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天使の街で
本物のリリーは・・・
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クレタは天使の街の入り口にある公衆電話からリリーに電話をかけた。
チカチカとした如何わしいネオンサインと雑なライトアップがされた門は物々しい錠前がついていた。
リリーはなかなか電話に出ず、理玖達はイライラ、ハラハラしながら待った。
「あ、リリー。クレタだけど。今、門に着いたから迎えお願い。」
クレタだけはいつもと同じだった。
リリーはピンクのオープンカーで門まで来た。
理玖達は、キャラメルの池で会った、ガリウスが化けていたリリーをそのまま想像していたが、迎えに来たリリーは少しその予想を裏切るような風貌だった。
ブルーのサテンのパジャマにピンクのガウンを羽織った、短髪で青いフレームのトンボメガネをかけて、どちらかというとカッコいいお兄さんという感じだった。
「リリー!」
クレタは大声で呼び手を振った
「よくわかったな・・・やっぱり同級生だからか。」
「ううん。来てくれたんだから、たぶんあれがそうだと思った。」
結構曖昧な発言に三人の気持ちは複雑だった。
「クレタおまえ今何時だと思ってんだよ!」
リリーは門の向こうで腕を組み怒鳴った。意外に背が高い・・・
「イヤ、わかんないけど、ココ開けてよ!」
三人は、(リリーって想像より、男らしいな・・・)
と思った。
リリーは堅牢な錠前を指紋認証でガチャッと開けると、門を開き四人を入れた。
「あ~疲れた~」
リリーがカギを閉めている間に、クレタは車の後部座席に足を広げてベロンと横になった。
「そんな乗り方したら、この三人が乗れないだろ。ちゃんと座るか降りるかどちらかにしろ。」
「どっちもしなーい。三人は走ってついて来い!」
リリーはクレタをひょいっとつかみ、助手席に座らせると、車のドアを開け三人を後部座席に座らせた。
「あ・・・ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
三人は(リリーって紳士だな・・・)と思った。
車に揺られながら、三人はキャラメルの池で出会った、ピンクの髪にチョコレート色の肌をした衝撃的な現れ方をしたあのリリーのことを思い出していた。
(違う、違う、あれはガリウスが化けていたんだ。)
などと、あの日のリリーの姿を思い出しては消し・・
(いや待て、ガリウスは何を思ってあのリリーだったんだろう・・・)
などと新たな疑問が生まれ、空腹のあまり回転の鈍くなった頭を無理くり回転させてさらにお腹が減った。
車はゆっくりとふわふわと進んだ。川から見た時は、ネオンが煌々と輝いていたからもっと華やかだと思っていたが、天使の街は店はもうすべて閉まっていて、通りは真っ暗だった。
「静かですね。」
「天使の街は朝4時から夕方5時までだ。陽が陰ってきたらみんな店を閉めだすんだ。」
車は3つ角を曲がって、ブルーとピンクのストライプの屋根の店の前で止まった。
ホテルだった。
「えー、リリーんちに泊めてよー積もる話もあるし。」
「俺はねえ。今日はここへ泊まれ。俺んちはホテルじゃねぇ。」
「なんでだよ、ベジービーは泊めてくれたよ。話もいっぱい聞いてくれたし、髪だってくるくるって。」
「知るか!あいつんちは宿屋もやってるだろ。俺んちはカフェだ。ここへ泊まれ。特にお前は!」
「なんでだよ・・・なんでそんな冷たい事言うんだよ・・・お前と俺の仲じゃん・・・寂しい事言うなよ・・・」
クレタは涙と鼻水をダラダラ流しながら泣き言を言い始め、理玖たちは
(あー・・・始まった・・・)と思った。
リリーも露骨に嫌な顔をして、
「俺とお前の間には何もない。降りろ。」
と冷たく言い放った。
「あーあーあー・・・」
クレタはただただ鼻水をたらしながら泣いた。
三人はただただ、ため息をついた。ほそーく、長―く・・・
「わかった、わかった。もう泣くな。」
車から降りずに、ただただ泣くクレタに、リリーが諦めて車を走らせた。今度は赤に白の水玉の壁の四角い箱のような家に到着した。
「疲れただろ、入りな。」
リリーは後部座席のドアを開けて理玖たちをおろした。
「こっちも開けろよ。」
「クレタは自分で開けろ。後ろに乗っていた子は手がカエルだったから開けてやったんだ。お前はできるだろ。」
「ヒロトは自分が悪くてカエルになったんだ。なのに、なんでヒロトばっかり・・・
俺に気を遣えよ。」
「そんなことばかり言うなら、クレタはさっきの宿屋に泊まれ!」
リリーは理玖たちを家に招き入れるとドアをぴしゃっと閉めた。
「ヤダー!!開けて!開けて!」
クレタは、それは、それは、でっかい声で叫びながらドアを叩いた。
「・・まったくクレタは相変わらずうるせぇ!」
今度は勢いよくドアを開けると、ドアを叩いていたクレタは吹き飛ばされ、車のドアにぶち当たり、跳ね返されて家の中へ飛び込んできた。
(リリーはやっぱり男らしい!)
