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コタツ部コタツ課 最悪の結末
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「え?」
「俺もっす。ココのコンビニ傘が少ないから早くいかないと買えないんすよね・・・
旧社屋って、食堂に行くにも傘いりますからね!」
「え?ひょっとして、お二人は慌ててコンビニに傘を買いに・・・」
「そうだよ。だって、駅も遠いし傘無しでは辛いじゃん。
僕ん家はバス停からも遠いし、奥さんも迎えに来てくれないし・・・
そうだ、インテリア部の吉川さんも買いに来ていた。今日は午後から住宅事業部に行くんだって、あそこは遠いからね。「いつも助かってます」って言われちゃった。
僕は別に何もしていませんけどね。アハハ!
あ、優ちゃんは恋人がお迎えに来てくれるでしょ?」
「俺、こないだフラれたんで、今回は誰も来てくれないっす。」
「そう、じゃあ傘要るよね。」
「そうなんっすよね・・・・」
「まっちゃんは?」
「私は持ってきてます。」
「だよねー。わかっちゃうんだもんね、当然だよねー」
「ええっと・・・・」
青木はこの一連のやり取りがいまだ呑み込めずにいた。同じ部屋にいながらも、なぜか自分と山さんたち三人との距離が、とても遠くに感じていた。
「何?青木君。」
「皆さんが何で盛り上がっているのか、全く理解できてないんですけど・・・」
「なんで?雨だよ。雨。」
「雨。」
「そう。まっちゃんの雨の予言は百発百中なんだ。株式会社NNのノストラダムスとか言われてるんだよ。雨・し・か・予言できないのに。」
「はぁ・・・?」
「まっちゃんは、小さい頃、ぼろぼろの自転車に乗っていてブレーキが利かなくて坂道で思いっきり転んで、車にはねられて一命をとりとめてからずっと低気圧ボーイで、雨が降る3日前くらいから頭が痛いんだって。面白いでしょ。ね!」
「・・・・」
そういう返答に困るタイミングで「ね」と同意を求められても・・・
頷けない・・・けど頷かないと今後の俺の立場はどうなる・・・恐るべし、サラリーマンの上下関係。
「アハハハ・・・そうだったんですか・・・大変でしたね・・・」
ここは一発、お愛想笑いで切り抜ける。
「青木君、アハハはいいが、君、布団取り込んだのか?」
「あ!」
途轍もなく重大なことを忘れていたことに気づき、慌てて外へ飛び出した。
が、時すでに遅し・・・結構な雨の中でコタツの布団は、古びた物干しざおに寂しくびしょ濡れになっていた。
「あーくっそ!」
慌てて取り込んだが、これはもう、2、3日は・・・いや、1週間、下手したら1か月はコタツをセットできないことになるやも・・・
「あーあー、びちゃびちゃだね・・・」
「だから何度も布団をいれろって言ったんだ!全く君は私の言うことを全く聞かないんだから。」
さっきまで弱っていたまっちゃんは、もう、回復して山さんが拾い集めた資料に目を通していた。
「あの時、取り込んでおけばよかったんだよ、雑巾がけにこだわってるから・・・・」
皆が一斉に責める。まあ、要領の悪い俺のせいではあるが・・・
「インテリア部に行って布団乾燥機借りてこれば?」
「あれもう廃版です。これからは住宅事業部の部屋干し洗濯乾燥の「にっこりお部屋太陽君」に変わります。」
「あーじゃあ、それ持って住宅事業部に行けば?あ、でも傘ないね・・・貸さないよ。ビニール傘はすぐなくなっちゃうから。あ、それ持って行くならタクシーで行かないとね。」
「タクシー代は経費で落ちませんからね。」
「優ちゃんキビシイ!アハハハ」
アハハハじゃねぇよと言いたいが、それも言えない・・・
しかも、布団が濡れたのは認めたくはないが自分のせいだ・・・
「青木君、早くそれを何とかしたまえ。仕事中だぞ。」
「まっちゃんはもう体はいいんですか?」
「雨が降るまでがつらいだけで、雨さえ降ればこっちのモノだ!
