【完結済】やり直した嫌われ者は、帝様に囲われる

紫鶴

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家に帰って一月経った。



こんなに長く何事も無かったのは初めてだった。いつもなら翌日にでも使用人から仕事が任されるのに今回は全くなかった。

話しを聞くに、俺が持ってきた刀が相当な額で売れたという。しかも、帝直々にその刀について訪問があったとか。俺は知らなかったが。



その為、父は上機嫌で俺に干渉せず弟も蔵から出てこない俺に何かをする気はなかったらしく顔を合わせずに済んだ。



平和でいい。



だから時間はあったのですぐに蔵の書物は読み終わってしまった。夜中に邸宅に忍び込んでくまなく探したが見つからない。



やっぱり前と同じ情報しか手に入らないか……。



七宝についても一般的なことしか書かれていない。



七宝は都を守る結界を張る七人の術者であること。

主に七つの名家から選出されること。

帝が選ぶこと。



そんなところだ。方法などは流石に書かれていないので口伝のものだろう。



「あの妖魔についても何もないし……」



思い返すのはあの蜂の妖魔。虫の妖魔は別におかしくないが、あれは突然やって来た。何の気配もなくあそこまで近づかれて分からないはずがない。



あそこには俺の他にも晴臣さんや九郎もいたから三人とも気づかないほどの強い妖魔……にしては、簡単に倒せたが……。そのちぐはぐな存在にうーんと唸って今日もそれに結論は出ない。



ぺらぺらと同じ書物を読んでため息をつく。

またずっと書物を読んでいたら暗くなってきた。明かりなんてものはここにないので今日もまたこれで終わりだ。



水浴びをしよう。いつものように井戸にから水を汲んで頭からかける。冷え切った水で急速に体が冷えるがいつものことだ。ぶるぶると頭を振って釣瓶を置くために近づくと背中に衝撃を受けた。そのいきおいのままぐらりと井戸の底に頭から突っ込む。もう慣れたものでぐるっと回転して水面から顔をあげた。

落とされた。残っていた体温も急速に奪われていき歯の根が合わない。がちがちと音を立てながらがっと井戸のへりに捕まって上に登る。



「どれくらいで上ってくると思う?」

「んー、十分!」

「早すぎじゃね?三十分!」

「いやそこまでかかったら死ぬだろ」



ゲラゲラと笑い声が聞こえた。そういえば、これで賭け事されたな。壁は滑りやすく、何度も何度も落ちて結局三十分かかった。上がったのは良いが、賭けに負けた男が腰に差している刀で腹いせに殴られた記憶がある。体が冷え切ってうまく動かせないまま転がっていた。



「いっ!」



ずるっと滑って底まで落ちた。爪がはげたようでじくじくと中指と人差し指が痛い。ぐっと唇を噛んでそれに耐えながらもう一度上り始めて声がした。



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