と三人は思った。
「リリー、前はもっと優しかったじゃないか。キャラメルの池で会った時は「クレター」って抱き着いてチューしてくれたのに。なんで本物はこんなに冷たいんだ!」
「はぁ?何喋ってんだよ!」
「キャラメルの池にあったリリーさんのお店で会ったんです。
ガリウスが化けていたリリーさんに・・・」
理玖たちは、リリーに会ったあの日のことを覚えている限り話した。
「紫色のピチピチのワンピースを着て、ピンクのつけまつげで肌はチョコレート色。舐めたら本当にチョコ味だった。」
「そこでヒロトが捕まって・・・型を取られてヒロト型のプリンとゼリーを作った。
クッキーも・・・」
「あ、そ。」
「それだけ?」
「それだけ。優しくされたかったら営業時間内にコイ!
スマイルゼロ円は営業時間内だけだ。残業はしねぇ。時間外はスマイルも有料だ!
天使の時間は朝早いんだ。こんな遅くまで起きていたら、朝、起きれねぇだろ!」
リリーはオン・オフがはっきりとしたカッコイイ男だった。
「でも・・・お腹減った・・・」
クレタは涙をホロっと流してお腹を押さえた。そう言われると理玖も太もヒロトもお腹がペコペコだった。天使の街で腹いっぱいおいしいものが食べられると期待してやって来たのに、予想外だった。
「しかたねぇな・・・キャラメルのオムライスなら作れるぞ。」
「そんな甘いものは食いたくない。」
クレタは作ってくれるとわかったらキッチンの椅子にデレッと座り、
「俺、ナポリタン。ケチャップ多めでタマゴ付き。サラダはコールスロー。」
と言った。
「ザ・ケンな!俺は寝る!」
リリーはカップ麺と電気ポットをバシッとテーブルの上に置き部屋を出て行った
「あいつ気が短いな。嫌な奴だ。いつからあんな奴になったんだ。」
(イヤ、クレタよりはるかにいいヤツだ。)
と、三人は思った。
「イチゴとんこつ、チョコ塩、メロン醤油・・・・どれにする?」
(どれもなー)
と三人は思ったが、腹が減りすぎて・・・・
(この際贅沢なんて言ってられない。空腹は最高のスパイスともいうし、きっと食える!)
