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終 章 ヴィクトリア編
第108話 悪意のロベリア
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「学友を深めるための交流パーティー?」
ロベリアたちとの試合から約1ヶ月。あれ以来随分大人しくなったドゥーベ組であったが、私たちの警戒心は未だ継続中。
まぁ、大人しくなったとは言ったけれど、ロベリアのワガママっぷりは未だ健在だし、ライナスやシオンは何かあるごとにアストリアやジークには絡んでくる。中にはロベリアがデイジーが仲良くするという、不思議な現象を目にする事もあったが概ね平和といえよう。
今の内容のどこに平和があるのよ! と思うかもしれないけれど、私やアリスに近づかなくなった事を思えば、其れなりの効果があったのだと信じてみたい。
そんな矢先にサージェンドが会長を務める生徒会へと届いたのが、ロベリア達ドゥーベ組主催によるパーティの企画書だった。
「どうも隣国からの転校生って理由から、パーティーをキッカケに学友達との交流を深めたいって事らしいけれど、これって明らかに何か裏があるわよね」
麗らかな午後の昼下がり、学園の休日を利用してのいつも女子会ならぬ秘密の会議。私たちが暮らすプライベートエリアで、ココリナが入れるお茶を楽しみながら話を続ける。
ヴィクトリア学園では学生の主張を重んじる風習があり、生徒が自主企画したイベントが度々行われる事がある。
毎年春に行われる学園社交界も、元を正せば生徒達の強い要望をもとにに生徒会が主催として始まったものだと聞いているし、私自身中等部時代にスチュワートの生徒と合同お茶会を催した事もある。
それが今回ドゥーベ組が企画し、生徒会へ提出されたという事だった。
「それで、生徒会はどう返事されるのですか?」
私の言葉にリコが代表して尋ねてくる。
本当ならばこの様な企画書が上がってきているなどと、関係のない生徒に漏らす様な事はしないのだろうが、流石にドゥーベ組が絡んでくるとなると黙っているわけにもいかず、サージェンドは学園の理事長へと報告し、国王である父様へ話しを通してから私の元へと降りてきた。
サージェンドも生徒を代表する会長だからね、直接一生徒である私へと話す事が出来なかったのだろう。
「『企画内容には問題がないから断る理由が見当たらない』だそうよ」
発案者はロベリア達だろうが、企画書を作ったのはドゥーベから連れてきた優秀な世話係の誰かであろう。
今回の編入でレガリアは住まいである屋敷を提供してはいるが、ロベリア達の身の回りの世話はドゥーベから連れてきた使用人達のみ。
本来なら屋敷まで提供する必要もないのだが、ここはある程度レガリアの手の内に収めたいのと、大切なレガリアの国民をロベリア達にこき使われてはたまったもんじゃないとの理由から、この様な取り決めでまとまったのだと聞く。
もちろんロベリア達の行動を把握するにはこちらから人間を派遣するのが一番いいのだろうが、何か問題があっては要らぬ論争になりかねないし、向こうにしても敵国の人間に囲まれての生活は安心出来ないだろうとの配慮から、連れてくる使用人の人数制限をした上で受け入れている。
まぁ、こっそり騎士が紛れていたとしても、この程度の数なら大した脅威にはならないだろうとの判断もあるそうだ。
「それで、パーティーとはどの様なものを? やはり社交界の縮小版か何かなのですか?」
一概にパーティーと言ってもただのダンスパーティーや、社交界のような料理や音楽を用意する立食パーティーなどが存在する。
さすがに学園社交界のような大規模パーティーは、準備は費用の面からも現実的ではなので、簡単なお菓子や飲み物でダンスや談笑を楽しむ簡易的なパーティーになってしまう。
本格的なパーティーをしたいなら自分のお屋敷で親しい友人を呼んでおこなえばいいだだし、談笑をしたいだけならばお茶会のレベルでも十分楽しめる。
