。他の国の伝承とか食べ物とかそれ必要なの?っと言うものまでなんでも知っていて、それらの情報を整理推理するのが得意だ。俺よりも。
彼には信じられないような話を俺はした。
俺は孤児院にいて、王家から招集されてきた途中に今お兄様二人が追っている塊に襲われて今のような状況になっていると。
うんうん、っと頷いながらお兄様は話を聞き、なるほどねーと最後にそう言った。
「確かに、アンヴァース孤児院から子供を招集した事があるよ、丁度9年前」
「え!?」
「でも、その子の名前はティファ―ニア」
「ええ!?」
誰その子ぉ!孤児院にそんな子いなかったけどっ!?え!?いたかな!?いないよね!?
「そ、その子を呼んだ理由を聞いても……?」
「ん?大したことじゃないんだけどね。あの年にしては魔術が発達しているっていうからこっちで教育を受けさせてあげようかと。その運営してる貴族からの推薦を貰ってね」
「え?それだけにわざわざ王家の紋章まで使ったんですか?」
「あー、そうか、それしたの元弟だよ」
「……ん?」
「えーっと、反抗期真っただ中の弟だね。うん」
妙な言い方であったが、詳しく話を聞くと、その時期俺、いや、俺かどうかわからないからⅩとしよう、は魔法が不調だったらしい。その前正確に4歳ごろまでは寧ろ教師が教えを乞うほどの実力者であったらしいⅩ。急の不調にかなり参って荒れていたらしく、皆一様にこれが第一反抗期!(通称嫌々期)っと悟り好きにさせて2年とちょっと、そろそろ7歳の誕生日になる前に、従者のアルトから孤児院にすごい魔法を使う子がいると無理やり聞いて招集、後、会って気を失い現在まで昏睡状態であったというのだ。
ええ、Ⅹっていわゆるあほな子なのぉ。
「魔法なんて放っておいて気が向いたときに挑戦すればきっとできるようになるのに。まじめだなぁ」
思わず声に出ていたようで、あっと口を押える。そろっとお兄様を見ると彼はぽかんとしてぶっと噴き出して笑い出した。
「ユアンの言ったとおりだ!弟ならそう思うはずだよね。うんうん。やっぱりあれは違和感と嫌悪か。当たり前か。というか、反抗期で片づけるには性格違いすぎるよー。ボケたお兄ちゃんたちでごめんね?」
「……?」
「となると、怪しいのはティファ―ニアか。フェルト君も絶賛するから期待してたけど、思いのほか大したことないからそっちで管理しろって言っちゃったよ。もぎ取れないかなぁ、あの子の人権。とはいえ、実際は弟となるとぼろ出すのを待った方がいい?うーん、ユアンと陛下に要相談!」
え、待って今物騒なこと言わなかったこの人。というか、俺がよくわかってなくて状況が進むんだけど、待って待ってお兄様!俺にも説明プリーズ!?
「おに……」
その時扉が開いた。そこには一番目のお兄様が塊を抱いていて、二番目のお兄様は大剣を鞘に納めながら入ってくる。
「ねえ、この塊すんごい大人しいんだけど何したのルイ」
「弟を傷つけようとした不届き者に鉄槌を下しただけだが?」
「今後の参考にしたいから教えて」
「成程。じゃあ後で部屋に来てくれ」
「分かった」
塊がすんごいぶるぶる震えてる。俺のあの魔法の比じゃないぞ、何やったんですかね!
じっと二人を見つめていると、目があった。
「弟。安心しろ、今後も何かあったらお兄ちゃんが守ってやるからな。手足切り落として転がしてやる」
「ふん。鼠一匹逃がさないで拷問にかけるから安心しなよ、弟。お前に何かあったらそいつに生きてることを後悔させてあげるから」
「お、あ、ありがとう、ございます……」
く、くれいじー。
頬ひきつってないですかね俺。こんなんでしたっけお兄様方。
「やあやあ、お疲れ様。話は聞いてたね?今後のことを話し合おうか」
「俺はいいけど、弟とルイは分かってないでしょ。それに、答え合わせも必要じゃないの」
三番目のお兄様がそう言うと、それに一番目のお兄様が俺の後ろと影を見ながらそう言った。首を傾げて振り向くと、目の前にクラウスの顔が現れる。
「うわあああああっ!?」
「あっはっは!最高!毎回思うけど面白い反応するよね~」
ひっくり返った。まさかこんな近くにずっといたとは知らなかった!暇なの君!?
バクバクとうるさい心臓を落ち着かせようとすると今度は影からぬっとテレシアの顔が出てきた。はわあっ!?
「ちょっと、折角帰ってきたのにまた中身がどこかに飛んだらどうするんですか」
「もう大丈夫でしょ。だって契約切れてるし?なら干渉できるし、なんならしもべ呼んでもいいよ」
「結構です。貴方は手荒ですから」
「あっそー」
テレシアはそのまま影から出てくるし、ジークも手だけだして存在をアピールしてくるし自由かお前ら!一応俺はお前たちの契約者ですからね!?
「まあ、よばれちゃったら仕方ないよね~。答え合わせしてあげるよ」
クラウスがニッと笑ってそう言った。
うんうん、よく分からないけどつまり、お前らが関わってるってことでいい?
ねえ、ぶん殴っていい?
あなたにおすすめの小説
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って?
いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
弟のために悪役になる!~ヒロインに会うまで可愛がった結果~
荷居人(にいと)
BL
BL大賞20位。読者様ありがとうございました。
弟が生まれた日、足を滑らせ、階段から落ち、頭を打った俺は、前世の記憶を思い出す。
そして知る。今の自分は乙女ゲーム『王座の証』で平凡な顔、平凡な頭、平凡な運動能力、全てに置いて普通、全てに置いて完璧で優秀な弟はどんなに後に生まれようと次期王の継承権がいく、王にふさわしい赤の瞳と黒髪を持ち、親の愛さえ奪った弟に恨みを覚える悪役の兄であると。
でも今の俺はそんな弟の苦労を知っているし、生まれたばかりの弟は可愛い。
そんな可愛い弟が幸せになるためにはヒロインと結婚して王になることだろう。悪役になれば死ぬ。わかってはいるが、前世の後悔を繰り返さないため、将来処刑されるとわかっていたとしても、弟の幸せを願います!
・・・でもヒロインに会うまでは可愛がってもいいよね?
本編は完結。番外編が本編越えたのでタイトルも変えた。ある意味間違ってはいない。可愛がらなければ番外編もないのだから。
そしてまさかのモブの恋愛まで始まったようだ。
お気に入り1000突破は私の作品の中で初作品でございます!ありがとうございます!
2018/10/10より章の整理を致しました。ご迷惑おかけします。
2018/10/7.23時25分確認。BLランキング1位だと・・・?
2018/10/24.話がワンパターン化してきた気がするのでまた意欲が湧き、書きたいネタができるまでとりあえず完結といたします。
2018/11/3.久々の更新。BL小説大賞応募したので思い付きを更新してみました。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。
あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。
だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。
よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。
弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。
そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。
どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。
俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。
そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。
◎1話完結型になります