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第一章 スチュワート編(一年)
第27話 ミリィの計画
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私とアリスにとっては初となる夏休み、入学前はあれほど一緒にいる時間が長かったというのに通う学校は別れてしまい、一緒にいられる筈の夏休みでも、私は剣の訓練に明け暮れアリスは淑女教育……コホン、メイド教育という名の聖女教育を受けている。
そして、そろそろこんな生活にも飽き始めた頃、ようやく長かったようで短かった夏休みが終了した。
「私、今度お城で行われます社交界にデビューしますのよ」
新学期早々、教室の中央から耳障りな声が聞こえて来る。
ヴィクトリアに通う生徒の大半が、貴族の血筋か大手商会の子息子女ばかりの為、一学年のクラスはたったの二つ。残念な事にアリスを除く3人……いや幼馴染5人のうち、リコとアストリアは別のクラスになってしまったが、ルテアとジークとは一緒のクラス。
上級貴族である私たちを全員一緒にさせなかったのは、学園なりのバランスを考えてのことであろうが、そこまで配慮するならもう少し人選をしっかりしろと抗議をしたい。
「流石でございますわねデイジー様、この歳で、しかも王家主催の社交界でデビューされるなんて」
デイジーと呼ばれている子爵家のご令嬢が話しているのは、恐らく来週開催される聖誕祭の話であろう。元々社交界にデビューするのが15~16歳とも言われているので、間も無く15歳を迎えるご令嬢達にとってはそれほど珍しい事でもない。
この聖誕祭は国の誕生を祝う催しで、一年に一度のこの時期に、国を挙げて大々的に行われるお祭りで、お城では二日に渡りパーティーが開かれ、多くの貴族達が招かれる夜会と、翌日他国からの来賓や著名人などを招いたガーデーンパーティーが行われる。
もっとも、王女である私や公爵家の一員であるルテアとアストリア達には12歳の頃から参加が強制されており、侯爵家の娘であるリコには今年からの参加がすでに決まっている。
「大したことではございませんわ、子爵家の娘としては当然の事。ブルースター家の名に恥じぬよう立派に振舞って見せますわ」
まったく何が立派に振舞ってみせますわだ。
一学期に行われた学園社交界の出来事は、エスニア姉様がいるライラック家から既に詳細な情報が上がっている。どうもアリスは私たちに心配させないよう、デイジーの名前は兄様達にも口止めをしていたようだが、情報収集を担うライラック家にエスニア姉様が報告しない訳もなく、この事は既に国王である父様を始め、アリスの秘密を知る多くの主要人物に伝えられている。
「デイジーさん、どうやら夜会に来るみたいだね」
「そうみたいね」
私にだけに聞こえるよう、小さな声でルテアが話しかけてくる。
学園内にいる間、私と話す時であっても公爵家の仮面を被ってはいるが、今は近くに誰もいないという事で、小声ではあるが普段通りの口調で話しかけてくる。
「それでアリスちゃんは参加するの?」
「まだ決まっていないわ。ただ今後の事も考えると、そろそろ社交界にも馴れさせなければならないからね」
実は爵位持ちの当主限定ではあるが、アリスの存在は既に周知の事実だったりする。
例の事件の事は一般には公表されてはいないが、城に賊の潜入を許してしまった事は主要な貴族達に伝えない訳にはいかなかった事と、セリカさんを失い再び国のおかれた状況を説明する過程で、領地持ちの貴族達にはアリスの秘密が話されたと聞く。
もちろんこの事は全てアリスを守る為の処置だが、爵位持ちの当主以外は知らされていない事柄なので、デイジーのように何も知らされていない中途半端な存在は、正直言って邪魔なのだ。
はぁ、まぁこんな事を言っても、特定の人物だけに制限かけるって訳にもいかないのよね。