恐らくロベリアの事だから自身の着飾った姿を見せびらかしたいとか、この前私に負けた事を気にして、自分はこんな事まで出来るのだと示したいのではないだろうか。
「大方はリコが思っている内容とそう変わりないわ。ただちょっと面白い内容が含まれていてね、そのせいで何も知らない生徒会役員からは前向きな意見が多いらしいわ」
「面白い内容、ですか?」
「えぇ」
父様に聞かされた内容にはこう書き示されていたらしい。『生徒は全員マスクを付けた仮面舞踏会』と。
ーー ロベリア達による仮面舞踏会の企画書が提出される数週間前 ーー
「まったく忌々しいわね。何が聖剣よ、あんな物がレガリアに存在するなんて聞いてないわよ」
あの試合から約一週間。ミリアリアとかいう卑怯者の罠に嵌められてからは、私のイライラは日々募っていくばかり。
編入当初は愛しのジーク様や、彼に近づくアリスとかいうチンチクリンにムカついたりもしたが、私がいま最も憎しみを抱いているのはこの私に恥をかかせたミリアリア。
せっかくジーク様に私の活躍する姿を見せ、一気に二人の中を急接近ささせるという私の計画を台無しにした上、王国最大の秘密とも言える精霊の笛まで壊してくれた。
現在ドゥーベ国に現存する精霊の笛の数はほんの僅か。過去の産物のために製造方法は失われており、その行使できる力も完成度の違いでマチマチだという不安定なもの。
今回は私の護身用にとメインと予備を合わせて2つ持ち出す事が出来たのだが、よりにもよって両方の笛が壊されてしまった。しかも家臣達からはくれぐれもレガリア側には悟られないようクギ刺されていたというのに、バレてしまった上に貴重な笛を二つも壊されてしまったのだ。
さすがにこれはキツイお説教を覚悟しないといけないといけないわね。
それもこれも全部あのミリアリアという女のせい。何が聖剣よ、何が精霊よ。私が気を失っている間にご丁寧に予備の笛まで壊してくれちゃって。
「何とかあのミリアリアという女をどうにかできないかしら」
このままでは私の次期聖女という立場も怪しくなってしまう。
それほどあの笛の存在は大きく、今回の失態に関してはお母様の激怒は回避出来ない。
何か今回のことがバレる前に、汚名を挽回する方法を用意しなければ最悪次期聖女の座がアルティオの妹の手に……
クソッ、あの聖剣が問題なのだ。何度考えても精霊の笛がない状態では太刀打ちする事が出来ずにいる。
あれ以来ミリアリアが聖剣を所持している姿は一度もないが、なぜか聖女の力を使おうとすると不思議な力に妨害されてしまう。
どうせ聖剣を勝手に持ち出して家臣達から大目玉でもくらったのだろうが、逆に聖剣を奪う事も出来なくなってしまった。
恐らく聖剣いまは王城で厳重に管理されているだろうから、現状奪う事はまず不可能。
目にしてしまったあの聖剣の威力は明らかに精霊の笛の威力を超えていた。あの聖剣はいずれドゥーベ国にも脅威となる。
精霊の笛の紛失に相手側には聖剣の存在。このまま黙っておけば楽なんだろうが、流石に笛の紛失はすぐにバレるだろうし、いつ聖剣の話がお母様達の元へと届くかわからない。
せめて聖剣だけでも奪う事が出来ればいいんだけれど。そうすれば私は精霊の笛に変わる武器を手にし、国内での価値は一気に高まる筈……
「だったら誘拐でもすればいいんじゃねぇのか?」
「えっ?」
私の何気ない独り言に、偶然その場にいたお兄様が答えてくれる。
「だから誘拐でもすればいいんじゃねぇのか? べつに敗戦国相手に気を使う事もねぇだろ?」
「でも流石に誘拐は……」
「別に構わねぇって、どうせレガリアがドゥーベに敵うわけねぇだろ? その後で王女を返して欲しかったら聖剣を寄越せって取引を持ち出せばいいんだ。そうすりゃ家臣のやつらだって納得するんじゃねぇか?」
確かに、聖剣の存在を伝えれば家臣達も焦って対策を立てなければならないだろう。その時私がすでに解決方法を手元に置いていれば?
