正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー

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第一章 スチュワート編(一年)

第25話 お城の女子会

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「えへへ、いらっしゃい皆んな」
 ココリナちゃん達の着替えが完了し、いつもの庭園に設けられたテーブルでルテアちゃんとリコちゃんを迎え入れる。
 何時もの四人だと屋根付きの東屋ガゼボでお茶をするのだけれど、今日は総勢8名のお茶会なので、少し開けた場所に臨時で設けられた大きめのテーブルを全員で囲む。
 因みにルテアちゃんとミリィの要望で、ルテアちゃんの左右にはカトレアさんと私が席に着き、ミリィの左右にはココリナちゃんとパフィオさんを配置し、リコちゃんの左右にはパフィオさんとリリアナさんが来るよう案内した。
 どうもルテアちゃんはカトレアさんともっと仲良くなりたいらしく、ミリィはココリナちゃんとゆっくり話がしたいとの事。
 少々王女様ミリィ侯爵令嬢リコちゃんに挟まれてしまったパフィオさん表情が、引きつっている気がしないでもないが、ここは唯一の貴族出身者として諦めてもらおう。


「そういえば二学期の最初に、ヴィクトリアとスチュワートで合同のお茶会があると聞きましたが、どうせならこのメンバーで申請いたしませんか?」
 お茶会が始まり、ココリナちゃんたちの緊張がようやくほぐれてきた時、リコちゃんがこんな事を言いだしてきた。

「合同のお茶会? そんなのがあるの?」
 隣のリリアナさんに尋ねてみるも、本人も聞いた事がないのかただ首をかしげるだけ。情報通のリリアナさんが知らないとなるとスチュワートではまだ告知されていないのだろう。
「聞いてないアリスちゃん? ヴィクトリアの生徒をスチュワートの生徒が接待するんだけれど、事前に私たちが指名しておけばそのまま当日同じグループになれるんだよ」
 ルテアちゃんの話だと、学園社交界であった支度役を指名するように、今回もヴィクトリア側から指名する事で、ある程度望み通りの生徒を接待役に選べるんだとか。
 ただ今回違うのは一人のご令嬢に対して接待役が一人、というわけではなく、ヴィクトリア側では事前に4~5人のグループを作っておき、最大8名までの指名が出来るという点。接待役の方が人数的に多くなってしまうのは、スチュワートの生徒数がヴィクトリアの生徒数を上回っているからなんだけれど、結果として私たちスチュワート組にはあと2・3人加わる事になる。

「あと2・3人かぁ、ねぇココリナちゃん、誰がいい?」
 一瞬イリアさんの顔が浮かぶも、どうやら学園社交界以来避けられてる(怯えられてる?)気がして、未だに話せる機会がない。
「私に振られても……アリスちゃんの事だからどうせイリアさんの事を考えてるんでしょ?」
「まぁ、そうなんだけれど……」
 皆んなにはデイジーさんの名前は伏せ、イリアさんが昔の知り合いから嫌がらせを受けていた事だけ伝えてある。その上で全員から「イリアさんの最大の不運はアリスさんに気に入られたことですわね」と言われれば、まるで私が悪役のようで抗議の一つぐらいは上げたい気持ちだ。

「アリスさんのお気持ちも分かりますが、しばらくそっとしておいた方がよろしいのでは? それに人数が足りなければ先生方が調整してくださるでしょうし」
 リリアナさんのいう通りイリアさんを誘ったとしても人数としてはまだ足りない。それにミリィからもしばらく時間をおいた方がいいとも言われているので、今はそっとしておいた方がいいのかもしれない。

「そ、そうですね、無理に誘わなても先生方にお任せした方が……一般の生徒を私たちの中に無理やり巻き込ませるのは余りにも可哀想……」
「カトレアさん酷いです。それじゃまるで私たちが皆んなを巻き込んだみたいじゃないですか」プン。
 カトレアさんの言葉を聞いたルテアちゃんが、可愛らしく頬を膨らませながら顔を背ける。
「うん、今のはカトレアさんが悪いね」
「えっ、えーー!?」
 本人は恐らく自分に照らし合わせて言ったのだろうが、ルテアちゃんにとっては最近ずっとカトレアさんの事を気にしてたからね。本当に仲良くなりたいんだと私は思っている。

「巻き込む、って点はある意味間違ってないでしょ。元々元凶はアリスなんだし、公爵令嬢ルテアが口を尖らせて拗ねたら免疫力がないカトレアは怯えるだけでしょ」
「えっ? ごめんなさいカトレアさん。私、怯えさせるつもりは……」
 ミリィの言葉を聞いたルテアちゃんがすぐにカトレアさんに向かって謝るが、私が元凶ってってどういう意味よ。

