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洲月党
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「アシュウ、これ……陳汐からの朝ごはんだけど、食べるつもり?」
「君にあげるよ、食べたい?」
熊凱は即座に首をぶんぶん振った。
「陳汐のT0級のあの顔思い出しただけで、もう無理。飯が喉を通らん、マジで吐きそう!」
「じゃ、終わりだな。俺も無理。」
葉洲は机の上の朝食を一瞥しただけで、まったく食欲がわかなかった。
もっとも、彼が食べたくない理由は熊凱とはちょっと違う。
タダ飯、しかもそこそこ豪華な朝食。ふつうなら遠慮なく食べる。でも、今日だけは……ちょっと怖くて食えなかった。
だって、陳汐がその朝ごはんを置いた瞬間から──
林浅月の心の声が、止まらなかったのだ。
【陳汐!?なんであの女が葉洲のとこ来てるの!?またうちの小葉洲こき使う気!?】
【葉洲……あいつは悪い女なんだってばぁぁ!もう関わらないでえええ!】
【しかも!あの女、朝ごはん持ってきた!?図々しい!!わたしまだ葉洲に朝ごはんなんて渡したことないのにっ!】
【葉洲!悪女の朝ごはんなんて食べたら……食べたら……もう森の氷と火ゲーム一緒にやらないんだからっ!!】
【うぅ……嘘だよ、ほんとは嘘……】
【林浅月、あんたほんとチョロすぎ。たとえ葉洲が悪女の朝ごはん食べたって、絶対ゲーム一緒にやっちゃうじゃん……】
あまりの心声の情報量に、葉洲は笑いを堪えるのに必死だった。
口では何も言えないくせに、心の中でも威圧しきれないとは……。
林校花(=林浅月)、君の「素質」……もっと落としていいよ。
熊凱は葉洲が食べる気ないのを見て、ゴミ箱をチラッと見ながらおそるおそる提案した。
「じゃあ……捨てる?」
「『誰知盤中餐、粒粒皆辛苦』、この意味もう忘れたか?『憫農』百回書き取りな。」
「いやいやいや、お前も食べないじゃん。俺も食べない。じゃあ、捨てないでどうすんだよ?」
「俺、食う!!」
唐突に右護法・白炫明がどこからともなく現れた。
彼の目は、葉洲の机の朝食に釘付け。目が緑に光ってた(物理的じゃない)。
「熊兄、洲兄!もしこの朝ごはん要らないなら、俺にくれ!最近生活費全部ゲームに課金しちまって、これ昼飯にもできるし!」
「……まあ、いいか。あげるよ。」
「義父・葉洲さま!義子・白炫明、感謝の礼を捧げます!」
「……人中呂布、馬中赤兎、方天画戟、で、義父ブッ刺すつもりか?」
「へへっ!ありがと、洲兄~!」
白炫明は嬉々として朝食を持ち、ぴょんぴょん跳ねながら去っていった。
それはもう、幸せそうに。
そして──
前の席に座っていた林浅月は、その様子を見て目を細めた。
【やっぱり……小葉洲は絶対あんな女の朝ごはんなんて食べないって信じてた!】
【白炫明、君はいい奴だ。今日から“洲月党”に入党を許可する!】
葉洲は頭を抱えた。
……マジかよ。
ネットに染まるって、こういうことか。
まさか「◯◯党」とか「CP名」とか、そういう用語まで使いこなしてるとは……。
お昼休み。クラスの皆はほぼ帰ったあと──
葉洲はペンを置き、机に突っ伏していた熊凱を軽く叩いて起こした。
「昼飯の時間だ。」
「ん~~……」
熊凱は伸びをしながら尋ねた。
「アシュウ、今日昼は何食べる?」
「今日は学食にしようぜ。最近、盛りつけのおばちゃんの手が震えなくなったって噂だ。」
「いいね、ちょうど学校の糖酢豚が恋しかったとこ。」
二人が立ち上がったそのとき──
林浅月が、まるで音もなく彼らの前に現れた。
葉洲は少し驚いた。
近所になってから、彼女がクラスで自分に話しかけてきたのは初めてだった。
「……どうした?」
「聞こえちゃった。学食行くんでしょ?」
「うん。」
林浅月は少し唇を噛み、視線を窓の外に向けながら、声を低くした。
「……私も、行きたい。」
【林浅月、よく言った!今日の君は勇者だ!!】
【みんな学食うまいって言ってたし、今回は絶対食べてみたい!】
【葉洲が一緒なら、前みたいに門まで行って引き返すことはないよね……!】
「!?!?」
熊凱は目をむいた。
林浅月が、葉洲と一緒に学食行きたいって言っただと!?
