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「“同桌”になったら、もっと君の心が聞こえるかも?」
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「……葉洲(よう・しゅう)、なんで答え全部消してるの!?」
——その時、陳汐(ちん・しお)の頭の中は完全にフリーズしていた。
目の前で葉洲が答えを消す姿が、スローモーションのように見える。しかも、やたらと大げさに——。
そして、彼が再びマークシートを塗り直して、右上にそっと置いた瞬間。
試験終了まで、残り3分。
「え、ちょっ……ちょっと待って!」
「……これ、おかしくない!?」
動揺した陳汐は、彼のマークシートを凝視する。
だが、そこに書かれていたのは、彼女がさっき必死に書き写したものとは……まったく違う答えだった。
——いや、正確に言えば、一問たりとも一致していない!
「まさか……まさか、最初にわざと間違えた答えを見せて、最後の数分で正解に直したの……!?」
「そ、そんな……彼がそんなひどいことするなんて……!」
全身に冷たい戦慄が走る。
彼女は動揺を抑えるため、自分が普段絶対間違えない問題を2つピックアップし、自分で答えを書いて比較してみた。
……結果は、惨敗。
自分で出した正解と、さっき書き写した答えはまったく違っていた。
けれども、葉洲が“書き直した後”の答えとは……ピッタリ一致。
つまり——
最初からわざと、間違った答えをマークシートに書いていたということ!
「……は、はああああああ!?!?!?」
「葉洲!お前、何考えてんの!?正気かよ!!」
怒りと恐怖が入り混じった叫びが、陳汐の心を支配した。
だが今はそれどころではない。
残り時間はあと2分。
このままじゃ、本当に終わる……!
彼女は急いで間違った答えをすべて消し、葉洲のマークシートをにらみながら、必死で書き直し始めた。
——だが、その時。
葉洲が、スッ……と右に体をずらし、彼女の視線を完全にブロックしてきた。
「ちょ、ちょっと葉洲、何してんの!?」
陳汐は焦りで声を潜めつつ、震えた声で言った。
「どいてってば!お願い、見せてよ、今さら……ダメなんて言わないで……っ」
彼女の声は、もはや涙声に変わっていた。
「……ふうん」
葉洲は面倒くさそうに一度だけ小さくうなずいて、渋々体をどけた。
陳汐はその瞬間、何もかも忘れてペンを走らせた。
焦りながらも、どうにか数問を塗り直した、——その瞬間。
「……チリン、チリン、チリン!!」
試験終了のベルが、無情にも響き渡った。
彼女の手はまだ止まらなかったが、試験官は容赦なく葉洲の答案を回収。
そして、次に彼女の番が来る。
彼女の手から答案が奪われるようにして回収されたとき——
約60%の問題が、間違ったままだった。
……詰んだ。
完全に、終わった。
「英語、110点の予定だったのに……もしかしたら、50点もないかもしれない……」
陳汐の目に、じわじわと涙がにじむ。
——ぜんぶ、葉洲のせいだ。
陳汐は怒りに燃える目で、机を片付ける葉洲をにらみつけた。
「ちょっと葉洲、あんた……わざと英語の答え間違えて書いてたでしょ!?
それで最後に全部書き直して……私に、わざと間違わせたんでしょ!?」
葉洲はちらりと彼女を見て、まったく動じずに言った。
「……別に。答え直しただけだよ?」
「はぁ!?じゃあなんで最初から間違えた答え書いたの!?」
「自分の答えが間違ってるって気づいたから、最後に直した。それだけ。
……なにか問題ある?」
その冷静さに、逆にブチギレた陳汐は、震える指で彼の鼻先を指して叫んだ。
「一枚丸ごと、全部書き直す人なんているわけないでしょ!!
ぜったいわざとでしょ!?」
だが、葉洲は肩をすくめて笑った。
「……あっそ。じゃあ、もう隠さない。
わざとやった。故意にやったよ。」
「……っ!」
彼の開き直りに、陳汐の目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。
「ひどい……ひどいよ……!