別に命まで取ろうとしているわけじゃないんだし、ちょっと気に食わない女を軽く見下した挙句、恐怖のどん底に落とした後に聖剣と引き換えに解放する。
少々誘拐だという言葉に驚きもしたが、私の汚名も回復した上に次期聖女としての地位が確定できる。
そうよ、どうせレガリアは私の手に収まるものなのだし、少し聖剣が手元に来るのが早まるだけ。その上で王女の命まで保証してあげるんだから、レガリアは喜んで聖剣を差し出すでしょ。
「うふ、うふふふふ。お兄様、その案に乗りましたわ」
聖剣を奪えないのなら、引き渡したくなる状況へと持っていく。
危うく聖剣の存在を知らずにレガリアの女王になるところでしたわ。
「でもどうやって誘拐するんだ? 学園の外じゃ護衛がいっぱいじゃねぇか」
お兄様と二人で話していると、稽古から戻ってきたシオンが話に加わる。
確かにシオンのいう通り、さすが王女というだけあって学園の外では護衛に囲まれている。そこを少人数で襲ったとしても返り討ちにあってしまうだろう。
如何にレガリアがドゥーベ国の庇護下に置かれるとはいえ、最終決定はもう少し先になってしまうという話し、そんな中で私たちが捕らえられでもすれば反感の声が上がらないとも言い切れない。
すると確実に実行するとなれば護衛が少なく、警備が薄くなる場所となるのだが……
「学園内でいいんじゃねぇのか?」
「学園内?」
「学園内なら護衛なんてついてねぇだろ? 園内には警備兵っぽいのはいるみたいだが、あれは外からの侵入を警戒してるだけだからな。
アストリアとジークは別段いつも一緒にいるってわけでもねぇし、あの王女以外特に警戒するやつもいねぇ。ある程度油断させておけば薬かなんかで眠らせた後に馬車で運べばいいじゃねぇか? その後一気に王都を出て、ドゥーベまで馬車を走らせれば一直線だ」
「……」
頭の中でお兄様の計画内容を自分なりにシュミレート。
学園内といえでも姿を消した生徒がいればすぐにバレる。だけどその発見が遅れるようになれば? 国境沿いに検問を引かれたとしても王都内にある屋敷を捜索し、その後に急ぎ早馬を放ったとしても私たちが乗る馬車には追いつけない筈。
幸いな事にこの国は国内流通に力を入れているのか、領地と領地をつなぐ道路が整備されている。そこを馬車で全力で駆け抜ければ十分に逃げ切れるだろう。
「いけるわ、学園内でなら誘拐する事が出来る」
でもそれには学園内で行方不明になった事を遅らせる必要がある。一体どうすれば……
それから約数週間後、学園で悪意に満ちた仮面舞踏会が開かれる事となる。
ロベリアたちとの試合から約1ヶ月。あれ以来随分大人しくなったドゥーベ組であったが、私たちの警戒心は未だ継続中。
まぁ、大人しくなったとは言ったけれど、ロベリアのワガママっぷりは未だ健在だし、ライナスやシオンは何かあるごとにアストリアやジークには絡んでくる。中にはロベリアがデイジーが仲良くするという、不思議な現象を目にする事もあったが概ね平和といえよう。
今の内容のどこに平和があるのよ! と思うかもしれないけれど、私やアリスに近づかなくなった事を思えば、其れなりの効果があったのだと信じてみたい。
そんな矢先にサージェンドが会長を務める生徒会へと届いたのが、ロベリア達ドゥーベ組主催によるパーティの企画書だった。
「どうも隣国からの転校生って理由から、パーティーをキッカケに学友達との交流を深めたいって事らしいけれど、これって明らかに何か裏があるわよね」
麗らかな午後の昼下がり、学園の休日を利用してのいつも女子会ならぬ秘密の会議。私たちが暮らすプライベートエリアで、ココリナが入れるお茶を楽しみながら話を続ける。
ヴィクトリア学園では学生の主張を重んじる風習があり、生徒が自主企画したイベントが度々行われる事がある。
毎年春に行われる学園社交界も、元を正せば生徒達の強い要望をもとにに生徒会が主催として始まったものだと聞いているし、私自身中等部時代にスチュワートの生徒と合同お茶会を催した事もある。
それが今回ドゥーベ組が企画し、生徒会へ提出されたという事だった。
「それで、生徒会はどう返事されるのですか?」
私の言葉にリコが代表して尋ねてくる。
