来世でよろしく

紫鶴

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17歳の俺

第4王子17歳 8

いつの間にか両手首を纏められて頭の上で壁に抑えられる。
何この状況。どういう事……?

「また、誑かして騙していい気になってるんだなお前」
「え、何、何の話……」
「とぼけんじゃねえよカルロッテ。興味ないふりして気引いてんだろ!」

カルロッテ。
それは確かに一番最初の俺の名前だ。
その名前を聞いた瞬間、フェルトさんの顔が歪んでみたことのある顔が現れる。黒い髪に黒い瞳。ここらでは珍しい平坦な顔立ちの男。背も低くなり待ったくフェルトさんの面影が無くなった。姿変えの魔法でも使っていたのか!?

「お、お前!」
「思い出した?結構強力な術かけたんだけど効かなかったんだ?流石チート級」
「ど、どうしてっ!?」

まずい、俺また殺されるぞここで!魔術を使おうとするが、常に魔力を吸い取られているのか発動できない。力では叶わないのでどうにもできない。精一杯の抵抗で睨みつけると振り上げた彼の拳が俺の頬を殴る。
口の中が切れて血の味がする。痛い。

「生意気。大体、この世界は俺のなのになんでお前ばっかり愛されんの?ここでは俺が主人公なのに、主人公だったのに!フェルトって誰だよ!!知らねえよそんなモブ!」

奴はそう叫びだした。
こいつ、当初から思っていたが頭おかしい。何言ってんの?自分が主人公とか。俺が愛されてる?冗談でしょ。
ぷっと血交じりの唾を彼の頬にかける。

「知るか!てかその記憶をフル活用すればよかったじゃんか!」

彼の好きなものとか、トラウマとかあったでしょうに!そうなったらこんなにストーカー怖い!ってならなかったのに!!
この際主人公発言は目をつぶるとして頑張って!?
俺がそう声をあげると、ぐいっと頬を拭った後に思いっきり頬を殴る。それからはっと声をあげた後に笑い出した。そして、俺の髪を掴み上げる。

「記憶があるの俺とお前だけだとでも思ってるの?」

……え?それでもなびかなかったの?そんなはずないでしょ。だって俺は特別なことをしていない。ありえない!
そう思ったが、どんどん血圧が下がっていく感覚を覚える。考えたくもないその可能性。いや、考えられる可能性ではあった。何もしてこないから油断していた。
考えたくない、聞きたくない。
そう思った時に彼の背後で何かが光った。

「―――っ!!」

反射的に体が動いた。何かを感じ取ったのか彼の拘束が一瞬緩んだので彼に抱き着いて横に転がる。うっと呻いた彼が顔を赤くして叫ぶ。

「な、なにするんだよ!!」
「俺の前に出るな!」
「っ!」

すぐに起き上がって彼を後ろに立ちあがり、その人物を睨みつける。彼の背後から斬りかかってきたその人物はゆっくりとこっちを見た。爛々と光る瞳と目が合い、ゾッと背筋が震える。

「殿下?どうしてそいつを庇うんです?」

にこにこ笑顔だが目が笑っていないルチアーノは湾曲している変わったナイフ、一番初めの時に投げやすいからと使っていたそれをクルクルとまわす。
それを見てさーっと血液が下がっていく感覚を覚えるが深呼吸をする。

「ルチアーノ。それおろして」
「どうしてですか?それは殿下を傷つけたんですよ?」
「いいからおろ……っ!」

ひゅっと耳元で風を切るような音がして首から血が噴き出た。血濡れたナイフを受け止めてルチアーノはべろっとその血を舐める。
しまった、既に一つなげてたのか!?

治癒をかけようとするが何か術をかけたのか受け付けない。喉を思いっきり切られたのでひゅーひゅーっと息が漏れる。どうにか血を止めるためにそこを抑えるが全く意味がないのが分かる。
ドバドバと溢れる血が手の間を縫って滴る。だんだんと視界が暗くなっていき倒れた。

徐々に彼の足音が近寄ってくるのが分かる。そっと頭を撫でられたような感覚がした。

「また、来世でよろしくお願いします」

そして、そう言ったのが聞こえた。

***

どろどろと暗闇の中に落ちていく。
分かる。俺は死んだのだ。
何処で間違えた。
全く予期していなかった未来だ。
可能性のある未来では国王になったのは別に若くはなかったからそこまでは生きられると思ったのに。
何が悪かったのか。何が……。
―――そういえば、あの未来で見てない奴らはどこにいた?
感想 10

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