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エピローグ
しおりを挟むダリウスとアメリアたちが起こした断罪劇の後始末が、ようやくすべて片付いた。
しかし、その影響は大きく、学院内や社交界が落ち着くまでには、もう少し時間がかかるだろう…
セドリックやセリーナ、レイルは最終学年の四年生に進級した。
すべての処罰が執行されたあと、少しでも気分転換になれば、という皇帝陛下の気遣いにより、帝城にて陛下主催の夜会が開かれた。
そして、セリーナは正式に皇女としてデビュタントを迎えることになった。
学院の時とは違う本来の黒髪に深いロイヤルブルーの瞳、そして、デビュタントを迎える者しか着ることができない白く美しいドレス…
それらを身に纏うセリーナは闇夜に浮かぶ女神のごとく美しく、エスコートができるだけでも、セドリックの胸は温かい気持ちでいっぱいだった。
「今まで病弱とのことで表に出ていなかった我が皇女、セリーナだ。セリーナは今まで諸事情により、ヴァレンシュタイン子爵として公務などをこなしていたが、この度、ようやくデビュタントを迎えることができた!」
皇帝陛下によるセリーナの紹介で、ヴァレンシュタイン子爵がまさか皇女だと知らない者たちが当然多く、ホール内がざわめき立った。
しかし、セリーナの外見は亡き皇后陛下にそっくりなため、否定的な声は聞こえてこなかった。
「皆さま、セリーナ・フォン・リヒテンシュタインでございます。今までは病弱な皇女と呼ばれ、頼りなく思われた方もいらっしゃるでしょう。ですが、今後は皇女として社交にも力を尽くして参ります。皆さま、お力添えよろしくお願いいたします」
皇女としての挨拶の言葉を述べ、美しく完璧なカーテシーを披露した。
ホール内は一瞬、時が止まったかのような静寂に包まれたが、皇帝陛下とレイル、そして、セドリックの大きな拍手で我に返った貴族たちも拍手を続けた。
ファストダンスは、デビュタントを迎えたセリーナと婚約者であるセドリックが踊り始めた。
「…セリーナ、さっきの挨拶のとき、どこかへ視線を送っていたな」
「あら、よく分かったわね!」
セドリックの問いかけに、セリーナは目を丸くして驚いたあとに、鈴が転がるような声でコロコロと笑う。
当然である、セドリックはセリーナをいつも見ている。
どんな時も一瞬たりとも、目を離さないようにしているのだ。
それは護衛騎士としてという建前と、ただずっと愛おしい人を目に焼き付けたい、という思いからだ。
「当然だな。何やら、あちらのご夫人のあたりだった気がするが?」
そう言ってセドリックが一瞬だけ視線を送ったところにいたのは、とある侯爵夫人だった。
「ふふっ、ご名答ね。あの件で停学処分になったご子息が、どうやらママに泣きついたそうで、学院長に直談判をされたそうよ」
…それは、愚かな…
学院長は停学処分の通知を送る際に『皇帝陛下の許可を得ていること』と記載して送付している。
それを直談判するのであれば、皇帝陛下へ歯向かうということと同義である。
それでチラッと視線を向けただけだったのだが、まさかセドリックがそれに気づくとは思わなかった。
二曲続けてセドリックと踊った後、セリーナはレイルと踊った。
美しい双子の皇女と皇子が踊る姿に、溜め息を漏らす者たちが多くいたらしいと、夜会に参加した者たちの間でしばらく話題になったらしい。
そうして無事デビュタントを終え、日常へ戻った。
学院内では高位貴族のダリウスとマルガレーテ、そして伯爵令嬢だったアメリアがいなくなり、その他、多数の生徒が停学中のため、閑散としている教室もあった。
彼らに振り回され騒々しい日々を送っていた者たちはほっとし、その静けさに慣れない者たちもいたが、日が経つごとに気にせずに過ごせるようになっていった。
皇女であることを公表したが、セリーナは今までと変わらずに接するように周囲に願ったため、それまでとあまり変わらない学院生活を送りながら、ヴァレンシュタイン子爵としての役目もこなした。
帝国、そして皇帝陛下の憂い、不都合を減らす『影の皇帝』の名は一部貴族の中で広まったが、その正体を知る者は変わらず一部の者だけだった。
ただ、いつも独りで活動していた『影の女帝』に寄り添う人がいたことを知るのは、二人以外誰も知らない⸺⸺
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改めまして、内容の面白さに一気に最後まで読み上げてしまいました。強い女性主人公は特に好きなのですが、セリーナはもう最初からゾクゾクする登場の仕方で、ずっと釘付けでした。また読みに来ます!