「それより問題は私たちの方よ、今回は一・二年の女性生徒のみだからアストリア達は誘えない。そうなれば人数的に最低でももう一人誰かを誘わなければいけないんだけど、思い当たる子がいないのよねぇ」
 ミリィが言うには三人に近づくご令嬢達はいるが、明らかに別の目的が見え見えなので表面上の付き合いしかしていないらしい。
 何も知らない私からすれば誰でもいいじゃないと思うのだけれど、そこには目に見えない駆け引きという言葉が付き纏い、誰か一人を選べば当人は大いに勘違いをし、周りからは抜け駆けをされたと爪弾きにされてしまう。
 言われてみれば王女様に上級貴族である公爵家と侯爵家のご令嬢だ。お近づきになれれば今後の未来は明るいだろう。

「他に上級貴族の方っておられないんですか?」
 リリアナさんがミリィに尋ねるも、同年代の女性となると誰もいない事は私も知っている。
 貴族といっても大半は本家より離れた遠縁出身がほとんどだし、侯爵家以上の上級貴族ともなると、その数は一気に減ってしまう。
「年下ならいるのよ、でも同じ年か一つ上となるとね」
「いっそのこと、このままアリスちゃんが来てくれればいいんだけれど」
「今回ばかりは無理ね。それに下手にアリスを巻き込むのは後々面倒な事になるわよ」
 如何に私がミリィ達の友達だからといって、スチュワートの生徒がヴィクトリの生徒に紛れ込むのは些か問題だろう。この間のデイジーさんとの件の様に、私の事をよく思わない生徒も出てくるはずだ。

「まぁ、今から考えたって仕方がないわ。どうせ新学期の事なんだから、それまでに何とかなるでしょ」
 ミリィのいう通り、ヴィクトリアの先生方もこんな経験は何度もあるだろうから、最悪の時は何とかしてくれるだろう。
 それにスチュワート私が何を言ったところで、この件に関しては力にもなれる気がしない。
 ここはミリィ達に頑張ってもらおう、そう他人任せな考えをしていたら
「貴族って大変なんですねー」
 偶然静まり返った空間に、どこか間の抜けた声が聞こえてくる。
 一瞬私の心の声が漏れたかと思ったが、どうやら放ったのはミリィの隣で優雅っぽくお茶を楽しむココリナちゃん。
 って、いつの間にかすっかりこの場に馴染んでない!?

「へぇー、他人事のように言うのはこの口かしら?」
「えっ? え、えぇーー!?」
 ちょっとミリィ、怖いって。目が全然笑ってないよ!
「ひ、ひらいれす、みぃひらりはさま(い、痛いです、ミリアリアさま)」
 ミリィが隣に座るココリナちゃんのほっぺをつまみ、上へ下へとうにうにし、一頻り涙目姿を堪能して解放する。
 ミリィのお仕置きスペシャルその1、『泣き顔に満足するまでうにうにする(命名:アリス)』私も何度か経験があるが、ミリィの満足度次第で時間延長もある恐ろしい技!
 まさか私以外に被害者がでるなんて……やるわねココリナちゃん。

「全く、何他人事みたいにいってるのよ」
「で、ですが、私に出来る事なんて……」
 ココリナちゃんが薄っすら赤くなった頬を両手で摩りながらミリィに抗議する。
 長年付き合いのある私やルテアちゃん達なら分かるだろうが、こういったミリィの行動はある意味信頼しきっている証。恐らくリリアナさんやパフィオさん、それにカトレアさんに対してはやらないだろう。
 今日のこの席順だってワザワザ自分の隣にココリナちゃんを指名してきたんだ。ルテアちゃんじゃないが、もっと彼女の事が知りたかったんじゃないだろうか。

「別に何かをしてもらおうなんて期待はしていないわよ。ただ親身になって考える事ぐらいはしなさい。ココリナとはこれからもずっと付き合う事になるんだから」
「ブフッ、ちょっ、な、なんですかそのこれからずっとって!?」
 ミリィの言葉を聞いたココリナちゃんが明らかに動揺し始める。
「もう、それはまだ言っちゃダメだよ。正式に決まっていないんだから」
「ア、ア、アリスちゃん!? 何その意味深な言葉は!」
 ん~、言っちゃってもいいんだろうか。
 実はココリナちゃんをお城のメイドとして迎えようかという話が持ち挙がっている。とは言え、正式採用はスチュワート学園を卒業してからになるのだが、今のところ有力候補として名前が挙がっているんだ。

