サラリーマン 青木志貴

富井

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コタツ部コタツ課へ異動 それから・・・

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まっちゃん・・・多分、この人は開発主任と言った位置づけだと思うが・・・その人が指さした方向には、少し分厚いビジネスバッグが置いてあった。

「これは?」

「これは“どこでもコタツ”です。このバッグの表面は太陽電池パネルになっていて、いつでもどこでも、がばーっと開けたらあったかほかほかコタツになります。
ちょっとやってみてください。」

「え・・・はぁ・・・」

そのバッグを持ち上げた。

「おも・・・これ、ものすっごく重いですよ。」

「そりゃ・・・まあ、太陽電池パネルとバッテリーも入ってるからな・・・ま、ちょっと重量はあるが・・・ま、ちょっとやってみて。」

指示通り、ビジネスバッグの口をぱかっと開けた。そして中から布団がバサッと落ちて、まっちゃんの言う通りいつでもどこでもコタツになりそうではあった。

「けど、これって、意味ありますか?」

「意味?何を言っているんだろう君は。意味がある、ではなく、意味があるようにするのが君の仕事だ。」
「はぁ・・・?」
「これを持ては世界中のサラリーマンが寒さからしのげるじゃないか。アポまでの待ち時間、長い通勤時間、電車のホーム、何か災害があった時でも心強いじゃないか。」
「まあ・・・でも・・・」
「でも・・・なんだね。」

「暖かくてどうなんですかね・・・」

「暖かいと幸せだろ?違うのか?
寒―い日にうどんを食べると幸せな気分になるだろ。外を歩いていても、ちょっとした暖房の暖かい風にふっと心が和むことがあるだろ。」

「まあ、確かに・・・」

「穏やか、優しい、和やかなども、温和、温厚、温情と言った通り、暖かいもののイメージだ。懐が温かい、家族だんらんなど、幸せはみな、暖かなんだ。だから、私は世界中のサラリーマンを暖かくしたい!」

「あ・・家族だんらんの”だん“は団結の”だん“で、暖房の”だん“ではないですけどね。」

「屁理屈はいい!私には暖房の“だん”なのだ!!
さあ、これをもって営業に行ってきたまえ!」


「いや・・・これはちょっと・・・第一、これ布団しまえませんよ。」

「そんなはずはない。入っていたものはしまえるはずだ。根気よく片付けたらいつかは・・・」

 「そりゃあ、いつかはしまえるでしょうが、そんなもたもたしてたらアポの時間に遅れちゃうでしょ。ワンタッチで開いて、ワンタッチでしまえないと。」
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