クレタとカエルと騎士

富井

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迷った!

鬼と闘う

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なんどもどうしようか悩んだが、意を決して起こすことにした。

それがまた、そう簡単には起きてはくれなかった。
何度も思い切り揺すってみたり、カバンをぶつけてみたり、蹴ってみたりしたが、腹が立つほど起きなかった。

「いい加減にしろよ。いつまで寝てるんだ。」

太が思い切り怒鳴ると、端に立てかけてあったサント先生からもらった剣がクレタの上にガタンと倒れた。

「痛てぇ・・・・何するんだよ!」

「おれじゃねえよ、その剣が倒れたんだよ。」
「それにしてもお前がなにかしたから倒れたんだろ!」
「何もしてねえよ。第一、お前どれだけ寝てるんだよ。俺達、大変な目に合ってんだぞ。」
「ここどこだ?」
「どこだって・・・いい加減にしろよ・・・」
「だって、こんなところ通る予定ないもん。」
「あのなぁ・・・」

クレタは荷台の上で背伸びをしてあたりを見まわした。
太はそれより、繭の中にいる二人のことと、これから来る鬼のことのほうが気になってクレタのことなんて気にしている暇がなかった。

けれど、とりあえず、クレタにも今の状況を話しておく必要があると思い、
「いま迷いの森にいるらしい。それと、あの繭の中に理玖とヒロトが入ってて、おばさんたちが繭の糸を紡いでくれているからもうじき二人は出てくるだろうけど、二人を食べに鬼が来るからそれを俺とクレタで退治するんだ。」
「はあ?わからない。」
「どこが?」
「全部。」
「えー説明するのめんどくせえ。」

太はクレタを起こしたことを後悔していた。

もう一回説明しろとせがんでくるし、まとわりつくし、おばさんたちは高速で糸を紡いでいて繭はだいぶ小さくなっている。

多分鬼が来るのもそろそろのはず・・・

「クレタ。お前の出番はそろそろだ。くるくるプス!の出番だぞ。」
「ん!?」
「さっきサント先生に習っただろ。くるくるプス!だ。早く剣を出して構えてろ。」
「それよりさー。今どこにいるか気になるじゃん。」
「後からいやっちゅう程教えてやるから、今はやっつけることに集中しろよ!」
「おまえさー何回言ったらわかるんだよ。俺、王子様だぞ。指示すんなって!」

「もー・・・もうじき鬼が出てきますから、早く剣を出して構えてください。お願いします。これでいいのか!」

「おう、それでいいぞ。
どの剣にしようかな・・・どれが俺に似合うかなぁ。
なあ、太はどの剣が俺に似合うと思う?」

「はあ、そんなの、どれも一緒じゃん。どれでもいいよ。」

「どれでもはよくない。やっぱ、俺が持って一番かっこよく見えるのじゃないとだめだろ。
この白と青のシマシマはどうかな?」

「ああ、いいんじゃね。」

「ん・・・これはちょっと決めすぎだな。いつものひらひらが付いたブラウスだったらかっこいいけど、このへんてこなジャージには暑苦しい感じだな・・・」

「テメエ、それ俺のジャージだぞ。何がヘンテコだよ。」
「いまテメエとか言ったか・・・もう、くるくるプス!はしないぞ。」
「ああ、もう!言ってません。へんてこなジャージです。これでいいんだろ。」
「おう、それでいい。この緑色の剣はどうだ。いいかんじじゃねえ。カジュアルな感じでマッチしてる?ねえ。どう?」
「ああ・・・マッチしてます。そのジャージにいい感じにマッチしてます。」

「そう。じゃ、これにしよっと。でも、ちょい重いな・・・もっと軽いのないかな・・・」
五人がとても高速で糸を紡いでくれているので、二人の姿が透けて見えるほど繭は薄く小さくなってきた。
「そろそろ、鬼が来るころだよ。準備はいいかい。」

「おう!俺は大丈夫だ。」
太は剣を掲げて合図し、どこから鬼が現れてもいいように四方を見渡した。
「ねえ、あれ、誰?」

クレタは太の袖口を引っ張って小声で言った。

「後で説明するから。そろそろ鬼が来るから気お付けろ。」
「誰だよ。教えろよ。」

「だから後にしてくれって。」

「だって気になるだろ。」
「たのむ・・・集中させてくれよ・・・」

太は小声で、本音を呟いた。

今まで、自分は強いと思っていたが、それは理玖がいたからで、喧嘩できたのも理玖がいたからで、一人では喧嘩もできない。

そして、いつも止めに入ってくれたヒロト。
どこからともなく飛んできて、喧嘩をやめさせてくれた。

納まりきらない二人の沸騰した気持ちを冷ましてくれたヒロト。

この二人が自分の人生から消えてしまうなんて想像すらしなかった。


けれど、それがいま起きようとしている。

二人を失うことは、これほど恐ろしいことだったと、怯え、震えているのに、この王子さまは人の気持ちなどお構いなしに、自分の意のままに行動している。

「なあ・・・誰?」
「名前は聞いてない。ただ、俺達を助けようとしているのは確かだ。」
「ふうん・・・」
「なあ、クレタ、この状況、理解している?」

「うん。」
「だったら今の優先順位、わかるよな。」

「優先順位、一位は常に俺だ。俺は俺を信じている。俺だけを信じて戦う。」

「・・・そうか。だったら俺も、自分を信じて戦うよ。」

太はあのおばさんがクレタを起こせと言ったのかわかったような気がした。


自分一人だと理玖たちを失う不安や、鬼に一人で向かって行く恐怖に勝てなかった。

一見、何の役も立たないように思えたクレタでも、いつしか、自分の支えになっていたのだと実感した。
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