「おめでとうございます、ココリナさん。まだ入学して間もないと言うのにもうご指名をお受けになられるなんて」
「リリアナさん、まだ決まった訳じゃないよ。お義母様がそんな事を言ってたってだけだから」
 喜んでくださるのは嬉しいけれど、正式にオファーが行くのは二年生になってかららしいので、それまでにココリナちゃんより優秀な生徒がいれば変更になる可能性もまだあるらしい。
「まぁ、でもほぼ決まりでしょ。そもそもここ数年、王族付きのメイド自体候補に挙がった者はいないわよ」
「え、えぇーーーーー!!」
 あぁーあ、言っちゃったよ。
 私たちが暮らすプライベートエリアには、限られた人間しか踏み入る事が許されていない為、今まで知っているだけでもエレノアさんを含む数人しか増えていない。
 何と言っても国の最重要なエリアだからね、技量はもちろんの事それ以上に信頼できる人でないと選ばれないんだ。

「誰にも言っちゃダメだからね。メイド長のノエルさんが言ってたけど、学生からいきなりロイヤルメイドになった人はいないんだから」
 国がスチュワート学園を運営している関係、毎年お城でも何人かは採用しているらしいが、誰もが最初は本城周りの各施設で経験を積み、その中でも本城で働けるようになるのはほんの僅か。その上、さらに王族付きのロイヤルメイドになれるのは、見習い騎士が経験と武勲を得て部隊長になるほど難しいと言われている。
「喜びなさい、私がキッチリ遊んで……コホン、鍛えてあげるわ」
「ミリィ、今サラッとココリナちゃんで遊ぶとか言いかけなかった?」
「気のせいでしょ、アリスもうれしいでしょ? ココリナが近くにいれば」
「ん~、まぁそれは嬉しいけど。私の目標はミリィの専属メイドだよ、忘れてないよね?」
 ココリナちゃんが近くに居るのは嬉しいが、こればかりは幾ら親友でも譲れないからね。

「あぁー、そんな事も言ってたわね」
「ひどーい、もしかして忘れちゃてたの!?」
「でもアリスだって結婚するでしょ? そうなれば自然と嫁いで行っちゃうじゃない」
「うっ、それはそうなんだけれど……」
 確かにミリィの言う通り結婚しちゃったらお城を出て行かなきゃいけないんだけどさ。
 ミリィに抗議するも逆に切り返されて言葉に詰まってしまう。

「もしかしてアリスちゃんって好きな人がいるの!?」
「ちょっ、ココリナちゃん声が大きいよ」
 いきなり大声を出されて思わず聞かれていないかと辺りを見渡してしまう。
「聞こえる訳ないでしょ、ここから訓練所まではかなり離れているわよ」
 うぅ、ミリィに諭され小さくなる。

「訓練所? お二人は今騎士団におられるので?」
「そうよ、この夏休みを利用して騎士団の訓練に参加してるんだって」
「だったらいつでも会いに行けるね、アリスちゃん」
「もう、リコちゃんもルテアちゃんもからかわないでよ」
 別に声を出して好きだと言った訳ではないが、なぜだがこの三人には私がジークの事を好きだという事がバレてしまっている。

 昔、まだ私の両親が生きていた頃、一度だけミリィに連れられお城を抜け出した事があった。最初は見るもの聞くものに胸がワクワクしていたが、幼い子供に帰り道を覚えられはずもなく、当然のごとく迷子になった。
 見上げればお城が見えているのに、入り口がわからずただ泣き出しそうなのを必死に我慢し、ミリィと一緒にひたすら彷徨ったが、結局帰り道がわからず挫けそうになった頃、偶然出会ったのが近くで遊んでいたジークとアストリア。
 当時はまだ知り合ってすらいなかったのに、二人は私たちがお城まで帰りたいと伝えれば、何故か王女であるミリィも知らない道から連れ帰ってくれ、無事にお城へと帰る事が出来たのだが、待っていたのは二人の両親によるお説教の嵐。
 後日ジークとアストリアに再会する事になるのだが、その時には既に淡い恋心を抱いてしまっていたというわけ。
 因みにミリィはアストリアに惹かれちゃったらしいのだけど、本人は未だに否定している。

「もしかしてアリスちゃんの好きな人ってこの間学園社交界で一緒にいた人?」
「そうよ、アストリアと違って無口の男性がいたでしょ? そっちがアリスの好きなジークよ」
「参考までにミリィちゃんはアストリアの方が好きなんだよ」
「ブフッ、ちょっ、ルテア! 私はアストリアの事なんて何とも思っていないってるでしょ!」
「隠さなくてもよろしいですわよ、私たちの間ではバレバレですわ」
「コラ、リコ! ここにはココリナ達もいるのよ、って、そうじゃなくて、もう、私をからかうなぁーー!」
 この日、お城の庭園から楽しそうな女性達の話し声が続いていたという。
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