16 / 30
夜市デートの甘い罠
しおりを挟む
「?????」
葉洲はきょとんとした表情で林浅月を見た。
いやいや、お前が俺を誘ったんだろ?
なんで「下手の横好き」扱いされてるんだ?
完全に立場逆転じゃないか!
とはいえ、確かに腕前は林浅月に敵わない。彼女に「下手」と言われるのも仕方ない。
それでも二人は午後6時から8時過ぎまで、ひたすらゲームに没頭していた。
「そろそろ何か食べに行かない?」
「ええ」
[あら、夢中になりすぎて時間忘れてたわ!]
林浅月は軽く頷き、PCを閉じて葉洲と一緒に出かけた。
......
近所の夜市は程よい賑わいで、地元住民に人気のスポットだった。
葉洲と並んで歩く林浅月への視線率は99%。
人混みが苦手な彼女は思わず葉洲の背後に隠れた。
[ぎゃー!こんなに人がいるなんて...帰りたい!]
[ダメダメ、林浅月!みんな白菜と大根だと思いなさい!ただの野菜があなたを見てるだけよ]
[こんなことで挫けてたら、葉洲に軽く見られちゃう!]
葉洲は前方で林浅月の心の声を聞きながら歩いていた。
彼女がこんなに人混みを苦手としているとは知らなかった。
「人が苦手なら、もっと空いてるとこ行く?」
「結構です」
林浅月は無表情で答えたが、内心では悶えていた。
[夜市って初めて...なんかいい匂い!]
[父が「ジャンクフード」って禁止してた揚げ物や焼き鳥だらけ...食べてみたい!]
[一度くらいなら...死なないよね?]
葉洲:(内心)は???
そんなんで死ぬなら、とっくに俺は死んでるわ。
林浅月の本心を知り、葉洲は場所を変えるのをやめた。
よく利用する屋台に着席し、注文を始める。
「親方、焼き筋10本、牛肉串10本、イカ焼き20本、それと...」
林浅月が表情を変える:「そんなに要りません。不健康ですから、一口だけ頂きます」
「はは、信じない」
「どういう意味ですか?」
「本当に一口だけですから」
10分後――
林浅月の前に数十本の串が積み上がっていた。
注文したほとんどを彼女一人で平らげたのだ。
「一口...じゃなくて『億口』だったな?」
葉洲にからかわれ、林浅月はきりっと姿勢を正した。
自分がさっき言ったことを思い出し、頬を染める。
[葉洲はこんな美味しいものを食べてたのか!]
[うぅ...思わず全部食べちゃった...]
決意を固めたように、林浅月が真っ直ぐ葉洲を見つめる。
「あの...もう少し注文してもいいですか?」
「ん?」
少女の清らかな目に切なさが浮かんでいるのを見て、葉洲は迷わず追加注文した。
「親方、もう30本お願い!」
「はいよ~!」
常連の葉洲が初めて連れてきた超絶美少女に、店主はにんまり。
「おお、葉くん、ついに彼女できたか!」
「!?」
葉洲は喉の肉を詰まらせそうになる。
一方林浅月の心:
[もっと褒めて!店主さん最高!]
「お嬢さんめっちゃ可愛いやん!葉くんもイケメンやし、お似合いやで~」
「違いますって!ただの同級生です!」
店主は悟ったように笑う:
「わかってるわかってる。今日は同級生、明日は妹、明後日は恋人やろ?」
葉洲:(内心)店主よ...
串焼き屋のくせに、どこでそんなフレーズ覚えた?
店主はにやにやしながら去っていく。
葉洲は慌てて釈明:
「林さん、店主のジョークですから...」
「ええ」
表情は変わらないが、林浅月の耳は真っ赤。
[好きな人は心に置いておくもの...]
[いや、心だけじゃ足りない。いつかベッドの上に置かなきゃ]
葉洲の目がピクピクする。
内心で偉そうなこと言って...実際にやってみろよ。
光る腕時計、見せてやるからな!
「...早く食べましょう、冷めますよ」
葉洲は串を勧めながら、林浅月の意外な一面を発見していた。
ネットだけでなく、夜市や屋台すら経験がないらしい。
普通の生活ですら、彼女にとっては新鮮な体験なのだ。
彼女の心の声から、父親による過剰な保護下にあることがうかがえた。
もしかすると...
お金持ちだって、決して自由じゃないのかもしれない。
22時近く、李年が静かに二人の元に現れた。
「葉さん、そろそろお嬢様をお連れください。酔っ払いも出てきますので」
「あ、そうですね」
だが林浅月は微動だにしない。
「まだ食べ終わってません」
[李叔、いつも邪魔する!]
