クレタとカエルと騎士

富井

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四日目の午後

ベビー・ビーの店

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「お前たち何にする?
俺は・・・ビッグバーグのたっぷりミートソースがけとほうれん草のオムレツとエビフライ。ミートソースはたっぷりかけてね!たっぷりだよ!!
オムレツもケチャップたっぷりで。ホワイトソースはやめてね。」


べジービーの店は、西部劇のような街並みの中の真ん中くらいにある小さな店で、ハンバーガーとフライドチキンを持ったトーテムポールが目印だった。

理玖たち三人は、クレタのオーダーを聞いただけで奥のほうからぐっと上がってくるものに口を慌てて抑えた。

「俺、うどんかラーメン・・・・何も具が入ってないやつ・・・・」
「俺も・・・・」

「僕はお箸が使えないから・・・おかゆとか・・・・できれば白いので・・・」
「おいおい、若いのになんだよそんな味気ないもの。ガツンと食わなきゃ。
育ちざかりだろ。」

べジービーは白のランニングシャツからはみ出るたくましい筋肉の持ち主で、ひ弱で色白のクレタとは対照的なタイプだった。
「いやあ・・・さっきガリウスとの戦いで見てはいけないもの見ちゃって・・・」
「見てはいけないものって?」
ヒロトは思わず“うっ”となったが、カエルの手で口を押さえられず、慌ててトイレを探した。

「実は・・・ガリウスの中身を・・・」
「中身?」
「はい。中身をヒロトが神様からもらったスプーンでくり抜いて・・・」
太も話している間に気分が悪くなってトイレに駆け込んだ。
「大変だったなぁ」
「中身を見たの?え?どんなだった?」
クレタが嬉しそうに身を乗り出して聞いた。
理玖もアレを思い出し、トイレにかけ込んだ。
「なんだよー教えてくれてもいいだろ。けち!」
そんなこんなで、ぐったりとした三人は店の端っこで並んで寝転がった。
「ほいよ。何にも入ってないうどんと、なにも乗っかってないラーメンと白いだけのおかゆ。」
「でもまあやっつけたんで・・・」
「まあ頑張りは誉めてやるけど、そんなくらいじゃあ、ダメだな。」
「ツーことは死んでないツーこと?」
「ま、そういうこと。」
「マジかよーあんな思いしたのにー。」
ふと隣の席を見ると、クレタがタップりとミートソースのかかったものすごくデカいハンバーグと、枕のようなオムレツに食らいついていた。
「なんだ。ちょっと欲しいのか?」
三人と目が合ったクレタは口のまわりにケチャップやらミートソースやらがいっぱいついて、服の胸や袖にもいっぱいこぼしていた。
「オエ、俺ちょっとトイレ・・・」
太は口を押さえて走った。
「俺も・・・」
「僕も・・・」

「なんだよ。お前たち俺の顔見ていきなり。気分悪いな・・・」

「クレタ、顔拭けよ。いっぱいついているぞ。」

クレタは袖で口をががっと拭いた。
「あ、ソースか。」
「ソースかじゃねえよ。俺のジャージだぞ。ケチャップは落ちねえんだぞテメェ。」
「テメェってなんだよ。誰に向かってそんな口叩いてるんだ。」

クレタは太の胸ぐらを掴んで怒鳴った。
口に食べものを頬張ったまま怒鳴ったから、口からミートソースの匂いやら食べかすが飛び、気持ち悪さのあまり目眩がしてぶっ倒れた。
「太、大丈夫か・・・」

「き・・・気持ち悪い・・・」

太は見かけによらず繊細だった。

べジービーは太をひょいと抱えると奥のベッドに寝かせて、濡れたタオルを額に乗せた
「なんだあいつ、弱っちいな。ガツンと食わないからぶっ倒れるんだ。」
クレタは相変わらず、ボタボタとこぼしながらビックバーグにかぶりついていた。
理玖もヒロトも、そうじゃなくてと反論したかったが、てんこ盛りのミートソースの匂いとガツガツ食らいつくクレタを見ていたら気分が悪くなってなにも言えなくなった。

「君達も休んで来なさい。ゆっくり落ち着けば直に食事も食べられるようになるさ。」
「ありがとうございます。」

ベジービーは二人のカバンを持ってベッドへと案内した。靴を脱がせてやり、枕を重ねて少しでも早く楽になるよう、冷たい水も用意した。
「でもさーあとちょっとで出発するぜ。」
クレタはエビフライ片手にビッグバーグを食べながら、ミートソースをぼたぼた垂らして三人が寝ている部屋へやってきた。

「ちょっとゆっくりさせてやれよ。今晩はここへ泊まっていけばいいだろう。」
「えー・・・でもなー・・・・」
「もう無理だよ。休ませてやれよ。もう一個ビッグバーグおごるし・・・」
「んーポテトとティラミスもつけてくれる?」
「ああ、付けてやる。」
「じゃあ泊まって行く。俺、風呂入るーこの上着、洗濯してくれ!」
「お前、ホントは最初から泊まって行く気だったんじゃないか・・・」

「そんな事ないもーん。もっともっと先に進む予定だったもーん。」

「わかった、わかった。風呂行く前に、洗面器に水を汲んできてくれよ。この子の手、カサカサで可哀そうだ。」
「あーカエルヒロトか・・・どうしようかな・・・」

「どうしようかじゃねえだろ。お前元気なんだからそのくらいやれよ。」

太はベッドに横になったままクレタに叫んだ。さっきの匂いが鼻について、クレタの顔を見るだけで吐きそうだった。

「誰に向かってそんな口叩いてるんだ、やらねえよ。お前ら面倒見ろ。ヒロトは臭いからな。俺は風呂に入る。」

クレタはさっさと風呂へ向かった。

「しょうがねえ奴だな・・・今、水を汲んで来てやるからな、ちょっと待ってろよ。」


ベジービーは大きめ洗面器に水を汲んでくるとテーブルの上にのせて、その中にヒロトの手を沈めた。


「気持ちいいか?」

「うん。ありがとうございます。」

「クレタと一緒じゃ、大変だろ。あいつわがままだからな。」

「日がたつごとにわがままさが増して・・・」

「あいつ人見知りだから、最初はおとなしいんだ。けど、慣れてくるとどんどんぐいぐい来るから厄介なんだよ・・・でも、悪い奴じゃないから。本当は優しい、いいやつなんだ。
じゃあ、僕は店があるから行くけど・・・ほしいものは、ない?」

「はい、今は水だけでいいです。」

「ここはガリウスがこないオアシスだから、君たちもゆっくりして行きなさい。
気分がよくなったらお風呂にでも入って、お腹がすいたら店にオーダーしに来なさいね。」

ベジービーはとてもやさしかった。疲れもあってか、三人はそれからすぐ眠ってしまった。
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