英語、あれだけ頑張ったのに……私、絶対今回いい点取れると思ったのに……!」
葉洲は冷めた目で彼女を見ながら、静かに言った。
「俺、答えを“右上に置く”とは言ったけど、“見せていい”なんて一言も言ってない。
君が勝手に見て、勝手に写しただけでしょ?それって、俺の責任なの?」
「そ、そんな……でも……」
「てか、自分で1~2問くらいやれば、答えが変って気づいたはずだよね?
それすらやらずに、全部人に頼っておいて、今さら“騙された”とか言われても、知ったこっちゃないよ」
「……!!」
陳汐は何も言い返せなかった。
確かに——彼の言う通り。
彼女は最初から一問も自分で解かず、完全に“信じきって”答えを写していた。
自分でも思わず涙を拭きながら、強がるように言った。
「……でもさ、悪いのは私だけじゃないでしょ?
そっちにも……ちょっとは反省すべきとこ、あると思うんだけど?」
「……?」
葉洲はその言葉に、10秒くらいフリーズした。
(やっべ……これが“茶道九段”の本気か……!)
完璧すぎるすり替え論法。
もはや感心すら覚えた彼は、ひと言だけ残してその場を立ち去った。
「……じゃあ、先に行くわ。ばいばい」
そして、出口に向かいかけたその瞬間——
彼はニッコリと振り返って、こう言った。
「……あ、あと一つ言い忘れてた。
英語だけじゃないよ。国語、数学、理科も……最初は全部、わざと間違えて書いてた」
「な、なに……!?」
陳汐は、その場で凍りついた。
そういえば……今までのテスト、毎回“最後の数分”に葉洲が急に答案を書き直す素振りをしていた。
彼女はずっと「私が写し終わるのを待ってくれてる」って信じてたけど……。
思い返せば、あれはまさに“今回と同じ”動きだった!
つまり——
今までの試験、ぜんぶ嘘だったの……!?
気づいたときには、葉洲はもう廊下の先に消えていた。
終わった。
全教科、終わった……。
110点どころか、前回よりマイナス100点は確実かもしれない。
陳汐は椅子に崩れ落ち、呆然とつぶやいた。
「……前の日の夜、妙妙と葉洲の気持ち、あれだけ分析したのに……。
なんで、なんで……私にこんなことするの……?」
——その時、陳汐(ちん・しお)の頭の中は完全にフリーズしていた。
目の前で葉洲が答えを消す姿が、スローモーションのように見える。しかも、やたらと大げさに——。
そして、彼が再びマークシートを塗り直して、右上にそっと置いた瞬間。
試験終了まで、残り3分。
「え、ちょっ……ちょっと待って!」
「……これ、おかしくない!?」
動揺した陳汐は、彼のマークシートを凝視する。
だが、そこに書かれていたのは、彼女がさっき必死に書き写したものとは……まったく違う答えだった。
——いや、正確に言えば、一問たりとも一致していない!
「まさか……まさか、最初にわざと間違えた答えを見せて、最後の数分で正解に直したの……!?」
「そ、そんな……彼がそんなひどいことするなんて……!」
全身に冷たい戦慄が走る。
彼女は動揺を抑えるため、自分が普段絶対間違えない問題を2つピックアップし、自分で答えを書いて比較してみた。
……結果は、惨敗。
自分で出した正解と、さっき書き写した答えはまったく違っていた。
けれども、葉洲が“書き直した後”の答えとは……ピッタリ一致。
つまり——
最初からわざと、間違った答えをマークシートに書いていたということ!
「……は、はああああああ!?!?!?」
「葉洲!お前、何考えてんの!?正気かよ!!」
怒りと恐怖が入り混じった叫びが、陳汐の心を支配した。
だが今はそれどころではない。
残り時間はあと2分。
このままじゃ、本当に終わる……!