葉洲はため息をつく。
「李さんの言う通りだよ。また今度にしよう」
「いいです。でもあれを買ってください」
林浅月が指さした先には――綿菓子の屋台があった。
葉洲はきょとんとした表情で林浅月を見た。
いやいや、お前が俺を誘ったんだろ?
なんで「下手の横好き」扱いされてるんだ?
完全に立場逆転じゃないか!
とはいえ、確かに腕前は林浅月に敵わない。彼女に「下手」と言われるのも仕方ない。
それでも二人は午後6時から8時過ぎまで、ひたすらゲームに没頭していた。
「そろそろ何か食べに行かない?」
「ええ」
[あら、夢中になりすぎて時間忘れてたわ!]
林浅月は軽く頷き、PCを閉じて葉洲と一緒に出かけた。
......
近所の夜市は程よい賑わいで、地元住民に人気のスポットだった。
葉洲と並んで歩く林浅月への視線率は99%。
人混みが苦手な彼女は思わず葉洲の背後に隠れた。
[ぎゃー!こんなに人がいるなんて...帰りたい!]
[ダメダメ、林浅月!みんな白菜と大根だと思いなさい!ただの野菜があなたを見てるだけよ]
[こんなことで挫けてたら、葉洲に軽く見られちゃう!]
葉洲は前方で林浅月の心の声を聞きながら歩いていた。
彼女がこんなに人混みを苦手としているとは知らなかった。
「人が苦手なら、もっと空いてるとこ行く?」
「結構です」
林浅月は無表情で答えたが、内心では悶えていた。
[夜市って初めて...なんかいい匂い!]
[父が「ジャンクフード」って禁止してた揚げ物や焼き鳥だらけ...食べてみたい!]
[一度くらいなら...死なないよね?]
葉洲:(内心)は???
そんなんで死ぬなら、とっくに俺は死んでるわ。
林浅月の本心を知り、葉洲は場所を変えるのをやめた。
よく利用する屋台に着席し、注文を始める。
「親方、焼き筋10本、牛肉串10本、イカ焼き20本、それと...」
林浅月が表情を変える:「そんなに要りません。不健康ですから、一口だけ頂きます」
「はは、信じない」
「どういう意味ですか?」
「本当に一口だけですから」
10分後――
林浅月の前に数十本の串が積み上がっていた。
注文したほとんどを彼女一人で平らげたのだ。
「一口...じゃなくて『億口』だったな?」
葉洲にからかわれ、林浅月はきりっと姿勢を正した。
自分がさっき言ったことを思い出し、頬を染める。
[葉洲はこんな美味しいものを食べてたのか!]
[うぅ...思わず全部食べちゃった...]
決意を固めたように、林浅月が真っ直ぐ葉洲を見つめる。
「あの...もう少し注文してもいいですか?」
「ん?」
少女の清らかな目に切なさが浮かんでいるのを見て、葉洲は迷わず追加注文した。
「親方、もう30本お願い!」
「はいよ~!」
常連の葉洲が初めて連れてきた超絶美少女に、店主はにんまり。
「おお、葉くん、ついに彼女できたか!」
「!?」
葉洲は喉の肉を詰まらせそうになる。
一方林浅月の心:
[もっと褒めて!店主さん最高!]
「お嬢さんめっちゃ可愛いやん!葉くんもイケメンやし、お似合いやで~」
「違いますって!ただの同級生です!」
店主は悟ったように笑う:
「わかってるわかってる。今日は同級生、明日は妹、明後日は恋人やろ?」
葉洲:(内心)店主よ...
串焼き屋のくせに、どこでそんなフレーズ覚えた?
店主はにやにやしながら去っていく。
葉洲は慌てて釈明:
「林さん、店主のジョークですから...」
「ええ」
表情は変わらないが、林浅月の耳は真っ赤。
[好きな人は心に置いておくもの...]
[いや、心だけじゃ足りない。いつかベッドの上に置かなきゃ]
葉洲の目がピクピクする。
内心で偉そうなこと言って...実際にやってみろよ。
光る腕時計、見せてやるからな!
「...早く食べましょう、冷めますよ」
葉洲は串を勧めながら、林浅月の意外な一面を発見していた。
ネットだけでなく、夜市や屋台すら経験がないらしい。
普通の生活ですら、彼女にとっては新鮮な体験なのだ。
彼女の心の声から、父親による過剰な保護下にあることがうかがえた。
もしかすると...
お金持ちだって、決して自由じゃないのかもしれない。
22時近く、李年が静かに二人の元に現れた。
「葉さん、そろそろお嬢様をお連れください。酔っ払いも出てきますので」
「あ、そうですね」
だが林浅月は微動だにしない。
「まだ食べ終わってません」
[李叔、いつも邪魔する!]
葉洲はため息をつく。
「李さんの言う通りだよ。また今度にしよう」
「いいです。でもあれを買ってください」
林浅月が指さした先には――綿菓子の屋台があった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる