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木曜は遊園に行くと決めています。
いざシュッパツ
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翌朝は嬉しすぎて随分と早くに目覚め、昨日教えてもらったサンドウイッチを作り水筒に紅茶を入れた。
出来上がったサンドウィッチと昨日買ったおやつをリュックに詰め、水筒を掛けてバス停がある道とは反対側の坂を下り、タクシーを拾って待ち合わせの駅へ向かった。
楽しみすぎて約束の時間より三十分も早く着いた。クニもまた同じことを考えていて、
あずみが待ったのはほんの5分ほどだった。
「あずみ君。おはよう。すごい荷物だね。何を持って来たの。」
「お弁当です。おやつもありますよ。水筒は紅茶です。」
「今の遊園地はお弁当持って入れないんだよ。」
「そうですか・・・残念です。じゃあ、どうしましょう・・・」
「僕がもらってもいいかな。急いでいて朝ごはん食べていないんだ。」
「そういえば僕もです。」
「じゃあどこかサービスエリアにでも寄って食べてから遊園地に行こう。」
「楽しみです。」
「僕もだよ。夕べは楽しみ過ぎてなかなか眠れなかった。」
「僕も、僕も。」
「あずみ君もそんなに楽しみしていたんだ。」
クニは身を乗り出してニコニコと話すあずみにとても満足していた。かわいくてたまらないとも思っていたが、やはりどこかで「エヌ」という過去の恋人の面影を追っていた。
「だって僕初めてなんだ。クニさんは?初めて?」
「イヤ、何度か行ったことがあるよ。」
「そうですか。だからお弁当がダメな事も知っていたんだ。」
「うん。前一緒に行った子もお弁当持って来て・・・その子はアレルギーがあるからって言っていたかな。」
「そう。」
「だからご飯を食べずに頑張って遊んで、お腹ペコペコで、帰りは駐車場まで僕がおんぶして・・・でも、調子のいい時はおいしいものを食べに行ったりもしたよ。この間のお寿司屋さんとかにもよく行った。」
「クニさんは、その方のことがよほどお好きだったんですね。」
「ああ・・・こんな話は嫌だったかな。」
「構いませんよ。僕たちはお友達じゃないですか。
お友達は悩み事とかを聞きあったりするんでしょ。だから僕もクニさんの悩み事や愚痴を聞きます。」
「僕たちは友達なのか。」
「違うのですか?親友になれるかどうかはわかりませんけど、今は友達です。」
「君は本当に面白いね。」
あずみの作った見た目があまり綺麗ではないサンドイッチを二人で食べ、遊園地へ向かい散々楽しんだ。
これ以上の喜びはないというほど楽しんだ。
クニを散々引っ張りまわし、クニがついて行けなくなると今度は一人で走り回った。これ以上ないほど笑った。
けれど楽しい日はいつもより早く陽が落ちる。
「あずみ君、帰ろうか。」
「うん・・・」
「今日はもう終わりだから・・・また来ようね。」
「もういい。」
「また来ようよ。遊園地はここだけじゃないし、いっぱいあるんだよ。」
「もういいです。本当に・・・どんなところかわかったし。」
「そう・・・・じゃあ、晩御飯食べに行こう。」
「はい・・・・」
あずみはこの寂しさがたまらく嫌だった。どんな楽しいことも必ず終わりが来るという寂しさが。そして、あるかどうかわからない「次」とか「また」という話も嫌いだった。
それならここで終わりと言われたほうがよほど清々する。今日は十分楽しめた。
もうそれだけでよかった。
(でも・・・本当に楽しかった・・・・)
そんな風に今日のことを思い出していると、そのまま帰りの車の中で眠ってしまった。
起きた時はベッドの上だった。
出来上がったサンドウィッチと昨日買ったおやつをリュックに詰め、水筒を掛けてバス停がある道とは反対側の坂を下り、タクシーを拾って待ち合わせの駅へ向かった。
楽しみすぎて約束の時間より三十分も早く着いた。クニもまた同じことを考えていて、
あずみが待ったのはほんの5分ほどだった。
「あずみ君。おはよう。すごい荷物だね。何を持って来たの。」
「お弁当です。おやつもありますよ。水筒は紅茶です。」
「今の遊園地はお弁当持って入れないんだよ。」
「そうですか・・・残念です。じゃあ、どうしましょう・・・」
「僕がもらってもいいかな。急いでいて朝ごはん食べていないんだ。」
「そういえば僕もです。」
「じゃあどこかサービスエリアにでも寄って食べてから遊園地に行こう。」
「楽しみです。」
「僕もだよ。夕べは楽しみ過ぎてなかなか眠れなかった。」
「僕も、僕も。」
「あずみ君もそんなに楽しみしていたんだ。」
クニは身を乗り出してニコニコと話すあずみにとても満足していた。かわいくてたまらないとも思っていたが、やはりどこかで「エヌ」という過去の恋人の面影を追っていた。
「だって僕初めてなんだ。クニさんは?初めて?」
「イヤ、何度か行ったことがあるよ。」
「そうですか。だからお弁当がダメな事も知っていたんだ。」
「うん。前一緒に行った子もお弁当持って来て・・・その子はアレルギーがあるからって言っていたかな。」
「そう。」
「だからご飯を食べずに頑張って遊んで、お腹ペコペコで、帰りは駐車場まで僕がおんぶして・・・でも、調子のいい時はおいしいものを食べに行ったりもしたよ。この間のお寿司屋さんとかにもよく行った。」
「クニさんは、その方のことがよほどお好きだったんですね。」
「ああ・・・こんな話は嫌だったかな。」
「構いませんよ。僕たちはお友達じゃないですか。
お友達は悩み事とかを聞きあったりするんでしょ。だから僕もクニさんの悩み事や愚痴を聞きます。」
「僕たちは友達なのか。」
「違うのですか?親友になれるかどうかはわかりませんけど、今は友達です。」
「君は本当に面白いね。」
あずみの作った見た目があまり綺麗ではないサンドイッチを二人で食べ、遊園地へ向かい散々楽しんだ。
これ以上の喜びはないというほど楽しんだ。
クニを散々引っ張りまわし、クニがついて行けなくなると今度は一人で走り回った。これ以上ないほど笑った。
けれど楽しい日はいつもより早く陽が落ちる。
「あずみ君、帰ろうか。」
「うん・・・」
「今日はもう終わりだから・・・また来ようね。」
「もういい。」
「また来ようよ。遊園地はここだけじゃないし、いっぱいあるんだよ。」
「もういいです。本当に・・・どんなところかわかったし。」
「そう・・・・じゃあ、晩御飯食べに行こう。」
「はい・・・・」
あずみはこの寂しさがたまらく嫌だった。どんな楽しいことも必ず終わりが来るという寂しさが。そして、あるかどうかわからない「次」とか「また」という話も嫌いだった。
それならここで終わりと言われたほうがよほど清々する。今日は十分楽しめた。
もうそれだけでよかった。
(でも・・・本当に楽しかった・・・・)
そんな風に今日のことを思い出していると、そのまま帰りの車の中で眠ってしまった。
起きた時はベッドの上だった。
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