そんなバカな。
大劉老師の新作まだ出てないだろ? これは一体なんのSFなの!?
でも……驚きの後にやってくるのは、親友への信頼。
熊凱は軽く咳払いして言った。
「林校花。アシュウが昨日、君のマイバッハに乗せてもらったのは、ご近所だからだ。
でも今日は学食だぞ? 他の男子が見たら、アシュウ、絶対『男子暗殺リスト』入りだ。
林校花……君も、二人の関係がバレたくないだろ?」
「……そうなの?」
林浅月は葉洲の顔を見つめた。声には隠しきれない落胆。
彼女が本当はずっと行きたかったのに、学食の人混みに負けて、何度も断念したのを、葉洲は思い出す。
だから、彼は笑って言った。
「……そんなわけないでしょ。」
「熊凱のくだらない妄想なんて聞くな。行きたいなら一緒に行こう。
確か、君が転校してからまだ一度も学食行ったことなかったよな? 今日はチャンスだ。」
「……ありがとう。」
林浅月の瞳が、キラキラと輝いた。
【やったやったーっ!】
【葉洲、最高……!】
【ふん!熊凱、この筋肉脳の黒たまご!絶対お前には『洲月党』のCPカードは配らないんだから!】
葉洲は心の中で親指を立てた。
よしよし。熊凱、お前……党籍剥奪な。
熊凱は苦虫を噛み潰したような顔で言った。
「アシュウ……昨日マイバッハ乗ったのは、自分の限界を試すためって言ってたよな?まさか今度は……」
「もちろん違うさ。でも昨晩、自分の限界を試して分かったことがある。」
「……なに?」
「俺の限界、マリアナ海溝より深かった。」
「????」
熊凱、顔真っ赤。
「ちょっ、で、お前ら何の関係だって一緒に飯食うんだよっ!?」
林浅月は、ふっとアゴを上げた。
「ご近所同士でご飯食べちゃダメって法律、あったっけ?」
「……ない。」
熊凱は完全に論破された。仕方なく林浅月を連れていくことに。
口には出さずとも、心の中では超嫉妬していた。
「林浅月……この策士め……もう、寵愛を笠に着てやがる……!!」
「君にあげるよ、食べたい?」
熊凱は即座に首をぶんぶん振った。
「陳汐のT0級のあの顔思い出しただけで、もう無理。飯が喉を通らん、マジで吐きそう!」
「じゃ、終わりだな。俺も無理。」
葉洲は机の上の朝食を一瞥しただけで、まったく食欲がわかなかった。
もっとも、彼が食べたくない理由は熊凱とはちょっと違う。
タダ飯、しかもそこそこ豪華な朝食。ふつうなら遠慮なく食べる。でも、今日だけは……ちょっと怖くて食えなかった。
だって、陳汐がその朝ごはんを置いた瞬間から──
林浅月の心の声が、止まらなかったのだ。
【陳汐!?なんであの女が葉洲のとこ来てるの!?またうちの小葉洲こき使う気!?】
【葉洲……あいつは悪い女なんだってばぁぁ!もう関わらないでえええ!】
【しかも!あの女、朝ごはん持ってきた!?図々しい!!わたしまだ葉洲に朝ごはんなんて渡したことないのにっ!】
【葉洲!悪女の朝ごはんなんて食べたら……食べたら……もう森の氷と火ゲーム一緒にやらないんだからっ!!】
【うぅ……嘘だよ、ほんとは嘘……】
【林浅月、あんたほんとチョロすぎ。たとえ葉洲が悪女の朝ごはん食べたって、絶対ゲーム一緒にやっちゃうじゃん……】
あまりの心声の情報量に、葉洲は笑いを堪えるのに必死だった。
口では何も言えないくせに、心の中でも威圧しきれないとは……。
林校花(=林浅月)、君の「素質」……もっと落としていいよ。
熊凱は葉洲が食べる気ないのを見て、ゴミ箱をチラッと見ながらおそるおそる提案した。
「じゃあ……捨てる?」
「『誰知盤中餐、粒粒皆辛苦』、この意味もう忘れたか?『憫農』百回書き取りな。」
「いやいやいや、お前も食べないじゃん。俺も食べない。じゃあ、捨てないでどうすんだよ?」
「俺、食う!!」
唐突に右護法・白炫明がどこからともなく現れた。
彼の目は、葉洲の机の朝食に釘付け。目が緑に光ってた(物理的じゃない)。