気に入らないという理由だけで特定の人物を排除なんて真似はできないし、子息子女達全員を排除なんて真似も当然できない。
このパーティーには、招待状が送られた者の家族なら誰でも参加出来るとなっているので、子爵家の正当な娘であるデイジーにも当然参加出来る権利が渡っている。
本当の目的は、次期当主としてレガリアの主翼を担う子息達の交流の場として考えられてはいるが、ご令嬢達にとっては未来の花婿に自分を売り込む最高のステージ。
毎年ご令嬢達の目に見えない戦いが繰り広げられている事はある程度察して欲しい。
「そうだよね、他国からの来賓客が大勢来るガーデンパーティーは難しいかもだけど、夜会ならば外からの来賓客はほとんどいないし、今回はリコちゃんも参加するから大丈夫じゃないかなぁ」
「えぇ、今のところその方向で話は進んでいるみたいなんだけれど、問題は他にもあるのよね」
一つはアリスをどうやって夜会に連れ出すか。まぁこれに関しては真のメイドには必須だとか言って、適当に誤魔化せばいいだろうが心配事は他にもある。
アリスの髪色はとにかく目立つ。
このレガリアでは黒髪が大半を占め、貴族だけで言うならブロンドの髪を持つ者がほとんどだ。そもそも銀色の髪を持つ者はこの大陸を探してもそう多くはいだろう。
いくら国の主要貴族を招いたパーティーと言えど、アリスの秘密を知るのはごく僅か、当然家族にも伝えられていない筈なので、基本会場では私たちの誰かが常に一緒に居て守ってあげなければならない。だけど、あの可愛い容姿に綺麗に着飾ったドレス姿はまさに反則。私ならまず間違いなくお持ち帰り……コホン、声を掛けてしまうだろう。
「ミリィちゃんってアリスちゃんの事が大好きだもんね、悪い虫が付かないようにしっかりガードしなきゃ」
「ブフッ、ちょっ、いきなりなに変な事言い出すのよ」
まるで私の心を見透かしたような言葉を言われ、教室の中だというのに思わず声のトーンが高くなってしまう。
「えへへ、でも社交界には連れ出したいんだよね。守ってあげたいけど、アリスちゃんの姿を見せつけたいって、私でも思っちゃうもの。
それにあの国からの使者は今年も来ないんでしょ? 後は私たちが付いていれば大丈夫だよ」
まぁ、ルテアの言う通り私たちの誰かが常に付き添っていれば、悪い虫もデイジーのようなご令嬢も迂闊に手出しは出来ないだろうし、あの綺麗な髪を目立たないように染めるなんて考えも全くない。
それにルテアの言う通り最大の問題であるあの国からの使者は、ここ十数年お互いの国に招待し合った記録はないので、今年も我が国の聖誕祭に使者を送るような真似はしないだろう。
すでにお気づきかもしれないが、アリスの髪は他国の聖女と全く同じ髪色をしている。
これはアリスに他国の聖女の血が流れている正当な証。
ある国にとっては銀色の髪=聖女の血が流れているという認識に繋がり、もしそんな人物をレガリア王家が保護していると気づかれれば、何らかの疑惑の目で見られる可能性が出てきてしまう。
8年前、狙われたのはレガリアの次期聖女候補と言われていた姉様と、現国王である父様だった。襲ってきた賊はその場で全員死斬り捨てられた為、裏で操っていた国との関係が未だに特定されてはいないが、犯人と目的はおおよその見当はすでに付けられている。
目的はレガリア王国の次期聖女の誕生を阻止するため。聖女がいる本当の意味を知るのは各国の上層部だけなら、自ずと犯人が絞られてくる。
そして長年に渡りレガリアと敵対し続けている隣国があるとくれば、誰だって真っ先に疑う事だろう。
あの事件では、結局セリカさんとカリスさんのお陰で次期聖女は守られたが、ある意味犯人の作戦は成功していたといえる。
このレガリアでは真の聖女となるための聖痕が失われており、実質国を支えていたのは襲って来た国の聖女の血を引くセリカさん。まさか自国の現聖女の妹が、レガリアでメイドなんてしているとは思ってはいないだろう。