と、理玖は無言で湯を沸かし、太はカップ麺のセロファンを開けてスープをさらさらとコブクロから出し湯を入れる準備をし、ヒロトは箸を探したが、カエルの指先でつかめずに引出しごと吸盤に吸いつけて持った。
三人の胃袋は限界で、話をする元気もなく、もう口に入るものなら何でも飲み込む自信があるほど減り切っていた。
「おお、ブドウカレーもある~バニラ味噌に和風バナナ、トムヤムマロングラッセ。」
多分、通常の時の三人なら「オイオイ」となるところだが、今の三人はその奇抜な商品名に反応できるほど思考能力が正常に機能してなかった。
クレタが喜んで並べたカップ麺の数々を太が片っ端から開封し、理玖は片っ端から湯を入れ、ヒロトはただ引出しを持って立っていた。
「よし、3分!もう食べられるぞ!」
クレタの合図とともに一斉に食べだした。
「うん!微妙!」
こんなに腹が減っていてこの感想なら、通常時は食べれたもんじゃないな、なんて、その時は微塵も考えない。
とにかく机の上に並んだ色とりどりのカラフルなカップ麺を4人でがつがつと平らげた。
チカチカとした如何わしいネオンサインと雑なライトアップがされた門は物々しい錠前がついていた。
リリーはなかなか電話に出ず、理玖達はイライラ、ハラハラしながら待った。
「あ、リリー。クレタだけど。今、門に着いたから迎えお願い。」
クレタだけはいつもと同じだった。
リリーはピンクのオープンカーで門まで来た。
理玖達は、キャラメルの池で会った、ガリウスが化けていたリリーをそのまま想像していたが、迎えに来たリリーは少しその予想を裏切るような風貌だった。
ブルーのサテンのパジャマにピンクのガウンを羽織った、短髪で青いフレームのトンボメガネをかけて、どちらかというとカッコいいお兄さんという感じだった。
「リリー!」
クレタは大声で呼び手を振った
「よくわかったな・・・やっぱり同級生だからか。」
「ううん。来てくれたんだから、たぶんあれがそうだと思った。」
結構曖昧な発言に三人の気持ちは複雑だった。
「クレタおまえ今何時だと思ってんだよ!」
リリーは門の向こうで腕を組み怒鳴った。意外に背が高い・・・
「イヤ、わかんないけど、ココ開けてよ!」
三人は、(リリーって想像より、男らしいな・・・)
と思った。
リリーは堅牢な錠前を指紋認証でガチャッと開けると、門を開き四人を入れた。
「あ~疲れた~」
リリーがカギを閉めている間に、クレタは車の後部座席に足を広げてベロンと横になった。
「そんな乗り方したら、この三人が乗れないだろ。ちゃんと座るか降りるかどちらかにしろ。」
「どっちもしなーい。三人は走ってついて来い!」
リリーはクレタをひょいっとつかみ、助手席に座らせると、車のドアを開け三人を後部座席に座らせた。
「あ・・・ありがとうございます。」
「どういたしまして。」
三人は(リリーって紳士だな・・・)と思った。
車に揺られながら、三人はキャラメルの池で出会った、ピンクの髪にチョコレート色の肌をした衝撃的な現れ方をしたあのリリーのことを思い出していた。
(違う、違う、あれはガリウスが化けていたんだ。)
などと、あの日のリリーの姿を思い出しては消し・・
(いや待て、ガリウスは何を思ってあのリリーだったんだろう・・・)
などと新たな疑問が生まれ、空腹のあまり回転の鈍くなった頭を無理くり回転させてさらにお腹が減った。
車はゆっくりとふわふわと進んだ。川から見た時は、ネオンが煌々と輝いていたからもっと華やかだと思っていたが、天使の街は店はもうすべて閉まっていて、通りは真っ暗だった。
「静かですね。」
「天使の街は朝4時から夕方5時までだ。陽が陰ってきたらみんな店を閉めだすんだ。」
車は3つ角を曲がって、ブルーとピンクのストライプの屋根の店の前で止まった。
ホテルだった。
「えー、リリーんちに泊めてよー積もる話もあるし。」
「俺はねえ。今日はここへ泊まれ。俺んちはホテルじゃねぇ。」
「なんでだよ、ベジービーは泊めてくれたよ。話もいっぱい聞いてくれたし、髪だってくるくるって。」
「知るか!あいつんちは宿屋もやってるだろ。俺んちはカフェだ。ここへ泊まれ。特にお前は!」
「なんでだよ・・・なんでそんな冷たい事言うんだよ・・・お前と俺の仲じゃん・・・寂しい事言うなよ・・・」
クレタは涙と鼻水をダラダラ流しながら泣き言を言い始め、理玖たちは
(あー・・・始まった・・・)と思った。
リリーも露骨に嫌な顔をして、
「俺とお前の間には何もない。降りろ。」
と冷たく言い放った。
「あーあーあー・・・」
クレタはただただ鼻水をたらしながら泣いた。
三人はただただ、ため息をついた。ほそーく、長―く・・・
「わかった、わかった。もう泣くな。」
車から降りずに、ただただ泣くクレタに、リリーが諦めて車を走らせた。今度は赤に白の水玉の壁の四角い箱のような家に到着した。
「疲れただろ、入りな。」
リリーは後部座席のドアを開けて理玖たちをおろした。
「こっちも開けろよ。」
「クレタは自分で開けろ。後ろに乗っていた子は手がカエルだったから開けてやったんだ。お前はできるだろ。」
「ヒロトは自分が悪くてカエルになったんだ。なのに、なんでヒロトばっかり・・・
俺に気を遣えよ。」
「そんなことばかり言うなら、クレタはさっきの宿屋に泊まれ!」
リリーは理玖たちを家に招き入れるとドアをぴしゃっと閉めた。
「ヤダー!!開けて!開けて!」
クレタは、それは、それは、でっかい声で叫びながらドアを叩いた。
「・・まったくクレタは相変わらずうるせぇ!」
今度は勢いよくドアを開けると、ドアを叩いていたクレタは吹き飛ばされ、車のドアにぶち当たり、跳ね返されて家の中へ飛び込んできた。
(リリーはやっぱり男らしい!)