「熊兄、洲兄!もしこの朝ごはん要らないなら、俺にくれ!最近生活費全部ゲームに課金しちまって、これ昼飯にもできるし!」
「……まあ、いいか。あげるよ。」
「義父・葉洲さま!義子・白炫明、感謝の礼を捧げます!」
「……人中呂布、馬中赤兎、方天画戟、で、義父ブッ刺すつもりか?」
「へへっ!ありがと、洲兄~!」
白炫明は嬉々として朝食を持ち、ぴょんぴょん跳ねながら去っていった。
それはもう、幸せそうに。
そして──
前の席に座っていた林浅月は、その様子を見て目を細めた。
【やっぱり……小葉洲は絶対あんな女の朝ごはんなんて食べないって信じてた!】
【白炫明、君はいい奴だ。今日から“洲月党”に入党を許可する!】
葉洲は頭を抱えた。
……マジかよ。
ネットに染まるって、こういうことか。
まさか「◯◯党」とか「CP名」とか、そういう用語まで使いこなしてるとは……。
お昼休み。クラスの皆はほぼ帰ったあと──
葉洲はペンを置き、机に突っ伏していた熊凱を軽く叩いて起こした。
「昼飯の時間だ。」
「ん~~……」
熊凱は伸びをしながら尋ねた。
「アシュウ、今日昼は何食べる?」
「今日は学食にしようぜ。最近、盛りつけのおばちゃんの手が震えなくなったって噂だ。」
「いいね、ちょうど学校の糖酢豚が恋しかったとこ。」
二人が立ち上がったそのとき──
林浅月が、まるで音もなく彼らの前に現れた。
葉洲は少し驚いた。
近所になってから、彼女がクラスで自分に話しかけてきたのは初めてだった。
「……どうした?」
「聞こえちゃった。学食行くんでしょ?」
「うん。」
林浅月は少し唇を噛み、視線を窓の外に向けながら、声を低くした。
「……私も、行きたい。」
【林浅月、よく言った!今日の君は勇者だ!!】
【みんな学食うまいって言ってたし、今回は絶対食べてみたい!】
【葉洲が一緒なら、前みたいに門まで行って引き返すことはないよね……!】
「!?!?」
熊凱は目をむいた。
林浅月が、葉洲と一緒に学食行きたいって言っただと!?
そんなバカな。
大劉老師の新作まだ出てないだろ? これは一体なんのSFなの!?
でも……驚きの後にやってくるのは、親友への信頼。
熊凱は軽く咳払いして言った。
「林校花。アシュウが昨日、君のマイバッハに乗せてもらったのは、ご近所だからだ。
でも今日は学食だぞ? 他の男子が見たら、アシュウ、絶対『男子暗殺リスト』入りだ。
林校花……君も、二人の関係がバレたくないだろ?」
「……そうなの?」
林浅月は葉洲の顔を見つめた。声には隠しきれない落胆。
彼女が本当はずっと行きたかったのに、学食の人混みに負けて、何度も断念したのを、葉洲は思い出す。
だから、彼は笑って言った。
「……そんなわけないでしょ。」
「熊凱のくだらない妄想なんて聞くな。行きたいなら一緒に行こう。
確か、君が転校してからまだ一度も学食行ったことなかったよな? 今日はチャンスだ。」
「……ありがとう。」
林浅月の瞳が、キラキラと輝いた。
【やったやったーっ!】
【葉洲、最高……!】
【ふん!熊凱、この筋肉脳の黒たまご!絶対お前には『洲月党』のCPカードは配らないんだから!】
葉洲は心の中で親指を立てた。
よしよし。熊凱、お前……党籍剥奪な。
熊凱は苦虫を噛み潰したような顔で言った。
「アシュウ……昨日マイバッハ乗ったのは、自分の限界を試すためって言ってたよな?まさか今度は……」
「もちろん違うさ。でも昨晩、自分の限界を試して分かったことがある。」
「……なに?」
「俺の限界、マリアナ海溝より深かった。」
「????」
熊凱、顔真っ赤。
「ちょっ、で、お前ら何の関係だって一緒に飯食うんだよっ!?」
林浅月は、ふっとアゴを上げた。
「ご近所同士でご飯食べちゃダメって法律、あったっけ?」
「……ない。」
熊凱は完全に論破された。仕方なく林浅月を連れていくことに。
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