学園のアイドルが突然「猫の後ろ宙返り、見ない?」って聞いてきた!?

赤青

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逆ギレ校花の大誤算

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「?????」
葉洲の言葉に、陳汐の笑顔は一瞬で凍りついた。
蘇妙妙も同じく表情を硬直させた。

「笑顔の保存法則」によれば、笑いは消えることなく、ただ他の人の顔に移動するものだ。
例えば......
今まさに爆笑している熊凱のように。

「マジでwwwwww!」
「阿洲、さっきはビックリしたぜ。あれ彼女たちへのツッコミだったのかよ」

陳汐と蘇妙妙は完全に呆然とした。
熊凱の反応がなければ、自分の耳を疑っていただろう。
葉洲の「妄想乙」が陳汐に向けられた言葉だなんて!
彼、頭おかしくなったのか!

高校入学以来、無条件で彼女の用事をこなし、時には責任まで肩代わりしてきた葉洲が、今になってそんな汚い言葉を?
いや、きっと冗談に違いない!

「葉洲、冗談はやめて。早くあの時計買ってよ。本当に欲しいんだから、もうすぐ閉店しちゃうわ」
「欲しいからって俺が買わなきゃいけないの?」
葉洲は淡々と言い放つ。
「金は一銭も出せないが、10分で金を稼ぐ方法なら教えてやる」
「...どんな方法?」
陳汐が反射的に聞き返す。
葉洲は出入口を行き交う人々を指さした。
「ほら、あそこで器持って通行人に金乞いすればすぐ稼げる」
「それってホームレスじゃない!」
陳汐の顔に怒色が浮かぶ。
すると葉洲は涼しい顔で一言。
「じゃあいきなり買えと要求するのも乞食と同然だろ!」

陳汐は焦った。自分が乞食だなんて!
反論しようとしたが、言葉が出てこない。
よく考えれば...葉洲の言い分は...
正しかった!?
だが校花である彼女が間違いを認めるはずもない。
彼女は常に正しく、たとえ間違っていても正しいのだ!

「とにかく今日あの時計買ってよ!でなきゃ二度と会わないから!」
「それは助かる。約束だな」
葉洲の目が輝いた。
お嬢様育ちの陳汐など、十万八千里離れていたい存在だ。
これまで彼女の元へ通ったのは、姨母(いぼ)の強制によるもの。
行かなければ生活費を止められていたからだ。
だが高校卒業を控えた今、もはや姨母の脅しも陳汐との滑稽な関係も必要ない!

「葉洲っ!」
陳汐は悔しさのあまり足を踏み鳴らし、顔を真っ赤にした。
蘇妙妙と熊凱の前で恥をかかされるなんて、夢にも思わなかった。

「熊凱、携帯買いに行くぞ」
「あ、ああ!」
熊凱は葉洲の強烈な反撃に呆然としながら、慌てて後を追った。

陳汐は激しい動悸に襲われ、目尻を赤く染めていた。
やがて大粒の涙が「ぽろぽろ」と零れ落ちる。
それを見た蘇妙妙はようやく我に返り、叫んだ。
「葉洲!頭おかしいの?陳汐にそんな態度取れるなんて...すぐ戻って謝りなさいよ!」

大きな声に周囲の視線が集まる。
葉洲は軽く手を振る。
「大丈夫大丈夫、気にしないでください。ああいうの、だいたいお墓参り不足なんですよ」

......

「阿洲、今日はどうしたんだ?陳汐たちにキレるのは爽快だったけど、前はあんなに優しかったじゃん」
少し離れたところで、熊凱が不思議そうに尋ねた。
葉洲は平静を保ったまま答える。
「姨母が陳汐の両親に媚びへつらってたからだ。生活費を止められないように、仕方なくやってた」
「じゃあ今日は...」
「受験まであと1ヶ月余り。来月分の生活費も貯まったし、大学に入れば自分で稼げる。もう他人の顔色を窺う必要はない」

熊凱は目を見開いた。
「阿洲...姨母や陳汐に耐えてるのは、反抗できないからだと思ってた。まさかこんなに長い間、わざと我慢してたなんて!」
「じゃないと路頭に迷うだろ?」
葉洲は苦笑いした。
熊凱は親指を立てた。
「スゲェ!」

葉洲はショッピングモールの大きな窓から外を見つめた。
十数年もの間心を押しつぶしていた重しが、ようやく取り除かれた。
これまでにない解放感。

一方その時――
陳汐は振り向きもせず去って行く葉洲の背中を見ながら、涙を「ぽたぽた」と落としていた。
心底傷ついた気分だった。

「妙妙...葉洲があんな態度取っていい権利あるの?ううう...」
「私が時計を買ってほしいって言ったことはさておき、彼にも非があると思わない?」

蘇妙妙が慰めの言葉をかける前に、陳汐の携帯が鳴った。
ようやく母親から折り返しの電話だ。
陳汐は泣きじゃくりながら受話器を取った。
「ううう、お母さん...!」
「汐汐?どうしたの?誰かにいじめられたの?」
楊秀婉は娘の泣き声に慌てた。
「汐汐、さっき趙蘭おばさんと話してて電話に出られなかったの。何があったの?」

趙蘭おばさん?
母親が葉洲の姨母と一緒にいると知り、陳汐の涙はさらに溢れた。
「ううう...葉洲がいじめたの...私、お買い物で少しお金足りなくて、葉洲に会ったから借りようとしたら...断られるだけじゃなくて、罵られたの...」

「葉洲が?!」
楊秀婉はスピーカーモードにしていたため、傍らの趙蘭もこの会話を聞いていた。
趙蘭は愕然とした表情で言った。
「汐汐ちゃん、趙蘭おばさんよ。きっと何か誤解があるわ。葉洲はいつもあなたに優しかったじゃない」

「でも葉洲はそうしたの!私のこと乞食みたいだって...ううう...」

それを聞いた楊秀婉の顔は一気に険しくなった。
趙蘭を冷たい視線で睨みつけながら言った。
「趙蘭さん、葉洲は最近どういう風の吹き回しですの?」
「そ、それは...楊主任、どうかお怒りにならずに。葉洲は汐汐ちゃんにずっとよくしてきた子です。きっと何か誤解があるはず...」

趙蘭はへりくだりながら謝罪したが、心の中では葉洲をこっぴどく罵っていた。
ようやく楊秀婉に夫の仕事を世話してもらえるところだったのに、葉洲のせいで台無しにされかねない!

楊秀婉は冷たく言い放った。
「早急に対処してください。受験目前です。汐汐の精神状態に影響があってはなりません」
「はいはい、承知しました。では先ほどの主人の件は...」
「その話は一旦保留です。汐汐の気持ちが最優先です」
「かしこまりました...」

趙蘭は楊秀婉の家を出ると、すぐに夫に電話した。
怒りに震える声で叫んだ。
「陳国正!今すぐ北安行きのチケットを取れ!葉洲の小僧、生かしておけん!!!」
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