と三人は思った。
「リリー、前はもっと優しかったじゃないか。キャラメルの池で会った時は「クレター」って抱き着いてチューしてくれたのに。なんで本物はこんなに冷たいんだ!」
「はぁ?何喋ってんだよ!」
「キャラメルの池にあったリリーさんのお店で会ったんです。
ガリウスが化けていたリリーさんに・・・」
理玖たちは、リリーに会ったあの日のことを覚えている限り話した。
「紫色のピチピチのワンピースを着て、ピンクのつけまつげで肌はチョコレート色。舐めたら本当にチョコ味だった。」
「そこでヒロトが捕まって・・・型を取られてヒロト型のプリンとゼリーを作った。
クッキーも・・・」
「あ、そ。」
「それだけ?」
「それだけ。優しくされたかったら営業時間内にコイ!
スマイルゼロ円は営業時間内だけだ。残業はしねぇ。時間外はスマイルも有料だ!
天使の時間は朝早いんだ。こんな遅くまで起きていたら、朝、起きれねぇだろ!」
リリーはオン・オフがはっきりとしたカッコイイ男だった。
「でも・・・お腹減った・・・」
クレタは涙をホロっと流してお腹を押さえた。そう言われると理玖も太もヒロトもお腹がペコペコだった。天使の街で腹いっぱいおいしいものが食べられると期待してやって来たのに、予想外だった。
「しかたねぇな・・・キャラメルのオムライスなら作れるぞ。」
「そんな甘いものは食いたくない。」
クレタは作ってくれるとわかったらキッチンの椅子にデレッと座り、
「俺、ナポリタン。ケチャップ多めでタマゴ付き。サラダはコールスロー。」
と言った。
「ザ・ケンな!俺は寝る!」
リリーはカップ麺と電気ポットをバシッとテーブルの上に置き部屋を出て行った
「あいつ気が短いな。嫌な奴だ。いつからあんな奴になったんだ。」
(イヤ、クレタよりはるかにいいヤツだ。)
と、三人は思った。
「イチゴとんこつ、チョコ塩、メロン醤油・・・・どれにする?」
(どれもなー)
と三人は思ったが、腹が減りすぎて・・・・
(この際贅沢なんて言ってられない。空腹は最高のスパイスともいうし、きっと食える!)
と、理玖は無言で湯を沸かし、太はカップ麺のセロファンを開けてスープをさらさらとコブクロから出し湯を入れる準備をし、ヒロトは箸を探したが、カエルの指先でつかめずに引出しごと吸盤に吸いつけて持った。
三人の胃袋は限界で、話をする元気もなく、もう口に入るものなら何でも飲み込む自信があるほど減り切っていた。
「おお、ブドウカレーもある~バニラ味噌に和風バナナ、トムヤムマロングラッセ。」
多分、通常の時の三人なら「オイオイ」となるところだが、今の三人はその奇抜な商品名に反応できるほど思考能力が正常に機能してなかった。
クレタが喜んで並べたカップ麺の数々を太が片っ端から開封し、理玖は片っ端から湯を入れ、ヒロトはただ引出しを持って立っていた。
「よし、3分!もう食べられるぞ!」
クレタの合図とともに一斉に食べだした。
「うん!微妙!」
こんなに腹が減っていてこの感想なら、通常時は食べれたもんじゃないな、なんて、その時は微塵も考えない。
とにかく机の上に並んだ色とりどりのカラフルなカップ麺を4人でがつがつと平らげた。
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