しかも、コタツに入れば私の体は回復するのだ!仕事するぞ!この冬は何としても新製品を出すんだ!」
「よっ!まっちゃん!コタツ戦士!」
「じゃあ、景気づけにコーヒーで乾杯でもしますか?」
「いいね、優ちゃん、気が利く。僕、お砂糖2つね。ミルク多めで。」
「私はブラックでお願いします。」
「・・・・」
青木志貴、株式会社NN コタツ部コタツ課に配属になって半年を過ぎた今、この部には魔物が住むことにようやく気付く。
そして、その魔物を自分は倒せないのだと言うことも・・・今はっきりと理解した。
「俺もっす。ココのコンビニ傘が少ないから早くいかないと買えないんすよね・・・
旧社屋って、食堂に行くにも傘いりますからね!」
「え?ひょっとして、お二人は慌ててコンビニに傘を買いに・・・」
「そうだよ。だって、駅も遠いし傘無しでは辛いじゃん。
僕ん家はバス停からも遠いし、奥さんも迎えに来てくれないし・・・
そうだ、インテリア部の吉川さんも買いに来ていた。今日は午後から住宅事業部に行くんだって、あそこは遠いからね。「いつも助かってます」って言われちゃった。
僕は別に何もしていませんけどね。アハハ!
あ、優ちゃんは恋人がお迎えに来てくれるでしょ?」
「俺、こないだフラれたんで、今回は誰も来てくれないっす。」
「そう、じゃあ傘要るよね。」
「そうなんっすよね・・・・」
「まっちゃんは?」
「私は持ってきてます。」
「だよねー。わかっちゃうんだもんね、当然だよねー」
「ええっと・・・・」
青木はこの一連のやり取りがいまだ呑み込めずにいた。同じ部屋にいながらも、なぜか自分と山さんたち三人との距離が、とても遠くに感じていた。
「何?青木君。」
「皆さんが何で盛り上がっているのか、全く理解できてないんですけど・・・」
「なんで?雨だよ。雨。」
「雨。」
「そう。まっちゃんの雨の予言は百発百中なんだ。株式会社NNのノストラダムスとか言われてるんだよ。雨・し・か・予言できないのに。」
「はぁ・・・?」
「まっちゃんは、小さい頃、ぼろぼろの自転車に乗っていてブレーキが利かなくて坂道で思いっきり転んで、車にはねられて一命をとりとめてからずっと低気圧ボーイで、雨が降る3日前くらいから頭が痛いんだって。面白いでしょ。ね!」
「・・・・」
そういう返答に困るタイミングで「ね」と同意を求められても・・・
頷けない・・・けど頷かないと今後の俺の立場はどうなる・・・恐るべし、サラリーマンの上下関係。
「アハハハ・・・そうだったんですか・・・大変でしたね・・・」
ここは一発、お愛想笑いで切り抜ける。
「青木君、アハハはいいが、君、布団取り込んだのか?」
「あ!」
途轍もなく重大なことを忘れていたことに気づき、慌てて外へ飛び出した。
が、時すでに遅し・・・結構な雨の中でコタツの布団は、古びた物干しざおに寂しくびしょ濡れになっていた。
「あーくっそ!」
慌てて取り込んだが、これはもう、2、3日は・・・いや、1週間、下手したら1か月はコタツをセットできないことになるやも・・・
「あーあー、びちゃびちゃだね・・・」
「だから何度も布団をいれろって言ったんだ!全く君は私の言うことを全く聞かないんだから。」
さっきまで弱っていたまっちゃんは、もう、回復して山さんが拾い集めた資料に目を通していた。
「あの時、取り込んでおけばよかったんだよ、雑巾がけにこだわってるから・・・・」
皆が一斉に責める。まあ、要領の悪い俺のせいではあるが・・・
「インテリア部に行って布団乾燥機借りてこれば?」
「あれもう廃版です。これからは住宅事業部の部屋干し洗濯乾燥の「にっこりお部屋太陽君」に変わります。」
「あーじゃあ、それ持って住宅事業部に行けば?あ、でも傘ないね・・・貸さないよ。ビニール傘はすぐなくなっちゃうから。あ、それ持って行くならタクシーで行かないとね。」
「タクシー代は経費で落ちませんからね。」
「優ちゃんキビシイ!アハハハ」
アハハハじゃねぇよと言いたいが、それも言えない・・・
しかも、布団が濡れたのは認めたくはないが自分のせいだ・・・
「青木君、早くそれを何とかしたまえ。仕事中だぞ。」
「まっちゃんはもう体はいいんですか?」
「雨が降るまでがつらいだけで、雨さえ降ればこっちのモノだ!
しかも、コタツに入れば私の体は回復するのだ!仕事するぞ!この冬は何としても新製品を出すんだ!」
「よっ!まっちゃん!コタツ戦士!」
「じゃあ、景気づけにコーヒーで乾杯でもしますか?」
「いいね、優ちゃん、気が利く。僕、お砂糖2つね。ミルク多めで。」
「私はブラックでお願いします。」
「・・・・」
青木志貴、株式会社NN コタツ部コタツ課に配属になって半年を過ぎた今、この部には魔物が住むことにようやく気付く。
そして、その魔物を自分は倒せないのだと言うことも・・・今はっきりと理解した。
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