今はティア姉様が表立って聖女として目を引きつけているお陰で、アリスの存在はカモフラージュされているが、もし彼の国の目的がレガリアの疲弊を狙っての事ならば、まず確実にアリスも標的にされてしまう。
幸いといってよいのか、彼の国とは今でも継続的に敵対している関係、我が国の貴族達の団結力が強く、裏切りによりアリスの秘密が漏れ出す可能性は極めて低い。ならば今のうちに子息子女達にアリスの存在を認識させ、時が来れば聖女として認めさせるための準備を進めておこうというのが、上層部の考えだ。
「でもねぇ、王女や上級貴族に近づきたい貴族たちもいるでしょ? 私たち、兄様のように誰一人として決まった相手がいる訳じゃないんだから」
年若い子息達にとって私やルテア達は王家と繋がりを持てる最高の女性であり、ご令嬢達にとってはジークやアストリアはまさに最高の物件といえよう。そんな中、私たちに囲まれているアリスを見ればどうなるか、ただせさえ目立つ髪色に、もし運悪く全員がダンスなんかに出払ってしまえば、間違いなくアリスに悪い虫が付いてしまう。(断言)
今回のパーティーはあくまで顔見せ程度、それ以上の事は私が許さない。そもそもアリスが可愛いすぎるのが悪いのよ。
「ん~、そんなに心配だったらいっその事私たちが銀色の髪に染めちゃうとか? そうすれば多少は銀色の髪も誤魔化せるんじゃない?」
「なにを馬鹿な事を……」
いつものようにまたルテアが馬鹿な事言っているんだと口に出しかけ、ある事が引っかかった。
「それよ!」
「え、えぇーー!?」
そうよ、その手があった。
いるじゃない、私たちの知り合いにアリスとよく似た髪色をしている姉妹が。
まずは母様達に相談しなければならないだろうが、彼女の両親には毎年招待状が出されているので、今回から娘達が来たとしても何一つおかしくはない。
少々彼女とアリスが並ぶと私だけが他人のようで良い思いはしないし、やたらとアリスに構うので、時折私とぶつかる事も多いのだが、基本アリスを大切に思っているところは同じだろう。
「ふふふ、帰ったら早速果し状……コホン、招待状を出さなきゃね。待ってなさいリーゼ・ブラン」
そして、そろそろこんな生活にも飽き始めた頃、ようやく長かったようで短かった夏休みが終了した。
「私、今度お城で行われます社交界にデビューしますのよ」
新学期早々、教室の中央から耳障りな声が聞こえて来る。
ヴィクトリアに通う生徒の大半が、貴族の血筋か大手商会の子息子女ばかりの為、一学年のクラスはたったの二つ。残念な事にアリスを除く3人……いや幼馴染5人のうち、リコとアストリアは別のクラスになってしまったが、ルテアとジークとは一緒のクラス。
上級貴族である私たちを全員一緒にさせなかったのは、学園なりのバランスを考えてのことであろうが、そこまで配慮するならもう少し人選をしっかりしろと抗議をしたい。
「流石でございますわねデイジー様、この歳で、しかも王家主催の社交界でデビューされるなんて」
デイジーと呼ばれている子爵家のご令嬢が話しているのは、恐らく来週開催される聖誕祭の話であろう。元々社交界にデビューするのが15~16歳とも言われているので、間も無く15歳を迎えるご令嬢達にとってはそれほど珍しい事でもない。
この聖誕祭は国の誕生を祝う催しで、一年に一度のこの時期に、国を挙げて大々的に行われるお祭りで、お城では二日に渡りパーティーが開かれ、多くの貴族達が招かれる夜会と、翌日他国からの来賓や著名人などを招いたガーデーンパーティーが行われる。
もっとも、王女である私や公爵家の一員であるルテアとアストリア達には12歳の頃から参加が強制されており、侯爵家の娘であるリコには今年からの参加がすでに決まっている。
「大したことではございませんわ、子爵家の娘としては当然の事。ブルースター家の名に恥じぬよう立派に振舞って見せますわ」