彼女は急いで間違った答えをすべて消し、葉洲のマークシートをにらみながら、必死で書き直し始めた。
——だが、その時。
葉洲が、スッ……と右に体をずらし、彼女の視線を完全にブロックしてきた。
「ちょ、ちょっと葉洲、何してんの!?」
陳汐は焦りで声を潜めつつ、震えた声で言った。
「どいてってば!お願い、見せてよ、今さら……ダメなんて言わないで……っ」
彼女の声は、もはや涙声に変わっていた。
「……ふうん」
葉洲は面倒くさそうに一度だけ小さくうなずいて、渋々体をどけた。
陳汐はその瞬間、何もかも忘れてペンを走らせた。
焦りながらも、どうにか数問を塗り直した、——その瞬間。
「……チリン、チリン、チリン!!」
試験終了のベルが、無情にも響き渡った。
彼女の手はまだ止まらなかったが、試験官は容赦なく葉洲の答案を回収。
そして、次に彼女の番が来る。
彼女の手から答案が奪われるようにして回収されたとき——
約60%の問題が、間違ったままだった。
……詰んだ。
完全に、終わった。
「英語、110点の予定だったのに……もしかしたら、50点もないかもしれない……」
陳汐の目に、じわじわと涙がにじむ。
——ぜんぶ、葉洲のせいだ。
陳汐は怒りに燃える目で、机を片付ける葉洲をにらみつけた。
「ちょっと葉洲、あんた……わざと英語の答え間違えて書いてたでしょ!?
それで最後に全部書き直して……私に、わざと間違わせたんでしょ!?」
葉洲はちらりと彼女を見て、まったく動じずに言った。
「……別に。答え直しただけだよ?」
「はぁ!?じゃあなんで最初から間違えた答え書いたの!?」
「自分の答えが間違ってるって気づいたから、最後に直した。それだけ。
……なにか問題ある?」
その冷静さに、逆にブチギレた陳汐は、震える指で彼の鼻先を指して叫んだ。
「一枚丸ごと、全部書き直す人なんているわけないでしょ!!
ぜったいわざとでしょ!?」
だが、葉洲は肩をすくめて笑った。
「……あっそ。じゃあ、もう隠さない。
わざとやった。故意にやったよ。」
「……っ!」
彼の開き直りに、陳汐の目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。
「ひどい……ひどいよ……!
英語、あれだけ頑張ったのに……私、絶対今回いい点取れると思ったのに……!」
葉洲は冷めた目で彼女を見ながら、静かに言った。
「俺、答えを“右上に置く”とは言ったけど、“見せていい”なんて一言も言ってない。
君が勝手に見て、勝手に写しただけでしょ?それって、俺の責任なの?」
「そ、そんな……でも……」
「てか、自分で1~2問くらいやれば、答えが変って気づいたはずだよね?
それすらやらずに、全部人に頼っておいて、今さら“騙された”とか言われても、知ったこっちゃないよ」
「……!!」
陳汐は何も言い返せなかった。
確かに——彼の言う通り。
彼女は最初から一問も自分で解かず、完全に“信じきって”答えを写していた。
自分でも思わず涙を拭きながら、強がるように言った。
「……でもさ、悪いのは私だけじゃないでしょ?
そっちにも……ちょっとは反省すべきとこ、あると思うんだけど?」
「……?」
葉洲はその言葉に、10秒くらいフリーズした。
(やっべ……これが“茶道九段”の本気か……!)
完璧すぎるすり替え論法。
もはや感心すら覚えた彼は、ひと言だけ残してその場を立ち去った。
「……じゃあ、先に行くわ。ばいばい」
そして、出口に向かいかけたその瞬間——
彼はニッコリと振り返って、こう言った。
「……あ、あと一つ言い忘れてた。
英語だけじゃないよ。国語、数学、理科も……最初は全部、わざと間違えて書いてた」
「な、なに……!?」
陳汐は、その場で凍りついた。
そういえば……今までのテスト、毎回“最後の数分”に葉洲が急に答案を書き直す素振りをしていた。
彼女はずっと「私が写し終わるのを待ってくれてる」って信じてたけど……。
思い返せば、あれはまさに“今回と同じ”動きだった!
つまり——
今までの試験、ぜんぶ嘘だったの……!?
気づいたときには、葉洲はもう廊下の先に消えていた。
終わった。
全教科、終わった……。
110点どころか、前回よりマイナス100点は確実かもしれない。
陳汐は椅子に崩れ落ち、呆然とつぶやいた。
「……前の日の夜、妙妙と葉洲の気持ち、あれだけ分析したのに……。
なんで、なんで……私にこんなことするの……?」
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