本当ならばこの様な企画書が上がってきているなどと、関係のない生徒に漏らす様な事はしないのだろうが、流石にドゥーベ組が絡んでくるとなると黙っているわけにもいかず、サージェンドは学園の理事長へと報告し、国王である父様へ話しを通してから私の元へと降りてきた。
サージェンドも生徒を代表する会長だからね、直接一生徒である私へと話す事が出来なかったのだろう。
「『企画内容には問題がないから断る理由が見当たらない』だそうよ」
発案者はロベリア達だろうが、企画書を作ったのはドゥーベから連れてきた優秀な世話係の誰かであろう。
今回の編入でレガリアは住まいである屋敷を提供してはいるが、ロベリア達の身の回りの世話はドゥーベから連れてきた使用人達のみ。
本来なら屋敷まで提供する必要もないのだが、ここはある程度レガリアの手の内に収めたいのと、大切なレガリアの国民をロベリア達にこき使われてはたまったもんじゃないとの理由から、この様な取り決めでまとまったのだと聞く。
もちろんロベリア達の行動を把握するにはこちらから人間を派遣するのが一番いいのだろうが、何か問題があっては要らぬ論争になりかねないし、向こうにしても敵国の人間に囲まれての生活は安心出来ないだろうとの配慮から、連れてくる使用人の人数制限をした上で受け入れている。
まぁ、こっそり騎士が紛れていたとしても、この程度の数なら大した脅威にはならないだろうとの判断もあるそうだ。
「それで、パーティーとはどの様なものを? やはり社交界の縮小版か何かなのですか?」
一概にパーティーと言ってもただのダンスパーティーや、社交界のような料理や音楽を用意する立食パーティーなどが存在する。
さすがに学園社交界のような大規模パーティーは、準備は費用の面からも現実的ではなので、簡単なお菓子や飲み物でダンスや談笑を楽しむ簡易的なパーティーになってしまう。
本格的なパーティーをしたいなら自分のお屋敷で親しい友人を呼んでおこなえばいいだだし、談笑をしたいだけならばお茶会のレベルでも十分楽しめる。
恐らくロベリアの事だから自身の着飾った姿を見せびらかしたいとか、この前私に負けた事を気にして、自分はこんな事まで出来るのだと示したいのではないだろうか。
「大方はリコが思っている内容とそう変わりないわ。ただちょっと面白い内容が含まれていてね、そのせいで何も知らない生徒会役員からは前向きな意見が多いらしいわ」
「面白い内容、ですか?」
「えぇ」
父様に聞かされた内容にはこう書き示されていたらしい。『生徒は全員マスクを付けた仮面舞踏会』と。
ーー ロベリア達による仮面舞踏会の企画書が提出される数週間前 ーー
「まったく忌々しいわね。何が聖剣よ、あんな物がレガリアに存在するなんて聞いてないわよ」
あの試合から約一週間。ミリアリアとかいう卑怯者の罠に嵌められてからは、私のイライラは日々募っていくばかり。
編入当初は愛しのジーク様や、彼に近づくアリスとかいうチンチクリンにムカついたりもしたが、私がいま最も憎しみを抱いているのはこの私に恥をかかせたミリアリア。
せっかくジーク様に私の活躍する姿を見せ、一気に二人の中を急接近ささせるという私の計画を台無しにした上、王国最大の秘密とも言える精霊の笛まで壊してくれた。
現在ドゥーベ国に現存する精霊の笛の数はほんの僅か。過去の産物のために製造方法は失われており、その行使できる力も完成度の違いでマチマチだという不安定なもの。
今回は私の護身用にとメインと予備を合わせて2つ持ち出す事が出来たのだが、よりにもよって両方の笛が壊されてしまった。しかも家臣達からはくれぐれもレガリア側には悟られないようクギ刺されていたというのに、バレてしまった上に貴重な笛を二つも壊されてしまったのだ。
さすがにこれはキツイお説教を覚悟しないといけないといけないわね。
それもこれも全部あのミリアリアという女のせい。何が聖剣よ、何が精霊よ。私が気を失っている間にご丁寧に予備の笛まで壊してくれちゃって。
「何とかあのミリアリアという女をどうにかできないかしら」
このままでは私の次期聖女という立場も怪しくなってしまう。
それほどあの笛の存在は大きく、今回の失態に関してはお母様の激怒は回避出来ない。
何か今回のことがバレる前に、汚名を挽回する方法を用意しなければ最悪次期聖女の座がアルティオの妹の手に……