まったく何が立派に振舞ってみせますわだ。
一学期に行われた学園社交界の出来事は、エスニア姉様がいるライラック家から既に詳細な情報が上がっている。どうもアリスは私たちに心配させないよう、デイジーの名前は兄様達にも口止めをしていたようだが、情報収集を担うライラック家にエスニア姉様が報告しない訳もなく、この事は既に国王である父様を始め、アリスの秘密を知る多くの主要人物に伝えられている。
「デイジーさん、どうやら夜会に来るみたいだね」
「そうみたいね」
私にだけに聞こえるよう、小さな声でルテアが話しかけてくる。
学園内にいる間、私と話す時であっても公爵家の仮面を被ってはいるが、今は近くに誰もいないという事で、小声ではあるが普段通りの口調で話しかけてくる。
「それでアリスちゃんは参加するの?」
「まだ決まっていないわ。ただ今後の事も考えると、そろそろ社交界にも馴れさせなければならないからね」
実は爵位持ちの当主限定ではあるが、アリスの存在は既に周知の事実だったりする。
例の事件の事は一般には公表されてはいないが、城に賊の潜入を許してしまった事は主要な貴族達に伝えない訳にはいかなかった事と、セリカさんを失い再び国のおかれた状況を説明する過程で、領地持ちの貴族達にはアリスの秘密が話されたと聞く。
もちろんこの事は全てアリスを守る為の処置だが、爵位持ちの当主以外は知らされていない事柄なので、デイジーのように何も知らされていない中途半端な存在は、正直言って邪魔なのだ。
はぁ、まぁこんな事を言っても、特定の人物だけに制限かけるって訳にもいかないのよね。
気に入らないという理由だけで特定の人物を排除なんて真似はできないし、子息子女達全員を排除なんて真似も当然できない。
このパーティーには、招待状が送られた者の家族なら誰でも参加出来るとなっているので、子爵家の正当な娘であるデイジーにも当然参加出来る権利が渡っている。
本当の目的は、次期当主としてレガリアの主翼を担う子息達の交流の場として考えられてはいるが、ご令嬢達にとっては未来の花婿に自分を売り込む最高のステージ。
毎年ご令嬢達の目に見えない戦いが繰り広げられている事はある程度察して欲しい。
「そうだよね、他国からの来賓客が大勢来るガーデンパーティーは難しいかもだけど、夜会ならば外からの来賓客はほとんどいないし、今回はリコちゃんも参加するから大丈夫じゃないかなぁ」
「えぇ、今のところその方向で話は進んでいるみたいなんだけれど、問題は他にもあるのよね」
一つはアリスをどうやって夜会に連れ出すか。まぁこれに関しては真のメイドには必須だとか言って、適当に誤魔化せばいいだろうが心配事は他にもある。
アリスの髪色はとにかく目立つ。
このレガリアでは黒髪が大半を占め、貴族だけで言うならブロンドの髪を持つ者がほとんどだ。そもそも銀色の髪を持つ者はこの大陸を探してもそう多くはいだろう。
いくら国の主要貴族を招いたパーティーと言えど、アリスの秘密を知るのはごく僅か、当然家族にも伝えられていない筈なので、基本会場では私たちの誰かが常に一緒に居て守ってあげなければならない。だけど、あの可愛い容姿に綺麗に着飾ったドレス姿はまさに反則。私ならまず間違いなくお持ち帰り……コホン、声を掛けてしまうだろう。
「ミリィちゃんってアリスちゃんの事が大好きだもんね、悪い虫が付かないようにしっかりガードしなきゃ」
「ブフッ、ちょっ、いきなりなに変な事言い出すのよ」
まるで私の心を見透かしたような言葉を言われ、教室の中だというのに思わず声のトーンが高くなってしまう。
「えへへ、でも社交界には連れ出したいんだよね。守ってあげたいけど、アリスちゃんの姿を見せつけたいって、私でも思っちゃうもの。
それにあの国からの使者は今年も来ないんでしょ? 後は私たちが付いていれば大丈夫だよ」
