学園のアイドルが突然「猫の後ろ宙返り、見ない?」って聞いてきた!?

赤青

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高冷校花のゲーム誘惑

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「この78元のガラケーでいいや。受験まではこれで十分だ」
熊凱は特大ボタン付きの老人向け携帯を選んだ。
まるで若さのうちから老成したかのようだった。

「阿洲の番号登録完了!さあ行くぞ!」
熊凱は葉洲の肩を抱きながら宣言した。
「陳汐にキレた記念と、姨母(いば)さんからの解放祝いで、今日は俺がおごる!」

「まあ、屋台で十分だ。体育特待の試験も終わったんだから、生活費減ってるだろ?」
熊凱は照れ笑いした。
「はは...実際かなり厳しいんだよな」

結局二人は夜露の屋台で食事を済ませ、それぞれ帰路についた。

次の二日間、葉洲はどこにも出かけず、ひたすら家で勉強に没頭した。
外の騒音など一切気にしない。

最終日の午後。
最後の問題集を終えた葉洲は大きく伸びをして、ふと寂しげな表情になった。

普通の家庭ならこの時期、親が「無理するな」「頑張ったらそれでいい」と励まし、栄養たっぷりの料理を作ってくれるものだ。
しかし葉洲にはそんな経験がなかった。

表向きは平静を装っていても、毎晩帰宅時に見る明かりの灯った窓々――
その一つも自分を待つ灯りではないと気づくたび、孤独が彼をむしばんでいく。
誰かに気にかけてほしい、愛されてみたい。

「ピンポーン――」

突然の呼び鈴が沈んだ空気を破った。
ドアを開けると、そこには林浅月が立っていた。

今日の彼女は淡いベージュのロングスカートに白いブラウスという組み合わせ。
高冷な雰囲気を保ちつつ、少女らしい柔らかさを加えた装いだった。

葉洲は思わず見とれ、声も出せなかった。
林浅月の目に一抹の得意が浮かぶ。

[よしよし、今日のコーデ効果バツグンね]
[葉洲君がもう夢中じゃない!早く私のものになりなさい]

「葉洲、今忙しい?」
「い、いや」
珍しく微笑む林浅月。
「じゃあ私の家で『Fireboy and Watergirl』やらない?」

「は?」
葉洲は頭が混乱した。
まさかあの高冷な林浅月が、ブラウザゲームに誘ってくるとは!

「その...『Fireboy and Watergirl』?」
「ええ」
彼女は真顔で頷いた。

[ううん、葉洲の反応イマイチかしら]
[でも一緒に遊べるよう、わざわざ李叔にPCを用意してもらったのに...]

林浅月の真剣な表情に、葉洲は断れなくなった。
仕方ない、せっかく覚えたゲームなんだから付き合うか。

「わかったよ」

二度目となる林浅月の家は、前回と様変わりしていた。
超高級家具が並ぶリビングの一角には、最新式のゲーミングPCが鎮座している。

「マジか...」
「RTX4090Dにi9-14900K...こんなスペックでブラウザゲームって...」
「GPUが風邪ひくレベルだぞ」

葉洲のツッコミが止まらない。
まあ、お金持ちの道楽か。

林浅月はすでにPCの前に座り、隣の席を軽く叩いた。
「始めましょうか?」
[早くきてよ葉洲、待ちきれないわ]
[早く早く、あなたと...ゲームがしたくてたまらないの]

葉洲は苦笑いしながら隣に座った。
こうして、奇妙な光景が生まれた――

18歳の高校生二人が、数万円もするハイスペックPCで無料ブラウザゲームに興じるのである。

至近距離で肩を並べ、一つのキーボードを共有するため、葉洲は林浅月の甘い香りを感じ、時折触れる肌の柔らかさに胸を躍らせた。

しかしすぐに違和感を覚える。
接触を避けようと端によっていたのに、なぜか頻繁に触れ合うのだ。

[わあっ、葉洲の肌って思ったよりすべすべ]
[熊凱みたいに体育科に行かなくてよかった。あの黒い肌じゃ...]
[でも体育科ならバスケ部で、ユニフォーム脱ぐところが見れたかも...ふふふ]

林浅月の思考に葉洲は戦慄した。
彼女のターゲットにならなくて正解だった。

「あの...林さん、これ以上詰め寄られたら椅子から落ちますよ」
「え?ご、ごめんなさい」

ハッと我に返った林浅月は頬を染め、ようやく距離を取った。

ゲームが再開すると、林浅月は驚異的な適性を見せた。
一方葉洲は後半のステージで苦戦し、何度も詰まってしまう。

「葉洲、もっと早くジャンプして」
「そっちじゃないわ」
「葉洲、不器用ね」
「またミスって...下手の横好きだこと」

......
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