クソッ、あの聖剣が問題なのだ。何度考えても精霊の笛がない状態では太刀打ちする事が出来ずにいる。
あれ以来ミリアリアが聖剣を所持している姿は一度もないが、なぜか聖女の力を使おうとすると不思議な力に妨害されてしまう。
どうせ聖剣を勝手に持ち出して家臣達から大目玉でもくらったのだろうが、逆に聖剣を奪う事も出来なくなってしまった。
恐らく聖剣いまは王城で厳重に管理されているだろうから、現状奪う事はまず不可能。
目にしてしまったあの聖剣の威力は明らかに精霊の笛の威力を超えていた。あの聖剣はいずれドゥーベ国にも脅威となる。
精霊の笛の紛失に相手側には聖剣の存在。このまま黙っておけば楽なんだろうが、流石に笛の紛失はすぐにバレるだろうし、いつ聖剣の話がお母様達の元へと届くかわからない。
せめて聖剣だけでも奪う事が出来ればいいんだけれど。そうすれば私は精霊の笛に変わる武器を手にし、国内での価値は一気に高まる筈……
「だったら誘拐でもすればいいんじゃねぇのか?」
「えっ?」
私の何気ない独り言に、偶然その場にいたお兄様が答えてくれる。
「だから誘拐でもすればいいんじゃねぇのか? べつに敗戦国相手に気を使う事もねぇだろ?」
「でも流石に誘拐は……」
「別に構わねぇって、どうせレガリアがドゥーベに敵うわけねぇだろ? その後で王女を返して欲しかったら聖剣を寄越せって取引を持ち出せばいいんだ。そうすりゃ家臣のやつらだって納得するんじゃねぇか?」
確かに、聖剣の存在を伝えれば家臣達も焦って対策を立てなければならないだろう。その時私がすでに解決方法を手元に置いていれば?
別に命まで取ろうとしているわけじゃないんだし、ちょっと気に食わない女を軽く見下した挙句、恐怖のどん底に落とした後に聖剣と引き換えに解放する。
少々誘拐だという言葉に驚きもしたが、私の汚名も回復した上に次期聖女としての地位が確定できる。
そうよ、どうせレガリアは私の手に収まるものなのだし、少し聖剣が手元に来るのが早まるだけ。その上で王女の命まで保証してあげるんだから、レガリアは喜んで聖剣を差し出すでしょ。
「うふ、うふふふふ。お兄様、その案に乗りましたわ」
聖剣を奪えないのなら、引き渡したくなる状況へと持っていく。
危うく聖剣の存在を知らずにレガリアの女王になるところでしたわ。
「でもどうやって誘拐するんだ? 学園の外じゃ護衛がいっぱいじゃねぇか」
お兄様と二人で話していると、稽古から戻ってきたシオンが話に加わる。
確かにシオンのいう通り、さすが王女というだけあって学園の外では護衛に囲まれている。そこを少人数で襲ったとしても返り討ちにあってしまうだろう。
如何にレガリアがドゥーベ国の庇護下に置かれるとはいえ、最終決定はもう少し先になってしまうという話し、そんな中で私たちが捕らえられでもすれば反感の声が上がらないとも言い切れない。
すると確実に実行するとなれば護衛が少なく、警備が薄くなる場所となるのだが……
「学園内でいいんじゃねぇのか?」
「学園内?」
「学園内なら護衛なんてついてねぇだろ? 園内には警備兵っぽいのはいるみたいだが、あれは外からの侵入を警戒してるだけだからな。
アストリアとジークは別段いつも一緒にいるってわけでもねぇし、あの王女以外特に警戒するやつもいねぇ。ある程度油断させておけば薬かなんかで眠らせた後に馬車で運べばいいじゃねぇか? その後一気に王都を出て、ドゥーベまで馬車を走らせれば一直線だ」
「……」
頭の中でお兄様の計画内容を自分なりにシュミレート。
学園内といえでも姿を消した生徒がいればすぐにバレる。だけどその発見が遅れるようになれば? 国境沿いに検問を引かれたとしても王都内にある屋敷を捜索し、その後に急ぎ早馬を放ったとしても私たちが乗る馬車には追いつけない筈。
幸いな事にこの国は国内流通に力を入れているのか、領地と領地をつなぐ道路が整備されている。そこを馬車で全力で駆け抜ければ十分に逃げ切れるだろう。
「いけるわ、学園内でなら誘拐する事が出来る」
でもそれには学園内で行方不明になった事を遅らせる必要がある。一体どうすれば……
それから約数週間後、学園で悪意に満ちた仮面舞踏会が開かれる事となる。
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