まぁ、ルテアの言う通り私たちの誰かが常に付き添っていれば、悪い虫もデイジーのようなご令嬢も迂闊に手出しは出来ないだろうし、あの綺麗な髪を目立たないように染めるなんて考えも全くない。
それにルテアの言う通り最大の問題であるあの国からの使者は、ここ十数年お互いの国に招待し合った記録はないので、今年も我が国の聖誕祭に使者を送るような真似はしないだろう。
すでにお気づきかもしれないが、アリスの髪は他国の聖女と全く同じ髪色をしている。
これはアリスに他国の聖女の血が流れている正当な証。
ある国にとっては銀色の髪=聖女の血が流れているという認識に繋がり、もしそんな人物をレガリア王家が保護していると気づかれれば、何らかの疑惑の目で見られる可能性が出てきてしまう。
8年前、狙われたのはレガリアの次期聖女候補と言われていた姉様と、現国王である父様だった。襲ってきた賊はその場で全員死斬り捨てられた為、裏で操っていた国との関係が未だに特定されてはいないが、犯人と目的はおおよその見当はすでに付けられている。
目的はレガリア王国の次期聖女の誕生を阻止するため。聖女がいる本当の意味を知るのは各国の上層部だけなら、自ずと犯人が絞られてくる。
そして長年に渡りレガリアと敵対し続けている隣国があるとくれば、誰だって真っ先に疑う事だろう。
あの事件では、結局セリカさんとカリスさんのお陰で次期聖女は守られたが、ある意味犯人の作戦は成功していたといえる。
このレガリアでは真の聖女となるための聖痕が失われており、実質国を支えていたのは襲って来た国の聖女の血を引くセリカさん。まさか自国の現聖女の妹が、レガリアでメイドなんてしているとは思ってはいないだろう。
今はティア姉様が表立って聖女として目を引きつけているお陰で、アリスの存在はカモフラージュされているが、もし彼の国の目的がレガリアの疲弊を狙っての事ならば、まず確実にアリスも標的にされてしまう。
幸いといってよいのか、彼の国とは今でも継続的に敵対している関係、我が国の貴族達の団結力が強く、裏切りによりアリスの秘密が漏れ出す可能性は極めて低い。ならば今のうちに子息子女達にアリスの存在を認識させ、時が来れば聖女として認めさせるための準備を進めておこうというのが、上層部の考えだ。
「でもねぇ、王女や上級貴族に近づきたい貴族たちもいるでしょ? 私たち、兄様のように誰一人として決まった相手がいる訳じゃないんだから」
年若い子息達にとって私やルテア達は王家と繋がりを持てる最高の女性であり、ご令嬢達にとってはジークやアストリアはまさに最高の物件といえよう。そんな中、私たちに囲まれているアリスを見ればどうなるか、ただせさえ目立つ髪色に、もし運悪く全員がダンスなんかに出払ってしまえば、間違いなくアリスに悪い虫が付いてしまう。(断言)
今回のパーティーはあくまで顔見せ程度、それ以上の事は私が許さない。そもそもアリスが可愛いすぎるのが悪いのよ。
「ん~、そんなに心配だったらいっその事私たちが銀色の髪に染めちゃうとか? そうすれば多少は銀色の髪も誤魔化せるんじゃない?」
「なにを馬鹿な事を……」
いつものようにまたルテアが馬鹿な事言っているんだと口に出しかけ、ある事が引っかかった。
「それよ!」
「え、えぇーー!?」
そうよ、その手があった。
いるじゃない、私たちの知り合いにアリスとよく似た髪色をしている姉妹が。
まずは母様達に相談しなければならないだろうが、彼女の両親には毎年招待状が出されているので、今回から娘達が来たとしても何一つおかしくはない。
少々彼女とアリスが並ぶと私だけが他人のようで良い思いはしないし、やたらとアリスに構うので、時折私とぶつかる事も多いのだが、基本アリスを大切に思っているところは同じだろう。
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